きゃりーぱみゅぱみゅ『10th ANNIVERSARY JAPAN TOUR 2022 -TOUR FINAL- UMA105』ライブレポート@日本武道館

「“なし”を“あり”にしていきたい」きゃりーぱみゅぱみゅ、10周年ツアー閉幕。

きゃりーぱみゅぱみゅによる3度目の武道館ライブ『10th ANNIVERSARY JAPAN TOUR 2022 -TOUR FINAL- UMA105』が10月19日(水)に開催された。今年1月から行っていた10周年ツアーのファイナルとして行われた本公演は、30公演に渡るツアーとは全く異なるコンセプトのライブとなっていた。彼女がツアーの道のりで得たものや、今年経験した世界最大規模の音楽フェスティバル「コーチェラ・フェス 2022」での体験がしっかりと反映されている公演であった。それでいて10周年ツアーを締めくくるのに相応しい、これ以上ない豪華なセットリストで10年の歴史をオーディエンスとともに辿った。というのも、この日のライブは客入れの1時間で20曲を流した他、本編ではメドレーを駆使しながら60曲を披露。アンコールでの2曲を合わせ、きゃりーぱみゅぱみゅがこれまでリリースしてきた楽曲のうち、リミックスバージョン等を除く曲たちを網羅する形で全62曲、10年の歩みを楽曲を通してたっぷりと振り返ったのであった。

「UMA」つまり未確認生物をテーマに掲げた本公演は、ミステリー番組のようなオープニング映像で始まった。105という数字が彼女がこれまで生み出してきた楽曲の数だと明かされた後、ステージに登場したのはピンク色の衣装と仮面に身を包み、自身もUMAに扮したきゃりーぱみゅぱみゅ。オープニングナンバーは“インベーダーインベーダー”で、テーマにぴったりな開幕だ。そして2曲目、彼女の原点の楽曲でもある“PONPONPON”に差し掛かる頃には、彼女は仮面を脱ぎ、ここから彼女の10年をたっぷりと見せていく。未確認生物というコンセプトの元、ピラミッド型のセットやステージ脇から生える巨大キノコやクラーケンの足といった、いかにもミステリアスなステージに、キュートな出で立ちの彼女とその楽曲が平然と共存する。「“なし”を“あり”に変えていきたい」とMCでも語っていたが、UMAに扮して登場し、その後きゃりーぱみゅぱみゅとしてピラミッドを背景にキュートなパフォーマンスを見せていく冒頭の流れは、一見関連のない可愛さと未確認生物というふたつの要素を融合させていく彼女の抜群のセンスとバランス感を表していた。

この日はきゃりーダンサー4人に加え、UMAに扮したジャンルの異なるダンサー4人も登場。序盤の“すんごいオーラ”、“こいこいこい”、“ファミリーパーティー”、“MY ROOM”などが続くメドレーでは、UMAダンサーが1曲につきひとりずつ登場し、きゃりーとふたりでパフォーマンスをする場面も。UMAときゃりーが寄り添いながら、どこかリラックスした様子でパフォーマンスをする様子には温かさが漂う。きゃりーの衣装チェンジの際には、フラットウッズ・モンスターに扮したバレエダンサーによる“完全形態”や、イエティに扮したヒップホップダンサーが“きみのみかた”に乗せてソロダンスを披露するなど、ジャンルの異なるUMAダンサーがそれぞれソロダンスを披露するメドレーもあり、きゃりーのパフォーマンスに劣らない迫力を醸していた。

今回のライブテーマにかけて、「なんとなく不可能だと思ってやらなかったことでも、できることってたくさんあるなって。自分が一番未確認生物だなって思ったんです」と話したきゃりーぱみゅぱみゅ。そう感じたきっかけの出来事として、コーチェラフェスの2週目に、ダンサーなしでたった1人でステージに立った経験をしたことを挙げていた。その経験はこの日60曲越えの楽曲を披露するに至った何よりの理由であっただろうが、それを経てパフォーマンスへの考えが柔軟になったからこそ、この膨大な楽曲に対して様々なアプローチでパフォーマンスすることを可能にしていたのだろう。“パーフェクトおねいさん”などではペンライトを使ってオーディエンスと意思疎通を図り、“ゆめのはじまりんりん”ではオーディエンスと向き合い感情を伝えるように。そしてときにダンサーと息ぴったりのダンスを見せ、ときにUMAに扮した4人のダンサーとともにパフォーマンスをするなど、その引き出しは俄然豊富。コーチェラフェスの思い出を語った彼女が、「コーチェラの2週目にやった曲です」とダンサーとともに“きらきらキラー”を披露した場面は一層パワーが感じられ、このステージがコーチェラフェスを経たきゃりーのものであることをひしひしと実感させられる。60曲超えという膨大なセットリストだけで迫力があったのはもちろん、パフォーマンスの端々には、彼女が今年1年で得た成長が反映されていた。

