キム・ヒョンジュン『22/23 KIM HYUN JOONG WORLD TOUR“The end of a dream” in Japan』ライブレポート@パシフィコ横浜

一つ一つの公演は、新たな始まりのための指切りの場。キム・ヒョンジュンの涙声を約束の指切りにしながら…。

本当なら、もっと早く彼の笑顔に出会えていたはずだった。2020年3月より予定していた全国ツアーがコロナ禍によって中止に。あの時悔しい思いをしていたのは、国内で待っていたファンたちばかりではない。キム・ヒョンジュン自身も、悲しみを堪え、それを次なるアクションへ向けての力へと変えていた。約2年半ぶり。ようやくキム・ヒョンジュンの来日公演が実現した。しかも、映画「バイオレンスアクション」の挿⼊歌“Song for a dreamer”、時を同じくして完成した“Super Fire”2曲の新曲も手に、彼は日本の地へと降り立った。9月3日(土)、4日(日)、キム・ヒョンジュンはパシフィコ横浜の舞台に立っていた。今回は2公演のみだが、このツアーに名付けられたのが『22/23 KIM HYUN JOONG WORLD TOUR“The end of a dream” in Japan』というタイトル。23年まで続くワルードツアーの一環として今回の公演を実施。ということは、ツアーの後半にもふたたび来日してくれる…ことを願いたい。その前に、2020年2月に発売したアルバム『月と太陽と君の歌』に収録した楽曲たちを、ライブという場でようやく味わえるのが嬉しい。キム・ヒョンジュンと笑顔で再会する場となった2日間。ここでは、9月3日の公演の模様をお届けしたい。

舞台背景に設置した、時の歩みを伝える大きな時計。長針と短針2つの針が、この日を待ち望んでいたキム・ヒョンジュンと観客たちとの関係を示すように、過ぎ去った時間を取り戻すよう早足で駆け続けていた。待ち合わせ(開演)の時が近づくにつれ、高鳴る鼓動。その期待へ応えるように、キム・ヒョンジュンのライブは幕を開けた。バンドメンバーがセッティングを始めるのに合わせ、場内中から熱い手拍子が鳴り出した。高まる期待がその音からも伝わる。上がるBGM。そして…。壮麗でシンフォニックな響きに乗せ、ここに訪れた人たちを現実から離れた世界へ誘うようにキム・ヒョンジュンが舞台の上へと姿を現した。優しいアコギの音色に乗せ、キム・ヒョンジュンが歌いだしたのは“Lead me in your way”。彼はアコギの弾き語りという裸の姿で、心のコスモ(想い)を響かせだした。彼の歌声へ誘われるように楽器陣も音を重ねだす。背景の巨大なスクリーンには、宇宙を背景に歌うキム・ヒョンジュンの姿が映し出されていた。会場中の人たちが手にしたグリーンのペンライトをゆっくりと動かしながら、少しずつ、少しずつ、キム・ヒョンジュンの歌声と心を一つに重ね合わせるように澄み渡る歌声へ心を寄り添いだす。

ゆったりとした壮大な楽曲に乗せ、目の前にいる一人一人の心へ言葉を染み込ませるように、キム・ヒョンジュンは“Prism time”を歌っていた。温かく。でも強い存在感を放つ歌声だ。逞しい彼の腕でギュッと抱きしめられ、胸の内に顔を埋めながら歌声を聴いているような錯覚を覚える。それくらい温かいのに力強い歌声だ。そのひとときが永遠かと覚えるように愛おしい。そしてHIP HOP調の力強いリズムの上で、キム・ヒョンジュンはスタンドマイクをギュッと握りしめ、雄々しい声で“Bark matic”を歌いだす。彼の凛々しい、いや、雄々しく逞しい姿にハートを熱くした観客たちが一斉に立ち上がり、舞台の上のキム・ヒョンジュンに向け、心の中で熱いエールを送っていた。腹の奥へズンっと響く歌声や演奏だ。それ以上に、ニヒルでダンディなその表情や野生の香りを振りまく歌声に、心に火照りを覚えずにいられなかった。

