大原櫻子 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

10年間での思い出をファンの人と一緒に振り返れるような1枚にしたかった。

大原櫻子が、8月30日にミニアルバム『スポットライト』をリリース。2013年に俳優&CDデビュー、2014年にソロデビューした大原にとって、10周年イヤーの幕開けとなる本作。10年間俳優と歌手を両立させてきた彼女らしく、収録される6曲それぞれの物語の主人公を演じる、短編集のような作品となっている。
今回はそんな彼女にインタビューを決行。俳優と歌手を両立してきた彼女だからこそ表現できることについて語ってもらった他、今作に込めた思いや10周年に感じることなど、たっぷりと話を伺った。

■2023年には俳優10周年、2024年にはソロシンガーとしての活動10周年となりますが、どんな気持ちでいますか?

大原 まずは「もう10周年なんだ」という驚きがありますね。あとは「どんなことをやろうかな?」というわくわくと不安があります。

■10年間を振り返ってみて、あっという間だったと感じますか?

大原 あっという間でした。歌だけでなくお芝居もやらせていただいたり、この10年で人生で初めてのことをたくさんこなしてきたので、ひたすらがむしゃらに毎日を生きていた感じがします。

■10年間、お芝居と歌手を両立し続けてきた大原さんにとって、俳優業と歌手業は互いに切り離されている感覚だったのか、混ざりあっている感覚だったのか、どのような距離感だったのでしょうか?

大原 年々歌とお芝居の距離感はなくなってきていると思います。特にミュージカルをやるようになって、お芝居と歌が融合している経験をしたのは、すごく良い経験になったんです。いろんな役をやるにあたって、歌って本当にお芝居の延長だなと感じて。音楽はいろんな音があるから感情がすごくダイナミックに表現されているだけで、お芝居だったら脚本に書いてある言葉を伝えるし、歌だったら歌詞の内容を伝えるし、言葉を伝えるという意味では共通しているんだなと感じて。特に音楽と歌の距離感がぐっと縮まったのは、ミュージカルの『FUN HOME』に出演した時に、演出家の方が「歌と芝居を分離させないで欲しい」とおっしゃっていたのが大きかったです。それを実感することは年々増えてきましたね。

■今回のミニアルバムは、大原さんが歌手であり、俳優であることが活かされている作品になっていると感じました。『スポットライト』というアルバムタイトルやコンセプトには、どのような思いが込められているんですか?

大原 10年間での思い出をファンの人たちと一緒に振り返れるような1枚にしたいと思ったんです。私が歩んできた道のりには、スポットライトが象徴する光と影の両方があると思っていて。人生って多分みんなそうだと思うんですけど。そういったいろんな人生やいろんな人の物語を1曲ずつ入れていこうと決めました。それこそ歌とお芝居をやらせていただいてきたので、自然に歌うというよりも、一つひとつ物語を演じるような解釈で収録していきました。

■スポットライトという言葉や、光と影という言葉を聞いて、どんな印象を持ったり、どんな風景を思い出しますか?

大原 有名な方が沢山出演されるテレビ番組に初めて出るとなった時に、歌の練習やギターの練習が難しくて、泣いていた日々もあったんです。そういうことを思い出しますね。

■葛藤と一緒に思い出されるんですね。

大原 そうですね。デビューした映画の時に初めてギターを触って、1日中ずっと弾いていた時のこととか。でも音楽に対する姿勢も10年前とは全然違うんです。ただ単に歌が好きで楽しくやらせていただいて、スタッフさんの意見を聞いて、それをこなす感じだったのが、音楽がどんどん好きになったし、もっと勉強もしようと思うし、いい作品を作ろうと思うから、「こういうことがやりたい」という話し合いもするようになって。今回もすごく話し合いを重ねてできた6曲だなと思います。

■今作以外の楽曲でも、フィクションの要素が強いものから、ご自身の経験が反映されているものまで、様々な楽曲を歌ってきたかと思いますが、普段から歌う際は演じている感覚はあるんですか?

