ももすももすらしいふにゃふにゃふわふわしたその世界で、これからも一緒にふにゃけていたい。
現在、ももすももす/天界ばたんきゅー(ユニット)と、2つの顔を持って活動している、ももすももす。5月に行った天界ばたんきゅーのワンマン公演に続き、6月にはソロとして、『ももすももすONEMAN LIVE~痛いの痛いの痛いのが好き~』と題したワンマン公演を6月30日に下北沢SHELTERで開催した。この日は、3枚のアルバム『彗星吟遊』、『白猫浪漫』、『宅録女優』に収録した楽曲を中心に、ワンマン公演に向けて作った新曲、さらに、ももすももすが所属していたメランコリック写楽時代の楽曲も組み込んでいた。ギュウギュウ状態の中で行った公演の模様をここに紹介したい。SE変わりに用いた“堕天使体操”に乗せて、黒い翼を背負ったももすももす(以下、ももす)がステージに姿を現し、躍りだした。彼女がギターを手に準備をしている間、場内に、みずから朗読したポエトリーが流れだす。そこでは「心の痛みを我慢し、誤魔化しているけど、本当はそんな生き方はしたくないこと。死に対して思っていることや、汚れたものに愛を感じてしまうこと、それに相反する思い」などを語っていた。ギターを手にしたももすが、サポートベースの演奏を背に、歪む音を響かせて“アネクドット”を歌いだした。少し舌ったらずのふゅっとした声で、でも、その中には強い意志を漲らせている。彼女はキリリとした表情でギターを掻き鳴らし、フロアにいる大勢の人たちを見つめながら、「忘れないでと叫んだ 僕も消える アネクドット」と歌っていた。曲が進むごとに、放つ歌声や、ギターを掻き鳴らす手に力が漲るのがしっかりと伝わってきた。

その上で、この場に爽やかな風を吹かせるように、ももすは“プルシアンブルー”を歌いだした。声質は柔らかいのに、彼女自身が表現者としての揺るがない思いの芯を貫いているからだろう、その歌声にパワーが漲るのを感じでいた。ひと呼吸を置いた上でももすは、恋する裏腹な感情を愛しい人へ伝えるように、哀愁を帯びた声で“海と傷口”を歌いだした。感情の揺れが見える深みを持った声だ。気持ちが動くままにギターを掻き鳴らし、彼女は言葉のひと言ひと言にもどかしい思いぶつけては、その気持ちを演奏に乗せて吹き飛ばすように歌っていた。揺れ動く感情が音の刺となって胸に刺さるたびに、心にチクチクした傷みを覚える。最初のブロックでももすは、素直になれない裏腹な思いを、3曲を通して伝えていた。場内には、「悪夢」について語ったポエトリーが流れていた。今回のライブは、ももすが語る詩の朗読に寄り添う曲たちを届ける形で進行していった。その言葉に続いて届けたのが、この日の公演に向けて作りあげた新曲の“幽体離脱”。ももすはふわふわっとしたつかみどころのない歌声を、疾走する浮遊感をまとった楽曲に乗せて歌っていた。彼女自身が歌声や気持ちを幽体離脱し、この空間の上で自由に心を泳がせていた。その姿が、とても印象深く瞼に焼きついた。光線銃を手にしたももすが、“怪傑ヒロイン☆”に乗せて、スーパーヒロインに変身した。彼女は強気なハートに染め上げ、力強くギターをストロークしながら、愛らしい歌声を撃ち放っていた。甘くポップに弾けた演奏と歌声に触れていたら、気持ちがふわっと浮きだした。だから、ももすと一緒に心の両翼を大きく広げ、この空間を自由に飛び交い続けていた。