荒々しいギターの音を合図に、キム・ヒョンジュンが「横浜、盛り上がろうか!」と叫ぶ。彼はマイクをきつく握りしめ、豪快でワイルドなロックナンバー“I’m a million”を、高らかに声を上げ歌った。観客たちへ挑みかかるような強い表情だ。でも、時おり見せる笑顔に、気持ちがクラッとしていく。心を裸に歌い叫ぶ姿に触れ、冷静でなどいられない。場内中の人たちが手にしたペンライトを力強く振りながら、沸き立つ想いをキム・ヒョンジュンへ届けていた。それにしてもなんて野生味あふれた姿だろう。その姿にハートが落ちてしまうのも納得だ。そのまま演奏は“Lucky guy”へ。キム・ヒョンジュンは心地好く駆けだしたロックナンバーの上で、心を大空へ解き放つように歌っていた。つい観客たちへ微笑みかけてしまうのも、それが今の彼の素直な気持ちだから。この曲ではバンドメンバーたちと戯れるように歌う場面や、さらに銀テープが発射される場面も。クライマックスの場面へ用意しがちな演出を、こんなにも早く見せてくれるとは。ファンたちの歓喜の声が漏れていたのも納得だった。

ブルースなギター演奏に乗せ、キム・ヒョンジュンは心に溜め込んでいた想いを振り絞るよう切々とした歌声で“Sickness”を歌いだした。やがてバンド演奏が加わるのに合わせ、楽曲は雄大な景観を描き出す。感情を吐き捨てるように歌う豪快なロックナンバーも、今の懐深く男臭さを振りまくように歌う時のキム・ヒョンジュンに似合う表情だ。彼自身が大きな音のうねりに心地好く身を任せ、雄々しく歌声を響かせることを楽しんでいた。止まることなく、物語は続く。1曲ごと色を塗り替えるようにキム・ヒョンジュンは歌っていた。いや、曲を重ねるごとにタフ&ワイルドな様を増していく。“Super Fire”でもキム・ヒョンジュンは攻撃的な演奏の上で、目の前の人を射止めるように言葉を突きつけていた。言葉の矢がハートへ突き刺さるたびに心が熱く陶酔していく。その姿は触れた人たちを確実に魅力で射止めてゆくハンターのよう。

バンド陣による壮大で美しい演奏を挟み、着替えを終えたキム・ヒョンジュンが『사계(四季)』を歌いだした。切々とした、どこかモノクロな冷たさも覚える演奏だ。そこへ彼が、温もりにも似た暖色系の歌声で心の温度を上げていく。ひと言ひと言を噛みしめながら歌うその声と、前をしっかりと見据えて歌う姿を、この両瞼や心に焼きつけたい。そんな想いも抱きながら、たくさんのラバーズたちが、手にしたペンライトを優しく揺らしていた。会場中に響き渡る温かい拍手。「本当にみなさんに会いたかったです。2年半前、たくさんのことが変わりましたね。みなさんの顔を見ているだけで、たくさんの感情が浮かびます。僕はその日々の中で、もっともっといいアーティストになれるように頑張りました。みなさんのことを考えながら毎日頑張ってきました。」その言葉が嬉しい。少し照れながらしゃべる姿もとても愛おしく見えていた。「先に歌った『사계(四季)』が、お互いの関係を代弁している」と語り、こうやって直接会うことで安心している今の素直な気持ちを、キム・ヒョンジュンは待っていてくれた人たちの前で語っていた。「これからはこんなに長い間離ればなれになることはありません。今日はみなさんに希望の鐘の音を鳴らすようにここに帰ってきました。日本が遠く感じられた日々でした。この2年半の間の気持ちをこのステージにぶつけたいと思います。」ふたたびアコギを手にしたキム・ヒョンジュンは、これまで溜め込んできた想いを一つ一つの曲に乗せて、満員の観客たちの心に染み渡らせる。“Your story”を通して感じた温もり。まるで目の前で語りかけるように歌うその声は、毛布に包まれた時以上の温かさを心の芯にまで届けてくれた。韓国語で歌い始めた楽曲は途中から日本語に。何処の国の言葉だろうと、大切な人を放さないと願い慕うその想いは間違いなく心を揺さぶる。その温かい想いに触れ瞼がじんわり滲み出したのか、彼の姿が少しだけ滲んで見えていた。

