GARNiDELiA VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

芸事と向き合う思いを反映した“幻愛遊戯”、「踊っちゃってみた」集大成の“謳歌爛漫”で2022年のその先へ。

先日、結成12周年を記念するファンクラブ限定公演を終えたばかりのGARNiDELiA。彼らが9月30日にリリースする新曲『幻愛遊戯』は、TVアニメ「うちの師匠はしっぽがない」オープニングテーマだ。ガルニデらしい大人っぽさとアニメの可愛らしさを掛け合わせ、色気ある歌い方とキュートな言葉選びが同居した作品となっている。「うちの師匠は~」は落語を極める主人公とその師匠や仲間を描くアニメだが、芸事という意味では彼らもGARNiDELiAとして12年、そしてそれ以前のソロ活動等を含めると更に長い時間、音楽や歌に携わり続けている。そんな二人にとって、アニメで描かれる芸事を極める思いや苦悩は、ずっと向き合ってきたテーマでもあるだろう。今回のインタビューでは楽曲の制作背景、そういった芸事を続けることについての想いについても触れた他、10月にリリースされる「踊っちゃってみた」シリーズの新曲『謳歌爛漫』に込めた想いについて、そして12月に行われるライブについても、MARiAとtoku二人にたっぷりと話を訊いた。

■お二人は先日結成12周年ライブを終えたばかりですが、いかがでしたか?

MARiA 今回はリクエストライブみたいな感じで、みんなからリクエストをもらってセットリストを作ったんですけど、意外な結果になりましたね。

toku 結構今回はみんなノリのいい曲を選ぶ傾向を感じられて、ライブがあんまり無かった分そういうテイストが欲しかったのかなと。

MARiA 今までリクエスト曲をやると結構バラード系が人気だったんですけどね。今回は「テンション上げていきたい」みたいな雰囲気が見えました。結果を見て本当に面白かったな。

■毎年着実に周年を迎えるわけですが、今年ならではの思いはありましたか?

toku 10周年以降、MARiAはソロであったり舞台とかで新しいことをやっているし、僕もソロもやらせてもらったし、楽曲提供も引き続きやっていて。今までの10年間で「こうやったら上手くいくよね」みたいな、僕らの作り方みたいなものが確立できたタイミングなので、「ここからもっと新しいもの作っていくにはどうしたらいいかな」みたいなことを徐々に発表できてくるんだろうなという感じが、最近はあるのかなって思います。

MARiA そうですね。新しい活動はかなり増えたからね。今回の“幻愛遊戯”もそうですけど、テイスト的には「踊っちゃってみた」に通じる部分はあるんだけど、「ちょっと新しい私たちの形が見え始めているのかな」みたいなのはすごくあって。今までのGARNiDELiAの形を引き継ぎつつ、更に新しいGARNiDELiAも見えてくるのが、この先の10年だと思うんですよ。今はその序章みたいな感じです。できればまたここから10年やっていくためにね。(笑) だから、これからの10年へのプロローグが始まったみたいな感じです。

■今作“幻愛遊戯”が主題歌を担当するアニメ「うちの師匠はしっぽがない」は、昨年リリースの“オトメの心得”が主題歌を務めた「大正オトメ御伽話」に続き、大正時代が舞台ということですが、舞台設定が似ているからこそ前回の経験を活かし、挑戦できたことなどはありましたか?

MARiA 今回のオーダーが、“オトメの心得”に対してのオーダーとすごく近しいものがあって。

toku 参考楽曲も“オトメ〜”だったよね。(笑)

MARiA そうそう。「自分たちの曲じゃん!」みたいな感じになって。(笑) 「ちょっとレトロでビッグバンド的な感じで、派手でオープニング感ある華やかな感じにしてください」という提案だったので、自分たちの中で“オトメの心得”とは全く違う感じにしたかったんです。なので、“オトメの心得”が昼の太陽みたいな感じだったら、“幻愛遊戯”はちょっとギラついた夜の世界を表現しようと思って。あと今回のアニメの原作は、キャラクターはポップで可愛いんだけど芸事を極めていくっていう結構硬派でストイックな内容だったので、キャラクターの言っているセリフとかも「芸事をやっている人間は正気じゃない」とかって言っていて。そういうのも歌詞の中に入れています。「末路の哀れは覚悟しているわ」っていう歌詞も、キャラクターが言ってるセリフを引用したりとか、結構シビアな芸事の裏側を切り取ってリアルに描いている作品だなと思っています。

