DEZERT『【This Is The “FACT”】 TOUR 2024 VS MUCC』ライブレポート@Zepp Shinjuku

MUCCとの対バンでファイナルを迎えた、東名阪ツーマン・ツアー。

12月27日(金)に初の日本武道館ワンマンを控えているDEZERTが、先輩バンド3組に挑む東名阪ツーマン・ツアー『【This Is The “FACT”】』。名古屋でlynch.、大阪でSadieとの対バンを終え、11月15日(金)、所属事務所を同じくするMUCCを迎えたファイナルをZepp Shinjukuで開催した。互いに1曲ずつゲストとしてヴォーカリストを迎えるものの、アンコール・セッションの予定は無し、という潔い構成。先攻はMUCCだった。

“ホムラウタ(short)”に乗せてステージに登場した逹瑯(Vo)、ミヤ(Gt)、YUKKE(Ba)、アレン(Dr)、吉田トオル(Key)。逹瑯がふいにしゃがみ込むと、ミヤが不穏なギターリフを鳴らした瞬間、悲鳴のような歓声が沸く。もはやMUCCの持ち曲という枠を超え、ヴィジュアル系の必修曲と呼びたい“蘭鋳”を投下。全員を座らせて、「MUCCです。DEZERTの先輩だぞ!DEZERT がめちゃくちゃカッコいいライブやるよう、うちらも頑張って思い切りカッコいいライブやりますんで、よろしくお願いします。みんなで、カッコ良くなったDEZERTの武道館、遊びに行って様子見てやろうじゃねーか」と煽り、決め台詞の「全員、死刑!」の絶叫。アレンのカウントで、しゃがんでいた観客が一斉にジャンプする場面は壮観だ。ステージとフロアが一体となって生まれるカオスを、千秋は2階席から見下ろしていた。暗鬱なスリルに満ちたラウドナンバー“絶望”で闇の濃度を高め、サイレンが響き渡る中始まった、まさしく“サイレン”のラストを「愛の唄を」に変え、“愛の唄”へと繋げた流れは鮮やかだった。艶めかしい歌唱、粘液のように絡まり合うアンサンブルは、不道徳で淫靡でグラマラス。逹瑯の妖艶なパフォーマンスからも目が離せなかった。11月5日から始まったMUCCのツアーで披露している複数の新曲のうち、この日は“新曲1”を披露。ラウドなサウンドと物悲しいピアノの旋律、切ないメロディーが混然一体となったノリの良い曲で、力強いコーラスが一体感を生んでいく。「みんな行くの、武道館?」と観客に問い掛け、「DEZERTの武道館のライブは、この先も何回もあるでしょう。けど、初武道館は今回しかないんだわ」と語った逹瑯の言葉に拍手が起きる。

「MUCCの初武道館は2006年6月6日、自分的には悔いの残るライブになりました。逆に思い出深かったりとかして。DEZERT の武道館、是非ここにいる全員で友だちを誘って、観に行ってもらえたらねと。なんならキズのライブも行って。(笑) キズの方が良かったんじゃない?とか、DEZERTの方が良かったね、みたいな話に花を咲かせてもらって、ヴィジュアル系全体が盛り上るのはめちゃくちゃいいこと」と語った。すると、「スーパーヴォーカリストを呼びましょう、千秋」と逹瑯が呼び込んだ。一緒に歌うのは千秋のリクエストに応えた曲で、「うちらの好きな曲、やりたい曲が1曲減った」とMUCCのセットリストに影響があったことを明かすと、千秋は「えっ?!」と驚いた。ミヤが奏で始めた浮遊感溢れるアルペジオに乗せて、逹瑯は「ちょっと意外な曲だった」と選曲に対する感想を述べ、千秋は「そうですか?」と素のテンションで会話。一瞬の静寂の後“流星”のイントロがスタートし、青く照らされた神秘的な光の世界で、まずは逹瑯が、続いて千秋が歌い始めた。千秋の歌唱に合わせ、逹瑯はその隣でマイクを通さずに口を動かし、ハンドモーションで醸し出す情感を上乗せした。歌いながら世界観に深く潜り込んでいくように、俯いて熱唱する千秋。腕をグルグルと回し、ジャンプダウンを合図に演奏を止め、最後はミヤとハグを交わして去っていった。YUKKEが前へ出てベースソロで魅了する“大嫌い”、“前へ”では逹瑯のキレの良い激しいダンスを見せ、「いいか、MUCCお兄さんと約束だぞ?全員武道館へ行くぞ!」と叫び、ダイバーが続出する盛り上がりとなった。フレンドリーな顔を見せたかと思えば、ラストは真っ赤なライトの下、激情迸る“アカ”でフロアを立ち竦ませ、絶句させた。曲の世界に没入した逹瑯の絶唱と、呼吸のピッタリと合った演奏は圧倒的。曲の冒頭に立ち返っていくようなラスト、無限のループに自ら呑み込まれていくように。ミヤは円を描くようなストロークでギターを奏でた。プツリと音が途絶えると、メンバーは無言でステージを去り、真っ赤な世界の中に観客を置き去りにした。圧巻の幕切れに、大拍手と歓声が鳴り響いた。

