松川ケイスケ(Vox)、真一ジェット(Pf & Syn & Prog & Cho)
LACCO TOWERの松川ケイスケ&真一ジェットによるユニット、松川ジェット。昭和歌謡を中心に女性ヴォーカル曲をカバー!
LACCO TOWERのメンバー松川ケイスケ(Vo)と真一ジェット(Key)が2008年から活動を始めたのが、松川ジェット。当時は真一ジェットがまだLACCO TOWERへ加入前で、その頃から松川ジェットはカバーユニットとして不定期ながら活動。その後、真一ジェットはLACCO TOWERへ加入した。そしてこのユニットは2018年より再び活動を精力化し、カバーアルバム『彼女の出来事』を制作。7月28日のリリースにまで漕ぎ着けた。ここには昭和時代の楽曲を中心に、女性ヴォーカルナンバーばかりを収録。今作のアルバムについて楽曲の魅力を2人に語ってもらった。
■松川さんも真一さんもLACCO TOWERのメンバーとして活動中ですが、松川ジェットは、真一さんがLACCO TOWERのメンバーになる前の2008年頃から活動しているとお聞きしました。
真一 松川に声をかけられて、初めて一緒にライブをやったのが2008年のことでした。その後、僕がLACCO TOWERのメンバーになってからも、不定期ですがずっと松川ジェットとしてもライブ活動を続けながら、今に至っています。
松川 松川ジェットを始めたきっかけを話しますと、2008年頃のLACCO TOWERは、まだキーボードの居ない4人組バンドだったんですけど、当時のギターが脱退してしまって、毎年周年イベントを開催していた7月の時期にLACCO TOWERとして動けなくなってしまったんです。LACCO TOWERとしては動けない。だけど周年イベントで何かやりたいと考えた時に、違う形ならいろいろ出来るんじゃないかと思い、当時、他のバンドで活動をしていた真一ジェットを誘い、ヴォーカルとキーボードによるLACCO TOWERのカバーユニットをやるという形で演奏をしたことが、松川ジェットとしてのスタートになりました。
■最初はそういう理由からLACCO TOWERの楽曲をカバーするために始めたユニットだったんですね。
松川 そうです。後に真一はLACCO TOWERのメンバーに加わりましたけど、あの頃から不定期でライブ活動を行なっていて、LACCO TOWERが動き出すのに合わせ、自然と他のカバー曲も演奏する形に変化していきました。
■カバー曲は、他のアーティストなど幅広く?
真一 やっていましたね。
松川 カバー曲のセレクトに関しては、とくに縛りを設けていたわけではなかったんですけど、僕が昭和歌謡好きだったという理由もあって、僕が歌いたい曲を真一にお願いしてアレンジしてもらって演奏をすることが最初は多かったですね。
■松川さんが昭和歌謡など、昭和の時代の楽曲に惹かれた理由も教えてください。
松川 10代後半時期に、長渕剛さんの「いつものより道もどり道」を聞いたことがきっかけでした。この歌は女性目線の歌詞なんです。それを男性が歌っていることにグッときて、「こういう歌を俺もやってみたい」と思い、そこから当時の楽曲へいろいろのめり込みだしました。あの時代は女性の悲しい心模様を男性アーティストが歌うことも多かったので、それが僕の表現したいスタイルにも合ったことから、当時の楽曲を聞き漁るようになりました。
真一 自分に関しては、親父がカーステレオで長渕剛さんや山口百恵さんなど、親父自身の青春時代の楽曲をよく流していたので、その頃の楽曲を聴いてはいたんですけど、それくらいでその辺の音楽性は僕の中にルーツとしてはなかったものでした。だから、松川から曲をもらうたび、毎回新鮮な気持ちで聴けましたし、アレンジにも臨んでいった形でした。
■名曲たちをアレンジする際に心がけていることを教えてください。
真一 その楽曲が持つ一番の良さを何よりも伝えたいという思いが、どの曲をアレンジする上でも根底にあります。それがメロディや歌詞であったり、それらすべてだったり。 そこを常に大切にしています。
松川 今回のアルバムに収録した曲の中には、すでにいろんな方がカバーした楽曲も入っていますが、原曲の良さを生かした上で、どう松川ジェットらしさを出すかをいろいろ手探りしながら進めていきました。歌に関しても、原曲に近づけたり、遠ざけてみたりと、一つの楽曲の中でベストな形を探し出し、最良の形に到達するまでに何度も試行錯誤を続けてきました。楽曲をカバーするというのは、本人ではない違う人が歌うということなので、松川ケイスケとして歌う以上、その楽曲の中で自分の歌声が一番よく聴こえるのはどういう歌い方なのか、そこもかなり緻密に探っていきましたね。
■今回のカバーアルバム『彼女の出来事』を、女性シンガーの曲たちばかりでまとめあげた理由も教えてください。
松川 「カバー曲といえば松川ジェット、ならアルバムもカバー集で出すのはどうだろう」というお話をいただき、そこからまずはメンバーやスタッフチームといろんなカバー候補曲を出し合いました。最初の時点では男性曲も候補に上がっていたんですけど、だんだん楽曲を絞っていく中で、「女性シンガーが歌ってきた、その時代、その時代を象徴する名曲を形にするのが良いではないか」と自然とまとまっていった形でしたね。
真一 最終的には女性ヴォーカルの楽曲に絞った形にはなったけど、それも本当に自然な流れだったよね。
■その中でも、あえてこだわった点があったら教えてください。
松川 僕が楽曲を聴く上で、とくに惹かれるのが歌詞なんです。『彼女の出来事』に収録した曲たちは、どれも「その楽曲自体が映画やドラマのように、情景が浮かぶ物語として成り立っている曲」たちばかり。その上で、「その楽曲が生まれた時代背景や風潮も見えてくる歌」を選んでいます。
■中森明菜さんが歌った“少女A”や“駅”、山口百恵さんの人気曲“イミテイション・ゴールド”など、いわゆる早熟な女心を歌った曲たちを、松川さん自身が今の自分の感情として置き換えて歌っていますよね。そこにも強く心惹かれる情緒を覚えたんですよね。
松川 どの曲の歌詞もそうですけど、その当時の背景などへ想いを巡らせながらも、僕自身の経験値を踏まえた上での解釈として読み込んで歌っています。実はアルバムに収録した楽曲の中、歌う時にとくに悩んだのが“駅”でした。この曲は声の音域がとても広いんですよ。だから、どこのキーに合わせて歌うのかをすごく考えました。全体の音的なアレンジ面でも、どこに曲調の着地点を持っていくかを真一とやりとりしながら結構煮詰めました。また、NOKKOさんが歌った“人魚”の場合で言うなら、僕自身が癖のある声質なので、もともと癖の強い歌い手の方の楽曲の方が自分には合うんです。“人魚”を歌う前は「これは難しそう」と思いながらも、いざ歌入れしてみたら思った以上に自分の色を出せた歌になった手応えがありました。どの楽曲もそうですが、その曲に一番似合う表情を見いだすまで、よくスタジオで半音上げてみたり下げてみたりなど、細かい調整を試みながら、「どこのキーが一番気持ち良く聴こえるか」という作業はよく行なってきましたし、そうやってどの楽曲も完成形へと辿り着きました。