エンガブがあなたと一緒に踊りたい、豪華絢爛ダンスミュージック。
ENVii GABRIELLA(エンガブ)が、メジャー2ndフルアルバム『ENGABALL』を4月16日にリリース。ゲイ・オネェというアイデンティティを根底に持ち、2021年にメジャーデビューを果たしたエンガブ。今作は3人の音楽性の原点である「ダンス」に立ち返り、様々なジャンルのダンスミュージックを詰め込んだ豪華な作品となった。インタビューではTakassy、HIDEKiSM、Kamusの3人に、華やかなMVの撮影の裏側やレコーディングの思い出を語ってもらった。
■今作『ENGABALL』を通して聴いた第一印象は「豪華絢爛古今東西ダンスミュージック大百科」という感じでした。
Takassy すごい!そのタイトルにすればよかった。(笑)
■いや、本当に全曲カッコよかったです。めちゃめちゃ堅実で真面目な作りだなと思いました。
Takassy 真面目と言えば私、アルバムがリリースされてから改めて今作を自分で聴いてみたんですよ。改めて聴いてみたら、確かに「堅実」という言葉が合うのかもしれません。派手なんですけど、いろいろそぎ落として作ったんです。邪念をそぎ落としたというか。最近の音楽シーンを批判するつもりは全く無いんですけど、最近の音楽はすごく難解で難しくなっていっているじゃないですか。
■確かに難しくなっていますよね。
Takassy どんどん楽曲のアレンジも難しくなっていて、歌詞も難解になっていたりするし。そういうものが流行っている中で、その逆を突き詰めたアルバムなんです。「ダンスミュージックと言ったらココだよね」みたいな。ルーツになっているわかりやすいリズムパターンを使って、冒頭には歌詞が分かりやすい曲を持ってきて。そう考えると、やっぱり堅実に、ベーシックに戻って行ったような感じのアルバムになったなと思います。
■そういうところでは、“Unloved”なんてすごく古いロックサウンドをそぎ落とした感じがしますね。初めて聴いた時、まさに楽曲解説の通り「ストリップ劇場で流れている曲だな」と思いました。
Takassy わー!そのまんまだ。(笑) イメージ的にアングラな薄暗いところでセッションしている感じで作りました。もう「まさにそれ!」という感じです。
■収録曲の中でも特にすごくそぎ落としていますよね、この曲は。
Takassy そうですね。私がアレンジしたわけじゃないんですけど、トラック数も少なくなっています。最初に送られてきた時のアレンジでは、結構シンセの音が鳴っていてキラキラしていたんですが、「ちょっとベースの生の方を上げて」「これは消して」みたいに言って、すっごいシンプルにしてもらいました。
■そして今回のアルバムのテーマは「ダンス」とのことですが、悪い意味では無く、今更感というか、なんというか……。
Takassy 私たちの曲はそもそも全部ダンス系ですからね。(笑)
■そうなんです。だから何故、今回はダンスをテーマにしたのかが気になって。
Takassy 今までは私たちにとって気持ちいいダンスだったり、私たちが見せたいダンスのジャンルをやってきて、それこそ流行りを取り入れた曲も入れていたんですが、今回は完全に「聴いてくださる方と一緒にノれるようなダンス」を意識しました。「一緒にダンスをしたい」という意味でのダンストラックが詰まっています。
■なるほど。そういうことなんですね。VANITYMIX的には、グループ会社が経営するナイトクラブ・V2 TOKYOで、アルバムのジャケット撮影と“サイコダンス”のMVが撮影されたことに触れないわけにはいきません。
Takassy そうなんです。本当はアーティスト写真とジャケットの撮影がメインだったんですけど、勢い余って「動画も撮っちゃえ」みたいな感じで撮ったんですよ。(笑)
■えっ?!そんな感じで撮影されていたんですね。
Takassy そうなんですよ。(笑) 写真撮影はロッカールームからトイレまで、余すことなく全部のフロアを使わせていただきました。そのおかげで一か所で撮ったとは思えないくらい、ストーリー性のある写真になっていると思います。
Kamus 階段とかもすごく味がありましたね。
■撮影はいかがでしたか?
