NakamuraEmi VANITYMIX 2019 SUMMER PICK UP INTERVIEW

NakamuraEmi

女性は感情に揺さぶられる生き物、でもだからこそ見える景色やできることがある

アルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.6』で大きな変化をみせたNakamuraEmiがシングル『ばけもの』をリリース。NHKドラマ10『ミストレス~女たちの秘密~』の主題歌となる今作で描かれる女性特有の世界は、とても生々しく、とてもやさしい。めんどくさい感情を認め、愛し、さらけ出す。この繰り返しでしかきっとほんとの自分には出会えない。へこたれず、地道にそこへ近づこうとする彼女だからこそ書けた“ばけもの”。ここへ込めた想い、そして彼女自身の感情の変化について話してもらった。

■今作はドラマの主題歌ですが、どのように書いていったんですか?

NakamuraEmi 4人の女性がいろんなことを繰り広げる内容なんですけど、女性って気持ちの切り替えがはやいというか、さっき泣いていたのにもう笑ってる、みたいにすぐ変わっちゃうところってあるじゃないですか。そういう女だからの世界、リアルさ、感情みたいなものを“ばけもの”として書きました。前回のアルバム(『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.6』)が、自分の中の「女」という部分を書いた曲が多くて、けっこうドラマのテーマに沿うようなものができちゃっていたんですね。でも出し終わったあとにこのドラマとの出会いをいただいたので、今回はドラマに寄り添いつつ、アルバムで吐き出せたものプラス自分の残したいものは何かと考えて、もう一度「女」を振り絞って書いて、できたのがこの“ばけもの”でした。

■アルバムでの変化は大きかったように思います。それまではけっこう「負けないぞ」みたいな気持ちを表していたと思うのですが。

NakamuraEmi  昔はちょっとケンカ売ってるくらいの感じで、眉間にしわが寄っていました。(笑) でもいろんな人たちに支えられて、そんな愛情の中にいたからこそできたアルバムだし、年齢を重ねたからこそ書けた言葉でもあるなって。

■女性の部分、自分をよりさらけ出せたきっかけは何かあるんですか?

NakamuraEmi  アルバムを作る前に、マネジャーさんやプロデューサーのカワムラ(ヒロシ)さんにポロっと言われたんですよ、「がんばれ!がんばれ!もいいけど、もうがんばってきてるんだからまずはそこを認めてあげるのも大事なんじゃない?」って。自分はみんなの考え方に近づくために必死だし、音楽業界ではまだまだひよっこだから、がんばることしかできないし、がんばんなきゃがんばんなきゃばっかりだったけど、そっか、認めてあげていいんだって。そこから「自分をホッとさせることをもっと作ってもいいんじゃない?」とか、「ほんとの自分をもっと大事にする」とか、「ダークな部分ももっと出していいんじゃない?」って言われたりもして。あー、けっこうがっちりガードして見せないようにやってきたんだなってことに気がついて。もっと素直に、もっとさらけ出してもいいんだって、そう思えるようになれたんです。

■自分をさらけ出すってすごく怖いことでもあるけど、そうしないと始まらないこと、進めないときもありますよね。

NakamuraEmi  そう、強くなるのはそのあとなのかなって。自分もみんなについていきたいし、もちろん立派になりたいし、なので、踏ん張りすぎちゃうときもあるけど、でもそれをやりすぎちゃうことで変な壁ができたりするし。人間関係や仕事ってきっとずっとそういうのがつきまとうと思うので、まずは自分をちゃんと表すことができたら、そこから気づくことが必ずあって、そこに悩んで、また前に進んで、ってことを繰り返していくしかないのかなって。そうやってアルバムも作ってきていると思うし、『(NIPPONNO ONNAWO UTAU)Vol.5』を出したあとは、次のアルバムなんてもう出せない気がするっていうくらい出し切っちゃってすごく不安だったんですけど、ちゃんと『(NIPPONNO ONNAWO UTAU)Vol.6』ができたし、そのたびにそうやってひとつずつ何かを脱ぎ捨てるというか、さらけ出していっているのかなと思いますね。

■今回はドラマとの出会いもあり、またひとつ脱ぎ捨てることができましたか?

NakamuraEmi  ドラマとの出会いも大きいし、今回カワムラさんと初めて一緒に歌詞を書いたんですよ。けっこう踏み込んでもらって、「この言葉よりこっちの言葉のほうがいいんじゃないか」とか、サビのところなんですけど、わたしだったらこれは出てこないなっていう言葉を持ってきたり、すごく客観視してくれて。ドラマに沿うということプラス、いろんな女性の心の中に入り込みたかったから第三者の目線が欲しかったんですよね。カワムラさんは歌詞を考えるときに頭の中で音も一緒に鳴っている人なので、「その歌詞弱くない?」と思っていても、実際にメロディに乗ると「おお!」ってなったりするんです。カワムラさんは女性の脳みそのことをちゃんと理解してくれているんだっていう安心感みたいなものもあるし、いろんなことを積み重ねたからこそ、今回この歌詞ができたんですよね。

■男女の根本的なところから理解しようとするっておもしろいですね。

NakamuraEmi  結局脳みそというか、動物的要素も大きいんだろうなと思います。いままで歌詞を誰かに見てもらおうなんて思わなかったんですけど、この人と一緒に作ってみようって、頼ってみようと思ったんです。