オメでたい頭でなにより VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

赤飯(Vo)、324(Gt)

カバーアルバムで新たに発見した、オメでたが追いかける理想とは

5人組ロックバンド・オメでたい頭でなによりが、3月30日にカバーアルバム『オメでたカバー横丁〜一番街〜』をリリース。“明日があるさ”、“恋愛レボリューション21”、“マル・マル・モリ・モリ!”など、世代を越えて愛される9曲を収録する今作は、オメでたらしいユーモア溢れる、かつラウドなアレンジに仕上がっている。何故今カバーアルバムをリリースしようと思ったのか、彼らの音楽のコアを占めるラウドやカバー、オマージュはどういう存在なのか。そして、制限つきのライブしかできないここ数年の状況は、ライブを得意とする彼らにどのような変化をもたらしたのか。赤飯と324(みつよ)の2人に話を訊いた。

■先日、Wiennersとの対バンライブを観させてもらいました。すごく熱くて楽しいライブでしたが、いかがでしたか?

赤飯 楽しかったです。メンバー口を揃えて「今日よかったなぁ!」って言ったりしていて。

324 対バンでああいう気持ちになるのは久しぶりでしたね。Wiennersのお客さんがめちゃくちゃあったかかったです。大人観でふーんって感じじゃなくて、ちゃんと「こいつらどんなんだ」っていう前のめり感があってよかったです。

■まるでコロナ前をライブを連想させる盛り上がり方だったなと思って。すごくいいなと思いました。

赤飯 分かります、それ。「最大限体力を使い切ってやるぞ!」っていう気概がありましたよね。

324 ダイブとかモッシュとか声出しはできないもののね。

■今回は初のカバーアルバムですが、カバーアルバムを作ろうっていうきっかけはなんだったんですか?

赤飯 なんかね、コロナで曲が作れなくなったんですよね。コロナ禍だからこそ、応援ソングとか、前向きなメッセージソングとかを作ればいいんですけど、僕がそもそもそういうタイプの人間ではなくて。「理想を形にしたい」っていうのがモチベーションの根源なんですよ。フロアで暴れる楽しさであったり、そこから生まれる感動とかに突き動かされた人間だし、感動したものを人に伝えたいっていうのを実現するためのバンドなんです。そうやってずっと活動してきて、少しずつ結果も出てきて、理想を求めてやれていたものが、コロナで完全に止まってしまって。理想を追いかけることを物理的に拒絶された世界で、何をすればいいのかわからなくなっちゃって。だからデモ音源を作っても、自分の好きなものとか、やりたいことが分からない状態なので、「何か違うな」ってなっちゃって、曲ができなかったんですよね。っていう時に、うちのディレクターが、見るに見かねて「1回カバーとか作ってみたら?新鮮な気持ちで好きなものに向き合ったら、なにか変わるかもしれない」って言ってくれて。「確かにそうかも」と思って、それがきっかけですね。

■赤飯さんがそういう状態になった時、周りのメンバーはどういう感じだったんですか?

324 焦っていましたね。このバンドの核となっているのが赤飯だから、他のメンバーがいくらアイデアを出したりして曲を作ろうが、「よし、やろう!」っていうところまで中々いかなくて。それでも他のアイデアでなんとかしようっていうところで、“推しどこメモリアル”を出したりとかしていましたけど。元々ライブに根差したバンドで、「ライブでやりたいことを具現化する」っていうのが原動力でやってきた部分が止まってしまって、赤飯が動き出すまでに中々いかなかったので、「どうしよう……」と。

赤飯 というか俺病んでいたよね。これまでは自分から溢れる活力みたいなものをみんなに配っていくことで、生きていることへの自信みたいなものを感じていたんですけど、それが完全になくなってしまったので。何も社会に貢献できていないとか、「自分の生きている意味ってある?」とかなってしまって。

324 それでもなんとか配信ライブとか、お客さんを少なくしてのライブもやってはいて。回数を重ねて、なんとなくその状況とかに慣れつつはあったんですけど、それでもそれが原動力になるほどではなく。前までは観客席に足を伸ばしてお客さんの上を走り回ったりしていたから。

赤飯 そういう非日常を一緒に作り上げるっていうのが理想というか、やりたいことだったので、それを完全に封じられてしまうとね。人と共有して一緒に作り上げるのが理想なので。それをフィジカルで断たれてしまうことで、どんどん傷が深くなっていっていました。

324 「ライブを原動力に曲を作る」っていうスタイルが上手くまわらなくなっちゃったから、どうしようかなっていう悩みのところに、このカバーの提案があったっていう感じですね。自分たちの原点を見つめ直すというか。

赤飯 音楽を始めたての初期衝動みたいなものをもう一回思い出すとか、自分が好きで触れていた音楽をもう一回シンプルに触ると楽しいとか、そういうピュアなところに立ち返って。「バンドとして音を作り上げていくって、どういうことなんだろう?」っていうのに向き合うきっかけを得たという感じなんですかね。あとは、さっきも言ったんですけど、僕は理想を追い求めるタイプなので、「なにか別の理想ってないのかな?」っていうのを多分探していたんですよ。今は理想を追い求めたって言語化できてるんですけど、その時はわからなかったんです。でも、こういう作業をしているうちに見えてきて、「こういうものが好きで、こういうものが作りたかったんだ。だったらこっちの理想を追いかけることで、またやれるんじゃないのかな」っていうモチベーションになったので、少しずつ空気が入りました。

■今作の収録曲はどのように選んだんですか?

赤飯 みんなで「これやりたい、あれやりたい」って出し合いましたね。

324 どれが誰のアイデアとか覚えてる?

