ジ・エンプティ VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

ハルモトヒナ(Vo)、トクナガシンノスケ(Gt)、クガケンノスケ(Ba)、カワカミタイキ(Dr)

3rd EP『覚醒少女』で魅せる4人の「今」のモード。

ジ・エンプティが8月6日に3rd EP『覚醒少女 e.p.』をリリース。積極的なライブ活動を通して、前作よりいっそう進化したジ・エンプティ。今作にはクガケンノスケ(Ba)が初めて作詞・作曲した“とまらない愛を”が収録され、4人の作品が出揃った。CDにはこれまでライブハウスでのみ披露されてきた“BE FINE”も収録。インタビューではジ・エンプティの「今」が詰まった今作について、1曲ずつメンバーに話を訊いた。

■VANITYMIXでは前作EP『革命 e.p.』以来のインタビューとなりますが、あの時、話した「昔のあだ名」がWikipediaに載っていますね。(笑) イジられますか?

シンノスケ めっちゃいじられますよ。知り合いにもめっちゃ言われます。(笑)

ヒナ あれって誰が書いているんでしょうね?実は間違っている情報も結構多いんですよ。生年月日も違います。(笑)

■生年月日も違ったんですか?!

シンノスケ そうなんです。だから違う日に「〇歳のお誕生日おめでとうございます!」と言われたこともあります。

■ネットの情報は鵜呑みにしちゃいけませんね。私も気を付けます。誕生日といえば、今回の取材日はケンノスケさんの誕生日直前となりましたが、今年叶えたいことはありますか?

ケンノスケ 自分の手が届く範囲を守れるようになること、プラスちょっと体を鍛えて、何かあった時に近くの子どもを守れるようになりたいです。男としては、片腕で子どもひとりくらい抱えられるくらいにならないと……という思いがあるから、そういうのも視野に入れてやっていきたいです。

■とても立派です。さて、ジ・エンプティは前回のインタビュー後もたくさんライブがあったと思いますが、この約1年の間に初めて体験したことはありますか?

ヒナ 『TRIANGLE 2025』の時、イベント史上一番人が入っていて、チケットもソールドアウトした日に出演させてもらいまして、あんなに人がいる前で演ったのは初めてでした。めちゃくちゃすごかったです。

シンノスケ 僕は在宅でコールセンターのバイトを始めたんですよ。今までいろんなバイトしてきたんですけど、コールセンターは神バイトでした。自分に合った良いバイトに出会えたと思っています。

ケンノスケ 「初めて」と言うなら、初めて自分で曲を作りました。その話はまた後々……。(笑)

タイキ う~ん、なんだろう……?今年に入ってから機材が増えました。

ケンノスケ いきなり増えたよね、最近。(笑)

■機材が増えたということは、車も大きくなったのでしょうか?

ヒナ いや、それが機材は増えても車は大きくなっていないんですよ。(笑)

■車内がギチギチになっていそうですね。(笑) 今作の『覚醒少女 e.p.』は、「テクニック重視の一作」という印象でしたが、コンセプトはありますか?

ヒナ コンセプトは……ないんじゃないですかね?(笑) でもやっぱり、それぞれレベルが上がって、今できることを全部詰め込んだ作品になっているのは間違いないです。

■ということは、テクニック的にもかなり高度なことをしていそうですね。

ケンノスケ 頑張ればできるギリギリのラインまで、ヒィヒィ言いながら頑張りました。

■メンバー4人全員が作詞・作曲している作品は今作が初めてとなりますが、意図的なものでしょうか?

ケンノスケ 意図的というか、自分が曲を作って来たから、こうなったんだと思います。(笑)

ヒナ でも、このタイミングでそれぞれ1曲ずつ出せるなら、「今のジ・エンプティが見せられるんじゃないか」という意識はあったと思います。

■そんな感じの一作に聴こえました。ちなみに誰の曲が一番難しいんですか?

ヒナ 演奏しにくいのはタイキの“曖昧”だと思います。タイキの曲は結構リハというか、レコーディング前に楽器隊だけで練習していなかったっけ?ヴォーカル的にも“曖昧”が難しかったですね。ブレスの場所が極端に無さすぎるので、どこで区切ればいいのかを考えながら、ニュアンスも保って……というのを、すり合わせていきました。

■そう言われているドラム的にはいかがですか?

