PERSONZ結成35周年企画[NEWS 03]『「HEART OF GOLD」LIVE+STORY PERFORMANCE PERSONZ+原田美枝子+左右田薫』ライブレポート@ヒューリックホール東京 10月14日(月・祝)

PERSONZ結成35周年企画[NEWS 03]『「HEART OF GOLD」LIVE+STORY PERFORMANCE PERSONZ+原田美枝子+左右田薫』

2008年に描かれた未来世界を鮮烈に表現。歌姫・JILLが描いた生命のバトンは、未来に託された。

今年結成35周年を迎えたロックバンド・PERSONZ。のびやかでかつ表現力豊かな声で、女性ボーカルの頂点に君臨するJILLを筆頭に、多彩なテクニックでベースというポジションの枠を超えたプレーを見せる渡邉貢、確かなテクニックに裏付けられた堅実なビートを叩きだす藤田勉、自由自在のエフェクトサウンドに独自の個性を発揮する本田毅と、豊かなキャリアで築き上げた確固たる世界観を披露し、今も変わらぬ魅力を発し続ける、数少ないバンドの一つだ。

そのPERSONZが、結成35周年の記念イベントとして14日、東京にてイベント『「HEART OF GOLD」LIVE+STORY PERFORMANCE PERSONZ+原田美枝子+左右田薫』を行った。これはPERSONZが2008年10月に発表した通算18作目となるオリジナル・アルバム『HEART OF GOLD』を描くにあたりJILLが考えた未来世界の物語を、PERSONZのプレーとともに朗読劇を交えて表現するというもの。「どれだけ時代が移り変わろうとも、誰かを助けようとする無心の愛、困難に立ち向かう勇気を持つ力、希望ある未来を信じる〈黄金に輝く心〉を持ち続けることが大切なんだ。それは見知らぬ先祖も見知らぬ末裔も、そしてわたしたちだって同じこと」JILLはそんなポジティブで力強いメッセージを、この物語に込めたという。

この日朗読を行った女優の原田美枝子と、ストーリーのビジュアルイメージを作ったイラストレーターの左右田薫は、二人ともJILLと旧知の盟友。近年はロックバンドが演劇などの表現とコラボを行う例はさまざまにあるが、今回表現されたものは今から10年以上も前にJILLによってイメージされたもの。しかし不変の魅力を放つPERSONZの魅力と相まって、現代にも十分アピールする作品として観衆の脳裏に刻みこまれた。今回はそのステージの模様を、朗読劇で語られるストーリーと交互にレポートする。開幕前には不安さを称えたBGMが流れた後に、フランク・シナトラの“Summer Wind”が会場を包んだ。そしてゆったりした4ビートが、物語のはじまりを静かに伝えていた。

Prologue:
西暦2099年、核兵器と電磁パルス爆弾による戦争により地球は汚染され、悪化した治安のもとで荒廃した世界。富裕層が作り上げたドームシティと、かつての隆盛が文字通り失われた都市・ロストシティという二つの世界を舞台に、アークノアに住む一人の少女と、ロストシティに生きる少年の出会いから、物語はスタートした。

PERSONZのメンバーはステージ左側に位置し、“BACKFIRE”で物語のはじまりを迎えた。ステージに置かれたバイクには、原田の姿だ。鋭い8ビートの重い響きと、原田を照らす赤い照明が、この物語が熱いストーリーであることを物語っているようでもあった。バイクに乗る原田、そしてステージで高らかに自身の声を上げるJILL。レザースーツで世紀末然とした二人の姿、そして要所に登場する左右田のイラストからも、この時鳴り響いたサウンドに、荒廃性と、対照的に「たった一度だけの人生を生き抜く」というこのステージのテーマに表されたタフさを加えていた。

STORY 1:
ドームシティ内の安全区域ドーム「アークノア」で生活する少女・ヴィーは、ドーム内の快適な環境内で自由な生活を送っていた。ある日、曾祖母のグランマからプレゼントされたビーズアイという蜂の形をしたドローンで遊んでいたヴィーは、ドローンをドームから外に抜け出させ、まだ見ぬ世界の一端を目にしていく。そんな中、ロストシティの砂丘でビーズアイは、カイという少年と出会った。カイは一緒に暮らしているサラという女性が病気にかかっており、助けが欲しいと懇願する。その思いにいてもたってもいられなくなったヴィーは、女性を助けるための抗体を持ってドームを抜け出しロストシティへ向かう。そしてカイと出会い、生まれて初めて恋心を抱くが、カイはドームシティが都市ぐるみで隠していることを告げる。その事実に衝撃を受けたヴィー。一方でカイはいつか、まだ見ぬドームシティへ行くことを誓うのだった。

