Rin音 Tour 2022『haunted house』ライブレポート@Zepp Haneda

全国ツアー完走 日常に抱く感情を共有し浄化するフレンドリーな夜

Rin音が8月から行っていた全国ツアーTour 2022『haunted house』の最終公演が9月17日(土)、Zepp Hanedaにて行われた。その日のオープニングからゲストとして登場したのはシンガーソングライターのさとうもか。幸福感に満ちたライブを予感させるように“魔法”を披露し、少し憂いを含んだ魅力的な歌声で明るく一歩を踏み出すように歌う。「ここにいるみんなはRin音くんのことが大好きだと思います。今日はRin音くんに愛を伝えてもらえたらいいのかな」との言葉から“愛ゆえに”や“melt bitter”などを披露し、Rin音のステージに向けて会場を温かい空気に包み込んだ。

本ツアーのタイトルや今年発売したアルバム『cloud achoo』のジャケット写真にも関連した、お化けや骸骨などが登場するコミカルなオープニング映像が流れた後に、いよいよRin音が登場。「東京、楽しむ準備はできていますか?」と語りかけながら1曲目“cloud achoo”へ。DJ台の正面に掲げられたロゴをはじめ、ステージ上はカラフルに彩られポップな世界を構築し、リズミックなラップが気分をかき立てる。広いステージを悠々と歩きながらオーディエンスに手を伸ばしたりとコミュニケーションを取る様子も伺え、序盤から明るい雰囲気だ。「この人生、生きていれば楽しいことも悪いこともある。でもそれをどう過ごすかが大切だと思う」という言葉に続いて披露された“悪運星人”も、爽快な韻とともにポップな音像がステージを彩る。「見えるものが 一生傷つかないままでいたい」というリリックから垣間見えるRin音の慈悲深さは、この日のライブを通して何度も感じるものでもあった。

後のMCにて「気が楽になるように曲を作っているんです。だからみんなも曲を聴いて気が楽になってくれたら嬉しい」と話していたRin音。力強い応援でもなく、しきりに慰めてくれるリリックでもなく、時折アイロニカルな遊び心のあるリリックが日常に潜む心の動きを捉え、ポップなトラックとともに聴く者の心をじんわりと温かくする。Rin音の楽曲にあるそんな穏やかさが序盤から溢れていた。ライブの開幕を彩った明るく華やかなムードから一転して、“%BOY”では情景を描くように丁寧に緩急のあるラップを聴かせ、MCを挟んで披露した“36.5℃”では、大人びて落ち着いた印象を醸しながら湿っぽくも温かい歌声を紡ぐ。青い照明とともに幻想的に届けた“glitch switch”では、広い音域を柔らかく歌い上げスモーキーな声色を活かした優しさのある楽曲を次々と届けていく。

「これが人生だそうだ仕方ない」「つまりしょうがない」と、“Myth”では時折喋るようなイントネーションでリリックを紡いでいたのも印象深い。彼の地元である福岡の景色とともに、諦観としても響く言葉を、ネガティブでもポジティブでもなく、ただそこにある感情としてニュートラルに歌う声には、日常に忍んでいるネガティブな感情を浄化するような心地よさもあった。さらにこの日は、スペシャルゲストとしてasmiが登場。フィーチャリングとして迎えた“bless”、“earth meal”の2曲をともに披露し、彼らの歌声の相性の良さを見せる。前者は儚い恋の終わりを、後者では温かい恋愛を、会話するようなテンポで2人の柔らかい歌声を交差させた。「羽田のみなさん、友達になって帰ってくれたら嬉しいです」とライブはラストスパートへ。“sunny hunny”に続き新曲“夏風邪”を披露すると、手拍子とともに“Ironic signal”へ。「これからも仲良くしてよ」と語りかけるように歌い、彼が多くの人に知られるようになったきっかけの楽曲“snow jam”を続けた。「楽しい時はあっという間だけど、心の中に思い出として残ればすごく嬉しいなと思います。綺麗な形に残るように歌わせてください」と本編最後には“Ghost U clock”を披露。本公演の2時間という短い時間、そして人生の刹那を噛みしめ楽しむようなリリックが染みわたり、会場には穏やかな祝福感が満ちた。

アンコールではスペシャルゲストとして、asmi、クボタカイ、A夏目が登場し、4人で“What’s up”を披露。所属事務所の仲間でもあり、それぞれソロで活躍する4人だが、この日この場所が4人の活動の交差点となったことに胸が熱くなる。ライブ終盤、「アーティストだけどアーティストになりきれない」と自身のことを評したRin音。「本当にみんなのことを勝手に友達だと思っているんです」とも語っていたが、そんな距離感がこの日の温かく親密な空気感を作り出していたのだろう。「みんなに悪いことが起きて欲しくないけど、これからも辛いことや悲しいこと、いろいろ起こると思う。そういう時こそ僕たちの音楽で救えたらと思います」と続け、“夜明乃歌”へ。そして「ここにみんなといれたこと、本当に忘れられない思い出です。僕がいなくても笑っていられるように」と言い残すと、最後の楽曲“Blue Diary”を披露した。彼の思いは「貴方がいて 僕もいて 笑える日々を愛してくれよ」の歌詞を力強く放った時の切実な声色や「僕がいなくても笑っててくれ」とこみあげる気持ちを託すように綴った歌声に表れていた。

親しみに満ちたMCの言葉や、日常に潜むネガティブな感情を少し上向きにしてくれるリリック、華やかでポップなメロディ。『Rin音Tour 2022 haunted house』最終日は、それらを面と向かって届けた心に染みわたるような公演であった。ライブという非日常が終わっても、この日のメッセージと思い出は、公演に集まった人々の日常の糧になってくれることだろう。

Text:村上麗奈
Photo:Taka”nekoze photo”

https://rinne-neonetyankee.com/

Rin音 Tour 2022『haunted house』@Zepp Haneda セットリスト
01. cloud achoo
02. 悪運成人
03. %BOY
04. 36.5℃
05. 琥珀の目
06. glitch switch
07. Myth
08. heaven town
09. beryllium
10. bless (feat. asami)
11. earth meal (feat. asami)
12. sunny hunny
13. 夏風邪
14. Ironic signal
15. snow jam
16. Ghost U clock

ENCORE
01. What’s up (Rin音、クボタカイ、asami、A夏目)
02. 夜明乃歌
03. Blue Diary