Måneskin『SUMMER SONIC EXTRA』ライブレポート@豊洲PIT 8月18(木)

イタリアで権威のある”サンレモ音楽祭2021”優勝、そして、ヨーロッパ最大の「ユーロビジョン・ソング・コンテスト2021」で優勝を果たした規格外の新鋭、待望の初来日公演!

会場の豊洲PITに到着すると、ガンズ&ローゼズ、メタリカなどのハード・ロック、ヘヴィ・メタルのTシャツを着ている人を多く見かけた。かと思えば、ELLEGARDENや10-FEET主催の野外フェス「京都大作戦」のTシャツを着た人も目に止まり、マネスキンは既に洋楽、邦楽の敷居を超えた“ロック・アイコン”的な人気を獲得しているんだなと感じた。また、会場に着くまでは若い女性ファンが多いのではと推測していたが、男性を含めて幅広いファン層が詰め掛けており、老若男女に愛される異例の若手バンドとして支持されていることを思い知る。

『SUMMER SONIC 2022』への出演の2日前に開催されたマネスキン日本初の単独公演は即完状態となった。18時59分に暗転すると、ダミアーノ・デイヴィッド(Vo)、トーマス・ラッジ(Gt)、ヴィクトリア・デ・アンジェリス(Ba)、イーサン・トルキオ(Dr)のメンバー4人が颯爽と登場。いきなり“ZITTI E BUONI”を投下するや、ダミアーノの巻き舌ヴォーカルと下半身を強打するヘヴィ・グルーヴにフロアの温度は一気に上がる。また、ヴィクトリアは1曲目から前蹴りのアクションを決めたりと躍動的に動き回り、早くも場内は歓喜に包まれていた。その光景を見て、「Amazing!」とダミアーノは叫んでしまうほどだった。“IN NOME DEL PADRE”に移ると、大地を揺さぶる極太グルーヴを轟かせ、体が反応せずにはいられない。後半は粘り気のあるラップパートを経て、トーマスが煌びやなギターソロを鳴らす流れも最高であった。リズミックな“MAMMAMIA”に突入すると、観客も自然とジャンプし、底知れぬ楽曲パワーをまざまざと感じ取ることができた。

「こんばんは、元気ですか?」とダミアーノが挨拶し、彼らの名を世界中に知らしめたフランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズのカバー“BEGGIN’”を披露。アカペラ調の歌い回しから爆発的な熱狂ぶりで観客に受け入れられている。やはりこの曲を待っていた人は多かったのだろう。ふと横を見ると、3歳ぐらいの娘を抱えて楽しそうに騒ぐお父さんもいて、実に微笑ましい限りだった。歌とギターがメロウに絡み合うミドルテンポの“CORALINE”を挟んだ後、アッパーな“CLOSE TO THE TOP”へ。ここでダミアーノはドラム台の上で「Put Your Hands Up!」と煽りまくり、会場を一つに束ねていく。また、イーサンがタイトなビートを叩き出す中、トーマスはステージ中央でギターソロを奏で、ヴィクトリアはそこに寄り添って演奏に没入する。同期を一切使用しない剥き出しのバンドアンサンブルに加え、メンバー4人から放たれる圧倒的な人間力こそが、マネスキンの魅力と言っていい。ミニマムにしてマキシマムなインパクトを与えるパフォーマンスは、「カッコイイ!」の一語に尽きてしまう。ロックの基本フォーマットを堂々と20年代に鳴らすことで、10代、20代のファンはそれを新しく感じるだろうし、上の世代は「これがロックの本道だろ!」とガッツポーズを取りたくなるのではないか。

Måneskin『SUMMER SONIC EXTRA』

ダミアーノのアニメ好きが高じ、アニメ『進撃の巨人』の「心臓を捧げよ!」のフレーズを突如口ずさむと、次は“SUPERMODEL”に雪崩れ込む。シンプルなリフに体を揺さぶられた後、ノスタルジックなイントロを用いた“FOR YOU LOVE”へと繋ぐ。2ndアルバム『Teatro D’ira: Vol.I』の中でもレッド・ツェッペリンの影響を感じさせるナンバーだ。ジミー・ペイジよろしくトーマスの哀愁を帯びたギターを軸に、ジャムを繰り広げる様にも興奮してしまった。もしかすると世間的には急にスポットライトを浴びた新人と受け取る人もいるかもしれない。しかし、マネスキンの音楽的な原点はストリートにある。路上で鍛え上げてきた鋼の演奏力は伊達ではなかった。そして“TOUCH ME”にザ・フーの“My Generation”を連結させて、「俺たちの時代なんだ!」とダミアーノがシャウトする場面には背筋がゾクッとした。

その流れからヒット曲“I WANNA BE YOUR SLAVE”に入ると、観客はタガが外れたように騒ぎ出す。そのフロアに向かって「Down!」と呼びかけ、観客をジャンプさせると、お祭り騒ぎは俄然ヒートアップ!間髪入れずにブリトニー・スピアーズの“WOMANIZER”、ザ・ストゥージズの“I WANNA BE YOUR DOG”とカバー曲を畳み掛け、会場をさらに焚きつけていった。本編ラストは“LIVIDI SUI GOMITI”で締め括り、アンコールにもきっちり応えるマネスキン。トーマスのギターソロを経て、バラード風味の“LE PAROLE LONTANE”を披露。哀切な歌メロを丁寧に届けた後、最後は今日2回目となる“I WANNA BE YOUR SLAVE”が炸裂。しかも1回目を超える獰猛なグルーヴをこれでもかと突きつけてくる。ダミアーノは大車輪のごとく左腕をブンブン振り回し、再び観客を座らせてジャンプさせたりと、豪放なアクションで観客を興奮のるつぼに叩き落とした。もう初来日にして伝説の名に値する素晴らしいパフォーマンスだったと断言したい。

次回の来日公演が日本武道館だったとしても、何ら驚きを感じないだろう。マネスキンの規格外のスケール感は、既にアリーナ、スタジアムクラスに達していると言っても過言ではない。事実、2日後の『SUMMER SONIC 2022』における肝の座ったステージ(千葉マリン・スタジアム)を目撃し、それを確信したのであった。20年代を象徴するモンスターバンドの快進撃はまだ始まったばかりだ。今後の成長と活躍に期待せずにはいられない。

Text:荒金良介
Photo:Yoshie Tominaga

https://www.sonymusic.co.jp/artist/maneskin/

Måneskin『SUMMER SONIC EXTRA』@豊洲PIT セットリスト
01. ZITTI E BUONI
02. IN NOME DEL PADRE
03. MAMMAMIA
04. BEGGIN’
05. CORALINE
06. CLOSE TO THE TOP
07. SUPERMODEL
08. FOR YOUR LOVE
09. TOUCH ME
10. I WANNA BE YOUR SLAVE
11. WOMANIZER
12. I WANNA BE YOUR DOG
13. LIVIDI SUI GOMITI
14. LE PAROLE LONTANE
15. I WANNA BE YOUR SLAVE