大人になることをテーマに自身の内面を反映させたEPを制作。
竹内唯人がEP『OO』を5月25日にリリース。前作のアルバム『XX』では、20歳という節目を迎えた気持ちや、アーティストとしての意気込みをしたためていた竹内。それを経て制作された今作『OO』では、今まで以上に正直に、そしてストレートに、彼の最近の出来事や気持ちが描かれている。兄弟との会話の中で感じたことを歌詞にした“I Know I Can”、“哀”や、同世代のラッパー・韻マンとの共作でこれまでにない静かな迫力を感じさせる楽曲“I GOTTA SAY”、シンガーソングライターのasmiを迎えて、彼にとっては新境地となった“LIFULL”など、全5曲が収録。それぞれの曲に込めた思いや心情を訊いた。
■今回のEPは「大人になってしまう葛藤を描いたEP」とのことですが、メジャー1stデジタルシングルから約1年で成長したなと思うことはありますか?
竹内 どうだろう……考えたことないな。でも『After the rain』を出した時よりも楽曲制作が楽しいですね。楽曲に対してのモチベーションも上がっているなと感じます。あと、歌っていると声が変わっていくっていうのはボイトレの先生に言われていたんですけど、『After the rain』の時は声が緊張してるっていうか、可愛い声をしているような気がします。最近になってやっと自分の声の出し方とかメリハリのつけ方は、ディレクションされなくてもできるようになってきました。レコーディングしていて、「その息遣いいいね」とかも言われるようになって、ちょっと自信がついてきたかなと思います。あとは『XX』のレコーディングの時は「上手く歌わないと」って緊張していたんですけど、今回のEPを制作している時は、自分の言いたいことも言えたし、リリックやメロディを担当した曲がほとんどだったので、結構自信を持ってできたかなっていう感じがします。レコーディングする時に気持ちを強く出して歌えるようになったかもしれないです。
■タイトルの『OO』というのはどのように思いついたんですか?
竹内 これはひとつ前が『XX』で、この時は20歳っていう意味だったんですけど、このEPで迎えた韻マンとasmiちゃんの2人が僕と同じ世代ということもあって、ゼロゼロ世代という意味で、『OO』にしました。
■『XX』の時も含め、アルバムやEPのようにいくつかの曲を集めた作品の時はシンプルなタイトルにするのが好きなのかなと感じたんですが。
竹内 どうだろう?バツバツができたらマルマルもやりたいみたいな感じでしたね。(笑) 『XX』の時は「20」って書くより「XX」の方がちょっとお洒落だなみたいな。なので、次回もしフルアルバムの名前をつけるとしたら何にしようかな?っていう感じです。次もこういう感じでいきたいな。(笑)
■大人になりたい、あるいはなりたくないという葛藤ってありますか?
竹内 あるっちゃありますけど。でも大人になりたくないっていうのは年齢的にですかね。「まだ18だからいいや」みたいな気持ちがまだ若干残っているし、今「いくつなの?」って聞かれたら、「まだ20歳です」って言いそうだし。ってことは、内面的にはあんまり変わっていない部分が多いし、なのに年は取っていくし……みたいな感じですね。マネージャーの年齢を聞いても「もうそんなに」って思うし、年下のいとこももう高校生っていうのが信じられないですよ。
■結構周りの人の成長で時間の流れを感じるんですか?
竹内 そうですね。お父さんも50代ですけど、僕の中では40代で止まっているし。まだたまに2020年って言いそうになるし。こういうのはコロナのせいもあるかなって思いますけどね。自宅待機の時期とか、外に出ることがなくなって、あんまり時間が経った気がしないというか。
■竹内さんは時期的にコロナ禍での活動が大半ですが、「この情勢があったからアーティスト生活がこう変わったのかな」とか、逆に「コロナがなかったら」みたいなことは考えたりしますか?
