僕たちがこの曲を歌えるということは、すごく自然なことだと思う。
TVドラマ「六本木クラス」挿入歌“Start Over”を担当し、多方面で話題となったTHE BEAT GARDENが、新曲『初めて恋をするように』をリリース。TVドラマ「自転車屋さんの高橋くん」の主題歌として書き下ろされた今作は、“Start Over”によって得た各々の変化やチームとして大切にする軸に向き合いながら作られた作品となった。制作について、そして“Start Over”以降の各々の生活について話を訊く中で、3人が「自然」という言葉を口にしていたのが印象的であった。そんな今の彼らにとって、自然な形の制作を模索しながら作り上げられた“初めて恋をするように”、そして直近の彼ら自身のことについて、U、REI、MASATO、3人にたっぷりと話を訊いた。
■最近はMステやベストヒット歌謡祭など、テレビ番組でもよくお見かけするようになりました。TVドラマ「六本木クラス」の挿入歌になった“Start Over”以降、状況が一変した印象を受けますが、いかがですか?
U でも正直あまり変わった感覚がなくて。いつも通りの毎日を送らせていただいています。街で声をかけられることもなく電車に乗り、出勤して、曲を作って、配信をして、みたいな。(笑) 意外と変わってないよね。
MASATO 全然変わってない。
U でもこの前、渋谷のニトリで初めて声を掛けてもらいました。(笑) すごく嬉しかったですね。
REI 僕自身も変わってないなっていう感覚ですね。ひとつひとつのお仕事が少しずつ大きくなっていて、より発信できるようになったっていう感覚はすごくあるんですけど。あと、すごく身内から連絡が来るようになりました。(笑)
MASATO 僕は一切声がかからないです。本当になにも変わってないんだと思います。
U (MASATOは)ひっそり生きてるからだよ。鼻歌歌いながらチャリとか乗らないでしょ?
MASATO それは乗ってないです。(笑) 僕はそもそもあんまり友達も多くないし、広く連絡を取ったりするタイプでもないんですよ。でもそんな自分にも連絡が来るのには驚きましたね。「自分でもこんなに来るんだ、みんなはどんだけ来ているんだろう?」っていう。
REI でも僕も地元の友達からは連絡は来ていなくて。そもそも「こういう活動をしていることを知らないのかな?」と思っていたんですけど、ついこの間、地元の友達の結婚式とかがあって、ビデオ通話をしてくれたんです。そうしたらみんな活動を知ってくれていて。地元の友達とかは「知っているけど言えない」っていうのもあるんじゃないですか?
U こんな感じで僕たちは何も変わってないです。
■(笑) 声をかけられる、かけられないという話もありましたが、みなさんは最近はどういうモードで日々を過ごしてますか?
U 僕は今までは制作期間に入ったら曲を作るっていう感じで、逆にそれ以外の時はほとんど曲を作っていなかったんです。でも“Start Over”が嬉しかったんだと思うんですけど、最近は毎日曲を作っているんです。「六本木クラス」が終わってから、曲のストックが60曲くらい出来たと思います。
■それはすごいですね!
U 毎日必ず、時間とか決めなくても机に向かっていて。自然にやりたくなってしまう気持ちが芽生えたので、すごいありがたいですね。それはすごく大きな変化です。あと一瞬自炊するようになったんですけど、それは2日で終わりました。(笑) 薄い卵のオムライスを作ろうとしたんですけど、分厚い岩みたいなオムライスができて……。(笑) 自炊はそれが最後でしたね。
■お2人はどうですか?
REI 僕は普段からアーティストのライブを見るのが好きで、ライブ動画を流しっぱなしにすることも多いんですけど、最近はライブに行けていなかったので、行きたいなと思って。海外のアーティストの方たちも最近はよく来日されることも多くなってきたので、先月と今月で4、5本はライブを観に行っているんです。観たかったLANYっていうバンドのライブに行ったり、みんなでブルーノ・マーズのライブも観に行ったりして。そのアーティストのライブを見た時に、それぞれがそれぞれのスタンスでスターだったんですよね。その空間をちゃんと支配しているっていうか。そこのパワフルさっていうのは、多分普段「ぼーっ」と生きていたらそうはならないなと思ったんです。“Start Over”でいろんな経験をさせてもらって、いろんな景色を見させてもらってから、もっと普段のバイブスというかモチベーションを上げていかないと駄目だなって思ったんです。なので、最近は普段から気持ちを上げて生活するっていうことを意識しています。メンバーと会う時とか、仕事のタイミングでそれを思うだけで自分の気持ちが変わってくるので。自分の中で少しずつ変化して、それがパフォーマンスとか音楽に繋がっていけばいいなと思います。
U いいね。人間らしい。REIは最近超変わってきていると思います。LINEの返信もめっちゃ早くなったんですよ。(笑) なんか前は集中して作業をしている時間が長かったっていうことだと思うんですけど、今ではLINEがぽんぽん返ってくるようになって。変わったなって思います。
MASATO 僕は今回の「六本木クラス」を経て、キャストの竹内涼真さんとかとお話するタイミングがあって。その時に、プライベートな部分にもすごくこだわりを持っていたり、いろんなことに興味を持っていらっしゃるのを知って、多趣味だなと感じたんです。自分の本業に全く関係ないところでも、ちゃんと通じる部分ってたくさんあるなって思ったんですよね。僕は「仕事だったら仕事」って分けちゃうんですけど、私生活で自分が好きなことをしっかりと掘り下げていったら、結果的に仕事にも繋がるんだなって思って。最近は自分が興味あることをいろいろ掘り下げるようになりました。
■新しい趣味とかもあったりするんですか?
