キング・オブ・デスコアが待望の初来日公演、すべての針が振り切れた最狂のエクストリーム・メタルが爆発!
LORNA SHOREは、世界最高峰のデスコア・バンドと呼んでいいだろう。3代目フロントマンにウィル・ラモス(Vo)が抜擢され、2021年に出たEP『…AND I RETURN TO NOTHINGNESS』収録の“To the Hellfire”がTikTokでバイラルヒットを記録。その翌年の2022年に出た4thアルバム『PAIN REMAINS』が欧米メディアで大絶賛され、イギリスの『METAL HAMMER』誌で2022年のベスト・デス・メタル・アルバム、アメリカの『LOUDWIRE』誌では2022年のベスト・アルバム・オブ・ザ・イヤーに輝き、さらに衆目を集める形となった。ここ日本では2020年に一度来日が予定されていたが、前任ヴォーカル脱退でキャンセルになったため、やっと初来日公演が実現したのだ。今回は一夜限りというプレミアム感も手伝い、会場であるZepp DiverCityは早々とソールドアウト。開演前から「未確認のモンスター・バンド」をこの目で見届けたいと欲する観客の熱気を肌身に感じるほどであった。
開演19時、EMINEMの“Lose Yourself”がSEで流れた後、サポートアクトのPaleduskが登場だ。オープニング曲“AREA PD”からKAITO(Vo)、DAIDAI(Gt)、TSUBASA(Gt)、BOB(Dr)のメンバー4人が刀をブン回すように観客に襲いかかり、会場の温度を引き上げていく。中盤過ぎの“SLAY!!”演奏後、「LORNA SHOREが初めて日本に来てくれました。感謝の気持ちを込めて、一つになった気持ちを表したい。Make Some Noizeー!」と煽るKAITO。さらに「LORNA SHOREとは2年前のヨーロッパで楽屋が隣同士で友達になった。(2024年)9月にライブが売り切れたみたいで、こういうバンドやカルチャーが好きな人がこれだけいる!ここまでセトリ、激しい曲をやってきたけど、バンドの色が濃い3曲をやる」と伝え、“RUMBLE”、“Q2”、“PALEHELL”と立て続けに披露。ラウドかつポップ、なおかつ多面性に優れたエレクトロ・ミクスチャーでフロアを沸かした。

転換BGMにNIGHTMAREの“the WORLD”、マキシマム ザ ホルモンの“絶望ビリー”、ボニー・タイラーの“Total Eclipse Of The Heart”が流れた後、19時55分にようやく暗転。興奮を抑えきれない観客によるバンド・コールが起きる中、LORNA SHOREは最新作『PAIN REMAINS』収録の冒頭曲“Welcome Back, O’ Sleeping Dreamer”で本編スタート。シンフォニックなムードで会場を包むと、ウィル、アダム・デ・ミッコ(Gt)、アンドリュー・オコナー(Gt)、マイケル・イェーガー(Ba)、オースティン・アーキー(Dr)のメンバー5人が姿を現す。ステージ後方からライトが激しく明滅する中、メンバーは演奏に全神経を集中させているようだった。容姿は確認しづらいが、それも演出の一つだろう。また、ステージ最前にはお立ち台が横一列に並んでおり、そこに片足を置いてプレイしたりと自由にお立ち台を使う様も印象的だった。実際の演奏は音源の世界を裏切らない正確無比なアプローチである。凄まじく手数の多いドラム、テクニカルかつ流麗なギター、さらにウィルのスクリーム・ヴォーカルも切れ味抜群だ。

クワイアから始まる“Of the Abyss”に移ると、重厚なドラムの連打や断末魔のごときスクリームは迫力が増していく。さらに疾走パートやブレイクダウンで緩急を付けたドラマ性も凄まじい限り。続く“…And I Return to Nothingness”も2バスで畳み掛けるスピーディーな曲調で、アダムの天に駆け上がるギターソロは一条の光が差し込むような高揚感をもたらす。「アリガトウ!」という感謝の言葉とともにウィルは少し長めのMCを挟み、初来日公演が実現したことを心から喜んでいる様子だった。その興奮は間違いなく観客にも伝わっていただろう。PaleduskのKAITOがゲスト参加した“Sun//Eater”ではクラウドサーファーが一気に増え、ウィルは前方に流れてくる観客と握手して笑顔を浮かべたりと、強面の音楽性とは正反対のフレンドリーな対応を見せていた。“Cursed to Die”を経て、“into the Earth”ではウィルは観客側にマイクを向けてシンガロングを促し、「モッシュピット!」とアジテートして会場との一体感を高めていった。

ショウは後半に差し掛かり、哀切なアコギをイントロに配した“To the Hellfire”をプレイ。演奏が始まった瞬間、大きな歓声が上がり、ステージ後方から赤いライトが照り付けると、観客の熱気は右肩上がりに急上昇。この曲でもウィルの多彩なスクリームが光っており、特にアウトロ部分のピッグスクイール(※豚の悲鳴のような発声方法)は曲の不気味さを底上げしていた。そして、最新作『PAIN REMAINS』のハイライトにしてクライマックスである“Pain Remains I: Dancing Like Flames”〜“Pain Remains II: After All I’ve Done, I’ll Disappear”〜“Pain Remains III: In a Sea of Fire”をここで披露。映画仕立てのショッキングなMVも話題性十分だったが、この3部作をライブで聴くことができる日を心待ちにしていた人も多かったはず。アダムのエモーショナルなギター、爆撃機のようなドラムが鳴り響き、螺旋階段を駆け上がるようにドラマ性を高める展開は悶絶モノ。アグレッシブに攻めた後は叙情パートで起伏を付け、スクリームも一つの楽器となって楽曲の情感を引き出している。凶暴なデスコアに華々しいオーケストラを加え、めくるめくるストーリー性で観る者を釘付けにしていた。パートによって観客がジャンプして大騒ぎする場面もあり、後半はケータイのライトが灯される感動的な景色もあり、会場全体を飲み込む圧倒的なスケール感は「美しい」という表現がぴったり当てはまるものだった。

全10曲、1時間強に及ぶライブはあまりにも濃密で、1ミリも隙のない構築美にただただひれ伏した。今回の初来日公演は間違いなく伝説の一夜と位置付けていいだろう。海外に負けじと、ここ日本でLORNA SHOREの真の凄さが口コミで広がることを期待している。次回の来日公演が俄然楽しみになってきた。さらに大きな会場で、我々の度肝を抜くパフォーマンスを魅せてくれるに違いない。
Text:荒金良介
Photo:Nicholas Chance
LORNA SHORE『LIVE IN TOKYO 2025』@Zepp DiverCity セットリスト
01. Welcome Back, O’ Sleeping Dreamer
02. Of the Abyss
03. …And I Return to Nothingness
04. Sun//Eater(With Kaito from Paledusk)
05. Cursed to Die
06. Into the Earth
07. To the Hellfire
08. Pain Remains I: Dancing Like Flames
09. Pain Remains II: After All I’ve Done, I’ll Disappear
10. Pain Remains III: In a Sea of Fire