史上最大規模の会場に突き抜ける青春とラブソング。
雨模様の6月28日(日)、懐かしいJ-POPが響く神奈川・横浜アリーナには、青空よりも深い青のタオルを肩にかけたファンが続々と集まってきていた。この日開催されるのは、ねぐせ。にとって史上最大規模となるワンマンライブ『愛問愛答』。ロビーではファンがハートの付箋に自分の「好きなもの」を書いてパネルを埋めるコーナーもあり、ライブタイトルを体現していた。開演時間になると、舞台に映し出されたのはキラキラした電飾のドット。ゲーム音楽風のSEと共にそれが煌めけば、不意に暗くなって時計の針が回転を始め、やがて歯車の渦に飲まれていく。観客が期待の手拍子をする中、スクリーンの裏から登場したねぐせ。は、歓声に迎えられて“タイムマシンにのって”からライブをスタート。ポップでカラフルな宇宙旅行に連れ出され、りょたち(Vo&Gt)の爽やかな歌声は曇天を吹き飛ばす。「始めるぜ横アリ、楽しもうぜ!最高の日にする準備はできてますか?!」その呼びかけに応えて、観客席で青いタオルが回転する“アタシのドレス”に、恥ずかしいほどストレートなラブソング“キスがしたい”が続く。バンドロゴを背景にしたシンプルなロックチューン“あの娘の胸に飛びこんで!”では、なおや(Gt)としょうと(Ba)が舞台上を駆け回り、向かい合わせでテクニックを競い合う。

MCになると、なおと(Dr)が横浜アリーナ公演への喜びを爆発させる。りょたちはアリーナの一番奥にまでたくさんの人が集まってくれたこと、そしてこの『愛問愛答』を大切にしてきたことを話して、オーディエンスから拍手を浴びた。「出会いに乾杯しようぜ」と歌い出される“片手にビール”に、絵文字やイラストに埋めつくされた“めちゃくちゃ好きな人を愛すように世界を愛して!”、シンプルな日常に溶け込む愛を歌う“猫背と癖”、網目状の光に絡め取られたバンドが一気に不穏な赤に染まる“独占愛”、そして腕を天に突き上げたなおとがバスドラムを鳴らし、スモークとレーザーがアリーナに青空を作った“愛煙家”。どの瞬間を切り取られてもメンバーは笑顔で、歌い踊り手を叩く観客を眩しそうに見詰めている。マゼンタとシアンのサイバーパンクなネオン街を歩く“恋と怪獣”では、りょたちがハンドマイクを手に花道の先へ。観客の顔を眺めてゆっくり歩き、「最高です、ありがとう」と感謝の言葉を口にする。続くのは初披露となるいきものがかりのカバー“ラブソングはとまらないよ”。微笑む歌声と堅実な演奏は原曲への強いリスペクトを感じさせつつも、ロックバラードとしての新しい色を帯びていた。

そこからスタンドマイクを握り歌い出される“一生僕ら恋をしよう”に、「宇宙まで届く声ください!」と煽られスタートした“スーパー愛したい”。「どっちがデカい声出せるか勝負だ!」の呼びかけに応えて歌い合うファンとバンドはさらに勢いづき、なおやとしょうとは“最愛”で花道の先へ歩いていく。ねぐせ。のサウンドバランスは技巧的でありつつも、2000年代のシンプルなポップスを連想させ、ヴォーカルがストレートに聴こえやすいものだ。そんな4人が紡ぐ真っすぐな愛の言葉は、真っすぐにファンの胸へと届いていく。ここで花道の先へ楽器がセットされ、ライブはアコースティックコーナーへ。「緊張するね」「声も吐息混じりになるね」「始め方、迷うね」と言ったり、スクリーンに映る自分に手を振ったりと、少し初々しさを見せつつも、互いに向き合った4人は“スウェット”で音をスキップさせる。さんさんと降り注ぐ光が濃い陰影を作り映画のワンシーンのような光景を作った“花束が似合う君へ”に、しょうとのダメージジーンズのダメージがだんだん広がっていっていることをイジりつつ歌い出された“サンデイモーニング”。短いコーナーが終わると、最後にはりょたちがひとりアコースティックギターを抱えて花道に残る。「みんな帰っちゃった。作曲する時はいつもこいつ(アコースティックギター)を持って作ります。こんなでっかい所に連れて来られてこいつもびっくりしてると思うけど、ひとりで歌いたい歌があるで聴いてもらっていいですか?」そう話し、りょたちは観客に背を向けて“彩り”を口遊む。横浜アリーナという大会場の静けさの中でピンスポットを浴び、手元に視線を落として歌われるそれは、ギターと音楽に向けたラブソングにも聴こえた。

