AVRIL LAVIGNE『LUVE SUX TOUR2022 JAPAN』ライブレポート@東京ガーデンシアター

8年ぶりの来日公演で見せたカリスマとしての姿。

2度の延期に見舞われたアヴリル・ラヴィーンの来日ツアーがいよいよ開催。8年ぶりの来日公演となる本ツアーは、まさにアヴリルとファンの双方にとって待ちに待った公演であった。本稿ではその東京公演2日目、10日(木)の東京ガーデンシアターでの様子をレポートする。バックバンドの演奏とともにパワフルかつワイルドに、そしてときに柔らかくドラマチックな歌声で歌い上げる彼女は、どの楽曲を歌うにしてもどこかラフな佇まい。序盤から歌いながらステージ前方や端まで移動するなり、手を挙げてコミュニケーションを取ったり、客席でふわふわとバウンドしていた大きなバルーンがステージに来た際には蹴とばして客席に戻すといったしぐさも含め、フレンドリーな姿を見せていた。一方でそんなフレンドリーな姿から滲む力強い芯の通った存在感、ロックサウンドと相性の良いはっきりとした歌声は、彼女のアーティストとしての意思が当然のように滲んでおり、そんな佇まいが終始オーディエンスを魅了していた。

オープニング映像の後半、「Are you ready?」という問いかけだけで会場を湧かせ、その後紗幕に彼女のシルエットを映すというシンプルながらスタイリッシュな開幕に、会場も熱狂に包まれる。“Bite Me”から“What The Hell”、“Complicated”といったキラーチューンの連続で序盤を彩り、フロアには既にクライマックスのような熱がほとばしっていた。タイトでパワフルなロックサウンドやエッジの効いた歌声で会場を湧かせながら、時折マイクをオーディエンスに向けて大合唱を巻き起こす。力強さと柔らかさを同居させながらロマンチックに歌った“My Happy Ending”、アコースティックギターの音色に凛然とした歌声を乗せ壮大な景色を彷彿とさせた“I’m A Mess”と続ける彼女の佇まいはどんな楽曲でもブレることなく、ただただ中心にいるアヴリルの存在感の凄まじさを感じさせる。モッド・サンを迎え披露した、重くラウドなバンドサウンドと共にエネルギーを昂らせた“Flames”でも、彼女はどこかリラックスしたようなしかし強さを感じさせる立ち姿で魅了。ライブ序盤の選曲や、後述する“(Hello Kitty)”から“Girlfriend”の流れは、ポップスの極致を感じさせるキャッチーさと演奏の説得力で圧倒したが、幅広い楽曲の中でもブレることのないアヴリルのアーティストとしてのキャラクターの存在感には感嘆するほかない。

この日の彼女は衣装替えをせずに黒い衣装でシンプルに通していたが、時折ステージから捌ける場面では、バンド隊によるセッションやソロが炸裂した。直前に披露した “Complicated”のメロディーを取り込みながら演奏するソロは、音色の心地よさ、演奏のたくましさやスキルで圧倒。もちろんバンドセッションに限らず、この日の1曲目からそのグルーヴィーな演奏はオーディエンスを昂らせており、バックバンドによって鳴らされる音のひとつひとつが直接感情に訴えかけるような高揚を生み出していた。それがさらに楽器のみの演奏になるとさらに白熱した演奏でオーディエンスを盛り上げる。

ステージ後半、アヴリルがステージから捌けた後、バンドによる“(Hello Kitty)”の演奏の後、再びステージに戻ってきて披露した“Girlfriend”の流れは、この日のハイライトのひとつだっただろう。「k-k-k-kawaii」の歌声を声ネタのように使いながらアレンジを加え、バンドサウンドが奏でた“(Hello Kitty)”では、ステージ後方で流れる映像もこれまでのパンキッシュなものからキュートなハローキティがあしらわれたものに印象を一変。しかしそんなキュートなモチーフと楽曲がパワフルな演奏とともに颯爽とアヴリルのステージに溶け込んでおり、底なしの高揚を生み出していた。その後に続いた自身最大のヒット曲“Girlfriend”ではフロアでもクラップの波が形成され、アヴリルも「みんな最高!」と日本語で呼びかける。ロックとして、ポップスとして完成度の高い楽曲、高らかな演奏、彼女の凛とした佇まい。ポップスの極致がここにあったといっても過言ではないだろう。

“Sk8er Boi”で終了したベスト盤のようなセットリストの本編。アンコールでは雄大な自然風景の映像を背景に、“Head Above Water”、“I’m With You”とバラードを2曲披露。シンガロングを求めながら壮大に披露し、会場は柔らかい希望に満ちた。そして最後には、“Here’s To Never Growing Up”で大団円。ステージ後方には花火のアニメーションも映し出されていたが、祭りの終わりが近いゆえのエモーショナルな高揚も加わり、それまでの熱狂とはまた異なるどこか切なさを含んだ熱を演出した。オーディエンスの大合唱とともに、1時間強のステージの幕は閉じた。

アヴリルの力強くもフレンドリーな佇まいと次々と披露されるキラーチューンからは、彼女がデビュー以来長く世界のトップとして君臨しているがゆえの貫禄が漂っていた。パワーに満ち溢れたステージで日本のファンと愛を交わした圧巻の公演であった。

Text:村上麗奈
Photo:KAZUMICHI KOKEI

https://www.sonymusic.co.jp/artist/avrillavigne/

『LUVE SUX TOUR2022 JAPAN』@東京ガーデンシアター 11月10日(木)セットリスト
01. Bite Me
02. What The Hell
03. Complicated
04. My Happy Ending
05. I’m A Mess
06. Losing Grip
07. Flames(with Mod Sun)
08. Love It When You Hate Me
09. (Hello Kitty)
10. Girlfriend
11. Bois Lie
12. Sk8er Boi

ENCORE
01. Head Above Water
02. I’m With You
03. Here’s To Never Growing Up