真心ブラザーズ VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

なんとなく息苦しい時代や、あなたの生活に、真心ブラザーズが差し伸べた音楽の手とは…。

真心ブラザーズが、約2年ぶりになるアルバム『TODAY』を10月26日にリリース。真心ブラザーズが今の時代を生きるすべての人へどんなメッセージを投下したのか、2人の言葉にぜひ注目してもらいたい。YO-KING、桜井秀俊の二人に話を訊いた。

■アルバム『TODAY』を聞いた時に、今の時代の中だからこそ感じる「息苦しさ」を楽曲へ落とし込んだ面も強いのかな?という印象を受けました。

YO-KING 「息苦しさ」ねぇ。確かに日々生きていく中でも、ちょっと息苦しさ覚えることはいろいろとあったので、自分自身への癒しを含め、楽曲やレコーディングを通して、息苦しさを解消していったところも当時はあったなと思い出しますね。そもそも僕は、能天気で軽い人間ですけど、そんな僕でさえ息苦しさを覚えていたくらいだから、世の中の人たちはもっとしんどいんだろうなと思って。

桜井 確かにね。前作のアルバム『Cheer』は、まさにコロナ禍になってすぐに制作して、あの時とはまた異なる息苦しさが今の時代にはありますよね。

■その息苦しさを吐き出そうとアルバムを作り始めたのでしょうか?

YO-KING 「新しいアルバムを作りましょうか」という話が出た時期に、「じゃあ、新しい曲を作るぞ!」と僕らもなるわけじゃない。そのモードの時に出てきた曲たちにそういう気分がお互いに反映されていたという感じでしたね。

桜井 アルバム制作に入ったのが、今年の2月頃だったね。

YO-KING その時期からお互いに曲作りを始めて、出来上がった曲たちを聴かせあっていた中、とくに「こういうテーマで作ろう」という話をしていたわけでもないのに、お互いに生まれた楽曲の中に「憂い」のような感情が自然と反映されていた感じでした。もちろん、あえて今の時代の空気を無視して能天気で明るい楽曲を作ることも可能でしたけど、でも世の中がそういう空気ではなかったじゃないですか。「聴いた人たちの気持ちを明るい方へ向けられたらいいな」とは思っているけど、今の時代の空気を肯定した上で出てくる思いを書かないと、自分たちの気持ちに嘘をついてしまうことになる。それってなんか不自然じゃない。

桜井 いい加減キャリアを長く重ねると、「こういう音楽を表現しているバンドです」と、認めてもらう音楽性を提示していくようなスタンスでも無くなるわけで。それよりも、「今の我々は、こんな気持ちのモードです」と示した方が、応援してくれる人たちに対して正直な向き合い方になる。今回のアルバム制作に関して言うなら、例えばの話にはなりますけど、会社員の人たちが仕事終わりに同僚たちと飲みに行き、「あの上司のやり方は違うだろう」「今のやり方じゃ、会社の売上的にまずくならねぇか?」と、不満をぶつけたりもするわけじゃないですか。だからと言って、不満をぶつけているだけじゃ何も解決にはならない。「じゃあ、どうするのか」という話も交えながら、そういう話を通して自分のモチベーションを上げるなり、元気をチャージしていく。このアルバムもそうで、いろんな不安や憤りも歌にしてその思いを聴いてくれる人たちに投げかけてはいるけど、最終的には「いろいろあるけど、明日からまた元気を出して頑張りましょう!」となる。そういうコミュニケーションを取れる作品にしたかったし、実際にそうなったと思います。その上で、今の時代の音楽的な色も反映したアルバムになったなと感じています。

■今の時代を憂いながらも、真心ブラザーズとしての本質となる思いやメッセージは何もブレていない。そこがいいんでしょうね。

桜井 「愛だ」「心は自由だ」と歌うのは、我々にとっては当たり前のことですからね。

■アルバムに収録した“LOVE IS FREE”のような思いは、ずっと歌ってきたことですもんね。

YO-KING そうだね。愛や自由って、本当に根源として真心ブラザーズにあるものだから、そこはどんな時代の中にいようと変わらない歌のテーマでしょうね。それが土台なのか、山の頂上にあるのか…、その位置がどこであれ、「愛と自由」が根源としてあった上で、いろんな「思いというマグマ」があちこちから吹き出しては、歌になっていく。このアルバムもそんな感じで成り立っているのかも知れないですね。

■楽曲の演奏面には、昔から馴染みのあるミュージシャンたちが参加しています。同時に“LOVE IS FREE”では、江沼郁弥(ex.plenty)さんを、“雨”では江﨑文武さん(WONK)がピアノ伴奏で一発録りで参加したように、新しい方たちとも制作をされています。真心ブラザーズとしては、常に新しい人との刺激も求めているということでしょうか?

