マルシィ one man live tour 2022 “Memory” ライブレポート@渋谷CLUB QUATTRO 7月28日(木)

マルシィ one man live tour 2022 “Memory”

バンド初の全国ツアー、4公演すべてソールドアウト!人気上昇中のマルシィが魅せた切迫したエモーションの煌めき

「ツアーはバンドでやりたいことの1位で、そのツアーが残念ながら終ろうとしていて……想像以上に楽しかったです」[フジイタクミ(Ba)]

「ツアーは初めてで、ライブが1年半できなかったけど、来てくれて本当に嬉しい。感無量です!」[shuji(G)]

「初ツアー、たくさんの人が応募してくれたみたいで、めちゃくちゃ感謝してます。みんなの日常や人生に寄り添えるバンドでありたい」[吉田右京(Vo&Gt)]

アンコールに応えて、再び現れたメンバー3人の発言は喜びに溢れていた。バンドにとって初の全国ツアーということもあり、感慨はひとしおだったのだろう。福岡発の3人組、マルシィの1st ALBUM『Memory』レコ発ツアーマルシィ one man live tour 2022 “Memory”は、全国4カ所で開催され、全公演ソールドアウト。昨年12月に地元・福岡で行われたワンマン公演では、既に10倍以上のチケット応募があったそうだ。今ツアーのファイナル(渋谷Club Quattro)もチケット争奪戦を潜り抜け、大勢の観客が詰めかけていた。

SEが流れると、吉田、shuji、フジイ、加えて、サポートドラムである藤田亮介(Dr)のメンバー4人が登場。「手と手繋いでキスをした こんなことして良いのかな」と初々しい恋模様を描いた“プラネタリウム”で本編スタート。疾走感溢れる演奏も相まり、観客はクラップや拳を突き上げ、滑り出しから好調なリアクションを獲得。イントロから華やかなストリングスが鳴り響くと、次は“オードトワレ”をプレイ。中盤にshuji、フジイが手拍子で煽る場面もあり、会場にはさらなる一体感が生まれていった。

それから“雫”、“遠吠え”と哀切なメロディを丁寧に届けた後、吉田は「全員で精一杯歌って、最高の1日を作りたい」と前置きして“もしもの続きを少しだけ”へ。「コロナ禍で観客と一緒に歌うことができない分、自分たちが全力で歌い、演奏で伝えるんだ!」という気迫に漲っている。また、吉田、shuji、フジイのメンバー3人はフロアに背を向け、藤田のドラムに合わせて一致団結する様子にも胸が熱くなったのは言うまでもない。

そして、“君のこと”のイントロでは自然とクラップが沸き起こり、“ワスレナグサ”においては王道のポップスで観客の心を焚きつけていった。その後に披露されたのは“未来図”だ。楽曲の後半からハンドマイクで感情を込めて歌い上げていく。打ち込み主体の明るい曲調ゆえに、ライブの流れにもいいフックをもたらしていた。中盤に差し掛かると、「(ライブの進み具合が)早いね。どう、タクミ?渋谷は?」と吉田が話を振ると、フジイは「渋谷、凄いですねぇ」と返し、shujiは「初めからめっちゃ泣きそうです」と既に感極まっている様子だった。それから冬の景色に誘う“白雪”を披露。鈴の音やストリングスを配した壮大な曲調で、メロディの良さはマルシィの楽曲の中でもトップクラスと言えるもの。

“花びら”を経て、ここで雰囲気をガラッと変えるように“牙”を投下。曲名通り、新作の中でもロック度の高いナンバーだ。“未来図”同様に、新境地を切り拓いた楽曲でもある。ブンブンうねるベースライン、緊迫感を帯びたギターフレーズといい、火花散るアンサンブルにロックバンドとしての矜恃も窺えるほどであった。「次の曲はアルバムの中で一番思いを詰めた曲」と言うと、“ラブストーリー”を披露。吉田は両手でマイクを握りしめ、エモーショナルな歌声を解き放つ。「出逢ったあの日に戻りたい」という歌詞をピュアな声色で歌い上げる様に、激しく感情を揺さぶられてしまった。ラストは“ピリオド”を挟み、アッパーな“最低最悪”で盛大に締め括った。

アンコールに入ると、冒頭で記した発言に加え、関係者らに感謝の言葉を述べた後、「ほかの3会場ではやっていない、僕らの始まりの曲」と告げ、“Drama”をプレイ。切実な思いの丈をメロディにぶつけると、最終曲“絵空”ではより熱のこもった演奏でライブの幕を閉じた。メンバー4人でお辞儀をし、記念の写真撮影まで終わった後、「“絵空”ミスッた、後悔したくないんで。同じ曲を2回やるのは初めて……」と吉田は言い放ち、もう一度“絵空”をやる予想外の展開に。

ご存知の通り、彼らの楽曲は失恋をテーマに扱った曲が多い。あの日に戻りたいけれど、時間は巻き戻らない。二度とこんなに切なくて、悲しい感情にならないように、歌詞や楽曲にその気持ちを書き留めておく。一見、ダークに感じるかもしれないが、マルシィの歌は闇から一条の光を見出した「希望の歌」として受け止めることもできる。「後悔したくないんで」という吉田の言葉。それは、マルシィの楽曲の底流にある思いを吐露しているように響いた。最後の最後に起きた意外な結末。それも含めて、観客にとっては忘れられないファイナル公演として記憶されることだろう。

Text:荒金良介
Photo:横山マサト
https://www.universal-music.co.jp/marcy/

マルシィ one man live tour 2022 “Memory”  @渋谷CLUB QUATTRO セットリスト
01. プラネタリウム
02. オードトワレ
03. 雫
04. 遠吠え
05. もしもの続きを少しだけ
06. 君のこと
07. ワスレナグサ
08. 未来図
09. 白雪
10. 花びら
11. 牙
12. ラブストーリー
13. ピリオド
14. 最低最悪

ENCORE
01. Drama
02. 絵空