サイダーガール VANITYMIX 2018-2019 WINTER PICK UP INTERVIEW

フジムラ (Ba)、Yurin(Vo/Gt)、知(Gt)

可能性を感じる、次へのバトンのような1枚になったんじゃないかと思う

炭酸系バンド・サイダーガールがセカンドアルバム『SODA POP FANCLUB 2』 をリリース。メンバー全員が作詞・作曲できる強みを生かし、さらなる挑戦へと挑んだ今作。そこから得た経験と自信はアルバムに刻まれただけではなく、バンドのこれからへもつながったようだ。結成から今作についてまでメンバー3人にたっぷり話してもらった。

■結成のいきさつから教えてもらえますか。

 もともとニコニコ動画で活動していたんですけど、僕とフジムラはVOCALOIDを使って作品をアップしていて、Yurinくんは僕らの作品をよく歌ってくれていて、お互い作品同士で知り合うくらいの存在認識で。もともと僕はバンドがやりたかったんですけど、バンドメンバーを集められるような性格でもないし。それで引きこもって制作を始めたんですけど、制作をしていくうちにやっぱりバンドでお客さんに届けたいなって気持ちが沸いてきて。それでフジムラとYurinくんを誘って、サイダーガールを組みました。

■Yurinさんとフジムラさんは声を掛けられたときはどんなお気持ちでした?

フジムラ 僕ももともとバンドをやりたかったけど、知くんとまったく同じで、自分ではバンドを組めないから、仕方なく1人で曲を作っていたし、知くんの曲が好きだったから、「もうやるに決まってんじゃん!」って速攻で返事をしました。

Yurin 僕はその頃、九州でバンドをやっていたんですけど、上京することはもう決めていて。上京のタイミングでそのバンドも解散して、そんなときに知くんに声を掛けてもらったんで、ぜひという感じでしたね。

■その頃からバンドのコンセプトは決めていたんですか?

 僕が当時作っていた曲をバンドでも再現したいと思っていたんですけど、Yurinくんが僕の曲を歌ってくれたときに、もうイメージが沸いちゃったんですよ。自分の曲をこういう声の人が歌うとこうなるのか、みたいな。初めは自分で歌おうかとも考えてはいたんですけど、僕は歌が上手じゃないし、自分の声もあんまり好きじゃない。それに自分の作る曲に自分の声って合っていないなとも思っていて。やっぱり自分にないもの、自分が持っていないものに憧れるんですよね。

■メンバー3人が作詞・作曲できるのは大きな魅力だと思うんですが、知さんがおっしゃっていたような、自分にない部分というのは感じたりされますか?

Yurin 知くんの曲は、サイダーガールを始める前からよく聴いていたし、好きだったし、きっと彼の根底にあるもの自体が僕は好きなんだと思うんです。自分のことを語るのが上手だし、自分の内側をさらけ出すのが上手で。妄想っぽいところや女々しさみたいなところにもグッとくるし、僕には絶対出せない味。フジムラはピュアというか、不器用なのが曲や歌詞にも現れていて、その偽りがないところがいいですよね。僕は照れがあって、自分をさらけ出すのがあまり得意じゃないので、フジムラと知くんはそういうところが上手だし、魅力だなって思います。

フジムラ 知くんは自分のやりたいことが昔から一貫しているところがかっこいいなって思いますね。自分がブレブレのタイプで、そこがいつも怒られるところでもあるんですけど。(笑) Yurinはひとつひとつの音が繊細で、デモでも細かいことしていてびっくりすることが多いですね。普段はフワフワしているんですけど、歌詞とかは男前だし、僕の自信のなさみたいなところを奮い立たせてくれるような曲を作る人だと思います。

 僕は、ケーキ作りに例えると、Yurinくんはケーキを作るのがすごく上手で、例えばお店に並んでいるものを見て、それをすぐに作れるタイプで、そういう曲を作る人だと思うんですね。で、それを「おいしい!おいしい!」って食べていたら、「あれ、実はオレンジピール入ってたけど」みたいな、男っぽい隠し味が入っているというか、「あ、そうだったんだ!」みたいなことに気づかされることが多くて。素直にみんながおいしいと思えるものを作れちゃう、そこがやっぱりうらやましいですね。

