erica VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

ウェディングソングだけど、誰を想ってもいい。いくつもの愛を描いたericaの温かい新曲。

シンガーソングライターのericaが『あなたに捧ぐ33のこと』を配信リリース。告白や失恋を題材にした「告うた」を歌い続け、SNSでも共感を集めているerica。今作はそれまでの恋愛ソングとは少し雰囲気を変えたウェディングソングでありながら、様々な愛を描いた多くの人に響くであろう楽曲になっている。
彼女のYouTubeのコメント欄には日々コメントが増え続け、楽曲の感想だけでなく、恋愛相談や思い出が書き込まれるなど、イレギュラーなコミュニティを形成している。今回はそれを見て思うことや、長い歌手活動での変化など、「告うた」の担い手としての考えも訊きながら、本作の制作やこだわりについてもたっぷりと伺った。

■最近ではYouTubeに“告白10カ条”や“大好きでした”の2022年版も上げられていますが、そこでのコメントは「懐かしい」などの声も多いと思います。ericaさんは長く歌手活動を行っていて感じることはありますか?

erica TikTokから来たとか、最近知ってくれた人とかもいたりするんですよね。既存のファンからすると、「この楽曲って懐かしい」と思うんですけど、新規の人たちって昔の曲でも今の曲みたいに普通に聴いてくれていたりとかするんです。“告白10カ条”は、もう6年前とかにリリースしているんですけど、「今年一番バズっているんじゃないかな?」っていうくらい、中高生に聴いてもらっているし。SNSが多様になって、今まで聴くツールがCDだったものが、LINE MUSICとかSpotifyのストリーミングとか、YouTubeとかTikTokでも聴けるようになって、それぞれの媒体ごとに性質が違うから、すごい面白いなって思いますね。

■6年前の曲が今の中高生にも共感されて人気を得るっていう、色褪せなさもすごいですよね。

erica 嬉しいですよね。誰かがTikTokで踊ってくれて、その動画で知ったっていう人も多くて。ありがたいです。

■2022年版の歌唱動画に限らず、ericaさんのYouTubeのコメント欄が、みんなで恋愛エピソードを話す掲示板みたいになっていて、それも面白いなと思いました。

erica YouTube特有ですよね。私の曲をBGMにして、それを聴きながら自分の思いを綴るっていう感じなんでしょうね。だから毎日ずっと再生回数が落ちないんですよ。1人の人が何回もコメントしたりしているから、自分の今日の気持ちとか、日記みたいな感じで書いてるんだろうなって思います。恋している時って、友達も飽きるくらい同じ相談をしたりするじゃないですか。そういう人たちがそこに書いているんじゃないかなって思うんですよね。たまに私もコメントに返信するんですけど、それは無視されるんです……。(笑) だから私は本当にBGMなんだなって。(笑)

■そのコメントが歌詞の題材になったりすることもあるんですか?

erica ありますね。ちょっと前まではお手紙をいただくことが多かったんですけど、今は結構インスタのDMとかで相談が来ることが多くて。そこでのエピソードから作ったりもします。

■手紙からDMという変化に伴って、少しずつ内容の変化も感じたりしますか?

erica 内容の変化とかは全然ないんです。どの世代だって全く同じですね。大体「勇気がなくて告白できない」とか「失恋してつらい」、「振り向いてもらいたい」とか、同じような感じの悩みなんです。変わったといえば、「インスタで好きな人を見つけてメッセージを送ったんだけど、返信してくれない」とか、そういうコミュニケーションを取る内容がちょっとデジタルチックになった感じはありますね。まだ会ってもいない人を好きになっちゃう的な。そういうのはたまにあります。

■でも根本的なところは変わらない?

erica そうなんですよ。だから恋に年齢とか関係ないなって思います。中学生も高校生も、OLも30歳過ぎても、50歳になっても、みんな同じことで悩んでる。恋って世界共通なんだなっていうか、年齢なんか関係ないんだなっていうのは思いますね。自分的にも「どういう歌をこれから歌っていこうかな…」とか、いろいろと考えていた時期もあったんですけど、「今のままでも大丈夫かな」って思うくらい、どの層もちゃんと傷ついたり、ちゃんとドキドキしていて、みんな同じなんだなって思います。結婚したり、恋愛とはまた違うベクトルにいっている人たちもいるとは思うんですけどね。

■メッセージをくれる年齢層も幅広いんですか?

