PassCode『REVERBERATE Plus Tour 2023』ライブレポート@ZeppShinjuku

抑圧の日々を打ち砕き作り上げたツアーファイナルで魅せる4人の「存在」。

PassCodeが7月20日(木)、東京・Zepp Shinjukuで『REVERBERATE Plus Tour 2023』のツアーファイナル公演を開催した。今公演のチケットはソールドアウト。2023年4月に歌舞伎町の中心地へオープンしたばかりの会場はまだ資材の匂いが残る地下空間で、ミラーボールから降り注ぐ七色の光に照らされた観客たちは開演のアナウンスに大歓声で応えた。客電が落ち、一瞬の闇と静寂の中に青く沈んだステージへ現れたPassCode。「歌えー!」南菜生の高らかな煽りに導かれた“It’s you”に、オーディエンスは拳を突き上げ叫ぶ。真っ白に照らし出される観客席を見渡す4人の表情には、嘆きの日々を越えた万感の想いが込められていた。ライブハウスの夜明けを謳う大合唱を浴びて。しかし続く“MYTH”では一転、蠱惑的な歌い出しから有馬えみりが観客を煽り立てる。間奏部分の殺陣を含む振り付けに視線を奪われていれば、南が放つ「これを待ってたんでしょ!?声出せ!」の合図と共に“Toxic”がスタート。グリーンとマゼンタのライトが毒々しく舞台を舐める中、2パートに分かれた観客のコールは天井まで溢れかえる。“Live your truth”では祈るような、渇望するような詞を歌う4人の横顔を柔らかい光が照らす。

「良い意味でよ?良い意味で、めちゃくちゃ汗臭い!」4曲を歌い終えて感謝を伝えた南のその言葉に、オーディエンスは大笑い。開演前まで辺りを満たしていた新築の匂いはどこかに消えて、「空調ってもっと涼しくなりませんかー?!」というメンバーの声にはタオルを回し空気をかき混ぜて応える観客の姿もあった。MCの終わりから間髪入れず、大上陽奈子が歌い出す“SIREN”は、決然と響き渡る。光の粒が乱れ飛ぶ中、“Stealth Haze”で観客の手拍子を煽る南は会場を埋め尽くす人の声を追い風に、しかし舞台からそれ以上のエネルギーを返して、“FLAVOR OF BLUE”では虹色のライトが乱れ飛ぶ空間を有馬のヒステリックなシャウトが切り裂く。「このツアーで披露してきた新曲のひとつなんだけど、できる?」「他の会場では完璧だったんだけど、できる?」と、挑発的なセリフと共に打ち出されたのは“NOTHING SEEKER”。息の揃った観客のコールが響き、続く“STARRY SKY”では一転、青く淡いライトの中で白い星たちが燦然と煌めく。「今夜このまま居させて」と歌う透明な声は流れ星のようにライブの熱気が籠る天井をも突き抜けて、遠い空まで届いたような錯覚があった。

歌い終えて、空調が効いているはずの会場のあまりの暑さにこれから始まる野外での夏フェスを心配する4人。水分補給を呼びかけつつ「アルコールは、お水じゃないからな?」と観客に注意して、南はライブの間隔が空いた1ヵ月間を振り返る。公演の数日前には新曲“GROUNDSWELL”のMVが公開されており、ライブの撮影のために会場を訪れていた監督が紹介されると拍手が上がった。また、アメリカツアーの開催についても触れると、客席からは「行くよ!」の声。ここで「アメリカでもツアーやるのに日本では東名阪しかやらないのはおかしくない?」と前振りして、全国11都市12会場のライブハウスツアーが発表された。10月からスタートする同ツアーのファイナルは、東京・豊洲PITで行われる。ライブも終盤。今回のツアーではバンドメンバーやスタッフによる曲入りのコールが披露されてきたが、この日のコールを担当したのは音楽プロデューサーの平地孝次。PA席で手を振る平地に「平地コール」が湧きおこる中、「Zepp新宿のみなさん準備はいいですか?!」と堂に入ったコールで呼びこまれた“Freely”の挑発的なシャウトに、フロアの熱狂は濃密さを増す。

ここからPassCodeは“GROUNDSWELL”、“ONE STEP BEYOND”、“Ray”とキラーチューンを続けざまに叩き付ける。仕草のひとつひとつが目を惹く南菜生、ステージに額を擦り付けるように声を振り絞る有馬えみり、颯爽と歌声を響かせて空気を塗り替える高嶋楓、指先までしなやかに踊り華やかに歌う大上陽奈子、その4人のエネルギーと呼応してバンドが生み出すサウンドの音圧は、眩暈がするほどの地響きとなり会場を揺らす。それでもかき消されずに鼓膜を突き刺す観客の歌声は、PassCodeという「存在」をどこまでも羽ばたかせていく。“Club Kids Never Die”の終わりに突如照明が落ちたのはトラブルだったようだが、それに対してもメンバーは「みんなの熱気でライトが壊れたっぽい!」「まぁウチらが光ってるから大丈夫でしょ!」と慣れたものだ。ここで和んだ空気に曲前のMCがやり辛くなった南は「MCナシでいい?!」と笑う。それでも乗り越えた日々と観客への感謝を告げて、「このツアー1番の“Anything New”を作りましょう!」と、“Anything New”をドロップ。

ラストソング“Clouds Across The Moon”では、駆け出て来たツインギターとも視線を交わし、大歓声の中でライブを終えた。……と思いきや、「アンコールあるか決めてなかったけど、途中でトラブル起こっちゃったから、1曲やっていい?」の一言に観客は嬉しい悲鳴。ここで選ばれたのはまさかの1stアルバム収録曲“Kissの花束”だった。ここまで激しいナンバーを連ねて来た今公演。その締めくくりには「アイドルらしいPassCode」のキュートな姿と歌声を存分に魅せつける。最後は汗と輝きに溢れる空気を有馬のシャウトが砕いて、6都市を巡るツアーが幕を下ろした。

Text:安藤さやか
Photo:タマイシンゴ

https://passcode-official.com/

『REVERBERATE Plus Tour 2023』@ZeppShinjuku セットリスト
01. It’s you
02. MYTH
03. Toxic
04. Live your truth
05. SIREN
06. Stealth Haze
07. FLAVOR OF BLUE
08. NOTHING SEEKER
09. STARRY SKY
10. Freely
11. GROUNDSWELL
12. ONE STEP BEYOND
13. Ray
14. Club Kids Never Die
15. Anything New
16. Clouds Across The Moon

ENCORE
01. Kissの花束