大原 あります。それはデビューの時からあったんですけど、お芝居の経験が増えてきたタイミングで、「歌うんじゃなくて伝えるんだよな」みたいな思いが強くなりましたね。

■それはお芝居の要素を歌に反映させることで、より分かりやすく表現するという意味なのでしょうか?

大原 そうですね。お芝居でもそうですけど、普通のまま演じても多分あまり伝わらないんですよ。自分が思ってるより10倍くらい明るくしたり、10倍増しの悲しさにしたり、ダイレクトにアプローチしないと伝わらなくて。それは歌でも同じなのかなと。お芝居をやっているからこそ学べたことなのかなと思います。

■今回のミニアルバムを聴いていて、歌詞によって細かく歌い方を変化させていると感じました。

大原 そうですね。抑揚もしゃくりもビブラートも少なくしてシンプルに歌ったのが“どうして”なんですけど、この曲はその方が言葉がすっと入ってくると思ったのでそうしていて。あえて真逆にしたのは、“寂しいの色”と“bitter sweet cinéma”でした。それこそ10年間で習得した表現力を活かして、本当に1行ごとに違うんじゃないかというくらい、考えながら歌っていました。

■今回収録された6曲はそれぞれ方向性の違う楽曲が揃っていますが、どのように曲を選んでいったのでしょうか?

大原 歌詞ではなく、曲のメロディーで「いいな」と思って選ぶことが多かったです。特に“どうして”は、一度聴いたらずっと口ずさんじゃうなと思って。聴いた瞬間に自分が歌っているところがすごく想像できたんですよね。そして“寂しいの色”は多田慎也さんが作詞してくださったんですけど、本当に歌詞が好きだったので、是非この延長線で物語を書いてくださいとお伝えしました。“bitter sweet cinéma”も1回聴いたら頭から離れないし、歌詞もすごく好きだったんです。メロディーを聴いた時点で、これをリード曲にするのがいいんじゃないかと思いました。10周年イヤー初めてのリード曲になるので、「デビュー当時のことを一緒に振り返ってもらえるような楽曲になったらいいな」という思いを伝えて、そのニュアンスを反映してもらいました。

■“bitter sweet cinéma”は、主題歌のような存在感がある曲だと感じました。

大原 まさに映画の名シーンで流れて欲しいような曲ですよね。歌っている私自身も、楽曲ごとに「こういう女の子の曲」みたいなイメージがあるんですけど、この曲は本当に映画のヒロインになったような気持ちで歌っていました。

■そのリード曲がアルバムの最後に収録されている理由はなにかあるんですか?

大原 曲順は本当に悩んだんです。やっぱりリード曲ってすごくメッセージ性が強いじゃないですか。“bitter sweet cinéma”は10年間やってきた今の私だからこそ歌える曲だと思うし、10年間の思い出を振り返って終わるのもいいかなと思って、この順番にしました。

■10周年イヤーを迎えるにあたっての気持ちと言うと、“JUMP”にも強く反映されていますよね?

大原 そうですね。今回高橋久美子さんに歌詞を書いていただいたんですけど、まさに10周年に向けてホップ・ステップ・ジャンプみたいな感じでいくぞという意味合いがあって。この間のツアーで歌わせていただいたんですけど、久々に声出しOKということでみんなと一緒に歌って弾けられるような楽曲にしたいという思いを伝えました。あとは当たり前なんですけど、10年こうしてライブができるのも皆さんのおかげですし、ファンの方々への感謝の気持ちも入れたくて。歌詞の中でも「みんながくれる優しさが 私の太陽」と言っているんですけど、それこそ私が影になってしまったときに光を照らしてくれるのがみんなだという思いもあって。逆にみんなが影になったときに少しでも光を照らし続けたいという私の思いもあるので、それを伝えて高橋さんが歌詞を書いてくださいました。ライブで感謝を伝えつつ、一緒に楽しめる楽曲ができたと思います。