柏木ひなた VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

「みなさんに喜んでもらえるものをどれだけ作れるか」ということをたくさん考えた1年。

柏木ひなたがソロとして初のアルバム『1/24』をリリース。アルバムタイトルには、24歳の誕生日である2023年3月29日にソロデビューを発表し、「24年間生きてきた中でソロアーティストとして駆け抜けた1年間を詰め込んだ作品」という意味が込められている。今作にはエビ中時代からソロデビュー後も交流のある川谷絵音が作詞・作曲・編曲を手がける“踊りましょ”や、Galileo Galileiの尾崎雄貴が作詞を手がける“19”など、新曲5曲を含む全15曲を収録。今回はソロアーティストとして駆け抜けた1年間を振り返ってもらい、今作アルバムの制作についてなどいろいろと話を訊いた。

■前回取材したのがちょうどソロデビューのタイミングでしたが、デビュー後の反響はいかがですか?

柏木 デビューを待ってくださっていた方がたくさんいらっしゃったので、みなさんに喜んでいただけたし、こうしていろいろな楽曲を作る中で、いろいろな私が見られて嬉しいなど、こちらも嬉しくなるような言葉をたくさんいただきました。すごく嬉しかったし本当にありがたいです。

■いよいよ今回はアルバムリリースとのことで、ちょうどご自身の25歳のお誕生日近くでのリリースになりますが、この四半世紀を振り返ってみて、一番最高だった想い出はなんですか?

柏木 もう25年かぁ!早いですね。「もうそんなに生きてきたんだ」という感じで、まだあまり実感がないんですけど。(笑) やっぱりこの業界に入ったことが一番大きかったと思います。10歳で事務所に所属して、11歳からはこうやって歌ったり、踊ったりというお仕事をさせていただいていたので、それがあったからこそ今の自分があるので。こうやって好きなことを見つけられたっていうのが自分の中では大きいですね。私は小さい頃からとくに「なにかになりたい」とかっていうのがあまりなかったタイプだったので、それを小学生の時から経験できたことが最高だったと思います。そして今こうやってグループからソロになって、「ソロ活動をする」っていうのが最初にできた夢だったので、それが叶えられたのはすごくいいことだと思います。

■今作のアルバムタイトル『1/24』は、ソロアーティストとして駆け抜けたこの1年間が詰め込まれた作品とのことですが、どんな1年間でしたか?

柏木 やっぱりグループから抜けて一人になると、やることがたくさん増えました。今までは周りのみんなと一緒に作り上げていくということが多かったけど、今は全部自分主導でやらないといけないことが多いので、そういったところの不安だったり、心配だったりもありました。でも待っていてくださるファンの方たちがいてくれて、喜んでくださるっていうのがすごく嬉しかったし、自分もこうやって作品を作れることが嬉しかったです。グループの時とは環境がまったく変わってしまったけど、「みなさんに喜んでもらえるものをどれだけ作れるか」ということをたくさん考えた1年だったと思います。

■逆に「グループの時の方が良かったな」と思うことはありますか?

柏木 そうですね。私はあんまり喋るのが得意ではないので、こうやって取材を受けたりする時に、前はメンバーの誰かがフォローして助けてくれていたので、ありがたかったなと思いました。あとは何かを作る時に、みんなで相談して一緒に作ることができたけど、ソロになるとそういうのが無くなってしまうので、そこは少し寂しいですね。

■YouTubeでは、“目から流れた歌”と‘11人の私”のSpecial Performance Videoが公開されていましたが、ソロでのライブも経験されて、今までのグループでのライブの時と比べてみていかがでしょうか?

柏木 グループの時は歌って、踊ってという感じだったので、みんなとのフォーメーションがあって、立ち位置も決まっていたりしたんですけど、ソロになってダンス無しで歌をしっかり届けることが多くなったというのが一番大きく変化したところですね。ソロだとフォーメーションもないので、どこに動いても誰ともぶつからないし、自分の行きたいところに行って歌えるようになりました。(笑)

■お客さんへのレスとか煽りとかはどうですか?

