イ・ジナ VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

まもなく初来日公演!韓国の音楽家たちが絶賛するシンガーソングライターが語った背景。

韓国のシンガーソングライター、イ・ジナの初来日公演が10月20日(日)と21日(月)に東京、23日(水)に大阪で開催される。2014年にサバイバルオーディション番組『K-POP STAR 4』への出演で注目を集めたイ・ジナは、本格的なジャズピアノを弾きながらも、ポップなメロディーと甘くやさしい歌声で聴く者を魅了し、同番組ではJYPエンターテインメント創設者のJ.Y. Parkらも絶賛。最新アルバム『Hearts of the City』は韓国のグラミー賞と呼ばれる「韓国大衆音楽賞」で最優秀ポップアルバムを受賞するなど、その音楽性は各所から高い評価を受けている。多くの韓国フリークが待ち望む来日を目前に控えた彼女に、日本ではあまり伝えられていないバックグラウンドを語ってもらった。

■ジナさんは『K-POP STAR 4』の出演で注目を浴びましたが、ご自身の中ではどんな経験でしたか?

イ・ジナ とても貴重な経験でしたし、私の音楽を多くの人に知らせることができて、今でも本当に感謝しています。初めは心配もありましたが、挑戦してよかったと思います。

■その『K-POP STAR 4』で披露されていた“Yum Yum Yum”は、ライブでも定番の代表曲になっていると思います。個人的にはジャズと童謡が混ざったようなギャップが素敵だなと思っているのですが、どんなきっかけで生まれた曲だったんですか?

イ・ジナ ピアノの練習をしていた時に、おもしろ半分で「にゃむにゃむにゃむ〜」と歌っていたんです。それをひとりでレコーディングし始めたら楽しくなってきて、曲として完成させようと思いました。実際に完成して披露したら、みんなが喜んでくれたので、とてもうれしかったです。

■何かテーマがあって作った曲ではなかったんですね。

イ・ジナ はい。“Yum Yum Yum”に限らず、私の曲はピアノを弾いているうちに自然と出てきたものが多いです。そのまま流れるように完成させるというか。

■“Yum Yum Yum”はかわいい曲調が印象的な一方で、「記憶を全部食べてしまえば、あなたのことを忘れられる」というようなことを歌っていて、別れた恋人への未練を断ち切る歌なのかなと思いました。歌詞はどういう感じで作ったんですか?

イ・ジナ その当時、今は忘れたい別れの痛みを経験していたのですが、ほとんど乗り越えた頃だったので、「これからは心が幸せになってもいいんだ」という思いを込めて曲を作りました。

■ジナさんの曲はジャズを土台にしているものが多いと思います。音楽のバックグラウンドについても教えてほしいのですが、ピアノはいつから弾いていたんですか?

イ・ジナ 3〜4歳の頃から弾いていました。家にアップライトピアノがあったんです。姉もピアノを弾いていたので、姉の音楽を聴きながら育ちました。それと、昔から教会音楽にも興味があって、ゴスペルも好きでした。

■ジャズを好きになったのは、いつからなんですか?

イ・ジナ 中学校1年生くらいだと思います。ジャズのコードに魅力を感じて、それからジャズピアノを学ぶようになりました。

■中学1年生でジャズピアノを弾いている女の子は珍しいと思うんですけど、何がきっかけだったんですか?

イ・ジナ それも姉の影響ですね。姉が持っていたCDを一緒に聴いていたんです。それで小野リサさんや、ローラ・フィジィさんなどのジャズボーカルを知りました。ピアニストだと、オスカー・ピーターソンさん、上原ひろみさんなどをよく聴いていましたね。

■ジナさんの音楽は、今挙げられた方々から影響を受けた感じでしょうか?

イ・ジナ 数え切れないくらい多くのアーティストから影響は受けていますが、その方々からは確かに影響を受けていると思います。あと、ジェフ・ローバーさんもすごく好きで、よく聴いていました。

■自分で曲を作って歌い始めたのは、いつ頃だったんですか?

イ・ジナ 小学校6年生から中学1年生くらいだったと思います。その頃からピアノを弾きながら歌うことが自然なことになりました。

■今はシンガーソングライターとして活動されていますが、どんなアーティストになりたいと思っていたんですか?

イ・ジナ 昔からずっと考えている目標は、私の音楽を通じて喜びを取り戻せる、そんな音楽を作りたいと思っています。誰かの力になれる音楽を作りたいです。

■力になれる音楽ということですが、僕は去年リリースされたアルバム『Hearts of the City』を聴いて、すごく元気をもらいました。このアルバムはジナさんの実体験を元に作られた曲が多いと思うのですが、作品に込めたメッセージを教えていただけますか?

イ・ジナ 情熱的にがんばって20代を生きて、結婚もして、いろんな考えをしました。なのに、ずっとアクセルを踏んでいこうと思っても、なぜかときどきブレーキがかかる感じがあったんです。それで、長い旅行もして、心の換気もする中で、人生の真理のようなものに少しだけ気づけた気がしていて。そういう今の年齢で感じられること、力を抜いて自然に出てきたものを歌ったアルバムになったと思います。

■アルバムを作る前はスランプになっていたという韓国の記事を見たのですが、そのブレーキがかかる感じというのは、どんなものだったんでしょうか?

イ・ジナ ずっと「行かなきゃ」と思うんですけど、いつまで、どこまで行けばいいのかわからなかったんです。私は今幸せなのに、世の中には「行かなきゃ、行かなきゃ」という雰囲気があったというか。私の気持ちとは乖離していたように感じたんです。

■そうだったんですね。アルバムに収録されている“Accepting”では、今お話しされたような気持ちと、そこから一歩前に進もうとする決意のようなものが歌われていると思いました。

イ・ジナ そうですね。“Accepting”にはスランプを克服しようという意味を込めていて、私の内面や葛藤を受け入れる過程で生まれた曲です。これ以上、無理に前に進もうとするのではなく、ありのままの自分を受け入れ、自然に前に進んでいこうという気持ちを込めました。

■タイトルの“Accepting”も「受け入れる」という意味ですしね。僕はこの曲を聴いて、今の自分を受け入れることも大事なんだなと思って、心が軽くなったんです。

イ・ジナ ありがとうございます。そう言っていただけてうれしいです。