SpecialThanks VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

Misaki(Vo&Gt)、よしだたかあき(Dr&Cho)

私にとって『PUNK RECORDS』というアルバムは、奇蹟の1枚。

メロディックパンクのトップランナーとして高い支持を得ているのが、SpecialThanks。配信ではコンスタントにリリースしてきたが、この度、約4年半ぶりとなるアルバム『PUNK RECORDS』を3形態でリリース。現在SpecialThanksは、『PUNK RECORDS release tour 2024-2025』と題して、全国各地をサーキット中。 ファイナル公演は、2025年2月24日に渋谷Spotify O-WESTで決定。ツアーは、初日から熱狂を巻き起こしているとの情報も得ている。ここでは、最新アルバム『PUNK RECORDS』の話を中心に、今の2人の心境をいろいろと伺った。

■最新アルバムの『PUNK RECORDS』、めちゃめちゃライブ感のある作品ですね。

Misaki 今回のアルバムは、「ライブでこういう風に楽しんでくれたらいいな」と、楽曲のコンセプトやイメージを持って作りあげた曲たちばかりを詰め込みました。その上で全国ツアーを始めたところ、初日から予想以上に盛り上がるなど嬉しい手応えを感じています。

よしだ 「ここでこういうノリが生まれる」、「ここでみんなが歌うだろう」など、そういうのを意識して作りあげたアルバムだったんですけど、まさにその通りのリアクションがライブでは返ってきていて嬉しいです。

■SpecialThanksは、コンスタントに配信リリースをしてきましたが、CD盤としてのリリースは約4年半ぶりになるんですね。

Misaki 2020年4月に出したアルバム『SUNCTUARY』以来になります。もちろん、CDをリリースできる環境の有り難さがあった上での話ですけど、あの頃までは新しい曲たちが生まれたらCDを出すのが当たり前という意識で活動をしていました。ただ、コロナ禍の環境になったことや、世の中がサブスク時代と言われてきたこともあって、自分たちも配信リリースを軸に、CDは通販や会場限定だけにしようということでやってきました。そんな中、2人とも「やっぱり、全国流通のCDを出したいよね」という気持ちが高まったのが大きかったです。

よしだ やっぱり、手にしたCDのジャケットを見て、封を開けて、中からCD盤を取り出して、ブックレットを見ながら1曲目から曲順通りに聴くあの感じが好きなんですよ。自分たちが音楽に出会って夢中になった時の衝動が、まさにそれだったからこそね。

Misaki そう。CD屋さんで手にして、早く聴きたくてわくわくして帰るみたいな。それをみんなにも感じてほしくて、「またCDとして出したいなぁ」、「出すなら全国流通でやりたいなぁ」と思って、今回のリリースへ向けて動き出しました。

■その気持ち、CD世代としてはわかります。2020年以降は配信リリースもそうだし、MVを含めた映像制作にもかなり力を入れてきましたよね?

Misaki 「すぺちゅーぶ」というYouTubeチャンネルを立ち上げ、このチャンネルを盛り上げようと、カバー動画を100本くらい作りました。MVも配信リリースするのに合わせ、「今の時代的に、配信リリースとMVの公開はセットがいいだろう」と思って取り組んできました。もちろんこれらの動きも、やりたかったことだから積極的にやってきたし、これからもやり続けます。

よしだ アルバム『PUNK RECORDS』に収録した全曲のMVを撮りたいと言っているくらいだからね。(笑)

Misaki 全部推し曲だからね。余裕があったら全曲のMVを撮りたい!(笑)

■今回のアルバムには、ここ1年くらいの中で配信リリースしてきた曲たちも収録しています。でも人気の高いアコースティック色を押し出した優しい歌声が響く “ふたりのうた”は未収録なんですね。これは、単純にアルバムの趣旨とはズレているからということですよね?

Misaki その通りです。「『PUNK RECORDS』というタイトルでアルバムを作ろう」と曲制作を始めれば、それに似合う過去に配信した曲たちを集めた中で、“ふたりのうた”は、その流れとはちょっと違うなということで収録はしませんでした。単純に曲数を増やすだけなら入れるのも有りだったけど。今回は、『PUNK RECORDS』という軸をしっかりと据えたアルバムにしたかったんです。

よしだ SpecialThanksは、2023年1月に今の2人体制になりました。アルバムに収録したのは、それ以降に生まれた曲たちなんです。唯一“96”だけは以前も形にした楽曲で、今回、新たに新録しています。実は最初は、「ミニアルバムを作ろう」という思いから制作が始まったんです。でも、制作を進めていく中で、「新体制一発目の作品として全国へ発信するのなら、フルアルバムの方がいいんじゃないかな?」と提案をして、Misakiに曲をいっぱい書いてもらいました。もしミニアルバムになっていたら、あっと言う間に聴き終わっていたと思います。

Misaki 15分くらいで聴き終わっていたかもね。

よしだ 今作の『PUNK RECORDS』自体も、13曲入りで31分くらいですからね。

Misaki でも、そのサイズ感でちょうど良かったです。

よしだ フルアルバムにすると決めて以降、全部で12曲を仕上げたんですが、でも、後半の盛り上がりを作る上で、“Ringling Go!”と“リトルワンダー”の間にもう1曲ほしくなり、「ごめん、もう1曲だけ作ってもらえる?」とお願いをして、最終的に全部で13曲になったという裏話もあります。

