音山大亮(Vo&Gt)、さなえ(Key)、バンバ(Gt)
アニメ「妻、小学生になる。」OPで初タイアップ。ここから始めるpachaeの楽しみ方。
pachaeが10月7日に新曲『アイノリユニオン』をリリース。同曲は2024年10月よりTOKYO MX、BS11他にて放送がスタートするアニメ『妻、小学生になる。』のオープニング主題歌として書きおろされた楽曲。インタビューでは初のタイアップ作品となった今作にまつわることや、ここから聴き始めるpachaeについて、メンバー3人に話を訊いた。
■前回の取材の時はさなえさんがいらっしゃらなかったのですが、さなえさんは何をきっかけに音楽を始められたのでしょうか?
さなえ 私は3~4歳あたりからYAMAHAでピアノとエレクトーンを習い始めて、その後ちょこっとゴスペルもやったりして、エレクトーンのお仕事もいただくようになりました。バンドは新たな世界として踏み出した感じです。エレクトーンは私の中ではすごくおっきいもので、共に生きてきました。
■そんなさなえさんも含めて、pachaeのお三方の「2024年のハイライト」を2つ教えてください。
音山 今年といえばジャイガ(OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVA)やな。
バンバ もちろんジャイガは全員そうですよね。個人的にはアンプのローンを払い終えたことです。アンプはローンの残りを払えば払うほど音が良くなっていく気がしました。(笑)
さなえ 私は今年の3月にエレクトーンのデモンストレーターをやめて、4月に『チョウチンカップル』でメジャーデビューさせてもらったことです。自分にとって音楽での生き方が変わった年だなってすごい思います。
音山 僕はもちろんジャイガと、ツタロックも今年やったな。今までとは桁違いに多い人の前で演る景色を見て、いい意味で何かが爆発的に変わるわけじゃなく、ライブの出来や自分たちのテンションの持っていき方が、大勢の人に観られたおかげでかなり洗練されたと思います。その結果を他のイベントでも出せるようになってきているのが、バンドとしてのハイライトかもしれません。
■今回の初のタイアップもハイライトですよね?
音山 もちろん、アニメ『妻、小学生になる。』で初めてタイアップで書き下ろしというのを経験したのも、めちゃくちゃ大きなハイライトだと思っています。バンドとして大きい動きというか、自分たちの中で何かがどんどん変わっていくきっかけになることが多かった1年かな。
■音山さん個人的には?何かローンは組んでいませんか?(笑)
音山 僕はカツカツでも一括払い派です。(笑) でも、最近初めてローンを組んで、ウォーターサーバーを今まで使ってたものから他社のものに乗り換えました。水道水を濾過するタイプなので、でかい水のボトルが溜まらないっていう。それまでのストレスからの開放がかなりハイライトですね。(笑)
■……さなえさんも何かローン組んでいたりします?
さなえ 組んでます。(笑) ローランドのFANTOMを新しく買って、8月からローンが始まりました。
■全員何かしらローンを組んでいるんですね。(笑) さて、今回は「家族」をテーマとした作品『妻、小学生になる。』とのタイアップということで、バンドでの自分の立ち位置を「家族」にたとえると何になると思いますか?
バンバ なんか……僕は真ん中の息子ぐらいの気持ちです。(笑)
音山 僕は犬ですね。意外と家族を牛耳ってるのって犬なので。(笑) ウチの犬はそうなんですよ。なので、ウチでたとえると僕は犬。犬種はトイプードルです。
■あ~、わかります。バンバさんが真ん中の息子で、音山さんが犬。さなえさんはいかがですか?
さなえ 私は「花」で。
■花……?
バンバ 花?
音山 花?
■えーと……真ん中の息子と、犬と、花。すごい家族構成ですね……。独特ですがこれもバンドの個性かもしれませんね。(笑) それでは気を取り直して、新曲“アイノリユニオン”の好きなポイントを教えてください。
バンバ Bメロかな。Bメロのギターは唯一簡単に弾けるポイントなので、気が安らぎますね。
さなえ 私はサビが1番弾きやすくて気持ちいいです。シンプルだからこそ全体を聴けるので。難しい時って弾くのに集中するし、「ウワ~ッ!」となるから、全体を俯瞰できるサビが好きですね。
■さなえさんは難しい楽譜がお好きだと伺ったのですが、この曲で言うとどこが一番難しいのでしょうか?
さなえ イントロが難しいです。ギターと一緒に弾くところはドキドキしちゃう。(笑)
■燃えちゃうタイプなんですね。それでは今回、初のタイアップを伝えられた時の気持ちを教えてください。
音山 「来たぜ!」って感じでした。自分の中のテンションの持って行き方が難しくて、当然とも思っていないし、全てに感謝しているけど、舞い上がりたくはなかったんです。僕が舞い上がると作品に対する冷静さがブレるので、メンバーは喜びまくってくれていいんですけど、僕としては多少偉そうな言い方で言えば、「ようやくか」みたいな感じですね。「いつも通りバチっと作るか!」という感じでした。
■プレッシャーは感じませんでしたか?
