Omoinotake VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

Omoinotake『EVERBLUE』

■素敵ですね。ちなみにこの曲のMVでは、エモアキさんがシンベ(シンセサイザーで演奏されるベース)を弾いていますよね?

エモアキ そうですね。レコーディングでは弾いていないですけど。(笑) このバンドをやっていくうちに、だんだん生のベースでは厳しい音色を使う曲が増えてきたので、早めにシンベを覚えておこうと思って、去年の夏くらいから始めたんです。

レオ “One Day”がいちばん最初だったかな?“産声”(ともに2020年発表『Long for』収録)でも少し入っています。

エモアキ 最近の曲にはだいたい入っているので、ライブでは自分で弾いています。

レオ 僕がアレンジをする時にシンベを入れちゃうものだから、「あとはよろしく」っていう感じで。(笑)

■アレンジはどういう感じで進めているんですか?

レオ 曲によりけりですけど、基本は僕が最初にDTMで作って、そこからアレンジャーの方に入ってもらったり、メンバーとスタジオで作ったりという流れが多いです。

■実際の演奏のことを考えずにアレンジを作って、2人に無茶振りするなんてこともあるんですか?

レオ シンベはまさにそういう感じですね。(笑) ドラムはどうだろう?

ドラゲ もともとレオはドラマーなので、手が足りなくて物理的に叩けないみたいなことはあまりないですね。理にかなったフレーズが多いと思います。エモアキには「今、シンベを使いたい時期なんだよね」って言っていたのを覚えています。(笑)

■そういうのがあるおかげで、バンドが進化できるんでしょうね。3曲目の“クロスワード”は恋人との別れを決意するバラードだと思うんですけど、どういうきっかけでできた曲なんですか?

エモアキ これは相手目線の歌詞を書こうと思って作り始めた曲ですね。以前にも“Ache”(2016年発表『InSnumber』収録)という曲でやったことがあるんですけど、またやってみたいなと思って。やっぱり自分目線というか、いつもの失恋ソングだと完全に自分だけの感情なので、相手目線の方が客観的に自分のことを見られるというか、「僕ってどう見えていたんだろう?」という視点で書くと、より深まっていくんじゃないかなと思ったんです。

■このストーリーはフィクションなんですか?

エモアキ いや、「たぶんこういうことだったんだろうな」っていう実体験です。

■自分が恋人と別れた時の話を、立場を逆転させて考えた?

エモアキ そういうことですね。「だからダメだったんだろうな」みたいな。(笑)

■そういう話も3人で共有するんですか?

レオ そうですね。基本的に実体験ベースの歌詞が多いので、相手がどういう人かっていうのも僕は知っていて。(笑) どうしてもそういう想像をしながら歌詞は読みますよね。

■エモアキさんは自分が歌うわけじゃないから歌詞にしやすいとかもあるんですか?

エモアキ なんだろう。あんまりそういうことは意識していないかもしれないです。

レオ 僕も他人の想いを代弁するというよりは、自分が歌詞を書いたくらいの気持ちで歌っています。

■それだけ気持ちを共有できているということですよね。

エモアキ そうですね。レオが歌わなそうな言葉は使わないし、そういうのはあると思います。

■スローテンポで音数も少ない曲ですけど、アレンジ面ではどんなことを意識したんですか?

レオ 最初から音数は少なくしようと決めていて。最初のワンコーラスはピアノの弾き語りみたいな感じで作って、メロディーはメロディー、アレンジはアレンジで分けて考えました。どの曲もそうなんですけど、ピアノやギターの弾き語りにしてもいいメロディー、いい歌詞っていうのは、いつも意識して作っていて。だから弾き語りから作って、それをどうアレンジすれば、よりよく聴かせられるかっていう流れが、僕としてはいちばん健全なんです。

■その答えが、スローテンポで、音数の少ないアレンジだったんですね。ドラゲさんはいかがでした?

ドラゲ この曲はサビ以降からしか生ドラムが出てこなくて。それと、遅いからこそ、聴こえるか聴こえないかくらいのスネアのゴーストとかを入れているんですけど、そういうニュアンスは打ち込みじゃなくて人間にしか出せないと思うし、それで気持ちよくサビの流れを作れるように意識はしましたね。

■打ち込みの部分は、ライブでは音源を同期させるんですか?

レオ まだ決めてないですけど、音源で打ち込みのドラムの音を使っている曲は、その音をパッドに入れて叩くというやり方をすることもあるので、必ずしも同期させるとは限らなくて。

■そう言われてみると、YouTubeにアップしていたカバー曲でもパッドを叩いていましたね。

ドラゲ 打ち込みの音でも、音源を流すのと、パッドに入れて叩くのとでは、やっぱり馴染み方が違うと思っていて。細かすぎて再現不可能な音は諦めますけど、機械で聴かせたほうがカッコいいパターンもあれば、人が鳴らした方がライブ感が増すものもあるので、そういう感じで使い分けています。

レオ 音源とライブは別物として捉えているので。

■そして4曲目の“漂流教室”は銀杏BOYZのカバーで、先ほども中学生の頃から聴いていたという話が出ましたけど、改めてカバーしようと思った理由を教えていただけますか?