erica 幅広いですね。あと恋愛じゃない相談も結構多くきます。「子供が難病なんです」とか、そういう長い文章とかも来たりしていて。それも中学生とか高校生の時に私を知った人たちが恋愛して、結婚して、子供が生まれて、みたいな。私と一緒に歩んでいる感がすごくあって。この13年間を「一緒に歩んできたな」っていうのをすごく感じるんですよね。みんなと一緒に成長してきたというか。

■リスナーたちの成長も感じて、書く歌詞や思いの変化ってありますか?

erica それは昔から一貫しているんですけど、恋の歌を歌っている中にも必ず自分自身のこととか、「自分と向き合うことの大切さ」みたいな歌詞も入れるようにしているんです。「自分が好きな自分になろうよ」とか、「相手を責めるだけじゃなくて、自分自身に向き合ってみよう」とか、そういうテーマは自分の中であって。それは最初の頃からあるんですけど、最近は更に強くなっているかもしれないです。

■今回の新曲“あなたに捧ぐ33のこと”は、「告うた」ではなくウェディングソングなんですよね?

erica 実はウェディングソングを作るのは2回目なんです。1回目はタイアップ曲だったので、結構しっかりとしたウェディングソングとして作らせてもらったんですけど、今回は1番だけ聴くと恋愛ソングにも思ってもらえるような作り方をしていて。どんな人が聴いても絶対に一度は経験している箇所があるようにしたかったんですよね。出会って、恋に落ちて、喧嘩して、付き合って、それが段々と恋から愛に変わっていって、愛が家族になっていくっていう時系列で、33個のことをまとめています。今恋している人も、結婚したいって思っている人にも聴いてもらえたらいいなって。

■では最初はウェディングソングというよりも、出会ってから結婚やその先までという過程を書こうとして作り始めた曲だったんですか?

erica わざとそうしようと思ったというよりは、結構自然と出てきたんですよね。自分の中でなんとなく順番を書いていったら、そういう感じになったっていう。

■ちなみに33という数字にはなにか理由が?

erica これって最初は100個くらいあったんですよ。でも「100個くらいある曲は聴いてるうちに眠くなっちゃうよ」って言われて。(笑) それでその中から厳選された33個なんです。「33」って数字は縁起がいいらしいっていうのを知って、じゃあ33個にしようと。33個でもくどいかなって思ったので、ちょっとリズムを早くして。(笑) だから結構すっとした感じに聴ける印象があるんじゃないかな?2分半くらいでしたっけ?

■曲の長さは3分半ですね。

erica あれ?そんなにあったか。(笑) あと、今回は声を張っていないんですよ。かなりウィスパーボイスで歌っていて。今まではキーもすごい高くて、声を張りあげることが多かったんですけど、今回は1回も張り上げないで、本当に小さな声で歌ったので、それは初挑戦だったかもしれないです。

■それにはどういう意図が?

erica 柔らかい幸せな雰囲気を出したくて。いろんなパターンを録ったんですけど、高いところも裏声にしたりしましたね。超難しかったです。張っている声の方が得意だから。(笑)

■「くどくなりそう」という言葉もありましたが、すごく曲にするのが難しそうだなと感じました。

erica 難しかったですね。プロデューサーのnaoさんと一緒に作ったんですけど、「語尾をなにかに縛りたいよね」っていうのは最初に言っていて。“告白10カ条”ではナンバリングしましたし、多分私たちが一緒に曲を作ると、なにか縛りを設けたくなるんですよ。(笑) それぞれで作る時は自由に作るんですけどね。

■そういうアイデアはどちらから出すことが多いんですか?

erica naoさんですね。でも縛りの内容に関しては決めていいよって言われたので、今回は「こと」縛りにしてみました。

■最初は100個だったものを3分の1にまで、どのように減らしていったんですか?

erica ここに残っているのって、結構おおまかな内容だと思うんですよ。「共に歩んでいくこと」とか「助け合っていくこと」とか。100個書いていた中では細かいのも多くて、「一緒に寝ること」とか、もっと細かいやつだと、「ただいまと言うこと」とか。約束事みたいな、義務的なルールみたいなのも入っちゃっていたので、どんどん増えていっちゃったんですよね。(笑) だから続編作ったらどんどんできますよ、これ。でも「あなたに捧ぐ」じゃなくなっちゃいますね。「あなたに望む」とかになっちゃうかもしれない。(笑)