HIDEKiSM 最初に「ジャケット写真をここで撮ります」ということになったんですけど、もうその時点でミラーボールやらシャンパンが並び、ザ・きらびやかで。ディスコを象徴する雰囲気の写真になり、めちゃくちゃ沸きました。ミラーボールが映っている時点で、音が聴こえてくるようなジャケット写真に仕上がったので、すごくわかりやすい表現方法になったと思います。
Takassy 今回のコンセプトにはミラーボールが絶対に必要だったので、「どうしてもミラーボールをいっぱい使いたい」と言ったら、スタッフさんが「わかりました、持っていきます」みたいな感じでした。(笑)
■ちなみに“サイコダンス”のMVの撮影日は、HIDEKiSMさんのお誕生日当日で、サプライズでお祝いもされたんですよね?
HIDEKiSM そうです!クラブのVIP席みたいなところで、とっても華やかなお祝いをしていただきました。お祝いしてもらっている写真に「ザ・パーティー」な感じの雰囲気が出ていて、今作には“誕生誕生Birthday”という曲があるくらいなので、その時の写真を歌詞カードにも載せています。そこも楽しんでいただけたら嬉しいです。
■サプライズは大成功でしたか?
Kamus めちゃくちゃ楽しそうでした。(笑)
HIDEKiSM 私も嬉しかったですし、「Happy Birthday HIDEKiSM」と書かれたケーキの写真が歌詞カードにも載ったことで、すごく思い出のアルバムになった気がします。
■いつか見返して「あの時は誕生日だったなぁ」と思う日が来るかもしれませんね。ダンスもとても印象的だったのですが、あれは何というダンスなのでしょうか?
Kamus ウチらは「お化けダンス」と呼んだりしています。サビの頭にお化けみたいな仕草をやっているので。(笑) コンセプト的には、今はやっぱりSNS社会みたいなところがあるので、SNSで流行って、みんなで踊ってもらえる感じの振り付けにしています。ちょっと難しいようにも見えるけど、練習すればダンス経験がない人たちでも踊れる振り付けにしてもらって。今も私たちのファンの方が、年齢も男女も関係なくダンス動画をネットに上げてくださっていて。そのぐらいみなさんにも浸透してくださっている曲になるので、ここからもうちょっとバズってくれたら嬉しいです。(笑)
■様々な方にみなさんの言葉や音楽が届いていることは素敵ですね。まず1曲目の“Love is Always Light of My Life”ですが、楽曲解説に「10回ぐらい書き直して時間がかかった」とあるのですが、曲的にはすごく素直じゃないですか。どんな所に迷ったのでしょうか?
Takassy なんででしょうね……。シンプルなメロディほど難しいんですよ。ちょっとでも「なんかしっくりこないな」と思っちゃうと、その曲はずっと聴き続けたくはなくなるし、口ずさめないよね、というのがあって。初めに作ったものはキャッチーではあったんですけど、私はちょっと難解なメロディを付ける癖があるので、これだとまだキャッチーじゃないなと思い、できる限り今までのエンガブよりもポピュラーなメロディラインにしたいと思って、試行錯誤を続けたら10回も書き直しちゃっていましたね。
■なるほど。そういうことだったんですね。
Takassy コードもいろいろ変えて……頭にはふわっとイメージがあるのに、どうしても形にならない所があったんです。それで作ってみて、「なんだかちょっと暗いな」とか、「切なすぎるな」とか、「明るすぎてもダメだな」とか思って。このディスコというジャンルは難しいから、明るすぎるとダサくなっちゃうんです。なので、絶妙な泣きのコードもありつつ、暗くなりすぎない所に落ち着かせるのにすごく時間がかかりました。
■そして続いては“誕生誕生Birthday”です。すごく好きなんですけど、テンポが一定じゃないことが気になりました。
Takassy もともと“豪華ネェサン”という曲をあのリズムでやっていたので、原点に戻るつもりでこのノリを使いたい所もあったんですけど、そのままやっていくと割とシンプルな曲になってしまって。この曲をリード曲にするのが決まっていたから、ちょっと仕掛けを作りたいなと思い、サビで少しテンポを落としてビッグバンドが入るようなアレンジにしました。
■この曲もMVがド派手でしたが、映像としてのテーマはあるんですか?
