The Biscats VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

Misaki(Vo)、Kenji(Gt)、Suke(W.ba)

コロナ禍で培ったカバー企画の経験から生まれたアルバムを語る。

The Biscatsが、8月30日にカバーアルバム『J-BOP SUMMER』のCDをリリース(8月23日〜全曲配信中)。2020年よりYouTubeにてJ-POP楽曲のロカビリーカバー動画をコンスタントに投稿し続け、幅広いリスナーにロカビリーを届けてきたThe Biscats。そのひとつの集大成と言える今作は、“夏祭り”や“青い珊瑚礁”、“ふられ気分でRock’n’ Roll”など、数々の名曲をThe Biscats流にアレンジした全12曲が収録されている。
今回はThe Biscatsの3人にインタビューを決行。アルバムへのこだわりや夏にリリースしたシングル『ノッてけ!Sunday』での挑戦、目標としている渋谷公会堂(現LINE CUBE SHIBUYA)に向けた思いなど、たっぷりと話を訊いた。

■みなさんにインタビュー取材させていただくのは、2021年の『Sweet Jukebox』のリリース振りです。そこから今にかけて、タイアップやYouTubeでの注目をはじめ活躍の幅も広がっていますし、世の中の変化も大きいですが、ここ2、3年のThe Biscatsの歩みを振り返ってみて、いかがですか?

Misaki 私たちThe Biscatsって、結成してからほとんどの期間がコロナ禍だったんです。でも去年の終わりくらいからようやく明けてきたのは大きな変化だと思います。あとはコロナ禍でYouTubeを始めて、カバー動画でたくさんの方に知ってもらえるようになったのも大きかったですね。それと、去年から「がんばロカビリープロジェクト(GRP)」というものを立ち上げたんです。そこでは目標を3つ掲げているんですけど、そのうちのひとつに2024年の8月に渋谷公会堂でライブをするということを掲げていて。今はそこに向かってとにかく頑張ろうというフェーズにいます。

Kenji 今振り返ってみると、あっという間だったなと思います。コロナ禍でもツアーはできていたんですけど、自分たちが思い描いていたようにはいかなかった部分もあったので、葛藤もありましたし。今いろんなことが緩和されて、YouTubeのおかげで見てくれる人も増えました。「がんばロカビリープロジェクト」では、もっと若い人たちにもロカビリーを知ってもらうために、自分たちの主催ライブでは18歳以下は無料でライブが見られるようにしているんですけど、そういうこともあって、少しずつ浸透してきた期間だったのかなと思います。

Suke コロナ禍のライブは声を出したら駄目だったじゃないですか。でもロカビリーはお客さんを楽しませてなんぼだと思うので、これからは自分たちがコロナ禍で培ってきたものをライブで発揮して、お客さんも楽しませられたらいいなと思っています。

Misaki やっぱりコールアンドレスポンスができるのが理想ですから。今までだとお客さんも「声を出したいのに制御しなきゃいけない」という思いがあったと思いますし、もちろん心から楽しんでくれているとは思うけど、もどかしさみたいなのはあったと思うんです。そこがとっぱらえた今、ライブに来てくれたみなさんに「The Biscatsのライブは何度でも行きたい」と思ってもらえるようになりたいと思っています。

■7月には新曲『ノッてけ!Sunday』がリリースされましたが、それこそ声を出せるライブでより映える楽曲になっていますね。収録されている3曲とも雰囲気が異なるナンバーとなっていますが、それぞれの楽曲で特にこだわった点を聞かせてください。

Misaki それぞれ曲によって歌い方を変えているので、そこは一番聞いてもらいたいポイントですね。“ノッてけ!Sunday”は、平日にお仕事や学校を一生懸命頑張って、週末になったら思いきり弾けて楽しんじゃおうという曲なんですけど、日々頑張っている人たちへの応援ソングになったらいいなと思ったので、なるべく明るくハッピーな感じで歌っています。“フォンダンショコラな恋心”は胸きゅんな曲なので、きゅんきゅんな女の子の感情をイメージして歌っていますし、“Sweet&Spicy Darling.”は大好きな人に対する気持ちを歌っている曲なので、温かみのある声で好きな人を包むような感じで歌っています。その歌い分けに注目して欲しいですね。

■曲による歌い方は歌いながら模索して決めるのですか?それとも最初からイメージがあるんですか?

Misaki 練習している時にいろんなバージョンで歌ってみて、それを録音して、確認して、どの歌い方が一番しっくりくるかを考えています。そこから「もうちょっとこの要素を加えてみよう」などと微調整して、録って、また確認して。レコーディングの時にはそれが完璧になるようにしています。

■KenjiさんとSukeさんのお2人は、今作でこだわった点というと、どんな部分がありますか?