沸き立つフロア。そこへ歪みを効かせた音を豪快に叩きつけながら、舌ったらずの甘い声をこの空間いっぱいに解き放つように、ももすは“うさぎの耳”を眩しい笑顔を浮かべて届けてきた。心を乱す世間の嫌な出来事や噂話を吹き飛ばし、心を解き放つように、彼女はロックな演奏に乗せて明るく元気に歌っていた。だから、そのパワーに乗って一緒にはしゃいでいた。ポエトリーごとに、新たなページがめくられる。ここでは、「バッドエンドとハッピーエンドにまつわる」彼女自身の揺れ動く心模様を言葉にしていた。カラフルで派手な同期の音も高らかに響かせた“隕石”では、胸の内で渦巻くもどかしい恋心を吐きだし、観客たちの心へ突き刺すように、ももすは力強くギターをストロークしながら凛々しい姿で歌っていた。もどかしい恋心に真っ直ぐな情熱を重ねあわせた時、それは、触れた人の気持ちを強く揺さぶる思いになって突き刺さる。だから、胸に突き刺さった「ごめんね好きだよ 死ぬまで好きだよ」の言葉の矢が、ずっと抜けなかった。軽快に駆ける演奏に乗せて、ももすは胸を騒がせ“トニートニートニーチョッパー”を歌いだした。風を切って走る楽曲の上で、気持ちを沸き立て、わちゃわちゃと弾ける姿が眩しい。途中、ジャジーに転調する胸の踊る展開を描きながら、トニートニー・チョッパーへの愛を思いきり伝えてきた。明るく弾けた空間へ、さらに熱い拍車をかけるように,ももすは甘く感情的な歌声を振りまくように、駆けるビートに乗せて“桜の刺繍”を歌った。弾む気持ちと駆けるビートとギターをストロークする演奏がシンクロするたびに胸が踊る。曲を重ねるごとに会場にも熱が折り重なり、膨らみ続ける。さぁ、もっともっと舞い踊っていこうか。

続くボサノバ調の“猫とメリケンサック”ではギターを置き、ももすはマイクを手に、昼下がりに吹く甘い風のように優しくそよぐ楽曲に乗せ、腕に猫のぬいぐるみを抱きかかえ、「どうやったって僕は猫に勝てにゃい」と、これまで以上に舌ったらずで甘い猫なで声と、ふにゃ~っとした表情で、会場にいる人たちを良い意味で骨抜きにし、ふにゃふにゃっとした緩~い心地よさを与えていった。ふたたびギターを手にしたももすは、マイクに向かって力強く「君しかないと思っていたよ」と“6を撫でる”を歌い上げた。感情的でパワフルな歌声と演奏に刺激され、フロアからも拳が突き上がる。力強い声で「君しかないと思っていたよ」と繰り返すたびに、気持ちが熱く奮い立つ。ここへ到るまでの10年間で、ももすはたくさんの楽曲を作りあげてきた。もちろん、これからも生み出し続けるけど、すべてが「かけがえのない曲」だからこそ、ときには振り返ることがあってもいいとも彼女は伝えてきた。その上で……。次のブロックには、メランコリック写楽時代の楽曲を並べてきた。頭に光るカチューシャを付けた黒いサングラス姿のももすは、わかちゃかしたギターの音へ、みずから奏でるギターの音を重ねあわせて“成仏できない”を歌いだした。攻めたモードで歌う姿に、どこか無鉄砲で破天荒な香りや勢いを感じるのも、より一層強さを増したバンドサウンドとイケイケな歌詞に気持ちを押されていたからか?!サングラスを外したももすは、ロックンロールなギターサウンドに乗せ、テンションのギアをグッと上げ、身を焦がす勢いで“山椒魚”を歌った。彼女と観客たちが「身を焦がして身を焦がして身を焦がしたって灰になるだけ」と歌を掛け合うやり取りに、焦げるほど気持ちを熱くしていた人たちがいた姿も忘れられない。
さらに勢いを加速するようにももすはギターを掻き鳴らし、心をロックなモードに染め上げて“ムーンレフト伝説”を歌っていた。巧みにファルセットも生かし、勢いよく駆ける楽曲に、みずからの感情のモードもシンクロさせ、彼女はテンションの高い歌声を場内に高らかに響かせていった。ガシガシにギターを掻き鳴らす姿もカッコいい。自分がいなくなった後の世界でも、作品はずっと愛されていく。そんな思いを、コロナ禍時代の頃も振り返りながら、ももすは語っていた。ももすは、沸き立つ熱情を、“エソア”に乗せて力強く情熱的にぶつけてきた。気持ちが沸き立つたびに、歌声も、ストロークするギターの音も荒々しくなる。曲へ導かれるままに沸き上がる思いを、彼女は「風は吹き高鳴り君を攫うだろう」と、感情が破裂しそうな勢いで歌い叫んでいた。そこからの“シャボン”という甘い展開にばたんきゅーしそうだ。ギターを置いたももすは、ハンドマイクを両手でぎゅっと握りしめ、身勝手な相手とわかっていながらも深い信頼を言葉にして届けるように、一人ひとりの顔を見つめて歌った。深い愛情を込めた歌だからこそ、彼女は少しでもみんなの心に伝えようと、歌声の手を差し伸べていた。ステージを左右に動きながら「身勝手なあなたのため」と思いを詰め込んだシャボン玉を飛ばすように歌うももすの声が、一人ひとりの心の中でパチンと弾けて溶けていった。

