THE BEAT GARDEN VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

これまで積み上げたものと“Start Over”を経て進化した歌を詰め込んだニューアルバム。

THE BEAT GARDENが4thアルバム『Bell』をリリース。2021年にSATORUが脱退し、3人体制に戻ってから初のアルバムとなった今作。『六本木クラス』の挿入歌となり話題となった“Start Over”以降の進化したTHE BEAT GARDENを見せつけた作品となった。
今回はTHE BEAT GARDEN、U、REI、MASATOの3人にインタビューを決行。制作面や歌への向き合い方の変化や、wacci橋口洋平の提供曲“あかり”、“Start Over”以降をより強く感じさせる楽曲“High Again”について深堀りしながら、THE BEAT GARDENの今をたっぷりと伺った。

■今作は3人体制での初のアルバムですが、どんな制作期間でしたか?

U 今回は昨年の10月から制作が始まっていて、半年間やっていたんです。いつも以上に時間があったので、伸び伸びとやらせてもらったアルバムになったと思います。

REI 今回の曲作りは以前より制作が更に好きになった期間だったかもしれないです。みんなで話していたんですけど、「作らなきゃ」と思って作るものじゃなくて、「作りたい」と思って生まれるものって伝わり方が違うと思うんです。今回は時間があったからこそ、自分とも曲とも向き合いながら作れたアルバムになったと思います。

MASATO 今回は制作期間の早い段階で自分の得意とするジャンルの曲が出揃った感じがあったので、あとは違うジャンルが得意な2人に任せて、自分は次に向けた勉強をしていた期間でもあったかなと思います。自分に有効な時間にしていましたね。

■今回のアルバムを作る上で、どんなイメージを思い描いていましたか?

U ちゃんとJ-⁠POPを作りたいという思いがあったかもしれないです。インディーズの頃は、お茶の間にはあまり知られていないかもしれないけど、ライブの動員はちゃんとあるみたいな将来をイメージしていたんです。それからリリースイベントをやるようになって、届けたいメッセージができはじめて、それから“Start Over”が話題になって。捉え方はそれぞれだと思いますが、僕は“Start Over”はポップスだと思っているんです。その曲調とTHE BEAT GARDENの性格がマッチしていろんな方が認めてくれたと感じているので、自分たちがポップスの道を歩んでいくという思いは前よりも靄が晴れたように感じていて。なので、今回はしっかりポップスの道に行くという感覚がありました。

■Uさんは以前のインタビューの際、「“Start Over”以降は制作期間以外でも曲のストックを作るようになった」とおっしゃっていたじゃないですか。今回の新曲にはそのストックからできた曲もあるんですか?

U あります。“心音”のヴァースの部分は元々鼻歌でストックしてあったものですし、“High Again”は結局全然違うものになったんですけど、トラックのたたきはストックにあったものでした。ちゃんと活きていますね。

■今あがった2曲はアルバムの中でも特に、“Start Over”以降のTHE BEAT GARDENを感じる曲ですよね。

U そうですね。この2曲はその期間に作っていなかったら、全然違う曲になっていたかもしれないです。

■“心音”と“High Again”に限らず、今回のアルバムは全体的に“Start Over”があったからこそ辿り着いたものだと感じます。制作の段階でも“Start Over”の影響は感じていましたか?

U そうですね。MASATOがよく言っているんですけど、“Start Over”はロックでもあるんです。ロックの要素があるからこそ、“Start Over”を入口に入ってくれた人が“High Again”をライブソングとして楽しんでくれると思いますし、違和感なく過去の曲たちも聴いてくれるのかなと思っていて。そういった部分は“Start Over”があったからこそなのかなと思いますね。

■“Start Over”を入口に新曲にも過去の曲にも繋がっていけるのは、みなさんのやってきたことがブレていないからでもありますよね?

U そうですね。今まで自分たちのやりたいことをやってきたと同時に、いろんな人に届けたいという思いも同じくらい大きかったんです。なので、今になってちゃんと過去の曲にも繋がっていけているのかなと思います。今までそういう思いで作っていて良かったなと、今になってやっと思いますね。今やっと思っちゃいけないのかもしれないけど。(笑) 1曲1曲を大事に作るって本当に大事だったし、そうやってきてよかったなと。もちろん僕らもまだまだですけど、今はそんな感情ですね。

REI Uさんも言った通り、僕らのインディーズの曲も最新の曲もどれも嘘がなくて、その時に本当にやりたいものや、届けたいものを作ってきた積み重ねがあっての今なんです。ただJ-⁠POPだけをやってきたわけでもないし、やってきたことに幅があったからこそ、嘘なく“High Again”みたいな曲が歌えるのかなと思います。今までの過程があるから使える音色もあるだろうし。そういう意味では、もしかしたら他のJ-⁠POPアーティストさんたちよりも選べる音色は多いのかもしれないですよね。