フジムラ すごいな……。(笑)

 フジムラは、ケーキを作るの下手なんですよ。ぐちゃぐちゃなんです。(笑) でも、子供とかが、お父さんのために頑張って作ったみたいなケーキで、まずくはないんですよ。

フジムラ うまくもないけど?(笑)

 いや、でもうまいかどうかはそのケーキを見たらわかると思うんですよね。僕もケーキを作るのが下手くそなんだけど、フジムラはそこに対して自分が下手だと思いながら作ってない。そういうところだろうなって。

■あー、なるほど。

 あと、意外と誰もこだわっていないスポンジに実はすごくこだわっているとか。それはなんとなく作るフレーズや、フレーズのクセとかで感じたりして。いまどきの音楽ばかり聴いていて浮かぶフレーズではないな、みたいなルーツの深さがあるんですよ。スポンジにこだわったのも、実はお父さんもケーキ職人で、昔からあたりまえのようにそのスポンジを作ってきてるから、ちょっとこだわってみた、みたいな。ケーキに例えるとそういう感じですかね。

フジムラ 負けました……。(笑)

 やっぱり隣の芝は青い、みたいな魅力がそれぞれありますよね。(笑)

■お互いのリスペクトがすごいですけど、結成からここに至るまでに話合ったりする場は多かったんですか?

Yurin 少なくはないかな。アルバムを作るときもどういうアルバムを作るかとか話すし、それぞれの意見をちゃんと取り入れたい気持ちもあるし。ひとりよがりではバンドではないから、みんなのいいところを集めてカタチにしていくのが、バンドの醍醐味だと思うんで。だから話はいろいろとしてきましたね。

 その中でだんだんお互いの事がわかってきたかなって。

Yurin (フジムラが)そろそろ泣くな、とか、(知くんが)そろそろ失踪するな、とかね。

 (Yurinくんが)そろそろ怒るな、とかも。(笑)

Yurin 僕は自分が許せなくなって自分に怒るタイプで、けっこうモノにあたったりマネージャーにあたったりして。大概そういうときはおなかが空いているときだから、ごはん食べたら落ち着くっていう。(笑)

 僕は人に怒れないんでイライラはするんですけど、悲しくなるほうが多いですね。そうなると、人と関わりたくなくなるので、1枚ずつ扉をシャットダウンしていく。で、フジムラは制作中に思いつめて泣き出すっていうね。

フジムラ 悔しくてね。なんで自分はこんなんなんだろうなって悔し泣き。Yurinの怒りが僕はたぶん悲しみになっちゃうというか。

Yurin さっきからインタビュー中も垣間見れていますが、彼(フジムラ)は、言葉を伝えるのがあまり得意ではなくて、制作段階で楽曲のイメージを合わせたりしているとき、彼が本当に意図するものを我々がなかなか汲み取れないことが多いんです。「ここはどうなの?」って聞いても、曖昧な返答が返ってきたりして、それで「しっかりしたほうがいいよ!」って言うと「ごめんなさい…」って泣くっていう。(笑)

フジムラ  2人みたいにちゃんと伝えられる人になりたかったなって。

■なりたかったなって。(笑)

 過去形か!

Yurin あきらめんなよ!

フジムラ 伝えられる人になりたい…。

 このアルバムの“ミスターデイドリーマー”は、そういう人たちを励ますってことでフジムラが書いたんですけど、その制作中に悩んで泣いちゃって。それを見て「ナヨナヨしてんなよ!」って、僕が書いた曲が1曲目の“アクセル”なんです。(笑)

■なるほど!そういうことですか。

 意外と曲同士がリンクしているのがあって。

Yurin 今回のアルバムもちょっとずつ組み立てていったので、“ミスターデイドリーマー”ができたあとに“アクセル”ができたり、一気に作っていくというよりは、その過程をも全部取り込んでいくというか、制作中の情景とか、風景とか、出来事を消化して、曲になっていたりもしていて。だから、そういうエピソードがたくさんありますね。