NOA『NOA “NO.A” TOUR SPECIAL LIVE IN ARIAKE ARENA』ライブレポート@有明アリーナ

幾つもの壁を超え辿り着いたアリーナの輝きで魅せるその姿。

NOAが東京・有明アリーナにて『NOA “NO.A” TOUR SPECIAL LIVE IN ARIAKE ARENA』を開催した。本公演は5月に六本木で行われた単独ライブ、および6月にかけてアジア4会場を巡ったアジアツアーに続く、1stアルバム『NO.A』の名を冠するシリーズのラストを飾る公演だ。2days公演の2日目となった9月10日(日)、開演時間を過ぎ、客電の落ちた会場で、ステージを包む白い幕にはNOAのこれまで歩んだ旅路が映し出される。「『自分の可能性はどこに?』と自問する」から始まる英語のナレーション、ツアーで巡って来た各会場の模様。それらが流れ、「Are you ready?」の合図と共に音楽が掻き消えると、アリーナの天井まで届くNOAの巨大なシルエットが浮かび上がった。

そしてライブは“BURN”でスタート。重々しい足音と共に舞台上の階段から降りて来たNOAは、燃え滾る炎の中ストリート系のファッションに身を包んだTEAM NOA DANCERSを引き連れて、序盤から激しいステージを繰り広げる。そこから一転、“Just Feel It”ではスクリーンに投影された都心の夜景と巡る星々を背負って甘く歌声を響かせる。アウトロが掻き消えたステージから、ペンライトの輝きに溢れる会場を見回す瞳には、万感の思いが籠められていた。歌い終えて深々と頭を下げ、観客への感謝を何度も口にしたNOA。そんな彼がタオルで顔をポンポン叩いて汗を拭うと、その仕草に客席から「カワイイ!」の声が飛んでくる。それに対し、「擦るとメイクが落ちちゃうんですよ!」と言い訳するNOAには「なるほどー!」という声が返って来た。サーチライトが乱れ飛ぶ中、花道を歩み出て、3曲目の“Don’t Waste My Time”を終えたNOAは、花道の先で男性ダンサーたちとじゃんけん。勝ったひとりがステージ上の階段に待つガールズを情熱的に誘うも呆気なくフラれ、次に歩み出て来たひとりも相手にされず……という寸劇から始まった“Runaway Love”は、さながら落書きだらけの裏路地を舞台としたミュージカルのワンシーンのような光景だ。“Lonely Hearts”ではスクリーンに光線がハートを描き、NOAは観客の手拍子やジャンプを誘う。5曲を終えて暗転したステージには、洒落たアパートの一室で気になる子をデートに誘うための一言を考えるNOAの姿が映し出される。鏡の前で何度もセリフを考え直し、ついにはスマホでメッセージを送ったNOA。しかし返事を待つうち、ついソファで眠ってしまう。そんなショートドラマに釘付けになっていると、目覚まし時計の音が鳴り響き、いつの間にか花道の先にいた本物のNOAがのんびり起き上がる。映像内と同じ服を着て“Bad At Love”を歌い終えると、スマートフォンに着信が。果たして電話の内容は……と気になる所で曲は“To Be Honest”へ。“Paradise”では夕暮れの海岸線沿いを走る車のシルエットが眩しい中、観客の振るオレンジのライトがキャンドルの灯りのように揺らめく。ここでライブはアコースティックパートへ。NOAがスペシャルゲストとしてギタリストのジョサイアを呼び込むと、観客からはジョサイアへ向けた歓声が上がる。シンプルなギターでNOAの歌唱力が引き立つ“Ticket”や、木漏れ日めいた光が揺れる“Friends?”、透き通った声を響かせる“True Colors”。曲にそれぞれの想いを込めるファンとの生のコミュニケーションを楽しみながら、「これからもみんなと一緒にこの空間を作っていけたらなと思います」とNOAは願う。