■サウンドも夜というキーワードから考えていったんですか?

toku そうですね。“オトメの心得”に関してはメジャーな明るい感じで書いているんですけど、こっちは夜だからマイナーキーで書いてみました。でも結局入ってくる楽器はトランペットだったりとかがアレンジが似てくる分、「フレーズで変化つけてみては」とテンポが早くてパッセージがすごいフレーズを入れてみました。「中々これを演奏できる人たちは少ないんじゃなかろうか」って思ったんですが、不可能を可能にするプレイヤーの方たちと出会えたので、その方たちにやっていただいて。ブラスのキレの良さとかは自分の目指したところにできたので、「レコーディングが楽しかったな」っていう感じです。

■芸事に対してストイックという言葉もありましたが、原作の印象はいかがでしたか?

MARiA めちゃくちゃ面白かったです。落語を知っていても知らなくても面白い内容で、「本当に芸をどう極めていくか」みたいなところがテーマになっている作品でしたね。

toku 表では一生懸命明るい感じでも裏では葛藤していたり、ステージに上がる人じゃなくても感じるようなリアルな部分がすごく描かれているなって思います。絵が可愛いことが救いになっていますよね。

MARiA 結構リアルなこと言っているもんね。

■落語と音楽、どちらも芸事ということで、ミュージシャンとして活動されている身として共感された点などもありましたか?

MARiA そうですね。もう12年GARNiDELiAでやっていて、芸事として私は20年くらい歌をやっているけど、「正気じゃないな」とは思う。(笑) 「こんなに大変なことよくやってるわー」って思いますもん。しかもこんな正解のない、生きていけるのかも分からないみたいな世界でよくやってこれたねって。何が当たるかも分からないし、何がみんなにいいって認められるかも分からないのに。

toku それこそさっきリクエスト曲の話をしましたけど、「この曲がくると思わなかった」とかね。やっぱり予想がつかないことが多いなと。

MARiA そうなんですよ。曲を出す度に賛否両論があって、だから全員に好かれるのは無理な世界ではあるし、正解もないから。そんなところをずっと生き続けるメンタルも「正気じゃないよね」って思う。(笑)

■歌詞は夜のイメージがあるからか、色気もある感じですね。

MARiA 攻めのMARiAですよね。(笑) でもこの曲は恋愛には例えているんだけど、例えば「うちの師匠はしっぽがない」に関しては、落語に恋した主人公が落語を極めていくし、私で言うと、歌に恋して歌とステージの魅力に取りつかれてずっとステージに立ち続けているわけで。好きが高じた芸事って続いていくと思うんですよね。好きじゃなかったら絶対無理な世界だと思うから。そういうところを恋愛とリンクさせて書けるなっていうのがポイントのひとつだったんです。あとはお客さんが私たちに恋するみたいな、好きっていう感情を持ってくれて、ずっと愛し続けてくれている。ファンの人たちから見るとそういう捉え方もできるので、このアニメ作品に沿ったものとしては、芸事に対して演じる側の気持ちを書いたものだし、でも普通に恋愛の曲としても聴けるようなダブルミーニングの歌詞にして作りました。

■歌い方の可愛らしさと色気のバランスもすごくいいなと感じました。

MARiA 今回はあえて“色”をつけて歌ったんですよね。演じるっていうところにテーマを置いていたので、あえてあざとく歌ったりとかもしていて。素で歌うというよりかは、わざとキャラ付けをして歌っています。

■MARiAさんは昨年と今年にソロアルバムをリリースして、GARNiDELiAとは別の歌い方にも挑戦したと思います。ソロ活動で培ったものが活きた感覚もありましたか?