音山 プレッシャーは無いですね。この曲に関しては、『妻、小学生になる。』がめちゃくちゃ好きだったので、原作の良さを削らんように、音楽がプラスになるようにっていうのは意識しました。
■個人的には『妻、小学生になる。』にpachaeなのか!?と思いました。pachaeが今まで出してきた曲と、この作品のホームドラマな感じって、少しイメージが違ったので。
音山 そうですね。でも俺としては、俺っぽい曲でまだ出してないものだっただけなんです。運命なのか、見極めていたのか、すごくいいタイミングで来たなと。こういう曲を書くタイミングを与えられたことへの感謝があります。普段だったらやっぱり、自分の中から出てくる曲を書くわけじゃないですか。なので、こういうタイアップだからこそなんです。特にこの作品のことが好きっていうこともあります。バチッとしたテーマがあって、しっかりとしたストーリーがあるから、作品のクオリティと、今回のタイアップのおかげで俺の体の中に眠っていた“アイノリユニオン”が世に出ることになりました。そのことへの感謝があります。
■他の人の引き出しがあって、自分の引き出しが開いた、と?
音山 やっぱりpachaeはpachaeっぽいイメージの中でやっているから、だからこそ全然違う曲をやりたかったし、その1つの機会になったのはデカいですね。1回やっちゃえばpachaeの曲になりますし、しかもタイアップは一番「知ってもらえる」タイミングだから。この曲で興味を持ってもらえたら、さすがに他の1曲くらいは聴いてくれると思うし。それで、他にもいろんな曲があるから、「いろんな曲をやるバンド」と思わせるタイミングとして、一番綺麗な時期に重なったのかなと思っていて。タイミングにも感謝って感じです。
■タイアップということで、いつもと変えた部分はありますか?
音山 いい意味で変えていないと思います。いろんな意識や想いがあったけど、やり方みたいなものは変えない方がいいかなというところで、いつも通り書き下ろしました。
さなえ 変わったというより、タイアップが初めてなので、曲に『妻、小学生になる。』の物語が入ってきたというか、自分の中に物語がより鮮明に入って来たというところでは、意識が変わったというより、もう環境自体が変わったという感じがします。
バンバ 僕はもうpachaeの曲だと思っています。確かに『妻、小学生になる。』の曲なんですけど、「『妻、小学生になる。』の曲」とは言われたくないですね。
■作曲に時間はかかりましたか?
音山 いつもよりかなり時間はかけています。特に歌詞ですね。最終話まで通して、いつどこのタイミングで聴いても感動が増すような曲にしたかったんです。オープニングってもう全ての始まりじゃないですか。1話でこの曲がアニメ本編より先に流れるかもしれない。そのタイミングで、「最後」を連想させたくはなかったんです。
■聴き返すと発見があるけど、初めて見る人には最後を連想させたくない、という感じでしょうか?
音山 そうですね。歌詞にはだいぶこだわっています。楽曲展開に関しては「アニメの曲!」ってならんように、フルバージョンを聴きに来てくれる人は絶対いっぱいいるから、そこですごい変なことをしていたり、いろんなセクションを入れたりしているから、「何このバンド?!」って1ミリでもなってくれたら、いい意味で「アニメの曲」という感覚も薄れて、バンドの曲ともとらえてくれる人が増えるんじゃないかなって。そういう意味では、曲にも結構時間かけました。
■確かに時間がかかっていそうな曲でした。演奏面で特にこだわった部分や聴いてほしいポイントはどこですか?
バンバ イントロかな。イントロかアウトロの「ドゥンドゥン」しているところです。
さなえ やっぱりサビで歌詞と一緒にやるところ。でも、全部ですね。あれもこれもって出てきちゃう。「どこが好き」って言い始めたら、キリがなくなっちゃうぐらい好きだから、全部聴いてほしいです。
音山 音楽をやっていない方にはちょっと難しいかもしれないですけど、この曲は結構転調しているんですよ。「ザ・転調」って感じにはしていないんですけど、イントロがあって、Aメロで違うキーになって、Bメロでも違うキーになって、サビでまた新しいキーになって……みたいな変態曲なんです。このアニメにふさわしくなるように、いろんな展開を詰めているし、イントロにもそういう仕掛けがあって、作品を連想させるような飛び道具を入れているから、ガラッと雰囲気が変わる瞬間とか、セクションからセクションの移り目みたいなものとかを聴いてくれたら嬉しいです。1回目は何も考えずに聴いて、4回目くらいからはそういうこともぜひ考えてもらって。(笑)
■なるほど。つまり作曲的なテクニックで結構いろいろ詰めていると?
音山 テクニックと呼べるほどすごいことはしていないと思いますけど、結構変態的なことをしています。それがわかりづらいようにというか、滑らかに転調などを入れることは、今回結構頑張ったので、4回目からはぜひそれを意識して聴いてほしいですね。
■作品の内容と特にすり合わせたところはどこですか?
音山 もうそれは「歌詞」ですね。歌詞はじっくり読んでほしいし、最終話まで観て、物語が終わった後に、もう1回ちゃんと読んでほしいです。
■最終話まで観終えてから、歌詞を読んだら印象が変わりますか?
音山 全然変わると思います!1話と最終話では歌詞の捉え方が全然変わってくるので、そういう楽しみ方もあります。