約30分の転換の後、ホストバンドであるDEZERTが登場した。「お前“たち”じゃなくて、お前に言ってんだ」と、あくまでも一対一で向き合う千秋の言葉が響く。1曲目、新曲“心臓に吠える”を歌い終えると、「全然足りないんじゃない?MUCCの後輩だぞ!」と、逹瑯のMCに呼応した言葉選びでフロアに呼び掛けた。『傑作音源集「絶対的オカルト週刊誌」』に新ミックスで収めた初期曲“「君の子宮を触る」”、リレコーディングした“Sister”を連打。初武道館ワンマンを前にバンドの軌跡を辿りつつ、最新鋭“今”のDEZERTの曲として磨き上げた曲たちが、フロアを沸かせ途轍もない猛威を振るっていく。Sacchan(Ba)がピンスポットを浴びて繰り出すスラップが印象深い“匿名の神様”まで、曲と曲の間を繋いでいく千秋の言葉は熱く、リズムは詩的で、長い一連の曲を聴いているような感覚に包まれる。それはDEZERTのライブならではの、魅惑的な音楽体験だと感じた。「逢えてうれしいです、ありがとうございます。そしてMUCC先輩、ありがとうございます(千秋)」と挨拶すると、ピアノで始まるロマンティックなバラード“私の詩”を熱唱。SORA(Dr)のドラミングは力強くも優しく、歌心に溢れている。“ミスターショットガンガール”が始まると、千秋が両手で手招きして逹瑯を迎え、2人は向き合った。千秋が「逹瑯さんにもこれ、やってもらおうか?」といたずらっぽく笑い、ショットガンならぬハットガンの手の動きを提案。わちゃわちゃと2人でツッコみ合った末、ショットガンを構えるポーズを2人で揃って見せた。「Oi Oi!」というコールが響きフロアは盛り上がり、楽しそうなムードが広がっていく。まずは千秋が歌い始め、逹瑯がその後に続き、やがて二人で声を揃えたり、また交互に歌ったりと起伏に富んだデュエットを披露した。千秋は逹瑯の両脚の間に背後から潜り込み、逹瑯は千秋のこめかみを人差し指で突くなど、じゃれ合う場面も微笑ましい。「最後まで狂って頂戴!」と逹瑯は叫び、ステージを去った。

「張りぼての大人になってくれ。コケた奴がいたら助けてやってくれ。でも全力で、心と心でぶつかろうな!(千秋)」とファンに呼び掛けると、観客が左右に分かれ、フロアの中央には海が割れたように道が空けられた。始まった曲は“「変態」”である。「3,2、1レッツゴー!」を合図に、左右の観客が突進し、混ざり合ってフロアはカオスとなった。「♪変態、変態」とリフレインした後、千秋にマイクを向けられたMiyako(Gt)も歌唱。千秋がお立ち台に乗り童謡のような優しい歌唱パートを聴かせたのも束の間、曲は急展開を見せ、破壊的な絶唱へ。フロアは拳を突き上げ、千秋もポニーテールを振り乱しながらヘッドバンギングした。続いて千秋はSORAにマイクを向け「♪変態」と歌わせ、自身はデスボイスで咆哮。SORAは怒涛のドラムソロの後、椅子の上に仁王立ちになった。“君の脊髄が踊る頃に”、“再教育”を狂おしく畳み掛けた後、千秋は、これまで対バンを重ねて来たMUCCとの関係性について語り始めた。「反骨心マックスになっていた」と振り返った2016年。「この9年間で、人は攻撃するだけでは物足りなくてさ。人の役に立ちたい、なんて思うようになって」と、Miyakoのギターに乗せて、心境の変化を切々と語っていく。MUCCが「DEZERTの武道館に行って」と呼び掛けてくれたことに対し、「シンプルに“ありがとうございました”って思いました」と感謝を述べた。