温かい拍手が会場を包んだのも束の間、ステージからはヘヴィなリフがあふれ出し、ロックバンドとしての顔を剥き出しにした3人が演奏でりょたちの到着を待つ。明るいメロディにギターが吠える“愛のサブスク”、ノイズの入った画面で4人が影絵になる“デイズ”。一転して“日常革命”で微睡みのバラードを歌えば、バンドの姿は光に溶けていく。「もうすぐ七夕の時期ですね、一緒に歌いましょう」と誘われた“織姫とBABY”ではレーザーが星の海を作り、りょたちは花道の先に出てオーディエンスの歌声を浴びた。「今日僕たちがこのステージに立っているのは紛れもなくみなさんと、スタッフのみなさんのお陰です。ここがゴールじゃない。今日のライブを観ていいなと思ってくれたらついてきてください。よろしくお願いします」りょたちの言葉と共に、ライブは終盤へ向かっていく。執着的な歌詞が次々映し出された“愛してみてよ減るもんじゃないし”に、この日常を生き抜くため歌われる“死なない為の音楽よ”。“ベイベイベイビー!”ではひとりだけ花道に出られなかったなおとがアリーナ席の通路を全力疾走していくが、自分のパートの出だしには少しだけ間に合わなかった。いよいよライブはラストスパート。“グッドな音楽を”になると、座席のブロックごとにコール&レスポンスの声の大きさを競い合うチーム戦がスタート。天井まで歌声に包まれたアリーナに、最後は「全員が優勝や!自分に拍手!」とりょたちが褒め称える。そしてラストナンバー“青春バイブレーション”では天井から青や水色の風船が降り注ぎ、青春の思い出のひとかけらを作っていく。「ありがとう横アリ!俺たちが宇宙で一番あったかいバンド、ねぐせ。でした、ありがとう!」

感無量のあいさつを叫びメンバーが去った後、暗くなった会場ではスマホのライトを掲げて観客たちが歌い出す。次第に大きくなる歌声に呼び戻されて、4人は“ずっと好きだから”の力強いコーラスを重ねた。その背景に映し出されるのは、ファンから送られた「青春」を切り取る写真の数々。眩しげに笑うメンバーの表情も、青春そのものだ。続いてねぐせ。はこの日のために用意し、制作過程からSNSで公開してきた新曲“僕 love you”を初披露。ステージにはなおと曰く「今月の頭に生まれて初めて叩いた」という大太鼓が持ち込まれ、遊園地のパレードを思わせる華やかなサウンドと、ステージの上からも下からも光が吹きあがり降り注ぐ演出とが繰り広げられて、視覚と聴覚とを同時に惹きつけていく。ここでバンドは観客の協力を仰ぎ、“僕 love you”の特別バージョンを「この場で」録音し始める。手拍子やコーラスを収録して、「やべえのが出来上がると思うよ、楽しみにしていてください」と語った4人。リリース時期やタイトルなどはまだ未定らしいが、楽しみなことがまたひとつ増えた。「本当に幸せでした、ありがとう。この先いろんな景色を見せていけるように頑張っていきます。よろしくお願いします」そしてラブソングを歌い続けるバンドの壮大なライブは、疾走感に満ちた甘くほろ苦い失恋ソング“恋夜”で終わっていく。ねぐせ。が切ない歌詞も明るいメロディで歌うのはきっと、別れの寂しさがあっても、それを上回る幸せな時間があったから。それはどこか、彼らの作るライブのひとときにも似ていているように思えた。「いつでも戻っておいで、待ってるからな!ありがとな、バイバイ!」

Text:安藤さやか
Photo:タカギユウスケ、堤瑛史
ねぐせ。ONEMAN LIVE『愛問愛答』@横浜アリーナ セットリスト
01.タイムマシンにのって
02.アタシのドレス
03.キスがしたい
04.あの娘の胸に飛びこんで!
05.片手にビール
06.めちゃくちゃ好きな人を愛すように世界を愛して!
07.猫背と癖
08.独占愛
09.愛煙家
10.恋と怪獣
11.ラブソングはとまらないよ (いきものがかり cover)
12.一生僕ら恋をしよう
13.スーパー愛したい
14.最愛
15.スウェット
16.花束が似合う君へ
17.サンデイモーニング
18.彩り
19.愛のサブスク
20.デイズ
21.日常革命
22.織姫とBABY
23.愛してみてよ減るもんじゃないし
24.死なない為の音楽よ
25.ベイベイベイビー!
26.グッドな音楽を
27.青春バイブレーション
ENCORE
01.ずっと好きだから
02.僕 love you
03.恋夜






