GARNiDELiA VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

楽曲をカバーすることを通して感じた、歌の奥深さ。

GARNiDELiAがカバーアルバム『GARNiDELiA COVER COLLECTiON』をリリース。“春よ、来い”、“白い恋人達”から、“白日”、“Pretender”まで、新旧の名曲をGARNiDELiAの音色でカバーした今作。MARiAの歌声と、tokuのサウンドで新たな表情を見せる名曲を余すことなく楽しむことができる。
本インタビューでは、GARNiDELiAのMARiA、tokuの2人に楽曲をカバーする中で感じたことや、収録曲に込めた思いなどをたっぷりと訊いた。

■先日約3年ぶりの声出し可能なライブが行われましたが、いかがでしたか?

MARiA やっぱりたまらないなと。3年も声が聞けていない状態だったので、「やっと戻ってきた!」という気持ちもありつつ、新鮮に思えました。「ここに来るまで諦めなくてよかった」とも思ったし。活動を続けることさえ大変な状況だったので、シンプルにすごく嬉しかったです。とにかく感動しました。

■お客さんの熱量もすごかったですよね。

MARiA みんな同じ気持ちだったんだろうなって。みんなのパワーってすごいなと思ったのが、2時間半くらいのライブが終わっても全く疲れなかったんです。コール&レスポンスがある曲を全部詰め込んだみたいなセトリになっていて、リハの時も後半は結構しんどかったし、「本番大丈夫かな……?」と思っていたんですけど、全く疲れなくて。この3年間ずっと自分たちから発信したものをみんなに受け止めてもらう形だったのがパワーになって返ってきて、これだけみんなの力ってすごいんだなと実感したライブでしたね。あまりに楽しすぎて、もう1公演できるな、みたいな。(笑) 

toku 演者としても、歓声がない頃のライブの時は、曲と曲の間の途切れた感じに戸惑いを感じていたんです。お客さんからの反応があって僕らもそれに返せるのがライブなんだなと思いましたし、改めてやっていてよかったなとも思いました。本当にここ数年は「こういうライブでいいんだっけ……?」みたいなことがずっと引っかかっていたので、再開できて本当によかったなと思います。

■そして今作はカバーアルバムのリリースですが、今までYouTubeなどで公開してきたカバー曲を含めたカバーアルバムを作るきっかけはあったんですか?

MARiA 曲も溜まってきましたし、せっかくならアルバムにしたい!という感じでした。お客さんからも「ぜひアルバムにして欲しい」という声も上がっていましたし。

toku 最近はCDではなく、配信でリリースすることが主流だと思いますが、盤になるってやっぱりいいなと思いますよね。

MARiA うん。ちゃんと形になるっていいよね。

■収録曲には“白日”や“別の人の彼女になったよ”など、比較的最近の新しい曲もあれば、“白い恋人達”や“飾りじゃ無いのよ涙は”などの80年代や90年代の名曲もあります。内容については時代のバランスなども考えていたんですか?

MARiA どれも元々好きな曲ではあったんですが、時代や流行というよりは、自分の声にハマりそうな曲から選んでいきましたね。

toku あとは「原曲の良さが活きつつ、ガルニデがアレンジして新しくなるかどうか」というのもありました。

■どの曲もトラックからはtokuさんらしさが存分に感じられました。

toku でも「やりすぎちゃいけないな」とはすごく思っていたので、そこには気を遣っています。

■確かに突拍子もないアレンジというよりは、音色にガルニデらしさをにじませるという方向性ですよね。

toku なにせ、原曲が強いですし、そこが好きだというのもあるので……。

MARiA 「知らない人はいないんじゃない?」くらいの曲たちだからね。

■特にアレンジで悩んだ曲などはありますか?

toku “春よ、来い”とかかな。アレンジとメロディーも含めて、この曲が完成されているじゃないですか。例えばあのピアノのフレーズは絶対に変えちゃいけないだろうし。なので、ひたすらシンセベースに徹したというか。「ここだけはしっかりやります」みたいな感じでしたね。(笑) 

■“春よ、来い”は、それこそ松任谷由実さんの歌声も含めて曲のイメージがすごく強いと思います。MARiAさんはそれをご自身の声で歌ってみていかがでしたか?

