ましのみ VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

ましのみ『つらなってODORIVA』

■この曲はかなり壮絶ですね。(笑)

ましのみ 私は江國香織さんの小説が好きで、あの世界観というか…。10代~20代の女性の危うい感じや、初々しいんだけど大人びている感じ。それから狂気じみているんだけど美しい、みたいな。ガーッとのめりこむ恋愛や、周りが見えなくなる感じ等もその時期特有の衝動だったりするじゃないですか。あの空気感がすごく好きで。自分の作品でもあのようなものを残したくて挑んだ楽曲でもありました。

■この曲は、この世でたった二人しかいないかのような「二人ぼっち」感があります。

ましのみ そうそうそうそう!!

■でも個人的には、ましのみさんのこれまでの歌の根底にも、どれも「まっ、いいか」的な成分が含まれていた気がします。どこか妙なポップさや軽さを、どの主人公からも常に感じていたもので…。

ましのみ それは私自身がそれを持ち合わせていなかったが故に、逆に楽曲で求めいたからかも。どこかナチュラルではなく、自分を主人公に置いていない、物語的なところもありましたから。

■そのストーリーテラー的なスタンスって、すごく過去曲たちからは感じられます。となると今作での非常に赤裸々な部分に至った経緯が気になります。

ましのみ 「ストーリーテラー的」と称してくださいましたが、自分的には逆に、今までは自分の中のものを掘り下げてきた曲が多かった気がします。人と関わるのをヤメて、ネガになっていく中で生まれてきた楽曲たち、それをポジティヴに響くように改良していった結果とでもいうか…。対して主に2ndアルバムを出した後からですね。逆に外の価値観を取り入れて、自分なりに咀嚼してそれをなるべく自分のものにして出そうと移ったのは。私自身が価値観を広げた状態でナチュラルに書く。その方向にシフトし出しましたから。ようやく今作ではそこに至れたかなって。

■今作で私が不思議だったのは、聴いた後に妙な安堵感や帰着感の類いに包まれていた自分がいたところでした。なんか安心して安らげる地に辿り着けた感というか。決してそんな曲ばかりではないはずなのに。(笑)

ましのみ その辺りは私が欲していたからでしょう。その「安らげる」や「肯定する部分」、あとタイトルの「ODORIVA(踊り場)」も、ちょっと逃げていたり、一休みする、あとはどこか停滞している感じがしていたし。「上手くいっていないな…」と感じている時ってあるじゃないですか。それを表した面も多分にあるので。

■ちなみにどうしてそれを「踊り場」と称そうと?

ましのみ 階段だけだったら、どんどん上に昇って行くだけですよね。だけど踊り場がある場合、そこを通らないと上に昇れない場合もある。その踊り場を通ってもキチンと上へは更に昇れるから大丈夫だよ、と。あとは「どうしてもツラくなったら、その時はそこで踊ればいいじゃん」的な楽観さのダブルミーニングからです。そのように聴き手を肯定したり、聴いている側からすると肯定してもらえる、それを私自身も欲していたし。これは人と接するようになったのも大きいんですが、歌っている時も作っている時もかなり優しい気持ちで挑めるようになって。それらが素直に出せたんでしょう。

■その停滞した感じや最近上手くいっていない感じ=踊り場の発想も絶妙ですね。

ましのみ いろいろ恋愛をテーマに様々な場面のちょっと休め、寄り添える場所にしたいとのテーマが今作にはあって。そんな中、最初は「ループ」というワードが浮かんだんです。今回の5曲って結局グルグルとサイクルのように巡るものでしょうから。とは言え、一周はするけど、全く同じ場所に戻ってくるわけではないし、経験や実践を経て、結局近いところに戻ってはきても、全く一緒じゃないし、進化や次の対応の仕方も会得しているでしょうから。停滞したり、繰り返しのように映るかもしれないけど、少しづつでも進んでいる。そこから次に「螺旋階段」みたいなイメージが浮かんできて。でも、各々の存在を考えると、それともやや違うなって。一人ひとり恋愛するタイミングや回数も違うし、そもそも恋愛するかしないかもあるし。でも、踊り場みたいな存在は、それがどんな形やスペースであれ、みんな必要なんじゃないかと。そこからですね、連なっているけど着実に上に昇っていく、それにピッタリな「踊り場」という素敵な言葉に出会えたのは。

■ところで、どうして「ODORIBA」じゃなくて「ODORIVA」に?

ましのみ パッと見、GODIVAみたいじゃないですか。(笑) GODIVA自体なんかご褒美感があるし。(笑) 甘いし、ほろ苦いし、大人用のチョコレート!それらも含め、やはりそこは「VA」だろうと。(笑) 踊り場でちょっと一服して、そこで甘いものでも食べて、もう一度気を持ち直して更に上へと昇っていく。そんなイメージからですね。(笑)

Interview & Text:池田スカオ和宏

PROFILE
千葉県出身、1997年2月12日生まれ。キーボード弾き語りスタイルで活動している女性シンガーソングライター。2016年3月、ヤマハグループが開催する日本最大規模の音楽コンテスト「Music Revolution 第10回 東日本ファイナル」で約3,000 組の中からグランプリを獲得。2018 年2 月、大学在学中に『ぺっとぼとリテラシー』でメジャーデビュー。現在までに2 枚のアルバムと1 枚のシングルをリリース。また、LINE LIVE や短いSNSで発信するショート動画など、個性的な発信も行っている。2020年3月18日、ドラマ「死にたい夜にかぎって」のオープニング主題歌“7”を収録したミニアルバムをリリース。
https://mashinomi.com/

RELEASE
『つらなってODORIVA』

ましのみ『つらなってODORIVA』

初回限定盤(CD+DVD)
PCCA-04934
¥3,000(tax in)

ましのみ『つらなってODORIVA』

通常盤(CD)
PCCA-04935
¥2,000(tax in)

ポニーキャニオン
3月18日 ON SALE