Kenji 今回の3曲に関しては、今まで自分がプレイしたことがなかった要素が多かったので、基本的には苦戦していました。“ノッてけ!Sunday”はギターソロに行く前にメロコアなリズムが出てきたりするんですけど、普段そういうノリを出すことはあまりなかったので新鮮でした。でもギターソロになると一気にロックンロール、ロカビリー感が出て、いろんな要素が入っているので、曲の展開にも注目して欲しいですね。“フォンダンショコラな恋心”はすごくポップな曲なんですけど、この曲も普段あまり使わないようなコード展開があったりして、結構苦労しました。“Sweet&Spicy Darling.”はゴスペルの要素があって、ルーツミュージックなので馴染みはあるんですけど、そのニュアンスを出すとなるとまた話が違うなと感じました。今まで本当にロカビリーしかやってきていなかったので、どの曲も挑戦でしたし、すごく勉強になりました。

Suke まさに今言っていた通り、今までやったことのない挑戦ができた曲でした。“ノッてけ!Sunday”はロカビリーのエイトビートで慣れているリズムなんですけど、ソロ前には普段やらないようなリズムもどんどん入ってきていて、難しかったなと。でも「これを乗り越えたらライブでもカッコよくできるぞ」と思いながら頑張りました。

■どの曲にもこれまであまり挑戦したことがなかった要素が入ってきたというお話もありましたが、今作でチャレンジが多かった理由はなにかあったのでしょうか?

Misaki ロカビリーは50年代から始まっているんですけど、その時のロカビリーを私たちが今そのままやるのはつまらないと思っているんです。いい意味でぶっ壊していきたい気持ちがあって。「The Biscatsのロカビリーとはこれだ!」というものをどんどん作っていきたいんです。私たちも今まで王道なロカビリーをたくさんやってきて、ちゃんとロカビリーの土台があるからこそ、そろそろ新しいことに挑戦してもいいタイミングなのかなと思っていて。広い世代の人たちに知ってもらいたいと思っているので、このタイミングでいろんな要素を入れて、親しみやすくなるようにしました。

■土台を固めるフェーズから新しいことに挑戦していくフェーズに変化したことは、今回リリースされるカバーアルバムにも結果的に繋がってくるように思います。8月30日にリリースされるカバーアルバム『J-BOP SUMMER』は、どんな経緯で作ることになったのでしょうか?

Misaki 私たちは約3年間、YouTubeでカバー動画を投稿してきているんですが、それを始めた当初はカバーアルバムを出すことは全く考えていなかったんです。でも、これまで150本くらいの動画を投稿してきて、自分たちが想像していたよりも遥かにたくさんの反響をいただきましたし、「カバーアルバムを出して欲しい」という声もすごく多くて。求めてもらえるのであればということで、ファンのみなさんに投票していただいて、上位の12曲を収録することにしました。

■YouTubeでのカバー企画が3年間もコンスタントに続けられたのは素晴らしいことですよね。

Misaki 大変でしたけど、何とかやっています。毎週金曜日に動画を投稿しているんですけど、絶対に穴を空けたくなくて。今まで空けたことないよね?

Kenji そうだね。

Misaki もう意地というか。(笑) 毎週一生懸命やっています。

Kenji それで気がついたら作品になったような感じですね。

Misaki 今回のアルバムに収録されている曲たちは、みなさん絶対に知っている曲だと思うので、「ロカビリーって何だろう?」と思っている人たちにも、ロカビリーの良さを知ってもらえたらいいなと思っています。

■曲を決めてアレンジをして収録するとなると、毎週投稿するのはかなり大変だろうと思うのですが、どんなスケジュール感で進めることが多いんですか?

Misaki サポートでドラムに入ってもらっているんですけど、最近は私のお父さん(日本のロカビリーシーンを率引するレジェンド・久米浩司 [ex: BLACKCATS、MAGIC RODEO etc.])にサポートに入ってもらっていて。お父さんのスケジュールがめちゃくちゃ忙しいんですよ。(笑) だからだいたい土日しか時間が取れないんです。8月は初めての試みで週2で動画を上げることにチャレンジしているので、もっと大変で……。(笑) 1週間の間になんとなく次の曲を決めて、撮影の当日にアレンジして、練習して、収録しています。最初の頃は全てが円滑にいかないので、1曲録るのに半日以上かかっていたんですけど、さすがに3年もやっているので、最近は一発で録れることも多くなりました。

Suke 撮影する日まで曲が決まっていない時もあったよね……。

Misaki あるね。みんな集まってから「今日なにやる?」みたいな。(笑) いろいろリクエストを見て、「じゃあ今日はこれにしよう!」と決めてから曲を聴き込んで、アレンジを決めて、収録しました。

■それだけスピード感を持ってカバーするのを続けていると、アレンジ力などもすごく向上していきそうですね!

Kenji 曲によってはどうしてもロカビリーのリズムにハマりにくい曲もあるので、その時のアレンジはめちゃくちゃ悩みますけどね。「もうちょっと日にちがあればいいのに……」と思いながらやっています。(笑)

■今回のアルバムに収録されている曲の中で、アレンジしていくにあたって特に苦労した曲はありますか?

Kenji “MajiでKoiする5秒前”ですかね。陽気なアレンジにしたい気持ちもあるけど、曲自体は聴かせる感じの雰囲気もあるなと思って、アレンジの方向性を最後まで迷いました。最終的にはカントリー要素を入れてゆったり聴いてもらう感じのアレンジにしたんですけど、そこに至るまでが大変でしたね。

■選択肢が多かったんですね。

Kenji あとはギターも指で弾いているんですけど、跳ねているリズムに対して指で弾くのってすごく難しくて。それもあって、録音を一番最後に回してもらった曲です。

Suke 僕は、個人的に大好きな曲でもあるんですけど、“夏祭り”は普段自分たちがやらないタイプのロカビリーアレンジになったと思います。結構イケイケというか、ちょっぴり悪い感じのロカビリーなので、すごく苦戦しました。ただ、出来上がったらすごくカッコ良くて。録音ブースでみんなで「すげぇ!!!」ってなったのを思い出します。(笑)