■なるほど。そうだったんですね。
MAMI それでもやっぱり自分ではアレンジできないから、やらないんじゃなくて、ここはアレンジャーさんに投げてみようって。初期の頃からお世話になっていて、これまでの10年間をずっと見てきてくれた川口(圭太)さんにお願いしようって。
■自分自身のいろいろなルールもぶち壊したわけですね。
MAMI はい。ぶち壊してみました。
■3人もこの曲がいいと?もう絶対これをやりたいと思っていましたか?
RINA そうですね。メロディがめちゃめちゃ良くて、その期間に作ってきた数曲の中でもズバ抜けて鮮度が高いと思ったし、スタッフの評判も高かったし。この曲はパワーを持っているなって。
■MAMIさんがいろいろ迷い悩んでる姿を見て…いかがでしたか?
RINA それはもういつものことなんで。(笑)
MAMI あはははは、そうですね!
RINA まずはMAMIの壁を突破しないとなって。(笑)
MAMI いつもそこでぶち当るんですよね…。
RINA 自分ルールとかプライドとか、音楽を作っているものとして、めちゃめちゃ大事なものだと思うし、わかるんです。でも、だからこそ4人ともが納得いくカタチで今回仕上げることができたのも、そこを含めて、もうほんとにいいストーリーだったなって。
MAMI これからはそれをずっと越えていかなきゃいけない…。(笑)
■たしかに。(笑) 今回、自身を越えた楽曲がこうやってカタチになって、新鮮な気持ちもあるんじゃないですか?
MAMI 自分じゃない誰かによって楽曲が生まれ変わって、それを自分たちですごくいいと思えたっていうのはまた新しい快感というか、新鮮ですよね。すごくフレッシュな気持ちで自分たちでも傑作と言えるものができたんじゃないかと思います。
■HARUNAさんは歌で意識された部分は?
HARUNA 去年の11月のツアーでもう披露していたので、からだに馴染んではいたんですけど、いざレコーディングとなると、ひさびさのシングルということもあるし、「her」から出る第1弾シングルということもあって、独特の緊張感があって。その分いろんなところを突き詰めて、長い時間かけて録りましたね。ここ最近は曲に合わせて声を変えたり、自分じゃない人物になりきる、みたいなことをやってきていたんですけど、この曲に関しては、まっすぐにライブ感ある感じで、勢いのあるものが録れたらなと思って。衝動にまかせて歌いました。
■メンバーが書いた歌詞を歌うことで何か発見することとかはありますか?
HARUNA メンバーが書く曲や詞を歌うのはめちゃめちゃ好きなんですけど、自分の欠点に気づけたり、苦手な言葉に気づいたりするんですよね。
■例えば?
HARUNA 今回気づいたのは「さしすせそ」の「し」の発音が苦手だなと。「そこちょっと“い”に聴こえるよ」とか指摘されながら、毎回メンバーにディレクションしてもらっています。
TOMOMI 特に“マスターピース”は、歪ませたりエフェクトをかけているから、発音がちょっとむずかしかったりしますよね。
HARUNA ラフに歌おうとすると、たくさん息が漏れたりして、その分聴こえづらくなったり、舌っ足らずな感じに聴こえてしまうので。メンバーはそういうのをちゃんと客観的に聴いてくれていて、「ここはもうちょっと強めに歌ったほうがいい」とか、「ここはそんなにはっきり歌い過ぎなくていい」とか。「2番の〈俯いてばっかじゃ〉の〈ば〉の発音」とか、そういう細かいニュアンスも的確にアドバイスくれたりするので助かっています。
■けっこう細かいんですね…。
RINA でもそれはHARUNAだから、それを飲み込んで自分なりの表現に変えてくれると思うんです。他のヴォーカリストだったら、絶対ケンカになります…。(笑)
MAMI なるなる!(笑)
RINA 4人での制作の仕方のハードルもどんどん上がってきていて、言うことも細かいし、ニュアンスでしか伝えられない部分もあるから、イメージを言葉でどれだけ共有できるかってところにかかっているんですけど、ずっと一緒にやってきたからこそセンスも揃ってきて、ふんわりした言葉や、ぼやっとした言葉でも、ちゃんと受け取ってもらえるんだと思いますね。
MAMI しかもHARUちゃんはそれを絶対に越えてきてくれるんですよ。だからもっともっとって欲しくなっちゃうんです。(笑)
RINA 基本的にまっすぐ強く歌ってくれるので、そこをどう崩していくか、みたいなディレクションになっていくんですけど、自分の歌い方を崩されていくって、すごく歌いにくいと思うんです。でもそれをちゃんと飲み込んで表現できるっていうのは、もう特殊能力やなって。(笑)
■特殊能力…。(笑)
HARUNA 歌って性格が出るものだと思っているので、自分が歌うと強くてまっすぐなものが出来上がるんですけど、やっぱりそれだけじゃつまらないよなって。何かフックが欲しいというか、もうちょっとおもしろいものになったらいいなって。その柔軟性みたいなものが欠けているのは自分でもわかっているので。そういうところを指摘してもらうことで、いろんなことに気づきながら歌っていますね。すごくまじめに取り組んでしまうところがコンプレックスだったりもするんで、言ってもらえるだけで自分の幅も広がるし、楽しいですよ。
■メンバー間の相乗効果がすごいですね!
RINA こっちが言ったことどんどんできるから。(笑) 「この四分音符に3つ言葉つめ込んで」って言っても、HARUNAだったらできるなって思っちゃってるからね。(笑)
MAMI デモはわたしが仮歌を歌うんですけど、めちゃくちゃ早口で息が続かなくて「うーん…」ってなるところも、スルスルスルってできちゃうから、もっとやらせたくなるんですよ!で、できちゃう。(笑)
HARUNA 「できない」って言いたくないんですよ。
■あー。なるほど。
HARUNA だからできるようになっちゃうんですよね。キーもどんどん上がっていくし、テンポもどんどんはやくなっていくし。テンポがはやくなったらそこに言葉がどんどんつまってくるし…。
RINA ごめん。(笑)
■あはは。でもそこで無理って言ったら終わっちゃいますからね。
HARUNA 終わっちゃう、終わっちゃう。そこでSCANDALの限界きちゃう。(笑)
MAMI ほーんとストイック。
■ね。ストイックですよね。
HARUNA でも例えば、違うメンバーが歌ったほうがより曲の良さが伝わるだろうな、みたいなこともありますよね。だから今回の“まばたき”に関してはそういう判断で。
■そういう判断はあるけど、自分に求められたものはやる、と。
HARUNA はい。それで苦手なところが克服できるし、自信にもつながるなって。