柏木 そういうのはちょっと苦手ですね……。グループの時は煽ったりもしていたんですけど、ソロだと全部一人で歌っているからどこでそれをやっていいのかわからなくて……。(笑) でも来てくださっているファンの方ひとりひとりをちゃんと見られるようになったと思います。

■MCとかはどうですか?

柏木 全然ダメなんです……。でも私のファンの方たちはちゃんとそういうのもわかってくれていて、「全然ゆっくりでいいよ」とか「なんでもいいんだよ」とか言ってくれて、優しく見守ってくれているので助かっています。(笑)

■では今作アルバムついてお話聞かせていただければと思いますが、前作の2つのEPの曲も含めた15曲収録という大ボリュームな作品になりましたが、ご自身にとって今作のアルバムはどんな1枚になりましたか?

柏木 今作はいろいろな楽曲を歌わせていただいているので、タイトルの通り24歳の私が詰まったアルバムなんですけど、先ほども言ったように私はしゃべるのが苦手なので、歌でどれだけ伝えられるかというのが、自分の中でのテーマでした。バラエティに富んだ楽曲がたくさんあるので、いろいろな表情の私が見られるアルバムになりました。自分でもすごくいい作品ができたなって思っています。

■では今作のアルバムに収録される新曲のお話を中心に聞ければと思いますが、まずは1曲目の“piece of cake!”は話し声から始まるという意外なスタートでしたが、この曲の聴きどころを教えてください。

柏木 あの声は実はレコーディングで録ったわけではなくて、別の動画から音声だけ切り取られて使われていて、私も何も知らされていなかったので、出来上がった曲を聴いて「えっ!何ー?!」ってすごくびっくりしました。(笑) 

■そうだったんですね。(笑)

柏木 この楽曲が一番今回のアルバム『1/24』を表している曲だと思います。歌なんですけど、どっちかというと話しかけているように聴こえると思いますし、歌詞も24歳の私から「これからもどうぞよろしくね」というみなさんへのメッセージみたいな感じなんです。なので、あえて歌になりすぎないようにというか、語りかけるように歌いました。「ここから『1/24』が始まりますよ〜」という、ちょっと面白い楽曲になっています。

■この曲の歌詞の「よくわからない それでいいの」は、1回目と2回目では表記が異なっていましたが、ここは歌い方や表現も意識していますか?

柏木 1回目の「よくわからない! それでいいの」は、「よくわからない!」が強いので、振り切った感じを出しました。それで、2回目の「よくわからない… それでいいの!」の方は、「わからないけど、それでいいんだ!」っていう、「とにかくやってみりゃいいよ」という感じで歌いました。「!」だったり、「…」だったり、文字ではないところの感情も出すように心掛けて歌っています。

■2曲目の川谷絵音さん作詞・作曲の“踊りましょ”は、打って変わってベースが唸るグルーヴィーでカッコいい楽曲でしたが、この曲はいかがですか?

柏木 まさか川谷さんに作ってもらえると思っていなくて、私がポロッと「作ってください」って言ったら、本当に作ってくださってびっくりしました。(笑) それにこちらから「こういうふうな楽曲を作ってください」ってお願いしたのではなく、川谷さんが私をそのままイメージして作ってくださったんです。歌詞も含めて。

■ということは、すごくファンキーな人だと思われているってことですね。(笑)

柏木 そうなんですかね。(笑) でもこういうイメージで楽曲を作ってくださったので、そう思われているのかもしれない。でもすごく嬉しいです。

■この曲を歌ってみていかがでしたか?

柏木 やっぱり川谷さんの曲はすごく難しいんですよ。でもデモ曲の段階から歌のニュアンスだったりもちゃんとわかりやすく作っていただいていたので、私は私の色も入れつつですが、その通りに歌えばよかったので、すごくいい感じに仕上がっていると思います。

■続いてノリノリな“Culmination”(カルミネーション)の聴きどころはいかがですか?

