爆音と歓喜に満ち溢れた至福のロックンロール・ショウ!
「1年ぶり、恵比寿LIQUIDROOMに帰って来ました!みんな楽しんでくれ!」と、ライブ序盤にINORAN(Vo&Gt)は元気溌剌とした表情で満杯のフロアに呼びかけていた。INORANは2022年にソロ活動25周年という節目を迎え、自身のツアー『TOUR BACK TO THE ROCK’N ROLL 2022』を渋谷WWW X(9月11日)からスタート。今回は5本目にあたる29日(木)の恵比寿LIQUIDROOM公演をレポート。Yukio Murata(Gt)、u:zo(Ba)、Ryo Yamagata(Dr)のバンド編成により、1曲目は“One Big Blue”で始まった。ヘヴィなリフを皮切りに重心の低いサウンドで駆け抜け、ミドルテンポの“COWBOY PUNI-SHIT”に移る。このバンドらしい爆音を轟かせると、体中の細胞が目覚めるような興奮を覚えた。“grace and glory”に入ると、クラップが沸き起こり、グランジ/ガレージ・ロック調の荒々しい演奏に観客の熱気も急上昇!
“Awaking in myself”でINORANは伸びやかな歌メロを響かせると、観客はジャンプでそれに応えていく。「これぞライブハウス!」と言いたくなるポジティブなエネルギーが渦巻いていた。パワフルなドラミングに耳を奪われる“Rightaway”でも同様の景色が生まれる。不穏なグルーヴを放つ“Selfless”に進むと、これまでの流れをいい意味で裏切るダークな演奏を突きつける。また、青と紫のライトがステージを照らし、楽曲の雰囲気を盛り上げていた。「このメンバーで1年ぶり……」とINORANは切り出し、「この場所に集まってくれて感謝!」と続けた後、FAKE?のカバー“LEMONTUNE”をプレイ。ヘヴィロック風の曲調に、INORANはシャウト気味の歌を叩きつけていく。
そして、ショウ中盤に差しかかった頃、スタッフがバースデーケーキをステージに運び込む。「ここで?!」とINORANは完全に不意を突かれた表情になり、会場は祝福ムード一色に染まっていった。そう、今日(9月29日)はINORAN、52歳の誕生日当日である。「みんな本当にありがとう! 太陽の周りを52周目に入りました! 何が何でも53周目を目指します。盛り上がっていこうぜ!」とINORANも上機嫌に煽り、“You’ll see”へ。親密なメロディを届けた後、“Beautiful Now”に繋ぎ、雄大なスケールで観る者を優しく包み込む。その壮大さを“raize”で受け継ぎ、後半は螺旋階段を駆け上がる激しいアンサンブルを魅せつけてくれた。
ここでINORANはアコギに持ち替え、“HOME”を披露。レッド・ツェッペリンの3作目を彷彿とさせるフォーキーなインスト曲を挟み、その流れで聴いた“Long Time Comin”も素晴らしかった。ライブも終盤を迎えると、“Don’t you worry”をプレイ。曲の途中に「心の声で歌ってくれ!」と叫び、会場のテンションを押し上げていく。それからアリーナ・ロック調の“Thank you”を経て、合唱コーラスを用いた“Rise Again”で会場を一つに束ねていた。そして、最後は“All We Are”で締め括る。観客一人ひとりに向かって、歌声を、演奏を真摯に伝える姿がとても印象的であった。いつの間にかステージとフロアの境界線が消え去るほどの凄まじい盛り上がりとなり、ライブは終了した。
当日はINORANの記念すべき誕生日ということもあり、普段の爆音ライブに加えて、さらに温かく、幸せなムードに包まれたショウとなった。その意味では、バンドにとってもファンにとっても忘れられない特別な夜になったのではないか。来年また“同じ日”にライブを観たいと、誰もが感じたに違いない。
Text:荒金良介
Photo:Yoshifumi Shimizu
『TOUR BACK TO THE ROCK’N ROLL 2022』@LIQUIDROOM セットリスト
01. One Big Blue
02. COWBOY PUNI-SHIT
03. grace and glory
04. Awaking in myself
05. Rightaway
06. Selfless
07. LEMONTUNE
08. You’ll see
09. Beautiful Now
10. raize
11. HOME
12. Long Time Comin
13. Don’t you worry
14. Thank you
15. Rise Again
16. All We Are