タイキ “曖昧”の最初と最後はめっちゃ難しいです。あと、意外と“とまらない愛を”がテンポもちょっと跳ねていて、そういう意味で難しいです。

ケンノスケ ベース的には“覚醒少女”です。イントロやアウトロでギターがいいフレーズを弾いているから、ここのベースをルートだけにするのはなんか違うなと思いました。全く違うメロディを弾いた方が音楽的にもアガるんだろうなということで、ちょっと頑張って作っています。最初は全くフレーズが出てこなかったんですけど、今弾いているメロディができてからは、すぐにできました。あと、自分で作ったんですけど、“とまらない愛を”のビートが自分でも理解しきれていなくて、レコーディングでも「どうしよう?」みたいになっていました。

シンノスケ 僕はやっぱりケンノスケが作った“とまらない愛を”のシャッフルの感じです。Bメロで今までしたことがないようなことをしたので、音楽に精通している人からすれば、「なんじゃそのシャッフルは?」という感じになったらしく、苦戦しました。

■今あがった、“曖昧”と“とまらない愛を”は、聴いていても難しそうな曲だなと感じました。今作はサウンドの「引き算」も印象的でしたが、「ここは音を抜こう」というのは、みんなで話し合って決めているのでしょうか?

シンノスケ 基本はノリですね。自分は盛り上がっている所で、急に静かになるようなのが好きなので、“覚醒少女”でも意図的に音圧を下げたりしています。

ヒナ シンノスケが提案してくれるものが良いから、大体「いいね~!」となって、決まっていく感じです。

■サウンドの方向性が一致しているバンドって素敵ですね。作曲に関して、一番時間がかかった曲はどれですか?

ケンノスケ “とまらない愛を”ですかね。元々ツービートで作っていて、速い系のやつをやろうと思っていたんですけど、みんなで話し合って、他の曲も見た時に、ちょっとゆったりした曲もほしいということで、「こんなリズムはどう?」と提案してもらい、そこからこの完成形になりました。メロディも変えて、ちょっと歌詞も変えて、結果的に一番時間がかかりましたね。スタジオで合わせる時も、自分がどう伝えていいのかがわからなくて、手探りでやっていた感じがあります。

■逆に、すぐに出来上がったのは?

ケンノスケ ヒナの曲とか、マジ一瞬で出来上がりましたね。(笑)

ヒナ わりかし僕の曲は、毎回ポンと仕上がっているような気がします。

■ヒナさんの曲は、「ジ・エンプティらしさ」がありますもんね。ところで前作のEPのタイトルが『革命』で、今作は『覚醒少女』ですが、続きものとして意識されているのでしょうか?

シンノスケ いや、意識していなかったので、たまたまかかっちゃったな~って。(笑) 元々“覚醒少女”は、「覚醒」というタイトルだったんです。だから、今回出すのは違うかな?とも思ったんですけど、「“覚醒少女”にしたらイケるかな?」ということで、なんも知らん人からしたら、きっと一貫性があるように見えますよね。

■そうですね。一貫性があるように感じてしまいました。ここでいう「覚醒」は、何に覚醒しようとしているのでしょうか?

シンノスケ 「変化」みたいなところを「覚醒」と例えている感じです。強がりの人が、愛のもらい方もわからないまま大人になったみたいな。でも、最後の方ではちょっと前を向こうとしていて。そういう普遍的なものを、大袈裟に「覚醒」と言っちゃおうという感じですね。

■「成長」の言い換えみたいなところに近いですが、「覚醒」の方が似合いますね。“覚醒少女”はシンノスケさんの曲ですが、歌詞の中の性別が一貫していないことが、ちょっと気になったんです。一人称も「僕」と「私」が混じっていますよね?

シンノスケ これは完全に語感で選んでいるから、混ざっちゃいました。捉え方によっては「男女両方に刺さるように」ともなるかな。(笑) 最後の締めのところはみんなで歌うパートなので、「僕ら」と言った方がリアリティが出ると思って、「僕ら」にしています。

■もうひとつ気になったのが、「何度もわかりかけた」という歌詞なんですが、「わかった」じゃなくて、「わかりかけた」なんですね?

シンノスケ わかろうとしたけど、わかりきれていないんです。受け入れ切れていない。自分のことを「強い」と言っていて、「他人の力はいらないぞ」というスタンスでいるんですよ、このミホちゃんは。

■ミホちゃんなんですか……?

シンノスケ 今、勝手に名前をつけました。(笑) ミホちゃんは「誰の力もいらないわ、私ひとりでいい」みたいな感じなんですが、ちょっとこじれているんです。思春期のまだちっちゃい子なので。だから、ここから前向きにいろんなことを受け入れていこうとしている感じです。思春期って全部ひとりでできちゃう感じがするんですけど、どこかでジレンマみたいなものもあるじゃないですか。

■「自分ひとりで生きていける」と言いながら、「他人の力が無いと生きていけないんだろうな」とわかっている、みたいな?

シンノスケ そう。「それが大人になるってことなのかな……」みたいな感じです。

■曲にちなみ、みなさんが音楽的な意味で、大人になったなと思った部分はありますか?