竹内 コロナがなかったら、もう少しライブの経験ができたのかなとは思います。でもライブをやると、もしかしたら作る楽曲ももう少し派手になっていたかもしれないですね。ライブで映えるように。あとはこのEPの“I Know I Can”は、兄弟のことを書いた曲なんですけど、もしコロナがなかったら兄弟と話す時間もあんまりなかったと思うし、兄弟に対しての気持ちも楽曲にできなかったかもしれないですね。
■“I Know I Can”は、竹内さんの最初の1音がかなり高音なのがすごく綺麗で、インパクトがあるなと思いました。兄弟のことを書いた曲だったんですね。
竹内 はい。最近兄弟と会って話したりしていくうちに、何かを始めるきっかけって全部お兄ちゃんだったなって思って。サッカーを始めたのもそうだし、サングラスにハマったのもそうだし、歌の歌い方とか。そういうのも全部一緒だなって思って。「憧れとか尊敬している人を超えたい」みたいなことを書きたいと思って、“I Know I Can”を作ってもらいました。だから、レコーディングする時はめちゃくちゃ気持ちを前に出して歌いましたね。このキーで声が出るかが心配だったんですけど、この曲が好きなのと、スタジオの設備がよかったこともあって、すんなり終わって。今までは4回くらい録って、3回目か4回目にいいテイクが録れることが多かったんですけど、今回は結構どれも一発で進んで楽しかったですね。
■曲のテンポは遅めで、歌い上げるような歌唱も特徴的だなと思いました。その難しさはありましたか?
竹内 最初にトラックを聴いた時は、音数が少ないから、これはしっかり歌えなかったら終わりだと思っていたんですけど、割と歌いやすくて。トラックにしっかりノれたなっていう感じがしましたね。いつもはクリックをつけて歌うんですけど、この曲はつけなかったんです。勝手にノっていました。
■“哀”は「愛」と「哀」にもかけてある歌詞が印象的でした。
竹内 歌詞を書いている時に思いつきました。これも兄弟と会っていろいろ仕事の話をしていた時に、「アベンジャーズ」の映画を観ていて。その時に、「悪とは何か」みたいな話になったんです。この歌詞は友達との関係のことを兄弟に相談していて思ったことを書いたっていうのもあるんですけど、悪いと思って何かをすることは悪だけど、本当にこうしたいっていう強い思いを持って、何かと対立することは別に悪じゃないんじゃないかなと思っていて。アイアンマンとサノスは敵同士で、アイアンマンは地球を守って人間を守るヒーロー、サノスは地球に侵略して地球の人口を減らす敵なんですけど、サノス側とサノスについているエイリアンたちは、それを正義だと思って来ているじゃないですか。それを悪いとは思ってないから、正義と正義の対立で戦い合う。映画を見ているのがエイリアンじゃなくて人間だから、サノス側は悪に見えるけど、やっぱり悪じゃないのかな?って思ったんです。でもその映画の次のシーズンで、一番最後にサノスがちょっと哀しい顔をするんです。それを見て、少しでも悪い気持ちがあるんだったら悪かな……とか。そういうことを考えて兄弟で話したりしていて、歌詞にしようって書いた曲です。人それぞれ考え方はあると思うんですけど、悪いと思っているか、思っていないかで、正義かそうじゃないかが決まるんじゃないかなって思ったので書きました。それは友達との関係もそうだと思います。
■「いつまでたっても笑っていられる器じゃない」という歌詞は、すごくリアルな言葉だなと感じました。
竹内 そうですね。これは自分でも書いていてそう思いました。「こんなこと書いちゃった」みたいな。言い過ぎたかな?とも思ったんですけど。ここでは友達との関係があんまり上手くいっていなかった時の話を歌っています。
■そして今回は前々から一緒に制作していたという韻マンさんとの曲“I GOTTA SAY”も収録されていますね。
竹内 やっとできたなって思います。韻マンと作った曲がもう一曲あって、そのもう一曲をこのEPに入れるか迷ったんですけど、こっちの曲が好きすぎてこの曲を入れました。これはスタジオに入って、「お互い隠さずに今言いたいこと言おうよ」みたいな感じで、特にテーマも決めずに作ったんです。話している間にGRPさんがトラックを作ってくれて。フックは韻マンと一緒に書いて、そのあとに互いのヴァースを書きました。なにもテーマを決めずに書いたので、言っていることは違うけど、意味は通じるところがあるというか。今までのことを言っているけど、一歩も後ろに引かないような、すごいストレートな歌詞になったなと思います。