MASATO コーヒーですね。元々コーヒーは好きだったんですけど、やるんだったらちゃんとやろうと思って。前にメンバーからコーヒーミルをプレゼントされたので、最近は温度から時間から全部にこだわって淹れています。
U へえ〜、飲みたい!
MASATO 是非是非。今相当レベル上がっていますよ!
■みなさんそれぞれに変わった部分があるんですね。さて本題ですが、今作“初めて恋をするように”は「自転車屋さんの高橋くん」のタイアップ曲なんですよね。原作を読んだ印象はいかがでしたか?
U 僕はああいうキュン恋な漫画って今まであんまり読んでこなかったんですよ。どちらかというと、誰かが撃ち合ったりするような派手なアクションものが好きなんですけど、でもこの作品はめちゃくちゃ面白くて。こんな目線で言っていいのか分からないですけど、「松虫あられ先生は本当にこの漫画を書いていて楽しいんだろうな」っていうパワーが漫画から伝わってくるというか。この漫画の中で切り取っているディティールというか、描かれる心の声にすごく引き込まれて。多分歌詞を書いている身としても、通じるところがあったのかもしれないです。すごく面白い作品だなと感じました。
REI Uさんの歌詞をいただいて僕も思ったんですけど、日常の中で誰かのことを思えるというのは素敵なことだなと感じました。僕だったらメンバーとか、周りの人とか、そういう方たちを大切にできる自分でありたいなってすごく思いましたね。
MASATO 自分たちって、「デビューしてすぐに何かを起こして売れる」みたいな、とんとん拍子の感じじゃなくて、普遍的な日常が毎日毎日続くような地道な活動をしてきたと思うんです。この作品はすごくそれに似ているというか、大きなハプニングはそんなに起こらないけど、でも日常ってこういうもので、それがすごくリアルで。僕たちがこの曲を歌えるということは、すごく自然なことだなっていう感覚はありましたね。
■歌詞にも何気ない描写が詰まっていますよね。どのように歌詞を書いていったんですか?
U 始めは主人公の高橋くんとパン子の2人のことを想像した時に、お互いが思う可愛いところとか、男気のあるところを2人の視点から書いていくのがいいかなって思ったんです。でももう1回漫画を読み直した時に、パン子には高橋くんだからこそ言えることが多いなと感じて。会社では言えないけど、高橋くんだから言えること。逆に高橋くんの本音は行動に表れているって感じたんですよね。だから、彼の心の声みたいな言葉を歌にした方がドラマのオープニングテーマとしてもいいのかなと思って、それを歌詞に書きました。
■サビの「短い前髪も 拗ねると長いのも」という「短い」と「長い」の対比、2サビの「言えない」と「癒えない」というフレーズが最初に聴いた時に耳に飛び込んできました。
U 本当ですか、嬉しいです。ドラマのオープニングテーマという意味でもそうですし、一言で言いたいことをちゃんと伝えることの大切さをすごく感じていて。今回はお互いの好きな部分をただ並べるっていうことじゃなくて、お互いが好きとわかっている上で、ちょっといじっているというか、「それでもそんな君が好きなんだよ」っていうのを言いたい曲だったので、それを代表するワードがサビに1行で入れられたらいいなと思って。それで出てきてくれたのが、この「短い」と「長い」の部分で、自分で書いた時も「良いかも!」って思いましたね。「俺、偉いかも!」みたいな。(笑)
■作曲はTHE BEAT GARDENとしてのクレジットなんですね。
U オープニングテーマという初めての立ち位置の曲だったので、サビがすごく大事な曲になるなと思っていて。最初は僕がワンコーラス作っていたんですけど、サビのメロディーが弱いなと思って2人に相談しました。結局サビで音程を5度上げて転調させて、サビ感みたいなものを表せるように2人の力を借りながら作っていきました。