ヒナ プラスマイナスの話ではないんですけど、今回のレコーディングでは、すごく上手に歌おうとしちゃって、エンジニアさんから「そうじゃない」という指摘を受けました。なんというか、自分の中の「いい声を出したい」という欲求なんですかね?それはプラスにあたるところなのかもしれないんですが、それで歌っちゃうと「違う」。なので、今回は無邪気な頃に戻ろうという感覚で歌いました。

シンノスケ 作曲面で言うと、緩急をつけることですかね。ツービート系の曲が多い中で、テンポ的にミニマムなものを作ったり、そのノリのおかずを作ったりする感覚は、自然とついてきたと思う反面、まだ「足し算」が多い気がします。自分の中では、もっと引いていきたいんです。スリーピースかつ、ギター1本というのは、やれることが限られていて難しいのですが、その分、「広さ」があるんだろうなと思っていて。でも、そこがまだ感じられていない気がします。

タイキ ドラムはキックとか、ストロークとかに対して意識するようになりました。兼ね合いみたいなところですね。今までストロークに対しては、あまり考えていなかったんですけど、合う合わないというのがあるんだなと、感じることができるようになりました。

ケンノスケ ベースはどうだろう?そんなにフレーズを足し算してはいないんですよ。特に“曖昧”と、“とまらない愛を”は、ほとんどルートとオクターブです。それはなんというか、曲を聴いて、自分は別にそんなにやらなくていいかなと思ったからです。ルートだけのベースも好きで、ELLEGARDENもルート弾きが多いんですが、それでもカッコいいじゃないですか。だから曲を聴いて、「僕が目立たない方がカッコいいんだろうな」と思ったら、音を引くことができるようになりました。レコーディングで言うなら、今までだったら、もっとバリバリに歪んでいた所を、今回はほとんどクリーンで録りました。エンジニアさんに「今までで一番いい音だね」と言われました。「なんかいきなりプロみたいになったな」って。(笑)

■もうすでにプロですよ!(笑) そして次の曲は“曖昧”ですが、先ほどみなさんもおっしゃられたように、リズムを掴むまでは「何だこの曲は?」と思いましたが、この不安定感はわざとこう作ったのでしょうか?

タイキ そうです、わざとです。昔、最初と最後のところだけ作って、それ以外の場所は作っていなかったんですけど、久しぶりに聴いて「これを使おう」と思いました。最初と最後をツービートにして、あとは弦楽器が出て……となっているやつがやりたくて、はめ込んでいって、これでいけるなと思ったら、めっちゃ難しかったんですよね……。(笑)

■昔に作ったのはメロディラインだけだったのでしょうか?

タイキ 歌詞とメロディです。今回後付けした中間のメロディは、「最初と最後に負けないようにするにはどうすればいいのか?」と考えて作った結果、こうなりました。

■なるほど、なるほど。ちなみにタイキさん自身は、曖昧なタイプなんですか?

タイキ 曖昧です。(笑) 靴下は片っぽ失くしちゃいますし、だいたいいろいろ片方だけ失くすんですよね……。

■それは片方が失くなって初めて失くしたことに気付くからでもありますね。(笑) みなさんはいかがですか?「あの頃の僕」が、今の自分を見たら、どう思うのでしょうか?

ヒナ 妬いちゃうかもしれませんね。(笑) 僕は歌うことが好きだったので、中学校の頃とか、毎週末友だちと一緒にカラオケに行っていました。それが、こんなにいっぱいの人の前で歌えるようになっているというのは、羨ましいと思いますよ。

タイキ 僕も一緒やと思います。羨ましいんじゃないですかね。ステージに立って、友だち同士で演奏して、楽しい毎日を送って。最高ですよね!

ケンノスケ 「楽しいことしてるの、いいな~!」という感じです。あと、学生の頃の自分が、今の自分に会ったら、「あんま変わっていないな」と思うだろうし、今の自分は、「お前のやりたいことがやれているぞ!」と思うだろうし。あの頃の自分が未来の自分に出会えたら、きっと喜ぶんじゃないかな。

シンノスケ 僕も羨ましがるだろうな~。「いい歳の取り方してるな」と思うかもしれないです。「俺は未来のおまえだ!」と言われても信じます。科学が進歩したんやろうなって。(笑)

■ちなみにみなさんは昔からのお知り合いですが、ビジュアル的に一番変化したのは、どなたになるのでしょうか?

ケンノスケ 俺はシンノスケのことを中学校の時から知っているんですけど、中1と今はやっぱり全然違いますね。めっちゃ大人の顔になりました。

ヒナ ケンノスケは変わらんな。(笑)

ケンノスケ そもそも変わろうとしていないだけです。だって楽しいんですもん!(笑)