柏木 こういう曲はやっぱりライブですごく映える楽曲だし、グループ時代から応援してくれているファンの方たちはこういうライブで騒げる楽曲が大好きなので、みんなと一緒に頭のネジを外して盛り上がれたらいいなと思います。ソロになってから、アイドル時代とはまた違う感じの楽曲も多かったし、ライブでも声をどこまで出していいのかわかりずらかったりで、迷っていた人も多かったかもしれないけど、ぜひこの曲で最高潮に楽しんでもらえたらと。(笑)

■この曲はまだライブでは披露されていないんですか?

柏木 はい。まだやっていないです。今後のツアーでは披露する予定なので、ぜひ遊びに来てくれたら嬉しいです。

■続いて曲調はすごく明るいですが、切ない失恋曲の“エキストラガール”はいかがですか?

柏木 少しダンスっぽいナンバーにはなっているんですけど、めちゃくちゃ激しい楽曲でもないですよね。“エキストラガール”というタイトルの通り、主人公の女の子はエキストラっぽいところがあるので、なるべくこの子に近づきたいと思って歌ったので、アルバム全体から見ても私の歌声の変化を感じられる楽曲になったかなと思います。

■歌詞の内容の恋愛観にご自身は共感できたりしますか?

柏木 いやぁ……全然。(笑) 「自分以外興味ないとか」「周りのこと見てないとか」ってありますけど、私はめっちゃ周りを気にして生きているので、逆に「周りじゃなくて自分を見ろ」って友達からいつも言われてきたし、結構真逆のタイプですね。(笑) なので、真逆の人のまま歌っちゃうと全然歌詞が伝わらないと思ったので、「自分、自分」って思っている可愛い女の子になりきらないとって思って、そういう子を演じて歌いました。声も可愛くちょっとつぶして歌っています。

■Galileo Galileiの尾崎さんが作詞を手がけた“19”ですが、こちらの曲はいかがですか?

柏木 この曲は初めにタイトルから決めたんですけど、スタッフさんから「自分が24年間生きてきた中で、一番変化があったターニングポイントになった年齢はいくつですか?」って聞かれて、グループ時代の時、二十歳になる前で「もうすぐ大人になるけど、もうちょっと子供でいさせてよ」と思ったのが19歳の時だったし、ちょうどグループとしてもすごく変化があった年だったので、「変化があったのは19歳です」と答えて。それで尾崎さんにも19歳をテーマに作詞をお願いしたんです。この曲の女の子はサビでずっと走っているんですよ。先ほどのエキストラガールの女の子ともちょっと似ている感じがあるんですけど、でもこの曲の女の子はちゃんと自分の道があって、その道をひたすら走っているので、そこが19歳の頃の自分とすごく重なる感じがありました。自分の道がちゃんとあるというところにすごく共感しました。

■なるほど。19歳の頃がターニングポイントだったんですね。

柏木 その頃はグループでもいろいろあって、当時はメンバーが6人だったんですけど、自分が大人にならなきゃいけないというか、責任感が生まれて「グループをより良くしたい」と考えるようになったし、私は自分の意見を言うのが得意ではないんですけど、この頃からちゃんと言うようになって、言わないと伝わらないってことに遅いけどようやく気づいて。「ちゃんと言葉にすることが大事だな」って、自分の中でも意識が変わったのが19歳の時でした。

■昔からすごくしっかりしていて大人っぽいイメージがありましたけどね。

柏木 よく「しっかりしてそう」とか「真面目」とは言われていたし、根っこにはそういう自分もいるんですけど、おちゃらけた子供の部分もすごくあったので、「もうすぐ二十歳になるし成人だから、ここらへんでもうちゃんと変わっておかないと」と気づいたのが19歳でしたね。でもよく考えたら今の方がしっかりしてないかもなぁ……。(笑) あの頃の方がスイッチが入っていて「ちゃんとやらなきゃ」って出来ていたかも。なんかここまでくるともう変われないから、最近はありのままでいる方が大切かなって思います。(笑)