Wienners『CULT POP WORLD』ライブレポート@Zepp Shinjuku

現体制ラストワンマンライブで見せた集大成。

8月3日(木)、Wiennersのワンマンライブ『CULT POP WORLD』がZepp Shinjukuにて行われた。この日のライブを以って、2015年からWiennersのドラマーとして活動してきたKOZO(Dr)がバンドを脱退。とはいえ湿っぽい雰囲気は一切ない。メモリアルなセットリストとともに、新しくできたばかりのZepp Shinjukuのライブハウスでもあり、クラブでもあるという特徴とWiennersの音楽との相性の良さを感じさせる熱いライブとなった。オープニングムービーの後、普段以上の大歓声に出迎えられて登場した4人。この日のオープニングチューンは “蒼天ディライト”だ。2曲目“GOD SAVE THE MUSIC”に至るまで、ライブ終盤に連続してもおかしくないクライマックス級のアッパー曲を始めから披露するセットリストに、この日への熱い思いを読み取らざるを得ない。フロアもそんな思いに応えるようにのっけから大盛り上がりだ。

玉屋2060%(Vo&Gt)による煽りが更に熱量を高め、超高速で“Cult pop suicide”、“ジュリアナ ディスコ ゾンビーズ”と畳みかけるように続く。玉屋が途中のMCでも触れていたが、Wiennersの音楽とZepp Shinjukuの特色は非常に相性がいい。Wiennersの音楽の持ち味でもある目まぐるしい展開と、アサミサエ(Vo&Key&Sampler)によるシンセサイザーの音色がもたらすエレクトロニカ要素が作り出す混沌とした印象は、鮮明なレーザー照明で視覚的にも強調される。更に深夜はクラブ営業もしているだけあって、重低音の迫力も十二分で、∴560∵(Bs)とKOZOによるリズム隊の演奏も際立っていた。特にKOZOのドラムのパワーと端正さのバランスや、決して派手なプレイではないが確かに熱量を加速させる演奏は、彼が今までのWiennersの核となっていた存在であると、最後の夜にして改めて気付かされる。

“TRADITIONAL”、“ULTRA JOY”、“SHINOBI TOP SECRET”と、次々と目まぐるしい楽曲を続けるステージ。気を抜くとその勢いに置いていかれそうだが、演奏の熱量と比例するようにフロアの熱狂も増していく。そんなフロアを見ながら満足げに演奏する4人も楽しそうで、フロアとステージの間からは音楽を通して時間を共有することによる一体感が感じられた。“Justice4”では、ステージ上での4人で奏でるリズムを楽しむような光景が、現メンバーでは最後のステージだからこそ胸を熱くさせる。そしてレーザーが飛び交う中、2MCで繰り広げる“ASTRO BOY (Black Hole ver.)”は、クラブでもあるこの会場にまさにぴったりな楽曲だ。KOZOによるドラムのつなぎから“シャングリラ”に続くと、これまで力強くアッパーチューンを畳みかけていたとは思えない穏やかな光景が作られる。それから明るく展開した“天地創造”、玉屋の弾き語りから“午前6時”と、穏やかで落ち着いたステージを展開し、会場を優しく包み込んだ。

今回のライブは、パンデミックの影響で数年間敷かれていた規制が全て排除された上で行われた。規制のない状態でワンマンライブを行うのは約3年ぶりである。MCにて、コロナ禍真っ只中にTwitterにてリスナーから楽曲のアイデアを募り、リモートで作曲した2曲の話題になると、その2曲は「ライブでの声出しが可能になってから演奏したかった」と伝える。そして3年越しにその2曲“カフノリカ”、“Yahman”を初披露した。ステージ背後の巨大スクリーンには当時のツイートとリプライが次々と表示され、暗い情勢の中でも楽しみを見出しながらファンと演者が一丸となって創作をした高揚感を思い返させる。当時の情勢下で一筋の光として完成した楽曲が、2023年の今以前のライブハウスを取り戻した象徴としてオーディエンスの歌声とともに演奏される光景は、言いようもない感慨深さがあった。そして「この4人で初めて鳴らした曲です」と演奏したのは“みずいろときいろ”。“SUPER THANKS”、“LOVE ME TENDER”と、これまでのWiennersの道のりを感じさせる楽曲を続けると、いよいよ本編はラストスパートへ。オーディエンスの大合唱がフロアを揺らした“UNITY”、真夏にぴったりの“SOLAR KIDS”を怒涛に鳴らし、“TOP SPEED”でボルテージを上げ続けたまま本編を終えた。

誰からともなく「KOZO!KOZO!」との熱烈なアンコールが飛び交い、再びステージに姿を表す4人。KOZOはこれまでの感謝と、公式コメントでも発表された脱退までの経緯を直接伝えると、「これからの自分とWiennersを応援して欲しい」と口にする。そ“Hello,Goodbye”、“レスキューレンジャー”、“子供の心”へ。“レスキューレンジャー”では玉屋が豪快にオーディエンスの上に乗りギターソロを演奏するなど、会場の熱狂も最高潮だ。思い切り音を鳴らし切った4人だったが、再び鳴りやまないWアンコール。三度登場したWiennersの4人は、“Idol”、“Cult pop suicide”を披露した。メンバーが脱退するからといって、感傷の情に浸ったりはしない。しかし、いつも以上に熱く真摯な本公演は、間違いなく彼らの歴史に刻まれる特別な一夜となったはずだ。

Text:村上麗奈
Photo:かい

https://wienners.net/

『CULT POP WORLD』@Zepp Shinjuku セットリスト
01. 蒼天ディライト
02. GOD SAVE THE MUSIC
03. Cult pop suicide
04. ジュリアナ ディスコ ゾンビーズ
05. TRADITIONAL
06. ULTRA JOY
07. SHINOBI TOP SECRET
08. おおるないとじゃっぷせっしょん
09. 恋のバングラビート
10. FACTION
11. Justice 4
12. ASTRO BOY (Black Hole ver.)
13. シャングリラ
14. 天地創造
15. 午前6時
16. カフノリカ
17. Yahman
18. よろこびのうた
19. みずいろときいろ
20. SUPER THANKS
21. LOVE ME TENDER
22. UNITY
23. SOLAR KIDS
24. TOP SPEED

ENCORE
01. Hello,Goodbye
02. レスキューレンジャー
03. 子供の心

W ENCORE
01. Idol
02. Cult pop suicide