ましのみ VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

ましのみ『つらなってODORIVA』

ましのみが、一旦ホッとし再び次へと昇る為の大事な<場=VA>をご提供

ましのみのメジャー1stミニアルバム『つらなってODORIVA』は、最近やや行き詰まったり、停滞したり、上手くいかないことが続いているあなたに是非聴いてもらいたい一枚だ。ここで歌われているのは決して直接的な「大丈夫だよ」等のメッセージとは違った類い。しかしそこには不思議と聴き手を、まるで一休みさせてくれる安堵や安心、気持ちを重ねたり軽くしてくれたりと、また次の上階へと前向きに昇らせてくれる「素(もと)」が5編に渡り収まっている。そんな「憩い」や「元気」、「一休み」や「柔らかいクッション」のような場所を寄与し、今回あえてそこを「ODORIVA(踊り場)」と名づけた彼女のその真意を紐解く。

■今作は先行配信シングル“エスパーとスケルトン”で得た、「生楽器と打ち込みの融合の成功」と、歌中に「僕ら」との言葉が現れているように、キチンと向き合い伝えるべく相手が伺え、そこに向けてシッカリと歌われている印象を強く持ちました。

ましのみ ありがとうございます!その辺りは“エスパー~”の際もそうだったんですが、前作アルバムを作り終えて以降、考え方や作り方をガラリと変えたところが大きいです。

■そのガラリと変えた部分とは?

ましのみ もう少し私が最後まできっちりと作品を監修するようになったんです。もちろんこれまでも制作にはシッカリと携わってはきました。だけど収録する曲等は、客観視も必要な手前、あえて周りの意見も取り入れたり、参考にしていたんです。いわゆる一緒に話しながら決めていて。それもあり、そこまで軸を通すといったことに重きは置かれていなかったんです。

■収録している楽曲のタイプも以前はかなり様々でしたからね。

ましのみ とは言え、各作品毎にテーマを持たせたり、着地点は一応それぞれ持ってはいて。1stだったら「どうやって突き刺すや、自己紹介。インパクトや爪痕を残す」など。2ndは「寄り添える作品でありつつも、実験的な面も交えたり…」と。それもあり、統一感や軸にはそこまで注力なく作っていました。逆にそれらが軸だったとも言えなくもないですが…。対して今作は、この1年ぐらいで自分の中で育まれてきた「割とナチュラルな感じで音源もライブも発信していきたい」「作り込むより、やりたい音楽を深めていきたい」との類いが現れ始めたんです。

■タイプやシチュエーションは様々ですが、今作はどこか芯の近い楽曲群ですもんね。

ましのみ 今回はある種、その「軸」をかなり意識して作りましたから。

■ちなみに今作にて、その「軸」にしたのは?

ましのみ 「恋愛」でした。それは決して人ではなく、いわゆる場面の方で。例えば“エスパー~”みたいに、ルンルンでこれから恋をするぞって瞬間とか、“薄っぺらじゃないキスをして”のように、愛しい人にのめりこんでいる時とか、“のみ込む”に関しては、ツラい恋愛をして、「相手と喧嘩した」「別れた」なんて、一人になりたい際に寄り添える曲を作りたかったし。“7”は、二人でいる時の上手くいったり、いかなかったりのダラダラした感じとか。“NOW LOADING”では、別れた理由は様々なれど、一人で自暴自棄になっている様を描きたかったし…。それらの恋愛を軸に、それにまつわる様々なシチュエーションでの「ODORIVA(踊り場)」になれる作品にしたかったんです。

■もっと遡ると、何故その恋愛を軸にしようと思ったんですか?

ましのみ “エスパー~”や“7”、それから“薄っぺら~”が出来た辺りからでした。実は“薄っぺら~”は、“エスパー~”と同時期に作っていた楽曲で、それこそ当初は一緒に出そうとも考えていたくらいで。もちろん今作に於いては、逆に他の曲は恋愛にまつわるものにしない選択肢もありました、バランス面でも。だけど、どこか今回は「分かりやすく提示する」というのも記したかったんですよね。それでこのような軸に。

■そんな中、個人的には“7”(「MBS/TBS ドラマイズム『死にたい夜にかぎって』OP曲」)が、いろいろな意味で今回のミニアルバム全体を端的に表しているような気がしました。

ましのみ かもしれません。この曲を作る際は、原作(爪切男著の実話ラブストーリー)も読み込み、台本も読んで挑んだんです。この物語は爪さん(原作者)自身が主人公でもあったんですが、それをかなり咀嚼して歌詞は書きました。いわゆる主人公はどんなにツラくヘビーなことがあっても、「まっ、いいか」と言えるキャラクターで。対して正反対に私は、「負」の感情をネガティブに見積もっちゃうタイプだし、ツラくヘビーなことをしんどく受け止めるタイプなので、その「まぁ、いいか」が逆に言えなくて。しんどかったら「もう無理無理!!」って。でも、この主人公を自分の中に入れ込むことで、それらの「まぁ、いいか」の考え方が救いになっていったり、楽になっていく自分が居たりしたんです。そして、その感情も含めて作ったのが“7”だったし、それ以降に作った、“NOW LOADING”と“のみ込む”にも、その辺りが含まれていったのかもしれません。この3曲はそれまでの自分では絶対に作れなかった楽曲でしょうから。それらも含め、“7”を自分の楽曲として書けたことは大変有意義でした。

■分かります。私が感じた今作全体での「まっ、いいか」も、決して投げ出したり、いい加減に放り出すのとは違った類いで、どこか前向きでした。いわゆる大事なもの以外は目に映らなくなる健気さみたいな…。

ましのみ いや、逆に“7”で歌っている「まっ、いいか」は、もう少し余裕がある状態で。懐が深く、少々のことでは動じない強さ…みたいな。今おっしゃって下さった感想は、私からすると、それこそ“薄っぺら”がすごく当てはまります。