桜井 基本はその楽曲に似合う人たちに演奏をお願いしている形ですけど、そこはYO-KINGさんの人間関係の繋がりも大きく作用していることですからね。

YO-KING 旧知の素晴らしいミュージシャンたちが身近にわんさかいるから、そういう仲間たちに声をかければ、求める音楽は出来ちゃうわけですよ。でも、新しい刺激を得るためにも、意識的に新しい人たちとの出会いを求めて参加してもらっているところはありますね。やっぱり人との出会いって大切じゃないですか。しかも、お互いに好感を持っている上での出会いが大事というかさ。人生は短いですから、自分に好感を持っていない人と付き合う時間ってもったいないじゃない。(笑) 自分の場合、人生楽しく生きている人を見るとホッとするし、自分も楽しくいようと思えてくる。そういうところで惹かれた人とは、やっぱり一緒にやりながら新しい刺激をもらいたいですからね。

■そういう心惹かれる人たちとは、これからも出会いの機会があれば繋がっていくんでしょうね。

YO-KING 人と繋がること自体が、人生の豊かな財産になっていくことだからね。ただし、考え方が合うか合わないかは会ってみないことには正直わからない。もちろん波長の合う人たちとは長く付き合っていきたいけど、時間をかけなきゃ繋がり合えないとか、あれこれ説明しないと理解してもらえない人は、ほっとく。(笑) その人が「俺もそう思っていたよ」と、後から理解してもらえたのなら、もちろん喜んで受け入れるけど。自分から無理に理解は求めないかな。(笑)

■真心ブラザーズの音楽や、真心ブラザーズの音楽が好きな人たちって、お二人の感覚の波長に合った人たちが多くて、そこに同調や共感を覚えて、真心ブラザーズの音楽を日々の人生の糧にしている人たちがきっと多いですよね。

YO-KING そうかもね。ただし、何事にも優先順位があるし、それって大事なことだよね。それこそ俺は、真心ブラザーズよりも俺自身の人生の方が大事だからね。自分の人生を考えたら、自分を幸せにすることが一番の優先ごとだし。その何個か下に真心ブラザーズがある。決して真心ブラザーズが人生で一番優先すべきことではないんですよ。もちろん、真心ブラザーズでもいい感じになりたい気持ちはありますけど。それはファンの人たちにも言えることだし。俺にとっては自分の人生こそが一番大事なように、みんなの中にもいろんな優先すべき物事の順番があって、その中のどこかの位置に真心ブラザーズの音楽もある。その順番をはき違えると、人生にいろんな悲劇が生まれてしまう……。そういうことですよ。

■ファンの方たちの中には、「なんで真心ブラザーズが一番じゃないの?」と思う方もいませんか?

YO-KING そこはもう30年以上真心ブラザーズとして活動してきて、みんなの中でも、二人とも真心ブラザーズが人生の中で一番優先すべき事柄じゃないのはわかっていると思うし、その優先順位を自分らに求めてこないこともわかっていますから。

桜井 僕らのファンの方々も、自分ら二人の考え方はお見通しだし、それをわかっていて応援し続けてくれているので。

YO-KING 真心ブラザーズだって二人にとっては仕事の一つだけど、それを遊び感覚でやっているから、そこで生まれる音楽や活動がいいと思っている人たちが、こうやって長く支持してくれているんでしょうからね。

■変に気張ることなく、自由に伸び伸びと活動している姿や、そこで生まれる音楽をみなさんが信じているわけですね。

桜井 いやいやいや、そこまで甘くはないです。(笑) 自分らが何をやってもお客さんたちは満足するとか、そんなことは決してないですよ。

YO-KING 聴いてくれる人たちに刺激を与えるためのさじ加減も大切だからね。僕らも「やりたくないことは絶対にやらない」というスタンスでもないし、「これをやることで、こんなことも出来るようになるよね」など、そこのバランスはいろいろと考えていますよ。そんなわがままを押し出して、自分たちの人生が致命的になるようなことにはなりたくないので。その辺は冷静に考えながらやっています。

桜井 「やりたい」、「やりたくない」というのは感情的な判断じゃないですか。そこではなく、「やるべきこと」、「そこは無理にやらなくてもいいこと」、そこを判断基準にしながら、「今、やるべきこと」へ全力で気持ちを傾けながら活動をしているので、その姿勢をお客さんたちもわかってくれているし、その上で支持してくれているんだろうなと思いますからね。

■確かにアルバム『TODAY』でも、「らしさ」と「新しさ」のバランスが絶妙だし、「新しさの中にもらしさ」をしっかり詰め込んでいますもんね。その上で、今の時代の影をアルバム全体から色濃く感じ取ってしまうんですよね。

桜井 いつもだったら「今回のアルバムの色とはちょっと違うんだけど、でもいい曲だからアルバムに入れよう」とやってしまうんだけど。今回は、あえて色の違った曲はベスト10圏外へと外して、このアルバムでは「ぜひこの曲たちを聴いて欲しい」という10曲のみを自信を持って選び、「さぁ、みんなどうですか?」と出しています。そうやって一つの色をギュッと押し出せたのも、こっちが大人になったからなのかな。(笑) おかげで出来上がった達成感はすごくあります。