MARiA 逆にあまり考えないようにしました。みんな練習しなくても歌えるくらい有名な曲だし、それくらい身体に沁みついているような曲なので、引っ張られ過ぎないようにしていました。あまりにも存在感が強すぎて、考え過ぎると無意識に寄せていっちゃうから。

toku “フレンズ”とかもそうだったよね。

MARiA そう!意識していなくても耳に残っているんでしょうね。その感じも面白かったです。意識し過ぎず、リスペクトしつつという狭間を彷徨いながら頑張って収録しました。

■“BREAK OUT!”はMARiAさんのイメージにすごく合っていると感じました。

MARiA “春よ、来い”を挙げてから、「往年の名曲をカバーするのもいいよね」という話になったんです。そこから“フレンズ”をやろうという話になったんですけど、そのあたりで相川七瀬さんの曲もハマるだろうという話になって、やるしかないなという感じでした。

■相川七瀬さんの曲の中でも“BREAK OUT!”を選んだ理由はなんだったんですか?

toku 候補にはもちろん、“夢見る少女じゃいられない”もあったんですよ。

MARiA “恋心”とかも悩んでいて。でもガルニデでやる時に、歌だけじゃなくてアレンジとか、サウンド感がハマりそうなものを考えたら、やっぱり“BREAK OUT!”だなと。でも相川さんの曲は本当に悩みましたね。

■“飾りじゃ無いのよ涙は”は、どんな流れで決まったんですか?

toku 「中森明菜さんもやってみよう」みたいな感じだったよね。時代ごとの女性アーティストを入れてみたくて。

MARiA “BREAK OUT!”はアーティストから決まったんですけど、その流れで「明菜ちゃんも絶対ハマるでしょ!」みたいな。自分のキャラ的にも、聖子ちゃんではなく明菜ちゃんだなと思ったりもして。(笑) 

toku あらためて中森明菜さんの曲を見てみると、当時のランキングで1位を取っている曲ばかりで、本当にすごいなと思いましたね。

■すごく力強いアレンジで、聴いて驚きました。

MARiA この曲はいろんな人がカバーしているので、すごくたくさん聴いたんです。

toku カバーをしている他のアーティストさんと歌い方が被らないようにね。

MARiA そう。「みんなどんな感じやっているんだろう?」と思って。それぞれカラーが出ているなと思ったので、私たちはちょっとダンスミュージックっぽい感じにしました。

toku ガルニデの“PASSION”という曲があるんですけど、「そのバックトラックとリミックスをしてみよう」みたいなテーマで考えたアレンジでした。

■一方で、今回収録されている曲は男性ボーカルの曲も多いですよね。

MARiA 私は声が低めなので、男性ボーカルの曲も原キーで歌えたりするんです。それはそれで自分のキャラだなと思っていたので、あえて男性ボーカルの曲も選びました。

toku 元々ガルニデって、ファンタジーっぽい歌詞が多かったんですけど、男性の曲ってすごくファンタジーっぽい内容の歌詞が多いなと思ったんです。そういう意味でも合うかなと。

MARiA きっと男性の方がロマンチックなんでしょうね。(笑)

toku うん。女性の歌詞って割りと現実的なことを書いていたりするんだけど、男の人は結構ファンタジーなんだよなって。

■“別の人の彼女になったよ”は、男性が描いている女性視点の歌詞なので、まさにファンタジーかもしれませんね。

MARiA この歌詞、本当にすごいですよね!「男の人が書いているんだもんなぁ……」と思いますもん。どうやって書いたんだろう?

toku これ、歌にする?(笑) そのくらいすごい歌詞ですよね。

MARiA このカバコレ(『GARNiDELiA COVER COLLECTiON』)をやったことで、すごく歌詞の勉強にもなったんです。人が書いた歌詞をこんなに自分の中に取り込むことも最近はあまりなかったから。その中でも“別の人の彼女になったよ”の歌詞はやっぱりすごいなと。「なんでこんなに細かい情景とか心情を言語化できるんだろう?」と思います。あまりにリアルで、想像で書いたんだったら本当にすごいですよね。普段自分が書く歌詞は、外に向かう感じの歌詞が多いので、内なる感情とか心情をこんなにもリアルに描写できるのってすごいなと尊敬します。

toku 自分では絶対に書かない歌詞だよね。

MARiA そうだね。私だったら失恋とか恋愛の曲を書いても、割り切った感じの強さのある歌詞になると思う。「自分では書けない世界観で面白いな」と思いながら歌っていました。

■そんな歌詞が今回は女性ボーカルで歌われていることで出てくる魅力もあると感じました。

MARiA ありがとうございます。

toku 曲の時代によって、歌詞の内容や書かれ方も全然違っていて、それが感じられるのも面白かったですね。

MARiA 確かに。“廻廻奇譚”と“フレンズ”を同じ日に録っていて。レコーディングの時には歌詞を印刷して目の前に貼るんですけど、“フレンズ”の歌詞はA4の用紙の半分くらいで終わるのに対して“廻廻奇譚”は2枚になっちゃっていて、文字量がすごく多かったんです。“白日”とかも多かったですけどね。今はやっぱり早口というか、詰め込む情報量がすごく多いなと思って、その違いも楽しかったです。もう自由研究みたいな感じでしたね。(笑) サウンドにしても、「このシンセはこの時代によく使われていたな」みたいな。