赤飯 全然覚えてない。ただ確実に言えるのは、“恋愛レボリューション21”、“うしろゆびさされ組”は僕ですね。

324 “三百六十五歩のマーチ”が俺なのは覚えてる。

■それぞれその曲を選んだ理由を教えてください。

赤飯 “恋愛レボリューション21”と“うしろゆびさされ組”は僕が元々アイドルオタクやったからですね。「ロックバンドがこういうのやったら面白くない?」とか、そういうことじゃなくて、「ガチで好きだから、ガチで向き合ってやるんや!」っていう気持ちでやっています。

324 “三百六十五歩のマーチ”を選んだ理由は、歌謡曲をやりたくて。歌謡曲って赤飯が歌うのにすごくマッチしているなってずっと思っていたんですよ。あとはメッセージがすごく前向きで、伝えたいメッセージに合致しているからっていうので提案した曲です。

■そうだったんですね。この中に“マル・マル・モリ・モリ!”があるのも面白いなと。

324 これは元々別のコンピレーションアルバムに収録していて、めちゃくちゃ出来がよかったんですけど、あんまり日の目を見ることがなかったので、今回改めて録り直しました。

赤飯 鈴木福くんの弟さんと妹さんに出演してもらっているMVを作ったんですけど、アレンジバージョンで踊ってくれました。原曲のMVの振り付けの先生が、「今回のこの曲も振り付けやります」って向こうから言ってきてくださって。

324 振り付けに関しても、MVを撮るってなった時にお伺いをたてていたんです。

赤飯 そうしたら「私がやります」って。だから本家にないヘビーなアレンジの部分とかもやってくれて。それがすごく可愛いんですよ!

■“ガラガラヘビがやってくる”は先行配信もしていますが、反響はいかがでしたか?

赤飯 MVの反響が非常に強いですね。

324 あれね!すごかったね。

赤飯 “金太の大冒険”と同じく藤井亮さんに作っていただいたんですけど、MVの出来が毎度良過ぎて。「俺ら勝てねぇ……」ってなっちゃうくらい。(笑) 今後も藤井さんとは一緒に作らせてもらおうと思っています。

■カバーと一口にいっても、人によってやり方は様々じゃないですか。みなさんは結構アレンジを加えてオメでた色に染めていく感じですが、アレンジはどのように考えていくんですか?

赤飯 例えば“ガラガラヘビがやってくる”だと、ぽにきが「これ“キューティーハニー”にそっくりなんだよ!」って言ってきて。「何言ってんだこいつ」って思ったんですけど、実際に聴いてみたら構成が似ていたので、「マッシュアップしたらよくない?」っていうので始まっています。あと“うしろゆびさされ組”は、元々ギターリフがカッコいい曲で、アメリカンハードロックみたいなのがベースになっているので、この曲をやるって決まった時は、すぐに「MR.BIGっぽくしよう!」と。そういえば“WOW WAR TONIGHT~”って、なんで裏打ちになったん?

324 どうだったっけ?弾き語りしている感じから始めようみたいな話だったよね。「抑えて始まって、徐々に盛り上がろう」みたいな。

赤飯 そうだ、そうだ。徐々に盛り上がっていくストーリーを作ろうってなって。でも途中で分かんなくなってきて、困ったので、初めて今回編曲でakkinさんに入っていただきました。今まではどの曲も自分たちでやってきていたんですけど、編曲に入ってもらったら、すごく功を奏して。いろんな気付きだったり、学びも得ることができましたね。

324 やっぱりメンバーの中だけだと凝り固まっちゃって、どれが正解かわかんなくなっちゃうんですけど、そこに外部の人の意見が入ることによって、改めて見つめ直して、納得できるようになりました。

赤飯 “恋愛レボリューション21”と“君がいるだけで”も編曲してもらっています。

■“君がいるだけで”は、途中でラウドに展開するのかと思いきや、そのまま終わったので驚きました。

324 裏切りを期待する人への裏切りですね。(笑)

赤飯 この曲が一番今回の実験曲だなって思っていて。あれだけオーガニックな空気感でやることって今までなかったんですけど、僕は今、有機的な音とかあまり圧を感じない音にすごく魅力を感じていて。そういう空間設計みたいなのをしてみたいという気持ちでお願いしました。だから、カントリーのゆったりした感じというか、優しいものを理想に掲げてやってみましたね。歌も今までで1番声を出していないんですよ。マイクとすごい距離を離したりとかしていて。完全にやりたいことができたかっていうと、まだ理想には足りていないんですけど、でもすごくいい第一歩になったとは思っています。「そういう落ち着いた温かみをこれからどんどんオリジナルにも取り入れていくぞ」っていう意思表明ですね、これは。

■“明日があるさ”の序盤もすごくゆったりした雰囲気ですよね。

赤飯 そうなんですよ。哀愁とか郷愁をもっと感じられる空間を作りたいと思って。懐かしさとかも。すごく手ごたえを感じました。「こういうのを作りたい」って思ったきっかけが、324のスライドギターだったんですよ。“WOW WAR TONIGHT〜”のアレンジをしている時に、たまたま324がスライドギターをやったら、それがハマって。本当に文字通り飛び上がっちゃたんですけど、そこから自分の好きなものを自覚できるようになりました。

■そういった要素を取り入れながら、今後のライブの魅せ方とかも変わっていったりするんでしょうか?

324 どうだろう?今まではライブでって考えていましたけど、今はあんまりそこを考えなくなったかなって思います。“三百六十五歩のマーチ”は結構考えていたかもしれないですけど。「腕を振って足をあげて」って、声を出さなくてもできるから。

赤飯 そうですね。“君がいるだけで”とかは、ライブでやるとかっていうよりも、意思表示っていう感じです。でも、「こういうエッセンスを取り入れながら作るオリジナル曲は絶対にやっていくぞ」と思っています。