エモアキ カバーを1曲入れようという話になって、僕が最初に銀杏BOYZをやりたいと言ったら、レオが「いや、銀杏は難しい」って。ギターがバンバン入っているし、よさが引き出せないという話で一旦ナシになったんですけど、他のバンドさんを挙げても僕たちのルーツ的にしっくりこなくて。そう思っていたところで、レオが「“漂流教室”だったらいけるかも」と言ってきて、「いいじゃん!」となりました。

レオ 銀杏BOYZや(その前身バンドの)GOING STEADYをやりたい想いはめちゃめちゃあったんですけど、どの曲を想像しても、僕らの音楽性で原曲のよさを引き出すのは無理だなと思っちゃって。曲のよさを殺して終わるのは、いちばんよくないので、銀杏BOYZは無理かもしれないと思っていたんですけど、“漂流教室”はいい塩梅でできるかもしれないと気づいたんです。

■この3人の編成でカバーするにあたって、どんなことを意識したんですか?

レオ 僕らは銀杏BOYZがチン中村さん、村井守さん、我孫子真哉さん、峯田和伸さんの4人の頃から大好きなので、それぞれのプレイヤーが弾いたフレーズをなるべく踏襲したいと思って。だから残すところは残しつつということは、すごく意識しました。あと、基本的なバッキングの音をアコースティックピアノとエレピの混ざった音にすることで広がりを持たせられるなっていうことは最初にイメージできたので、そのおかげでいい空気感が作れたなと思っていますね。

ドラゲ スローテンポだから、音の伸びだったり、タイム感だったりが難しくて。そこを気持ちよく聴かせるというか、自分が聴いて気持ちいい感じになっているかを意識しました。突っ込んじゃったり、逆にモタついちゃったりすると、悪目立ちするテンポ感だったので、そことの戦いでした。

エモアキ 僕は我孫子さんのベースが昔から大好きだったので。中学の時に、レオがドラムのバンドで、この曲をカバー……いや、コピーしていたこともあったんです。本当に大好きなフレーズがいっぱいあって、レオがそこを活かしてアレンジしてくれたので、弾いていて嬉しかったです。

■そう考えると15年近くの時を経て、コピーがカバーになったんですね。

エモアキ そうですね。(笑)

■そんな4曲がメジャーデビュー作として完成したわけですけど、改めてどんな作品に仕上がったと感じていますか?

レオ いつもライブの最後に“Hit It Up”(2017年発表のアルバム『So far』収録)という曲を演奏することが多くて、「その曲をなかなか超えられないよね」みたいな空気感があったんですけど、いろいろ経て近いBPM感の“EVERBLUE”ができあがったことで、ようやく自信を持って超えた感じが自分の中であるんです。ただただ元気いっぱいな曲じゃなくて、ちゃんとエモさも含んだ上で、疾走感のある踊れる曲ができたという意味でも、すごく自信作ではありますね。

■自分たちの曲がライバル的な気持ちもあるんですか?

レオ そうですね。もちろん“Hit It Up”以降でもいい曲はできていると思うんですけど、やっぱりリズム感が近いので、それと比べる気持ちにはなります。

■これを機に“Hit It Up”も聴き直してみます。この先に思い描いていることはありますか?

レオ インディーズ時代もいい曲をたくさん作ってこれた印象はあるんですけど、その上でメジャーというフィールドに立つわけなので、僕たちの思い描くところに行くには、さらによりよい曲をたくさん作る必要があると思うんです。それは大変なことだとは理解しているんですけど、「変わらないまま変わりたい」という想いを胸に、今までのことに固執しすぎず、でも大事なものは持ったまま、いい曲を作り続けるために、ひたすらに向き合っていきたいですね。

Interview & Text:タナカヒロシ

PROFILE
島根県出身ピアノトリオバンド。藤井怜央 / レオ(Vo&Key)、福島智朗 / エモアキ(Ba)、冨田洋之進 / ドラゲ(Dr)のギターレス構成。中学生の同級生だった彼らが2012年に結成。渋谷を中心にストリートをはじめとするライブを重ね人気を獲得してきた。繊細ながらも情感を揺さぶる藤井レオの魅力的なボーカルが今の時代のカルチャーと相まっている。配信シングル『モラトリアム』は自身初の劇場アニメ主題歌に起用され、話題を集める。YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」にインディーズながら初登場。20年11月に配信された『産声』は、テレビ東京「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」のドラマOPに起用され、2021年ネクストブレイクアーティストとして注目されている。
https://omoinotake.com/

RELEASE
『EVERBLUE』

Omoinotake『EVERBLUE』

初回生産限定盤(CD+DVD)
AICL-4133~4134
¥2,200(tax in)

通常盤(CD)
AICL-4135
¥1,650(tax in)

Sony Music Labels
11月17日 ON SALE
https://lnk.to/MIcjDN