多彩なジャンルと歌い方に挑戦したデビュー5周年記念3rdフルアルバム『Dear』を語る。
JUNNAがデビュー5周年記念3rdフルアルバム『Dear』をリリース。これまでも力強い歌唱力で聴く者を圧倒してきたJUNNA。今作は梶浦由記、鷺巣詩郎、n-buna、s-numといった様々なアーティストとのコラボレーションによる多彩な楽曲を収録。JUNNAの新たな一面が顕現したバラエティ豊かなアルバムに仕上がっている。
今回はJUNNAにインタビューを決行。アルバムの制作について語ってもらった。
■今回のアルバムタイトルは『Dear』ですが、タイトルの由来を教えてください。
JUNNA 表題曲のタイトルが“Dear”に決まって、全曲が出来上がり始めた頃に「アルバムタイトルはどうしよう?」という話になったんです。最初はもっと5周年ということが分かりやすいタイトルの方がいいのかな?とも思ったんですけど、「Dear」って「親愛なる」という意味があって、手紙の最初に書く言葉でもあるので、5周年にぴったりなのかもしれないと思って。やっぱりこの5年間歩んでこられたのはファンのみんながいてくれたからですし、みんなに届けたいという思いでこの5年間進んできたので、このアルバムにみんなへの感謝の気持ちを込めたことが伝わるんじゃないかなと思って『Dear』にしました。
■2020年にリリースしたフルアルバム『20×20』から2年と少しが経ちましたが、『Dear』を完成させた今、前回からの成長を感じていますか?
JUNNA 前は自分が抱えている悩みや不安を歌う楽曲が多かった気がするんですけど、今回はもうちょっと大人になった曲たちが増えたと思います。楽曲的にも攻めた楽曲が多くなっていて、内容的にも成長を感じられるんじゃないかなと思います。
■確かに今回は曲調の幅広さも含めて、よりアーティストの作品として完成度の高いアルバムになっていると感じました。今作は梶浦さんが手がけた曲が多いこともあって、今までのJUNNAさんのイメージとして強かった、力のあるロック以外の曲もかなり増えたように思います。様々なサウンドの楽曲に挑戦してみていかがでしたか?
JUNNA 毎回アルバムを作る時に一番考えているコンセプトとしては、いろんなジャンルの楽曲を歌いたいということなんです。今回はその思いがより強く反映されていると思います。今までの表現だけではできない楽曲も取り入れていくことで、自分の幅を広げていくことができたんじゃないかなと思います。今回のアルバムでそれをすごく実感できました。
■アルバム制作前の時点で、「こんな曲を歌ってみたい」といった希望はあったんですか?
JUNNA 楽曲としてはもちろん、ロックは絶対にあって欲しいとは思っていたんですけど、その中でも命を削るような楽曲が欲しいと思っていました。あとは、みんなが聴き入るような壮大なバラードを歌いたかったのと、ライブではダンスもやりたいので、踊れるような曲を歌ってみたいという思いがありました。それをお伝えして、「それならこの方にお願いさせて頂くのがいいんじゃないか」という形で進んでいきました。
■“THE END”は今おっしゃった中の踊れる曲に位置すると思います。すごく大人っぽい曲ですよね。
JUNNA そうですね。鷺巣さんに作っていただいた曲なんですけど、1、2年前から打ち合わせしていた曲なんです。打ち合わせの中で鷺巣さんが、「漠然としたイメージじゃなくてもうちょっと具体的なイメージを一緒に話していこう」と言ってくださって。その時に出た具体的なイメージとしては、紫とかピンクのちょっと暗い照明を使ったようなステージで歌ってる自分を想像しているとか、『バーレスク』という映画がすごく好きなんですけど、その映画のイメージもあって「そういう楽曲を歌ってみたいです」と思いをお伝えしてできたのが“THE END”でした。
■歌ってみていかがでしたか?
JUNNA すごく自分が出しやすい音域でしたし、自分の表現したいことが全部出せるような楽曲だなと思いました。最初はアカペラの部分はなかったんですけど、レコーディング中に「アカペラで始まったらめっちゃカッコよくない?」みたいな話をディレクターさんと鷺巣さんがされていたので、試しに歌ってみて、それが採用されたんです。あと言葉の遊び方がすごく面白かったので、歌詞を見ていない状態でも歌詞が伝わるように意識しながら歌いました。
■先程おっしゃっていた、壮大なバラードにあたるのは“星座”ですよね?
JUNNA そうです。この曲も鷺巣さんとの打ち合わせの中で進めた曲で。その時にイメージとしてお伝えしたのは、「自分がオーケストラの中で歌っているイメージ」や、あとは「スポットライトを1人で浴びている中で、すごく伸び伸びと歌っている自分を想像している」というのをお伝えして作っていただきました。
■曲の雰囲気やライブの演出を含めた曲の完成イメージは、今までも持っていることが多かったんですか?
JUNNA 今まではそんなにそういうことを伝えたことがなくて。前のアルバムの時は、「ダンス曲みたいな感じ」とか、ふわっとした希望だったんです。楽曲制作前の打ち合わせも今まではあまり参加したことがなかったんですけど、今回はそういう機会をいただいて、初めてここまで具体的に自分の希望を伝えられたかもしれないです。
■そうだったんですね。“星座”を歌った感覚はいかがでしたか?
