INORAN VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

INORAN『Between The World And Me』

■今作の1曲目“Hard Right”は、オルタナ色の強いヘヴィなサウンドで、その意味では前作の流れを汲んだ印象です。そして“Falling”は、歌メロがユニークで、個人的には頭の中で『秘密戦隊ゴレンジャー』のテーマ曲が流れてきました。

INORAN はははは。ハミングだから同じですよね。確かにそうだ、ゴレンジャーだ!発見しました。そこは意識していませんでした。ただ、頭に残るメロディは絶対いい曲だから、それは鉄則ですよね。井上陽水さんの“リバーサイドホテル”とかのアレンジを手掛けた星勝さんに鍛えられた時期があったから。「曲は最初の何音かで決まるんだ」と教えられたので、それが活きているんでしょうね。この曲は評判がいいんですよね。

■あと、前作にも“‘75”というインスト曲がありましたが、“63′”はその続編的な位置付けの楽曲ですよね?ベースが牽引する曲調でホーンも効果的ですね。

INORAN これはわかりやすく言うと『オーションズ11』です。ブラッド・ピット、ジョージ・クルーニーとか、あの世界観ですね。自分にはないものだから、そこに憧れがあるんですよね。タランティーノの映画もそうだけど、途中でこういう曲が流れたらいいなぁというイメージです。

■“Heart of Gold”の歌詞は手紙のような内容ですね。

INORAN 曲順のストーリーでいくと、大切な人に感謝する場面を描いているから、それは素敵だと思いますね。海外ドラマでもシーズン2が多分一番面白いんですよ。今回もそういう流れになっていると思います。前作がシーズン1だとしたら、“Heart of Gold”みたいな歌詞はなかっただろうし、ここで言うのがいいんだよって。

■ラスト2曲“Youre Not Alone”、“Leap of Faith”では女性ヴォーカルをフィーチャーしていますよね?

INORAN ピアさん(アメリカ出身のアーティスト)と一緒にね。曲を作った段階では入れようとは思わなかったけど、歌詞ができて、全体像が見えてくると、自分の声だけじゃないというか、女性ヴォーカルがここにあったらいいなと。例えば“You’re Not Alone”は、作詞してくれたジョンが「こういうコーラスをアレンジで入れたら面白いんじゃない?」って。そのタイミングでシンガーも探していて、そこでピアさんにオファーしたんですよ。

■彼女のどの辺に強く惹かれたのでしょうか?

INORAN やっぱり声質ですよね。やってみないと上手くハマるかどうかはわからなかったけど、チャレンジしてみようと。

■特に“Leap of Faith”は美しいメロディが際立った楽曲で、女性ヴォーカルもより前面に出ていますよね。

INORAN そうですね、フィーチャリングに近いですよね。あと、今回は低音がめちゃカッコいいので、でかい音で聴いて欲しいですね。ランディの低音は本当にヤバいです。彼はアリアナ・グランデ、ジャスティン・ビーバーなどを手がけているし、今のトレンドを担っていますからね。“Leap of Faith”はメロディも美しいけど、大きな音で聴いてくれたらいいなと。バンドで音を鳴らせないからこそ、生では出せない帯域を突き詰めたかったんですよ。隠しロウとかもあるし、それを上手くランディが調理してくれて、最終的にブラッシュアップしてくれましたからね。そこは狙い以上のものに仕上がったと思います。

■歌詞の中に「夜明け」、「朝日」(和訳)という単語も随所に出てきますが、それも今作のサウンドと深く結びついている気がしました。ここから新たな始まりみたいな気持ちもあるのでしょうか?

INORAN 基本、曲の中の主人公は葛藤していたり、もがいたりしていることが多くて。それはサウンドの傾向とリンクして書いてくれたのかなと。イマジネーションを広げてくれたんでしょうね。その意味で歌詞とサウンドはシンクロしていると思います。

■そして、ラスト2曲“Youre Not Alone”、“Leap of Faith”においては、「君は独りじゃない」、「信じて跳ぶんだ」(和訳)と、ポジティブなメッセージで締め括る流れもいいですね。

INORAN そうですね。自分でも聴いていて楽しくなるから。決して自分大好きなわけじゃないですよ?(笑) 前作と今作を通して聴いた後、『想』(1stアルバム)を聴いてみると、結局同じところにいるんだなと。不思議というか、巡り合わせを感じましたね。何をやっても癖が出ちゃうのかもしれないですね。それは自分に正直にやっているからでしょうね。ディテールは違っても、芯にある部分は同じだから。

■では、2021年もまだ先が読めない部分はありますが、今年はどんな年にしたいと思っていますか?

INORAN 前作の時にリリースライブをちゃんとできていないので、今回はやる方向で動いています。配信ライブでも全然いいので、表現したいと思っているし、聴いて欲しいですからね。今のところ配信は3月に予定しているんですよ。前作、今作と日にちを分けてね。今後はどうなるかわからないけど、いつでも動けるように準備するだけですね。また状況が悪くなったら、頭に来てまた曲を作り始めるかもしれない。(笑)

■はははは。今作でステイホーム中に作った楽曲をすべて出し切った形ですか?

INORAN まだ何曲かありますよ。ただ、フレッシュなうちに出さないと嫌なタイプだから。数年後に昔の曲を引っ張り出すタイプでもないんですよ。自分の中で引っかかる部分がまた変わるから。高まったものをすぐにパッケージしたいと思う方なので、また新しい曲を作りますよ。

Interview & Text:荒金良介

PROFILE
LUNA SEAのギタリストとしてデビューし、活動を展開する一方で、1997年にソロとしての活動を開始。1stアルバム『想』では、世界的アーティストDJ KRUSHとタッグを組み、当時まだ日本ではメジャーではなかったHip Hopを取り入れた最先端の音楽を表現し、大きな注目を集める。また洋楽ファンからも支持の高かったFAKE?のメンバーとしての活動、FEEDER のTAKA等と結成した多国籍バンド Muddy Apesの活動や、香港ではGUN’S AND ROSESのオープニング・アクトを務めたり、LUNA SEAの河村隆一らと結成したTourbillonでは、日本武道館でデビューライブを飾る等精力的な音楽活動を展開。その他、2008年には映画「《a》symmetry」の音楽プロデュースや、日本最大級のファッションショー「KOBE COLLECTION」での楽曲提供及びモデル参加等、活動の場を広げている。
http://inoran.org/

RELEASE
『Between The World And Me』

完全生産限定盤 -LP SIZE BOX-(CD+BD+フォトブック)
NKCD-6941
¥13,200(tax in)

通常盤(CD)
KICS-3962
¥3,300(tax in)

KING RECORDS
2月17日 ON SALE