U 打ち込みで音を入れてDJで流すというスタイルは、J-⁠POPアーティスト全体を見てもそんなに多くはないと思いますし、今REIが言ったように、そういった音色を違和感なく歌っていける形を育てられたのはすごく財産だなと思います。“Start Over”もみんなでいろんな音色を聴きながらトラックメイクして、テレビで流れたりいろんな番組で歌わせてもらって、僕らなりに手ごたえはありましたし、良い曲ができたという自信にもなっていて。いろんな音にチャレンジすることが怖くなった時期も正直ありましたし、特にコロナ禍とかは焦った時期がないと言えば嘘になりますけど、やりたいことをやりたいようにちゃんとやるということは、今回の『Bell』でもすごくできたと思います。

MASATO 僕は“Start Over”があることはちょっと安心ではあって。“Start Over”にこのアルバムの代名詞として走ってもらって、そこから他の曲を好きになってもらうのはもちろん、“Start Over”よりも好きになってもらえるアルバム曲を作るという気持ちも持っていたので、それが今まで作ってきたアルバムよりもジャンルを広げる要因になったのかなと思います。でも、今回めっちゃ意識したかもしれないです。

U “Start Over”を?

MASATO はい。

■「意識した」というのは、大きくヒットしたからプレッシャーにも感じたという意味ですか?それとも別の意味合いで?

MASATO プレッシャーを感じているというよりは、僕の性格上だと思うんですけど、「なんで“Start Over”が子供から大人まで、あんなに愛される曲になったのか」という説明が論理的にできなかった自分がすごく悔しかったんです。“Start Over”はカバー曲でしたけど、自分で作った曲は「なんでこの曲がこういう風になっているか」と、意図を説明できる技量って必要なんじゃないかと思ったので、そのあたりを掘り下げたりはしていました。でも結局辿り着いたのは、感覚も論理も両方大事だなという答えで。感覚で作っている部分も大事で、香りづけくらいで論理やそれに基づいた創作が必要なんだろうなと思いました。でもそれも無駄な時間ではなかったなと思います。

■“Start Over”は元々K-⁠POPですが、そのカバーの経験を経てインプットするものにも変化はありましたか?

U やっぱりK-⁠POPはめっちゃ聴くようになりました。“Start Over”の段階で聴いていて、好きになったんです。その影響もあって、今までは3人とも歌謡曲の歌い方をしてきて、ビブラートをすごく効かせたりしていたんですけど、歌い方もシンプルになったかなと思います。

■歌の変化はすごく感じました。

U 思いました?今までだったらもう2拍伸ばしてたところを短くカットしたりとか、K-⁠POPを真似するというよりも、そういう意識に変わったんだと思います。

■美意識が変わったというか?

U はい。歌の技術的な部分は韓国の歌にすごく影響を受けています。でも今のJ-⁠POPもそうなってきているじゃないですか。THE BEAT GARDENとして、その変化を無視しちゃいけないと思ったんです。僕らはものすごいオリジナリティやカリスマ性で引っ張っていくというよりは、自分たちの芯は持ちつつもちゃんと時代に合わせて変化しながらやっていくグループだと思っているんです。それぞれが時代を汲み取りながらやっていくことをチーム全体が意識していたと思います。

■全体的に声を張り上げている感じが少なく、自然な歌声になっていると感じました。3人の歌声の違いもより分かるようになっていて。それぞれ歌に対する思いの変化はどのようなものがあったのでしょうか?

U 僕は結構パワー系の歌声なので、今回は力まずに自分が一番気持ちよく出せるところで歌いました。熱く歌うだけが良いわけではないなと思って。自然に歌詞を読んでいるように、喋っているように歌っていました。

■今までは音量を出すことが多かった分、そのバランスを取るのも難しそうですね。

U そうですね。意外と体を使うなと思いました。フルパワーで歌う時も大変だなと思っていたんですけど、今は抑える方が大変だなと感じます。なので体幹トレーニングを始めました。

REI 僕は“Start Over”の時もやり始めてはいたんですけど、より発声と向き合っていた期間ではあったので、鼻腔共鳴や息の使い方もそうですし、歌い方を一歩一歩見直した時期でした。“Start Over”を経て、「感情を込めてビブラートをかけることで全て伝わるわけではないな」と思ったんです。「淡々と歌うことで逆に歌詞が入ってきやすいのでは」と思ったり。いい力の抜き方を自分の中で探っていたのかもしれないです。

■MASATOさんはどうですか?

MASATO 僕はどうなんだろう……?

U でもMASATOが一番ナチュラルに今の形に移行できているかもね。

MASATO そうかもしれないですね。僕は今話している音に近い場所で歌うようにはしていました。今回収録されている曲って、結構メッセージ性もあると思うんです。なので、セリフに近いというか、僕の中ではあまり技術チックじゃなくて、下手でもいいなというか、そういうイメージで歌いました。