アコースティックパートを終えて一旦舞台から去ったNOAだが、スクリーンにはゴンドラで楽屋へ移動し、着替えブースに入る彼の姿が映し出される。廊下でウォーミングアップするダンサーたち、円陣を組むチーム。普段は見ることのできないライブの舞台裏をたっぷりとカメラが抜き出したかと思えば、NOAの手がレンズを隠して明転。MEGA ver.と銘打って披露された“Step Back”では700名の中からオーディションで選ばれたダンサーたちがステージを埋め尽くし、激しい炎の中で踊る。ダンサーたちを称えて見送り、ひとり舞台に残ったNOAは「みなさん今年の夏はどこ行きましたか?」と問いかけ、花火大会に行った人を探す。たくさんの手が挙がる中、「僕はまだ行けてません。もしよかったら僕と一緒に花火、見に行きませんか?」と誘うと、“Fireworks”のイントロが流れ始める。スクリーンに大輪の花火が咲く中、曲の終盤では本物さながらの火薬の炸裂音が会場を揺らした。続けて約2年ぶりに“Multiverse”を歌ったNOAは「マジだめだこの曲、泣きそうになっちゃう」と言いながら、たくさんの壁を乗り越えて来たこれまでの活動を振り返る。韓国に渡って夢を追い、夢に破れて帰国するもデビュー直後にコロナ禍に飲み込まれ、それでも歩みを止めなかったNOA。2021年にオンラインで行われた初ライブでも披露された“Multiverse”は、もがいていた当時の想いが込められた楽曲なのだという。「みんながいるから、こうやってみなさんの前でこの曲を歌わせていただけます。みなさんのおかげです。ありがとうございます」会場が拍手に包まれる中、感傷的な空気を振り払うように「せっかくアリーナにいるからやりたいことがあります!」と発表したNOAは観客を誘い、ペンライトの波が会場を一周するウェーブを作る。続いてファンが掲げるうちわやボードの文字を眺めて行き、気になるものをピックアップ。「じゃんけんして!」と求める2階席のファンとじゃんけんをすると、4回連続であいことなり想像以上に白熱するも、最終的にはファンが勝利。幸運なファンには舞台上からハグが贈られた。ここでNOAは今公演が初披露となる新曲“between”をドロップ。艶やかな歌声は好きと嫌いを行ったり来たりする気持ちをハイテンポでゴージャスなサウンドに乗せ、甘く身体をしならせるアダルティなダンスにも歓声が上がる。そして再び観客たちへ感謝の言葉を贈り、ライブ本編は“LIGHTS UP”で終了。客席にまでせり出した色と形の違う無数のライトが作る星空めいた景色の中、NOAの存在は一等星の如く強く輝いていた。

アンコールの声に呼ばれてステージに戻ったNOAは、いつからか用意されていたピアノの前に腰掛ける。オーディエンスからの驚きの声を聞きながら、鍵盤を押し込むどこか拙さのある指は純粋な和音を重ね、ゆっくりと弾き語るのは“TAXi”の歌い出しだ。ピアノから離れて色とりどりのライトに照らされたステージへと躍り出て、終盤にはスペシャルゲストのtofubeatsも登場。曰く「信号待ちで話しかけられた時からの縁」だというtofubeatsに、観客からは大きな拍手が贈られた。そしてNOAはファンクラブツアーの開催と、この公演の模様が10月にU-NEXTで配信されることを発表し、何度目かもわからない感謝の言葉を語る。「みんなのことが大好きです。いつも本当にありがとうございます」その言葉と共に歌われた“Purple Sky”の背景ではこれまでのツアーの記憶が緩やかに流れ、紫1色に染まるアリーナに紙吹雪が舞い遊ぶ。まさにグランドフィナーレに相応しいその景色、歌い終えたNOAも満足げに客席へ背中を向ける。しかしふと振り返ってにやりと笑い「なんかまだ足りない気がするんだよな~?」と呟けば、オーディエンスから大歓声が上がった。「聞きたい曲ありますか?」の問いに“Too Young”と答えたファンの声を聞いたNOAは、急きょ二人のダンサーを呼び込んで同曲のラスサビを披露。思わぬサプライズに客席が沸く中、最後は“Highway”で笑顔の中締めくくった。「みんなが僕のそばにいてくれたように、僕もみんなのそばにいます」「今日で『NO.A』というチャプターは終わるけど、また新しいチャプターが始まるので、また一緒に歩んで行きましょう!」そう語るNOAのエネルギッシュなパフォーマンスと広い会場をいっぱいに満たす歌声、観客の視線を一瞬たりとも逸らさせない華やかなステージング。幾つもの壁を超え、過去と向き合い全てを背負って舞台に立つその姿からは、この先の未来を自らの手で切り拓くひとりのアーティストの覚悟と矜持があった。

Text:安藤さやか
Photo:鳥居洋介

https://noamusic.jp/

『NOA “NO.A” TOUR SPECIAL LIVE IN ARIAKE ARENA』@有明アリーナ 9月10日(日) セットリスト
01. BURN
02. Just Feel It
03. Don’t Waste My Time
04. Runaway Love
05. Lonely Hearts
06. Bad At Love
07. To Be Honest
08. Paradise
09. Ticket
10. Friends?
11. True Colors
12. Step Back
13. Fireworks
14. Multiverse
15. between(新曲)
16. LIGHTS UP

ENCORE
01. TAXI
02. Purple Sky
03. Highway