「“俺って弱いんだな”と気付かされた」、「“DEZERTがいるから頑張ろう”と思ってもらえるバンドになりたい。そのためなら武道館でやろうか、と去年決めて、ありがたいことに、既に最高動員です。下手したら3倍」と、現時点での状況を報告すると、温かな拍手が起きた。「今日ここで出逢ったあなたに、幸せになってほしい。ちょっとでいいから。そうしたらお墓に行く時、“生きててよかった。音楽やって良かったな”って思える」と語り、とめどなく溢れ出す想いそのままに“TODAY”を届けた。何年前だろうか、初めてライブで聴いた時、「この名曲があればDEZERTというバンドはどんな遠くへも行けるだろう」と確信したことを覚えている。武道館のステージで鳴り響く情景をイメージできる熱唱であり、演奏だった。最後に、「7年前に約束して、やっとレコーディングを一昨日終えました」と千秋は語り、赤いギターを掻き毟りながら“オーディナリー”を届けた。

ラストはMUCCを呼び込んで記念撮影。時間がオーバーしていたことを逹瑯に「時間を守んなさいよ!」と叱られ、焦った様子の千秋は「全部俺が悪いです」などと謝りつつ、「みんな楽しかったな!さあ、早急に帰るぞ!」と号令。MUCCとDEZERTのメンバーが混ざり合って小走りでステージを去り、最後に残ったSORAが「帰るぞ!ありがとう!」とMiyakoのマイクで叫び、約2時間20分のツーマンは終了した。武道館ワンマンに向かうDEZERT の熱き真剣さ、先輩MUCCへのリスペクト、ツアー真っ只中のMUCCの最新の“今”の姿、後輩DEZERT への愛情と応援。そういった様々な想いを感じ取ることができ、両バンドの歴史に想いを馳せると同時に、ヴィジュアル系シーンを立体的に体感できるツーマンライブだった。

Text:大前多恵
Photo:冨田味我

DEZERTオフィシャルサイト:https://www.dezert.jp 
DEZERT 公式 X(旧Twitter):https://twitter.com/DEZERT_OFFICIAL
MUCCオフィシャルサイト:http://www.55-69.com/
MUCC 公式X(旧Twitter):https://twitter.com/muccofficial

DEZERT『【This Is The “FACT”】 TOUR 2024 VS MUCC』@Zepp Shinjuku セットリスト
<MUCC>
01. 蘭鋳
02. 絶望
03. サイレン
04. 愛の唄
05. 新曲1
06. 流星 with千秋(DEZERT)
07. 大嫌い
08. 前へ
09. アカ

<DEZERT>
01. 心臓に吠える
02. 「君の子宮を触る」
03. Sister
04. 匿名の神様
05. 私の詩
06. ミスターショットガンガール with 逹瑯(MUCC)
07. 「変態」
08. 君の脊髄が踊る頃に
09. 再教育
10. TODAY
11. オーディナリー

LIVE
≪DEZERT≫
■DEZERT SPECIAL ONEMAN LIVE at NIPPON BUDOKAN「君の心臓を触る」
2024年12月27日(金) 日本武道館 OPEN17:30 / START18:30
チケット等詳細:https://dezert-budokan.com/ 

≪MUCC≫
■MUCC TOUR 2024 「Daydream」
2024年11月23日(土) 名古屋ボトムライン OPEN 16:15 / START 17:00
2024年11月24日(日) 名古屋ボトムライン OPEN 13:15 / START 14:00
2024年11月30日(土) 大阪BIGCAT OPEN 16:00 / START 17:00
2024年12月1日(日) 大阪BIGCAT OPEN 13:00 / START 14:00
2024年12月22日(日) 水戸市民会館グロービスホール OPEN 16:30 / START 17:30
■MUCC TALK TOUR 2024 「MC」
2024年11月24日(日) 名古屋ボトムライン OPEN 17:45 / START 18:30
2024年12月1日(日) 大阪BIGCAT OPEN 17:30 / START 18:30
チケット等詳細:https://55-69.com/live