MADKID VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

異世界を行き来する「佐々木とピーちゃん」の作風を落とし込んだ新曲“FLY”を語る。

MADKIDがデジタルシングル『FLY』をリリース。テレビアニメ「佐々木とピーちゃん」のオープニングテーマとなっている本作。アニメソングらしい爽やかな疾走感と、彼らの強みでもあるダンスミュージック×ロックの要素が絶妙なバランス感で混ざっている楽曲だ。今回は、先日全国ツアーを終えたばかりのMADKIDにインタビューを決行。“FLY”の制作やツアーの感想、2024年に向けた意気込みなど、YOU-TA、YUKI、KAZUKI、LIN、SHINの5人にたっぷりと話を伺った。

■早速、新曲“FLY”のお話を聞かせてください。今作はテレビアニメ「佐々木とピーちゃん」のオープニングテーマとなっていますが、原作を読んでどのような曲のイメージが浮かんだのでしょうか?

LIN 原作を読んで、異世界転移ではあるんですけど、今までの感じとは少し違うと感じたんです。異世界に行きっぱなしではなく現実に戻ってきたりもするので、2つの世界のギャップを出しながら歌詞を書けたらいいなと思いながら作りました。物語の中で書かれている設定を自分たちのいる現実と絡めながら書きたいと思っていました。

YUKI 僕も原作を読んで、主人公が中年の男性だったり、異世界で得たものを現実で売りさばいてお金儲けするみたいなチートができない設定があったり、リアリティがあって面白いなと感じました。僕が曲の1番の中で担当した歌詞には、「ビジネス」とかそういう単語を使っていて。というのも、主人公がサラリーマンということもあって、そういう面も作品中では描かれていて、それも面白かったんです。曲の雰囲気もその部分で大きく変わって、ヒップホップな感じになるんですけど、海外のラッパーってお金や社会情勢のことも歌詞に書いたりしますし、曲調とも相性がいいのかなと。曲とストーリーがマッチしていると思います。

KAZUKI 今回は僕らが今まで担当させていただいた作品とはちょっと違う魅力のある作品だと感じました。曲も爽やかかと思いきや、YUKIのラップで一気にガラッと変わるのが作品とマッチしたなと思います。

YUKI 曲調が変わるラップの部分では声質を変えてみたり、フロウも昔っぽい感じにしてみたり、あえて異質な感じを出そうと思っていたんです。レコーディングの時も、エンジニアさんが昔聴いていたようなラッパーが使う声だと言っていて。でも裏のアドリブは今っぽくしていたり、そういう遊びを入れながら作りました。なおかつ、歌詞には文鳥が言ったセリフを入れたりもしていて。2番だから好きにやっていいけど、少しアニメの要素も入れつつ作っています。

■“FLY”はアニメソングとしてのポップな印象と、みなさんらしいパワフルでダンサブルな曲調のメリハリがすごく魅力的だと感じました。自分たちらしさとタイアップのバランス感は意識しているのですか?

LIN アニメのタイアップをやらせてもらうのはすごく名誉なことですけど、そこに対して自分たちができることは、タイアップじゃなかったとしてもカッコいい曲を作ることだと思うんです。なので、タイアップだから上手いことをやろうというよりは、今までの経験値が溜まってきた上で、その時できる一番いいものを作ろうという感じですね。

■“FLY”は先日行われたツアーファイナルで初披露でしたが、披露してみていかがでしたか?

SHIN イントロの部分でみんなと顔を合わせて始まるんですけど、すごくわくわく感がありました。見ている方たちも、「これから何が始まるんだろう?」というわくわく感があったと思います。実際にみんなと顔を合わせてから散らばっていく部分はすごく楽しかったですし、チームだなと思いました。

KAZUKI サビの振りに、飛んでいるイメージの動きをするところがあるんですけど、そこが個人的にはすごく印象に残る箇所だなと思っていて。今までのゴリゴリ系とは打って変わって、曲も振付けも覚えやすいのがこの曲の好きなところです。

■ライブで披露されているのを見て気付いたのですが、今回は落ちサビをラッパーであるLINさんが歌っていますよね。それにはなにか意図があったのでしょうか?

LIN 最初はボーカル陣が歌う予定だったんですけど、“FLY”はYUKIの方がラップが多かったので、「俺のパート少ないから俺が歌うよ」って言ったら、「あ、そう?」って。(笑)

YOU-TA 本当にそれだけですね。(笑) でも確かに今まであまりやったことないかもしれないです。

LIN なので、狙っていったというよりは、結果的にそうなったという感じです。

■そうだったんですね。すごく新鮮に感じました。“Last Climber”や“One room Adventure”もそうですが、“FLY”もラスサビの後、もう一度山場となる部分が組みこまれている曲の構成ですが、そういった作りもMADKIDらしさになっているように感じました。

YUKI 確かにMADKID節になっているような気がします。

LIN 確かに。曲の最初の方に出てきたフレーズを曲の終わりで使う曲も結構ありますよね。自分としては、曲のお尻にも来るというのを考えて作っていないので、歌い終わった後にそのパートが来ると、自分でも予想しなかった雰囲気が出たりして楽しいなと思います。そういう展開の曲は僕らに限らずあると思いますけど、最後の最後に俺とYUKIが出てくる面白さはあると思うので、5人でやっているからこその味なのかなと思います。

■今回の楽曲は英詞も多いですが、レコーディングはいかがでしたか?