「すべてがどうでもよくなって、心が空っぽになる」気持ちを語った上で、本編は最後のブロックへ。「すべてがどうでもよくなった」と、すべての物事にあきらめを抱いた心境を観客たちの心へ刻印するように、ももすはアンニュイな心のモードで“夏至のツンドラ”を歌った。ちょっとけだるい、どこかネガティブな気持ちを羅列していくのに、あきらめの心境を放り投げて前向きになっていく姿もまた、ももすらしい。続いて歌ったのが、最新曲の“新しいダーリン”。歪んだリズムの上で軽やかに弾む、どこか螺子の外れたポップ感が心地よい。良い意味で螺子が緩み、つねに斜め45度の視線で世の中や自分を俯瞰しているももすらしい、歪んだ愛情満載な歌に触れていると、心がふにゅ~っとしてくる。むしろ、その歪んだ恋心に共感し、一緒にゆらゆら歪んだ世界の中で戯れていたい。最後にももすは、“猫耳パンドラ”を通して、この場に華やかな、でも熱に満ちた景色を作りあげた。彼女自身が疾走する楽曲とシンクロするように力強くギターをストロークし、胸の内から沸き立つ思いを真っ直ぐにぶつけてきた。情熱に満ちた姿に向けて場内からも高く拳が突き上がり、揺れていた。互いに高ぶった気持ちを求め合う、その関係が素敵じゃないか。「何よりも生きていてください」の言葉に続いてアンコールで届けたのが、“まともじゃないのがちょうどいいの”。「まともじゃないくらいがちょうどいいの」と歌うこの曲は、ももすのキャラクターをそのまま投影したような楽曲だ。軽快に走る楽曲に乗せ、彼女自身が青春時代の自由奔放で無鉄砲な頃の自分に戻り、気持ちが揺れ動くまま、無邪気にはしゃぐように歌っていた。その姿が、とてもチャーミングだ。その無邪気な無鉄砲さこそが、ももすらしい。だからこれからも、ふにゃふにゃふわふわしたその世界で一緒にふにゃけていたい。

Text:長澤智典
Photo:ガッテン
『ももすももすONEMAN LIVE~痛いの痛いの痛いのが好き~』@下北沢SHELTER セットリスト
01. アネクドット
02. プルシアンブルー
03. 海と傷口
04. 幽体離脱
05. 怪傑ヒロイン☆
06. うさぎの耳
07. 隕石
08. トニートニートニーチョッパー
09. 桜の刺繍
10. 猫とメリケンサック
11. 6を撫でる
12. 成仏できない
13. 山椒魚
14. ムーンレフト伝説
15. エソア
16. シャボン
17. 夏至のツンドラ
18. 新しいダーリン
19. 猫耳パンドラ
ENCORE
01. まともじゃないのがちょうどいいの