Misaki 全曲録り終えた時点で、もう1曲だけ新たに制作しました。それが“POWERFUL POWER”でした。

よしだ アルバムの後半で、“Ringling Go!”で一気に上がり、その後にもうひと盛り上がりを持った曲があった上で、“リトルワンダー”、最後の“Don’t you see”に続く流れがベストだなと思って、そこは頑張ってもらいました。

■“Ringling Go!”の前にミドルメロウな“kirei”を収録したのも、前半の盛り上がりからの表情の変化と、どんどん加速していく後半の盛り上がりの流れを作りあげるためのブリッジとなる曲としての役割を持っていたからだったわけですね?

Misaki そうなんです。“kirei”も、もともとはバラード系の温かい楽曲でしたけど、『PUNK RECORDS』というアルバムの趣旨に合わせて、少しテンポを上げてロックなビートにしてギターもパワーコードでバーンと演奏をするなど、よりロックな音に変えて収録しました。

よしだ そこなんだよね。ドラムもAメロはきめ細かく優しく刻んでいたけど、「パンクなアルバムなんだから、もっと激しくやろう」となって、荒々しく叩いているんです。

Misaki その結果、“kirei”は一番原曲から変わった楽曲になりましたね。

■アルバム『PUNK RECORDS』には、勢いを持った楽曲が満載ですが、同時にどの曲からもMisakiさんの思いやメッセージが伝わってきました。

Misaki その時、その時に感じていることや伝えたい思いが降りてきたら、それを曲にしていく形が基本なんです。今回のアルバム制作の時も、最初に揃えた全12曲の段階で、その時に書きたい思いはすべて詰め込んでいたから、「もう1曲追加で……」と言われた時には、もう書きたい衝動が何もなくて。(笑) そこから心が動く経験をしようと、いろんなことをし始めたんだけど……。結果、“POWERFUL POWER”は「すべてはここにある」という内容になったのも、何もないからっぽの状態だったから、逆にそう感じた歌詞になったのかも知れないです。

■超荒々しさが炸裂した“30s PUNKS”は、初期衝動を満載した楽曲じゃないですか?

よしだ “30s PUNKS”は、サポートベースのイヤマちゃんを含めた3人でブースに入り、全員で「せ~の!」で演奏しました。いわゆる一発録りで制作をしたくて、そういう作り方にしました。だから、誰か間違ったら最初からやり直す、もしくはその間違いも含めて形にする。その姿勢を持って録りました。

Misaki 私は1ヶ所だけコードを間違えているんだけど、その時の衝動を詰め込んだテイクがすごく良かったので、そのままパッケージしました。『PUNK RECORDS』というアルバム自体が、初期衝動を大事にしながらも、現場に生まれる楽しい空気感を詰め込んだ作品にしたくて、そうやって作りました。

■SpecialThanksには、ネガティブな感情を描きだす楽曲はないですよね。

Misaki 楽曲や作品って一生残るものだから、ポジティブな自分の感情を形にすることが多いです。今回のアルバムには、自分の気持ちへ素直になったことで出てきた、ちょっと弱い部分も書いているけど、でも最終的にはどの曲もポジティブになっています。何より私の生み出す音楽がポジティブで元気だからこそ、その空気もしっかりと詰め込もうと制作を心がけました。音源って、その空気感も含めてみんなへ届けるものなので。それは曲作りを始めた時から心がけていたことです。良い作品を生み出すには、いい心の状態こそが大事だと思っていてそうやってブレない芯を持てたのも、よしだが自分にはない意見をいろいろと言ってくれることが大きいんです。

よしだ そうかもね。(笑) もともと僕は大学生の頃にSpecialThanksのコピーバンドをやっていたくらい、お客さん目線でSpecialThanksに接していたところから始まり、途中からメンバーになったんですけど、外からバンドを客観視していた分、Misakiにはない視点を持っているからこそ言えるアドバイスもあるなと思っていて。

Misaki その意見はかなりプラスになっていますね。SpecialThanksは私のやりたい音楽を表現してきた場ですけど、元々はメロディックなパンクロックをやりたくて始めたバンドだったので。活動をしていく中で、そことは違う音楽性も表現したくなって、一時期はJ-POP寄りに走ったこともありました。その時の経験が“kirei”や、“ふたりのうた”のような楽曲を生み出したわけだから、その経験は充分活かされてはいるんだけど。でも、よしだに「SpecialThanksのイメージと音楽性がだんだんかけ離れていっているんじゃないのか?別の方向性を求めるなら、新たにバンドを立ち上げて、そっちでやればいいのでは?」と言われて、そこで自分も「ハッ」となって。

よしだ それもあって、SpecialThanksの原点回帰じゃないけど、メロディックなパンクロックの魅力を打ち出したくて、今回『PUNK RECORDS』というアルバムを作りあげた経緯もあったから。