「人は、いつも危機をチャンスに変える能力があります。次に会う時は、みなさんと一緒に歌えたらと思います。次の曲ではみなさんが船長になって、みんなと一緒に夢の星へと向かいましょう。この大きな船に乗ってみなさんを夢の果てへと案内したいと思います」温かいアコギのリズムを漕ぎだすオールに変え、キム・ヒョンジュンは想いを馳せるように、吐息にも似た声を響かせ、“Song for a Dreamer”を歌いながら、観客たちを夢の世界へ誘いだした。背景には巨大な月が輝いている。彼は月明かり変わりの淡く青い光を身に受け、その歌声を子守歌のように響かせながら、優しく、温かく、想いを歌声に乗せていた。彼自身が僕らにとって夢そのもの。その夢がさらに素敵な夢を歌い語るんだから、心が嬉しく微睡むのも当然だ。「永遠のものは本当にないなと思います。でも僕たちが大切に思っている記憶は永遠です。みなさんに捧げます。」 その言葉に続いて歌ったのが“Wait for me”。アコギの弦を優しく爪弾きながら、その音色へ導かれるように、胸の奥にしまっていた想いをキム・ヒョンジュンは一つ一つ涙を零すように歌っていた。歌声のひと滴ひと滴をここにいた人たちみんなが伸ばした心の両手で受け止めては、切ない想いさえ共に分かち合い、一つの心として染み込ませるように両の胸にしっかりと刷り込んでいた。

「みなさんに希望の歌を届けたいと思います。みなさんの手を二度と離しません。繫いだ手をギュッと握ったまま、これからも歩いていきましょう」互いの関係を心の中で強く結び合うように、キム・ヒョンジュンは凛々しい声で“Take my hand”を歌った。ふたたび総立ちになった観客たちも、両手を大きく振りながら舞台の上の彼に心の手を伸ばしていた。互いに結んだその手の絆は、どちらかが放さない限り離れることはない。それを彼もここに足を運んだみんなも知っている。だからこそ舞台の上に向かって力強く伸ばした手を揺らしていた。何千もの人たちの想いを受け止め、思いを返すように歌う彼の声も胸を熱く揺さぶった。「ここからみなさんに、たくさん愛の歌を届けたいと思います。」“Love like this”でキム・ヒョンジュンは、雄大な楽曲の上で高らかに声を響かせ恋心を伝えてきた。ときにその場で飛び跳ねれば、場内でもキム・ヒョンジュンの動きに合わせ一緒に飛び跳ねる人たちが多く見受けられた。力強く躍動するリズムに乗せ、キム・ヒョンジュンは“THIS IS LOVE”を歌いだす。楽曲が大きくバウンドするたびに、彼の歌声も大きく広がりだす。キム・ヒョンジュンは「これが愛だ」と歌っていた。彼の声に合わせ、一緒に心の中で「THIS IS LOVE」と声を張り上げる観客たち。互いに歌声の口づけを交わし、心でギュッと抱き合いながら、くしゃくしゃの滲む笑顔を浮かべていく。その関係が素敵だった。壮大な楽曲のうねりを全身に浴びたとたん、気持ちが大きく揺さぶられた。キム・ヒョンジュンは壮大な物語を語るように“Expecto patronum”を歌い、観客たちを現実から遠く離れた景色の中へと誘いだす。彼の温かい歌声を夢先への案内人にしながら、ひとときの素敵な物語に落ち、誰もが無垢な少女や少年に戻って夢や恋に想いを馳せていた。温かくもスケール大きな歌声に包まれるこのひとときがたまらない。

「2年半前はこの曲でみなさんと盛り上がりましたよね。」これまでの温かい景色を一気に熱情した景色へ塗り変えるように、キム・ヒョンジュンは“Beyond Crazy”を歌いながら、満員の観客たちを熱狂の世界へと連れだした。彼の歌うひと言ひと言が、甘くて熱い告白のようだ。こんなにも熱い恋心の弾丸を身体中に撃たれたら、ドキドキしたハートが壊れてしまいそうだ。甘いどころじゃない、熱情した恋心をぶつけるように歌うキム・ヒョンジュンの姿と、身体を騒がせ疾走するアッパーなロックナンバーを浴び、このまま熱狂に溺れそうだ。「どうしてこんなに時間が経つのが早いのでしょうか。この日はワールドツアーの1公演です。改めてみなさんとお会いできて、本当に実のある1日になりました。みなさん一人一人が本当に大切な存在です。みなさん一人一人が人から愛されている存在なんだと、ぜひ思ってください。」最後にキム・ヒョンジュンが届けたのは、みなさんの人生のスタートという祝福の鐘を鳴らすようにと作った“Bell of blessin”。鐘の音を曲の中へ巧みに取り入れた、とても胸弾む楽曲だ。希望に満ちた曲の鐘の音が、場内中に明るく高らかに響いていた。彼の歌う声へ大きく手を伸ばし、心の中で「オーオオオオー!」と叫びながら、互いに手を取り未来へ向かって羽ばたきたい。これは希望という光で心を一つにしていく祝福の歌だ。彼の歌が福音となり、その先に希望の道を照らしていた。キム・ヒョンジュンの鳴らす鐘の音を追いかけながら、これからもその音へ導かれるように光広がる未来を照らす道を見ていたい。