JUNNA すごく難しかったですね……。レコーディングしながら、曲が壮大な分、自分の歌声がすごくストレートに伝わるなと感じたんです。だからこそ、自分が思っている以上に丁寧に歌わないと、ちょっと雑っぽく聴こえちゃうなと思って。いつも以上に言葉ひとつひとつや、語尾の切り方にも気を付けながら、丁寧に言葉を置いていくみたいに歌っていきました。
■バラード曲と言うと、“あやまち”はJUNNAさんが作詞・作曲を手がけたバラード曲ですね。
JUNNA アルバムを作ることになった時、やっぱり1曲は私が作詞・作曲をした曲を入れたくて。もちろん、いろんな方に作っていただくことで新しい自分が出せると思うんですけど、自分で作るともっと色濃くJUNNAとはどういう人間なのかが見えると思うんです。それってアルバムを作る時にすごく大事だなと思って。アーティストのJUNNAとしてもそうだし、1人の人間として、どういうことを考えているのかを見せるいい機会だなと思ったので、1曲は絶対に入れたかったんです。それで、どんな曲にしようかと考えていたんですけど、前々からスタッフさんから「ラブソングを作って欲しい」と言われていて。それまでは自分が嫌だと思っていることや、悩みや不安などをぶつけていく歌詞を書くことが多かったんですけど、「ラブソングを書くことで、また違ったJUNNAの一面が見えると思うから作って欲しい」と。今回は覚悟を持って作りました。(笑)
■ラブソングにもいろんな内容があると思いますが、今回は失恋を描いていますね。
JUNNA ハッピーエンドを書きたくないなと、最初から思っていたんです。もちろん恋愛は幸せな側面もたくさんあると思うんですけど、その裏できっと苦しいことを乗り越えて幸せになっていると思うんです。なので、私は幸せになる前の段階というか、ちょっと苦しんだり、失恋している側面を描きたくて。
■ハッピーエンドを描かずにその前の段階の葛藤や苦しさを描くのは、これまでもご自分の苦しみを歌詞にしてきたJUNNAさんらしいものでもありますよね。失恋ソングのバラードは、今までのJUNNAさんの楽曲としても珍しいと思いますが、歌う際にはどんなことを気にかけましたか?
JUNNA 私のいいところでもあり、悪いところでもあるのかもしれないんですが、どの曲を歌う時も、自分が物語の主人公になりきれないところがあるんです。自分がそこにいるというよりは、誰かと誰かがいるのを俯瞰して見ているように歌ってしまうというか。でも“あやまち”は、そこに自分がいると想像して歌わないと歌えない曲だと思ったので、それは新しい挑戦でした。あとはディレクターさんに「泣いていることが想像できるような声で歌って欲しい」と言われて。今までは強さを押し出したり、弱いところを見せないような歌を歌ってきたので、泣いているように歌うのは初めてのことで。部屋の中を暗くして、雰囲気を作ってから歌いました。またひとつ表現の引き出しが増えた曲になりました。
■表題曲の“Dear”は、すごくインパクトのある曲ですね。
JUNNA この曲はTVアニメ「魔法使いの嫁 SEASON2」のオープニングテーマなんですけど、ファーストシングルの“Here”がSEASON1のオープニングテーマだったので、その続編のような曲になっています。“Here”も“Dear”も主人公のチセを描く歌詞になっていて。“Here”は内に閉じこもっているチセの「私がここにいることを知って欲しい」という気持ちを歌う曲だったんですけど、“Dear”はもっとチセの世界が広がっていることを見せるために、歌声もどんどん開けていくように歌うことを意識しました。Aメロはまだちょっと閉じこもっている感じで暗い部分を見せているんですけど、Bメロからは一気にメロディーも浄化されていくようになっているので、自分も外の風に吹かれて笑顔で歌っているのを想像して。サビもそのイメージのまま、どんどん強くなっていく気持ちを表現できたらいいなと思って歌いました。
■チセの気持ちと歌い方がリンクしているんですね。“海と真珠”と“太陽の航路”は梶浦さんが手がけた楽曲ですね。梶浦さんとの制作はいかがでしたか?
JUNNA “海と真珠”のレコーディングで初めて梶浦さんとお会いして、自分の今までの歌い方では表現できないくらい、今までとジャンルが違う曲だったので、どうやって表現しようかとすごく悩みました。でも私が思った歌い方でレコーディング当日に歌ってみたら、梶浦さんが「その歌い方ですごく歌が表現できたと思う」と言ってくださって、すごく自信になりました。梶浦さんはすごく歌詞を大切にされているので、ディレクションの中でも「この言葉を立てて欲しい」とか、「ここは繋げて歌うことに意味がある」ということをすごく言ってくださったのが印象的で。そういうディレクションを受けることがあまりなかったので、すごく新鮮でした。
■聴いていても、力を入れるところと抜くところの違いがはっきりと分かるのが面白い部分でもありました。“海と真珠”がTVアニメ「海賊王女」のオープニングテーマだったのに対して、“太陽の航路”は、TVアニメ「海賊王女」の最終話のみに使われるエンディング曲なんですよね?
JUNNA そうなんです。“海と真珠”をレコーディングした少し後に、“太陽の航路”のレコーディングがあったんですけど、最終話の内容は知らされなかったんです。「どんな結末になるのかは言わないでおく」と梶浦さんに言われていて。なので、すごくドキドキしながら歌いましたね。(笑) 私は「この歌詞から読み取れる最大限の表現をしよう」と思って。