そしてなにより、この日の会場である日本武道館には、ライブハウスかクラブなのかと錯覚してしまう程、豊かでキレのある重低音が鳴り響いていた。彼女の楽曲の特徴でもあるキャッチーな歌詞はフロアのオーディエンスを躍らせるためのトリガーになっており、耳に残るサビが連鎖する楽曲はメドレーとも相性がいいのを再確認させられる。特に後半に差し掛かった頃に披露された“キャンディーレーサー”からの“どどんぱ”というフルコーラスで連続披露された2曲や、“原宿いやほい”と“かまいたち”の流れはオーディエンスをこれでもかと躍らせていた。さらにラストスパートでの“キズナミ”や“演歌ナトリウム”、“音ノ国”など、曲ごとに異なる中毒性の詰まったメドレーでは、曲ごとにアプローチを変化させながら、歌詞とサウンドの両方でフロアを湧かせ続ける。長時間のステージが最後まで天井知らずの盛り上がりを見せたのは、前述したような視覚的な演出はもちろん、中田ヤスタカの手がける楽曲たちが、EDMとしての本領を発揮したことも理由のひとつだったはずだ。

序盤のMCでは「私の人生を、きゃりーぱみゅぱみゅを楽しんでいってください」とも語っていたが、まさにその意気込みが十二分に伝わる圧巻のステージであったこの日。そんなステージ本編を終えたアンコールでは「声がカサカサになりました。明日は休養です……」と満身創痍な様子。その後、「スタッフのみなさんとここに集まってくれたみなさんのおかげでここに立てています。人生で3回も武道館に立てるとは思わなかった!」と涙ぐんだ彼女の、全力で駆け抜けた姿と言葉に心を動かされたオーディエンスも多かったであろう。アンコールでは彼女の最新曲であり、今年のきゃりーぱみゅぱみゅとそのチームを最も表しているであろうワードがタイトルになった“一心同体”、そして彼女が今年完走したツアーで最後を飾っていた楽曲“ちゃんちゃかちゃんちゃん”でフィナーレ。62曲というボリューミーなセットリストだけでなく、きゃりー自身の成長にも心を打たれた公演でもあった。

Text:村上麗奈
Photo :AKI ISHII

http://kyary.asobisystem.com/

『10th ANNIVERSARY JAPAN TOUR 2022 -TOUR FINAL- UMA105』@日本武道館 セットリスト
-OPENING SE-
エクスプローラー
Drinker
おやすみ
きまま
とどけぱんち
コスメティックコースター
おとななこども
No No No
ちゃみちゃみちゃーみん
KISEKAE
おしえてダンスフロアー
くらくら
夏色フラワー
Super Scooter Happy
さいごのアイスクリーム
ぱみゅぱみゅレボリューション
ピカピカふぁんたじん
なんだこれくしょん
KPP ON STAGE
バーチャルぱみゅぱみゅ

本編
01. インベーダーインベーダー
02. PONPONPON
03. きゃりーのマーチ
04. チェリーボンボン
05. ピンポンがなんない
06. ちょうどいいの
07. でもでもまだまだ
08. きゃりーANAN
09. パーフェクトおねいさん
10. メイビーベイビー
11. Ring a Bell
12. すんごいオーラ
13. こいこいこい
14. ファミリーパーティー
15. MY ROOM
16. Scanty Skimpy
17. シリアスひとみ
18. ゆめのはじまりんりん
19. つけまつける
20. み
21. のりことのりお
22. Unite Unite
23. もったいないとらんど
24. キミに100パーセント
25. Point of View
26. きらきらキラー
27. もんだいガール
28. Crazy Party Night~ぱんぷきんの逆襲~
29. 完全形態
30. きみのみかた
31. スローモ
32. じゃんぴんなっぷ
33. DE.BA.YA.SHI. 2021
34. キャンディーレーサー
35. どどんぱ
36. ファッションモンスター
37. みんなのうた
38. スキすぎてキレそう
39. 100%のじぶんに
40. ぎりぎりセーフ
41. おねだり44°C
42. CANDY CANDY
43. ふりそでーしょん
44. Jelly
45. do do pi do
46. 恋ノ花
47. world fabrication
48. RGB
49. 原宿いやほい
50. かまいたち
51. ガムガムガール
52. 5iVE YEARS MONSTER
53. キズナミ
54. 演歌ナトリウム
55. 音ノ国
56. トーキョーハイウェイ
57. きみがいいねくれたら
58. 良すた
59. にんじゃりばんばん
60. 最&高

ENCORE
01. 一心同体
02. ちゃんちゃかちゃんちゃん