SHIN 英語が多かったので、プリプロの段階ですごく頑張ったんです。スタッフさんから「これ歌えなかったら歌割り変えるから」と言われていたので、すごく頑張りました。(笑) あとは2サビの「独りじゃ出来なくたって」の部分は、LINのディレクションで「二面性を持たせたい」というのがあって。そのディレクションのおかげで、自分的にも納得できるテイクが録れたと思うので、是非聴いて欲しいです。

KAZUKI 今回のレコーディングは英語が多かったですけど、そこまで苦戦することなく歌えました。1サビの歌詞で、「きみとなら Fly I decided to become a sage of the stars, oh like you」という歌詞があって、プリプロの時は「Fly」のあとの「I」が消えちゃう感じだったんですけど、「そこはちゃんと打ち出して欲しい」ということで、歌い方を変えつつ録りました。あとは最後のフェイクはブースに入ってから考え始めたんです。LINのデモのフェイクを聴いていたので、それが頭では再生されていたんですけど、LINが「せっかくフェイクをやるなら自分で考えた方がいい」と言ってくれて。ブースに入ってその場で何回もループしてもらって決めました。

■先日完走した『MADKID LIVE TOUR 2023 -SIN-』のお話も聞かせてください。全11都市16公演のツアーでしたが、どんなツアーになりましたか?

LIN 本当に一瞬に感じました。今まで自分たちがやってこなかった、ユニットとソロをひとつのライブの中に組みこんだりもしましたし、後半はセットリストを変えたりもして。だからこそ、1公演1公演を大事にできたかなと思います。あとは今まで行かなかった地方にも行けて、自分たちで車で移動したり、今までやらなかったことをやったりして、すごく印象に残るツアーだったなと思います。

SHIN 1公演目とファイナル公演とでは、お客さんとの繋がり方が違うなと感じました。ライブを積み重ねるごとに、お客さんの反応だったり一体感が強くなって、ライブ感ができあがっていったツアーだったと思います。ライブハウスならではの盛り上がりも実感しました。あとは自分の出身地の宮崎県でライブができて、メンバーやスタッフさん、ファンの方たちが自分の地元に来て、一緒にライブができたのがすごく幸せな時間でした。

YOU-TA SHINが言った通り、お客さんと見ている先が一致するようなツアーだったと思います。今まで以上にお客さんと一緒に作り上げている感覚があるツアーだったというか。お客さん側がより前のめりに来てくれる感じが、公演ごとに強まっていきましたし、ファイナル公演は本当に一体感がすごかったです。イヤモニをしていても声が漏れてくる感じは、『Animelo Summer Live(アニサマ)』や、『ANIMAX MUSIX(アニマックス)』で感じたものに近いというか。これまで活動してきた中でも一番収穫があったツアーなんじゃないかと思います。より明確に自分たちのやるべきことが固まってきたツアーでした。

KAZUKI 僕も回を増すごとにお客さんと一緒に作り上げていったのを実感しました。「この曲のこの部分は踊らずに煽ろうか」みたいなことも決めていたんですけど、それをお客さんがすごい盛り上がりで返してくれて。ライブを重ねるごとに、「ここを煽ろう」とかが決まっていったので、本当に一緒に作り上げていったライブだったと思います。『アニサマ』や『アニマックス』をきっかけに来てくれた方が多かったのも嬉しかったですし、声出しが戻ってきたのを実感できたライブでもありました。

■ファイナル公演のMCでは、海外に住んでいてMADKIDのライブのために来日した方がいらっしゃったとお話されていましたね。

KAZUKI そうなんですよ。名古屋公演にいらっしゃって。すごくびっくりしました。

YUKI 『アニマックス』や『アニサマ』など、大きいステージに立ってからのツアーだったので、今年はより気持ちに余裕があったというか、いつもとは違うフィーリングで臨めました。あとはそういった大きな会場でやるのと、そこよりも小さいライブハウスでやるのとでは、やるべきことは変わらないという認識が固まってきたのも感じました。あと、今回長期間いろんなところに行ってみて、世間で活動している大きなツアーを組んでいるアーティストへのリスペクトも増しました。いろんなところに行って、ライブをこなして、大きなツアーを回っている人たちって本当にすごいし、僕らもこれからそうなっていくために、いろいろ考えていかないといけないなと思いましたね。

■ファイナル公演は、セットリストの組み方や盛り上げ方などに、『アニサマ』や2023年に開催された『MADKID ALLTIME BEST LIVE -Future Notes-』などの影響も感じたライブだったように思います。セットリストを組むにあたってこだわった点や、意識していた点はあるのでしょうか?

LIN ラストはやっぱり「それまでのツアーとは違うことをしたい」みたいな気持ちはありましたね。

YUKI ファイナル公演は、予定では『盾の勇者の成り上がり』の曲を2曲やって、MCを挟んでもう2曲やるという流れだったんですけど、体力的に厳しいけど3曲連続でやった方が流れが綺麗だと思って変えたりもしました。話し合って決めたセットリストを実際にゲネプロでやってみると、「ちょっと違うな」というのを感じたりもするので、スタッフさんたちとも話し合って、調整するというのはかなりやりました。そういうのがすごく重要だなと感じましたね。

LIN ステージに立つ側と、そうでない側の曲の受け取り方には結構差があるので、自分たちだけで決めるのではなく、いろんな人とディスカッションしながら決めるのが大事なんだなと思いましたね。その影響が今回は出ていると思います。自分たち的には「ここでこの曲はそんなに……」と思っていても、入れてみたらよかったというのが結構ありました。

YOU-TA あとツアーファイナルに限って言うなら、最近のワンマンライブと大きく違うのは、カバー曲を入れなかったことですかね。今までは結構カバー曲をひとつの起爆剤として入れていて。でも今回はそこに頼らなくてもよくなったと思って、それは自分たちの積み重ねてきたことがあるからこそだなと思いました。