HALESTORM 『東京公演』ライブレポート@Zepp DiverCity Tokyo

魅惑のハスキーボイスが美しく舞い上がる、至宝のハードロックで過去最大キャパを制覇!

前回の『DOWNLOAD JAPAN 2019』に続き、同年12月に単独来日公演をTSUTAYA O-EAST(東京)で行ったアメリカ発のハードロックバンド、HALESTORM。コロナ禍の22年に5thアルバム『BACK FROM THE DEAD』を発表し、それに伴って通算6回目となる来日公演が実現した。しかも今回は過去最大キャパとなるZepp DiverCity Tokyoでワンマンライブを決行。前回の来日でも壮絶なパフォーマンスでファンの心を捉えたけれど、そこに最新作の出来栄えが追い風となり、会場には大勢の観客が大挙して押し寄せていた。

開演19時過ぎに「コンニチハ、Tokyoー!」と、紅一点のリジー・ヘイル(Vo&Gt)が挨拶。オープナーは新作の表題曲 “Back From The Dead”で始まった。姉リジーの弟であるアージェイ・ヘイル(Dr)のヘイル姉弟を縦軸に、ジョー・ホッティンジャー(G)とジョシュ・スミス(B)が脇をガッチリと固め、芯の太いアンサンブルを豪快に響かせる。その骨太な演奏に埋もれず、リジーは魅惑のハイキーボイスを解き放つ。次の“Love Bites (So Do I)”で演奏は加速し、観客は拳を突き上げてノッている。ドライブ感溢れる曲調に一気にフロアは熱くなった。“Wicked Ways”に移ると、ド頭からリジーは男勝りの野太い声量で魅了。いきなり胸倉を掴まれ、ブン投げられるような衝撃度である。次の“Apocalyptic”では、最前にいた女性客(※LOVESTORMというバンドのヴォーカリスト)をステージに上げ、リジーとまさかのデュエットを披露。こうしたファンサービスにも人柄の良さが溢れ、また、ステージとフロアの距離感をより縮める結果になった。

地を這うグルーヴでじわじわ迫る“Bombshell”、音数を抜いたシンプルさが光る“Amen”と繋ぐ流れも良かった。特に後者ではジョシュによる長尺のギターソロの後、リジーは哀愁漂うブルージーなソロで繋ぎ、最後はツインギターで締め括る。それからメンバー4人がステージ袖に消えると、リジーによるピアノ弾き語りタイムに突入だ。ここでは3曲が披露され、観客がケータイのライトを灯した状態で“Break In”〜“Dear Daughter”、その後に無数のメロイックサインが上がる中で“Raise Your Hornes”を歌い上げ、観客のハートを揺さぶり続ける。改めて「ハスキーボイス」を辞書で引くと、ダミ声、がなり声、しゃがれ声、といろいろ出てくる。彼女の場合はそれが全部当てはまるけれど、「魂の叫び」という形容がしっくり来る透徹したエモーションの発露を感じずにはいられない。ハスキーボイスもクリーンボイスと比肩する煌めきを持ち、どちらの歌声も圧倒的な素晴らしさを誇る。現代の女性ハードロックシンガーでリジーを超えるヴォーカリストはいないのではないか。そう思わせる説得力があった。

そして、ジョーがギターを爪弾き、そこにリジーが歌を乗せて“Familiar Taste OF Poison”を演奏。途中でリズム隊のジョシュとアージェイが加わり、バンド編成で聴かせるアレンジも良かった。その後にアージェイのドラムソロ(※後半、大きなスティックで叩くコミカルなアプローチもあり)を経て、“Freak Like Me”へ。極太グルーヴとリジーの雄叫びに興奮を覚え、ショウはいよいよ佳境を迎えた。「Tokyo,We Love You!」とリジーが発言し、“I Get Off”を披露。

ここでジョシュが鍵盤を弾くパートもあり、エモーショナルな歌唱力を存分に発揮した。ラストは“The Steeple”で幕を閉じると、アンコールでメンバー4人が再びステージに現れて、まずはビールで乾杯。ゴキゲンな表情を浮かべたまま、ここで“Here’s To Us”をプレイ。穏やかな歌メロに観客は手を左右に振り、歌詞の一部をシンガロングする場面もあった。それから“Psycho Crazy”を挟み、最終曲“I Miss The Misery”を投下。観客と盛大にコール&レスポンスを繰り広げ、今日イチの合唱を作り出して大団円を結んだ。

約1時間半に及ぶショウを終え、集まった観客も大満足で帰路についたことだろう。前回以上にステージの魅せ方には工夫を凝らし、緩急のダイナミズムで惹きつけるショウ構成も申し分なかった。コロナ禍により、メンタルヘルスを患ったリジー。闇から光へ、長いトンネルから潜り抜けて作った最新作は、彼女の燃え盛る生命力を陰に陽に表現した傑作であった。そうした感情の起伏や機微を過不足なくアプローチしたライブに、震えるような感動を覚えたのは僕だけではないはずだ。次回の来日公演が早くも楽しみになってきた。

Text:荒金良介
Photo:Jason Stoltzfus

https://wmg.jp/halestorm/

HALESTORM 『東京公演』@Zepp DiverCity Tokyoセットリスト
01. Back From the Dead
02. Love Bites (So Do I)
03. Wicked Ways
04. Apocalyptic
05. Bombshell
06. Amen
07. Break In / Dear Daughter
08. Raise Your Horns
09. Familiar Taste of Poison
10. Drum Solo (Big Sticks)
11. Freak Like Me
12. I Get Off
13. The Steeple

ENCORE
01. Here’s to Us
02. Psycho Crazy
03. I Miss the Misery