熱い手拍子へ導かれるようにキム・ヒョンジュンはアンコールの舞台に立っていた。アコギを手にした彼は、ゆったりと、でもジワジワと温かく広がる音の波の上で“U”を歌った。温かく優しいその声が心を満たしていく。場内中でゆったりと揺れる数多くの緑の光の波も、とても綺麗だ。きっとキム・ヒョンジュンもその景色を観ながら、嬉しさを胸に秘めながら歌っていたに違いない。彼の歌声に「温もり」という温度をいつも感じる要因は、あなたたちの想いにもあるのは間違いない。そのまま演奏は“포장마차에서(The Smile In Wine)”へ。いろんな思い出を心の中で巡らせるように、キム・ヒョンジュンは込み上げる想いに導かれるまま歌っていた。その歌声へ同じように心の色を重ねていたい。何時だって同じ気持ちの波長を重ねながら繋がりあっていたい。心の周波数はその人の想い次第で、何時だって合わせられる。それをリアルに確かめ、感じあえるのが、ここコンサート会場だ。最後の「愛しています」のひと言が嬉しく胸を騒がせた。

エレキギターを手にしたキム・ヒョンジュンが語りだした。「次は初々しい青春を歌った曲です。僕たちが若かった頃の童心に返る時間をお届けします」ゆったりと時の針を戻しながら、あの頃の自分を記憶の中から引き出すように。今の自分の姿へみずみずしい青春時代の自分を重ね、ちょっぴり懐かしさへ浸るように、キム・ヒョンジュンは“담벼락(Childlike)”を歌った。この曲が歌に触れた一人一人の青春時代の扉を開き、制服を身につけたあの頃の自分を蘇らせる。今だけは心に制服をまとい、無垢な自分に戻って過ごそうか。4分間という短い時間の中だけ、思い出にどっふり浸るのも悪くはない。「これからは、ギター1本を持ってみなさんに向き合う場を作っていきたいなと思います。僕の方から出向いてみなさんに会いに行けたらなと思っています。みなさんと僕はしっかりとした縁で繋がっています。どんな困難があっても、消えることのない縁で繋がっています。みなさんと僕の縁がこれからも繋がり続けるように、僕がしっかりと縁という紐を握っていきます。みなさんも縁という紐を放さないでいてください」アコギを手にしたキム・ヒョンジュンは、バラードの“고맙다(Thank you)”を、ひと言ひと言に深い想いを詰め込むように歌った。彼の想いを一人一人の心へ消えぬ想いや思い出として刻むように演奏が鳴り響く。少し涙声のキム・ヒョンジュンの歌声に向け、場内中で揺れる緑の輝き。ここで分かちあった想いはまた未来へ続いていく。一つの公演の終わりのように、小さな終わりはあるだろう。でも一つ一つの公演は、新たな始まりのための指切りの場。ここで互いに分かち合った喜びを、また少し先の未来へ繋げていこうじゃないか。キム・ヒョンジュンの涙声を約束の指切りにしながら…。でも、涙でさよならはしたくなかった。最後にキム・ヒョンジュンは“HEAT”を力強く歌った。ふたたび空中に舞う銀テープ。キム・ヒョンジュンが、ジェミニバンドのメンバーたちが、思いあふれたこの瞬間の景色を熱く胸に焼きつけるように歌い、この空間にヒートアップした情景を描きあげていった。やはり彼には、照れた笑顔が似合う。これからも時計の針は進み続ける。時が終わらないように、この関係も途切れることはないのだから…。

Text:長澤智典
Photo:©株式会社Birdman / 2022 HENECIA Co.,LTD.

https://henecia.jp/

『22/23 KIM HYUN JOONG WORLD TOUR“The end of a dream” in Japan』@パシフィコ横浜 セットリスト
01. Lead me in your way
02. Prism time
03. Bark matic
04. I’m a million
05. Lucky guy
06. Sickness
07. Super Fire
08. NEW WAY(Only BAND)
09. 사계(四季)
10. Your story
11. Song for a Dreamer
12. Wait for me
13. Misery
14. Take my hand
15. Love like this
16. This is love
17. Expecto patronum
18. Beyond Crazy
19. Bell of blessing

ENCORE
01. U02. 포장마차에서(The Smile In Wine)
03. 담벼락(Childlike)
04. 고맙다(Thank you)
05. HEAT