“FIRST CRUSH”“GOOD VIBERATION”と、ロストシティを彷彿とするバッドボーイサウンドが、雰囲気を一転させる。他方、シーケンスサウンドにドラムのセッションを加えた“INAZUMA WOMAN”、ベースのアルペジオで繊細なサウンドに抒情的な響きを与えた“INORI”と、ヴィーが初めて見た自分の知らない世界を緻密に描き出していく。そして後半の“ROOF TOP”から“JILLION VOICES”“THE ONLY ONE”へと、ヴィーとカイが新たな道へ希望を膨らませようとするさまを描くように、ポジティブなサウンドが聴くものの気持ちを奮い立たせていく。このパートは『HEART OF GOLD』の収録曲以外の楽曲も使用されており、中でも藤田、本田、渡邉ら自体もフィーチャーされ、アルバムがリリースされて以降、深みを増した個々の個性を発揮し、物語のストーリーに広い奥行きを作り出していた。まさしくそれは結成35周年というキャリアの積み重ねにより成し得たものだといえるだろう。

STORY 2:
2109年、23歳の女性に成長したヴィーは、その後ドームシティでカイと再会を果たす。そして甘い日々を過ごしていたある日、カイがかつてロストシティで過ごしていた時の幼馴染みが、ドームシティの兵隊に無残に殺されていくさまを目撃。いたたまれなくなったカイとヴィーはドームシティを離れ、ロストシティの環境改善に奔走する。そして街は再生し、二人は街を収める頂点に立った。かつてロストシティと呼ばれた場所は「ネオ・アークノア」と名付けられ、人々に幸せな生活をもたらしていた。しかしこのことでドームシティは衰退し、それを快く思わない者たちの手により、荒廃した街の中でカイは殺されてしまう。ヴィーは悲しみに暮れるも立ち上がり、街を率いていくことを決意するのだった。

クライマックスは月のオブジェを片手にたずさえたJILLが、しっとりと歌いあげたバラード“月の輝く夜に”から、気持ちを奮い立たせてくるような“BRAVE HEART”、そしてJILLがこの物語への思い、そして物語を引き継いでいく未来の人たちへの思いを目いっぱいに詰め込んだラストナンバー“HEART OF GOLD”へ。この曲はJILLのアカペラより、まるで国家を口ずさむような荘厳な雰囲気を醸し出しながら歌いだされた。自分自身を誇る思い、自身の思いを宝物のように大切にする思い、そんな思いの数々がサビに向かうにつれて強さを増すビートから滲み出していき、『HEART OF GOLD』に描かれた世界観を改めてこの日会場に訪れた観衆の胸に刻んでいた。

そして、カーテンコール。JILLは20代のころに出会った原田との思い出を振り返る。それはとあるアクシデントにより落ち込んでいたJILLを、原田が気さくに呼び出し、励まし背中を押したという記憶の一端だった。そんな出会いさえも、『HEART OF GOLD』に詰め込んだ思いにリンクしているようにも見えた。またそのことを示すかの如く、ラストはサプライズとして、PERSONZは原田を迎え、ともに“DEAR FRIENDS”を披露。この日のイベントを盛大に締めくくった。

先日、某企業の新規事業説明会でこんな話があった。その新規事業では、新たなテーマパークを作り上げるとともに、自社事業である飲食業への素材調達、人員教育や環境保護への取り組みなどをすべて賄うという目標が打ち立てられているという。令和という時代を迎えて激動の時が続く今日、この世界で生きていくには「自ら道を切り開いていく」という意向が必要であるということを、改めて身につまされる。その印象は、この日披露された物語のカギとなる「ネオ・アークノア」のイメージに、どこか似た雰囲気を感じさせていた。その意味で、今回のステージで披露された『HEART OF GOLD』の世界観の誕生には、運命的なものすら感じられた、印象深いステージだった。

Text:桂伸也
Photo:moo

http://personz.net/

PERSONZ結成35周年企画[NEWS 03]『「HEART OF GOLD」LIVE+STORY PERFORMANCE PERSONZ+原田美枝子+左右田薫』セットリスト
1. BACKFIRE
2. ROUGH DIAMOND
3. LIFE IS FIGHTING
4. FIRST CRUSH
5. INAZUMA WOMAN
6. INORI
7. GOOD VIBERATION
8. FIRST CRUSH
9. ROOF TOP
10. JILLON VOICES
11. THE ONLY ONE
12. MOONSTRUCK
13. 月の輝く夜に
14. BRAVE HEART
15. HEART OF GOLD
Supprise. DEAR FRIENDS(with 原田美枝子)