日本のメタルコア・SABLE HILLS、世界最大級の独メタルフェス『Wacken Open Air』2年連続出場で魅せつけた剛腕パフォーマンス!
毎年ドイツで開催されている世界最大級のメタルフェス『Wacken Open Air』に、SABLE HILLSが2年連続で出場を果たした。しかも今年はメインアクト枠ということで、本場のメタラーたちに彼らはどんな風に受け入れられるのか。その様子をこの目でどうしても見届けたく、現地まで足を運んだ。これまでの流れを説明しておくと、彼らは昨年の『Wacken Open Air』内の「Metal Battle」にて日本人初の優勝を勝ち取った。今年は『Wacken Open Air』のメインアクト枠として、初日(8月2日)の「HEADBANGERS STAGE」に登場。ただ、ドイツは連日に渡って雨が続いており、この日も地面はぐちゃぐちゃの田んぼ状態であった。しかし、SABLE HILLSはそんな悪条件を跳ね返して、ドイツのメタラーたちを大暴れさせたのだ。
14時45分、SEと共にTakuya(Vo)、Rict(Gt)、Wataru(Gt)、UEDA(Ba)、Keita(Dr)のメンバー5人が揃うと、ショウは今年5月に配信リリースされた“BAD KING”でライブスタート。ド頭から新曲を振り下ろすところにバンドの自信がうかがえる。足元は劣悪な環境にもかかわらず、気づけば後方までぎっしりと観客で埋まっているではないか。やはり去年の評判を聞きつけ、このステージに駆けつけた人が多いのだろう。バンドもその期待に全力で応え、気迫漲る演奏を叩きつける。そして、昨年出た2ndアルバム『DUALITY』に収録の冒頭曲“The Envy”へ。哀愁を帯びたギターが曇天に響き渡り、Takuyaがクラップを煽ると、観客もそれに追随する形で一体感が生まれていく。後半には落差激しいブレイクダウンをかまし、Takuya、Rict、Wataru、UEDAのフロント4人がヘッドバンギングを決めて演奏に没頭。プレイだけではなく、視覚面からも観客の心を揺さぶり続ける。続いて疾走感溢れる“Crisis”に入ると、観客によるサークルモッシュは激しさを増し、膝まで泥だらけになって騒ぐ有様だ。曲終わりにはSABLE HILLSコールも起きるほどである。「カモン!」と歓喜の雄叫びを上げる男性もいて、現地の興奮ぶりを肌でひしひしと感じずにいられなかった。
その様子にTakuyaも「ダンケシェーン、ジャーマニー!」と感謝の言葉を述べ、次は“Recapture”をプレイ。濁声シャウト連発のヴォーカル、また、天に突き抜ける爽快なギターフレーズも相まって、サークルモッシュは過激になる一方だ。筆者の顔にも泥が飛んできて、思わず笑みが溢れてしまった。図太いヘヴィリフで畳み掛ける“Messiah”に移ると、今年正式メンバーになったWataruも歌で援護し、楽曲に新たな彩りを添えていた。Rictのクリーン・ヴォーカルもバンドの大きな魅力になっているものの、もう一人「歌えるギタリスト」が加わったことで、楽曲により一層の厚みを感じられる。他の楽曲でも積極的にWataruは歌っており、今後は彼が歌うパートがさらに増えるのではないか。
“On My Own”においては、UEDAの邪悪コーラスが楽曲の熱量を押し上げ、Rictによる泣きのギターフレーズもメタラーの琴線を刺激してやまない。凶暴性と叙情性をハイブリッドに昇華したサウンドは、SABLE HILLSの真骨頂と言えるだろう。“Snake In The Grass”の演奏が始まると、「サークルピット!」と煽り、今日イチの巨大なサークルモッシュが勃発。男女入り乱れて笑顔で走り回る様は壮観だ。ここでRictはMCを挟み、去年は20分だったものの、今年は60分のショウを届けられることに感謝を告げ、ショウは後半戦へ。“No Love Lost”ではTakuyaとRictの掛け合いヴォーカルが冴え渡り、続いて1stアルバム『EMBERS』の冒頭2曲に繋ぐ流れも最高。ステージ中央にRictは立ち、インスト曲“Path”では哀切の頂点を極めたギターを披露。それから“Embers”へとシームレスに繋ぎ、巨大なサークルモッシュに加えて、観客同士が体をぶつけ合ったりと、凄まじい盛り上がりを記録した。
ラストは2ndアルバム収録の“Interlude”~“The Eternal”で締め括る。Keitaの切れ味鋭いドラミングが楽曲の火力を高めて、メタルコアの攻撃力を突きつける一方、歌やコーラスでスケール豊かに聴かせる曲調は野外フェスで映え渡る。とりわけ「ウォー!ウォー!」のシンガロングパートを現地の観客が大声で歌う光景は感動的であった。ライヴ終了後、現地の観客がメロイックサインを掲げ、特大のSABLE HILLSコールが巻き起こり、「60分のショウでも物足りない!」と言わんばかりの大熱狂ぶり。間違いなく、彼らは今年の『Wacken Open Air』に深い爪痕を残した。昨年と比べてもバンドは腕力とスキルに磨きをかけているし、ステージの立ち姿からは揺るぎない貫禄を感じるほどだった。ドイツをSABLE HILLSのホームに変える日は遠くない。そう思わせる圧巻のパフォーマンスを魅せてくれた。
Text:荒金良介
Photo:Moritz Hartmann
SABLE HILLS@『Wacken Open Air』 セットリスト
01. Bad King
02. The Envy
03. Crisis
04. Recapture
05. Messiah
06. On My Own
07. Snake In The Grass
08. No Love Lost
09. The Path
10. Embers
11. Interlude
12. The Eternal