MARiA 『うたものがたり』から『Moments』があって、「歌唱の幅はかなり広がっているな」とは思うから、声色の使い分けとかはかなり引き出しが増えたなって思います。声色とか色づけみたいなのが狙った通りに出せるようになっているというか。だから楽しいですね。客観的に「まだまだいろんな私がいるのね」っていう。

toku 作詞の内容とかストーリーに関しては、組み立てがすごくリアルになってきているなと思います。今回は “幻愛遊戯”にしても“謳歌爛漫”にしても、ファンタジーな曲なんだけど、リアルさが同居できるような歌い回しだったりとか、そういうのがすごくいいバランスになったと思っていて。ファンタジー過ぎず、リアル過ぎず、両方の声色を上手く使って歌い上げることが出来ていて。前は僕から「こういう風にやってみてよ」っていう提案もあったんですけど、別に今は何も言わなくても素で出てくるみたいな感じになっていて、ラクですね。(笑)

MARiA (笑) でもメロに対しての言葉の選び方はマジで極めて来たと思う、最近。

toku うん。それは思う!

MARiA だよね。それで文句言われることはなくなりました。(笑) 今までは「ここはもうちょっとこうして」みたいなのがあって、バトっていることもあったんですけどね。何も言われない言葉のチョイスをしつつ、自分の気持ちをしっかり入れられる言葉の選び方を見つけてきました。

toku それはあるね。

MARiA この曲で言うと、「サビ終わりのキメのところにどんな言葉を入れるかっていうのにかかっているぞ」っていうプレッシャーを感じるメロディが来て。アニメのタイトルが「うちの師匠はしっぽがない」だから、「尻尾」っていう言葉を絶対に入れたかったんですよ。昭和とかのアニメの主題歌とかって、タイトルとかそれにかけた歌詞があえて入っていたりするじゃないですか。「キューティーハニー」だったら「ハニーフラッシュ」とか、キメ台詞的な感じのものを入れたくて。「尻尾」ってどうやって入れるかをすごい悩んでいて。「尻尾」って単語自体は可愛いけど、「可愛い曲にはしたくないから、どうしよう……」って思って。「尻尾って掴ませないとかって書けるよな」みたいな。それで「ワタシのしっぽは掴ませない♡」で、「メロディにぴったりはまった!」と思って。いつもはAメロ、Bメロ、Cメロっていう順番に書いていくスタイルなんですけど、今回の歌詞はこのサビの最後の行を決めてから組み立てて書いたんです。なので、この1行が決まって「きたー!」と思いました。

■そうだったんですね。「自分に嘘をついて生きていたくない」や、「真実のことかどうかなんて大して重要なことじゃない」という歌詞など、嘘と本当っていうのもテーマのひとつなのかな?と感じたんですが。

MARiA ステージに立っている人間って、ステージを降りたら、もしかしたら全然違う人間かもしれないじゃないですか。でも見ているみんなにとっては本当のことはどうでもよくて。みんながその目や耳で見ているアーティストが本物なわけで、「それを掴ませないよっていうことも、芸事の世界では大事だったりしてくるのかな」みたいな。プライベートは別にどうでもよくて、ステージに立っている私たちを愛してくれればそれでいいから。そういうのがまた芸の世界の面白いところでもあり、ちょっと毒っぽいところでもあり、その面白さを入れたくて書いているんですよね。でもそこに夢を抱いて欲しいとか、キラキラしている世界を楽しんで欲しい気持ちって本物じゃないですか。それは嘘じゃないんですよね。

toku うん。

MARiA 言っているセリフは本当には思っていないことかもしれなくても、みんなに楽しんで欲しいっていう気持ちはうちらも本物だから。それがリンクする場所がライブステージだったりするっていうことなんじゃないかなっていうのはすごくあって。お芝居の世界とかもまさにそうだと思うんですけど。うちらはあんまりそういうことはないんですけど、やっぱり泣きたい時でも笑ってステージに立たないといけない時とかもあって、それが多分芸事の厳しい世界だっていう理由でもあるから。それは嘘とはまた違うんだけど、みんなに楽しんでもらうことに命をかけている人たちが、やっぱりアーティストであり、演者であり、芸の道だと思うんです。そこはこの歌詞で上手く伝えられたんじゃないかなと思っています。