Takassy 「派手」です。(笑) 今回は最初に私がジャケットや衣装の案を二人にプレゼンしたんですけど、衣装の参考にしたのが、60年代・70年代のディスコシーンのスタイルだったんです。それで今回はベルボトムっぽい感じの衣装になって、全体的にそういった時代をオマージュしつつ、「誕生日感」が出るようにとオーダーしました。結局私たちのMVは毎回派手になりますね。(笑)
HIDEKiSM やっぱり“豪華ネェサン”が大きかったのか、「派手で明るい」というところを求めていただいている感じがしますね。
■“利害一致”のギターサウンドや、“Divalicious”のオリエンタル感になみなみならぬこだわりを感じたのですが、「自分たちらしいサウンドとは何か」を決めていますか?
Takassy それはあえて決めていないです。それをやっちゃうと、あんまり意味がなくなっちゃうと思っているので。一時期は迷ったこともあったんですよ。特にダンス系のグループだと、「自分たちはこの色です」ということを提示した方がわかりやすいじゃないですか。そのジャンルが好きな人も入ってきやすいですし。ただ、私たちはあえて大枠で「ポップス」や「ダンスミュージック」というのでやっているので、逆に「前回やったのと似たものを省く」という作り方をしています。
■そうなると、次作を作るのが結構難しくならないですか?
Takassy いやいや、世界にはまだまだこれでもかってくらい、いっぱいジャンルがあるので心配ないです。(笑)
■このアルバムは聴いててすごく耳が気持ち良かったです。
Takassy ありがとうございます。そういう意味ではサウンドにはこだわったかもしれないです。耳が痛くないようにしたいというか、疲れないような感じで、良い意味でのイージーリスニングができるアルバムにしたいなという。海外だと『NOW』という、ヒット曲を無造作に入れたコンピレーションアルバムがあるんですけど、今回はそれのエンガブ版を作りたいなと思って。なので、曲の並び順もそんなに迷わず「もう、こうだよね」みたいな感じで入れていきましたね。
■それでは、「やらないようにしていること」はありますか?
Kamus 私は一度「こうでなきゃいけない」と決めたら、そう在り続けるマインドでやってきたつもりなんですけど、最近はそういうのをあえて無くしてしまった方がいいんじゃないかな?と思うようになりました。うちらは3人いるから、3人合わせて柔軟になったという面はあるかな。そういう意味で、私は「否定」をしないように意識するようになりました。
Takassy 私は「キャラクター」というものを崩さないようにしてるというか、そこから派生して「これはOK」という絶妙な外枠があり、そこから大きく逸脱しないようにはしています。「エンガブのTakassy」というキャラクターの喋り方だったり、発言内容だったり、見た目だったり、衣装だったり。そういうのが大きくキャラクターから逸脱しないようにしていますね。曲に関してはタブーは設けていないです。その時の感覚で、ちょっとでも「ダサい」と思ったら、それはもう作らないと決めているぐらいです。
HIDEKiSM 私もタブーはあんまり無いですけど、強いて言うなら「髪を切らない」ことですね。金髪・長髪・短髪みたいな感じでやっているのは、多くの人にエンガブを知ってもらいたいからです。その想いの方が、髪を切りたいというマインドよりも優先されていますね。髪を乾かしながら「マジ邪魔だわ」と思いつつも、そこはエンガブにベットしている部分です。まだまだエンガブを知らない方たちも多いから、驕らないというか、「人生賭けてやっているんだぞ」という想いがそれぞれの髪形にも表れていると思います。