東京初期衝動 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

東京初期衝動『えんど・おぶ・ざ・わーるど』
2022年2月12日のライブ(恵比寿リキッドルーム)

■それはガールズバンドだから、ナメられたくないと?

しーな うん、それはありますね。辛かった。

なお 自分自身はSNSとか否定的な意見が出ても「別にいいや」って。前は言い返していたけど、相手にするのが面倒臭くなった。(笑)

■しーなさんの変化に関しては?

なお 筋トレを始めてから、精神が安定しているなと。前はよく「自殺する」って言っていたから。

しーな ははは、そうですね。筋トレしてから精神が落ち着いています。

■希さんはいかがですか?

希 昔はそういう曲をやるのが恥ずかしいと思っていて。東京初期衝動というバンド名なのに、女の子女の子な感じだったり、ガールズバンドっぽい曲をやるのが恥ずかしくて。今は普通に素直な気持ちで、そういう曲も楽しめるようになりました。ヘンなヒネクレがなくなってきたのかな?社会に出たから……ですかね。(笑) 心が広くなったのかもしれない。

しーな ああ、そうだね。ガールズバンドでいろんな経験をするじゃないですか。恋愛しかり、友達関係しかり、いろんな人と関わって、いろんなものを作ると、1曲1曲の尊さもわかったりして。映画を観て、「これは良くない」と思っても、めっちゃ時間をかけて作っているから、尊いものなんだなって。最近、人に対してもそう思うんですよ。「こいつマジうぜぇ!」じゃなくて、「まあ、いろいろあったんだろうな」と。そう思うようになって、丸くなったというか、母性みたいなものが生まれてきたのかなと。ほんとに曲も丸くなったなと思います。それはいいことなんじゃないですか?刺激が足りないと思う人もいるかもしれないですけど。

■いや、刺激を求める人の期待を裏切らない歌詞もあるし。(笑) どこからも文句を言わせない隙のない仕上がりで、そこが素晴らしいなと。

しーな ああ、そうですね。

■1stアルバムの頃も恋愛ソングはありましたが、どちらかと言えば、好きだからこそ生じるダークな感情に焦点を当てたものが多くて。でも今作は恋愛が始まる時のワクワク感や、その渦中の高揚感みたいなものを赤裸々に描くようになりましたね。

しーな そうですね。1stアルバムの頃は大好きな彼氏がいて、今作を作る時には恋愛が全くなかったんですよ。みんなに「恋愛しろ!」と言われたけど、全く人を好きになれなくて。行き着いた場所が少女漫画だったんです。

■ああ〜、そのキラキラ感は出ていますね。(笑) 「ピンクのハリケーン! 巻き込まれて」(「マァルイツキ」)の歌詞とか。

しーな そしたらキュンキュンが止まらなくて。私、ずっと漫画に出てくる男の子に恋をしていたんです。道を歩いている時でも、安野モヨコさんを読んでいる時期は、男の人全員が安野モヨコの絵面になって出てくるんです。そういう時期にできました。

■曲を作っている時の精神状態がそのまま出るタイプですね。

しーな はい。(笑)

■ちなみに今作も曲を作る時はライブをイメージしましたか?

しーな そうですね。ライブで盛り上がる曲という意識で作りました。手拍子でもいいし、踊ってもいいし、叫んでもいい。コロナがあけたらこの曲をみんなで一緒に歌いたいなと。今はコロナ禍だから、バラード作ろうという意識はないです。だって、絶対ウチらは規則みたいなものは無視するから。表向きにはライブパフォーマンスできないけど、「できる!」という気持ちでやっています。

■先ほど「母性」と言っていましたが、観客を大きな気持ちで包み込むような、いろんな盛り上がり方で楽しめる曲が増えたなと。

しーな 昔はライブで手拍子とか死ぬほど嫌いで。自分が観に行くライブでも、手拍子が起きたら帰っちゃうレベルでしたからね。「寒いわ!」って。

希 うん、帰る。一体感とか求めていなかったから。

しーな 「俺たちは孤独なんだ」という気持ちでライブに行っていたから。掛け声、手拍子がうざすぎて。だから、自分のライブでも起きないようにしていたけど、変わっちゃいましたね。

■それは何か理由でも?

しーな 手拍子が起きる側に立つと、単純に楽しかった。その楽しさを素直に受け止められるようになったから。希ちゃんと昔はライブで手拍子が起きたら、「やめさせようぜ!」と言っていたもんね?

希 言ってた。

しーな けど、今は手拍子があった方が落ち着くという、普通の人間になっちゃいました。

■それも1stアルバム以降の大きな変化ですか?

しーな そうですね。それはかなり大きな気持ちの変化かもしれない。今までは絶対にあり得なかったから。あさかがやった時に、「えっ?」と思って。

あさか そう。ベースを弾いてみた動画と、振り付け動画を一緒に出して。なおちゃんだけには言っていたけど、2人(しーな、希)に言ったら、否定されることがわかっていたんで。内緒で上げたら、「いいじゃん!」って言ってくれたから。

しーな 「アイドル臭えな」と思ったけど、みんなが「かわいい」と言うから、「じゃあ、いいじゃん」って。その結果、あさかはフロアを踊らせたから、それはすごいなと。「これでいいよ!」って手の平を返しました。あさかが入ってくれて、自分たちが受け入れられないこともどんどんやってくれて、それがお客さんには良かったりするので助かっています。あさかにはキャピ!っとしている感じを突き抜けて欲しいですね。そうなることでウチらにもメリットがあるから。

あさか メリットしか考えてない。(笑)

しーな それぞれがバラバラな方が楽しいんだなと。ウチと希ちゃんだけだったら、暗い方に凝り固まっちゃうんで。そこになおちゃん、あさかがいることによってキャピ!っとなるから。

■そして4月から全国ツアーが始まりますが、今年はどんな年にしたいと思ってますか?

しーな (希がしーなの耳元で囁く)破壊と破滅とデストロイド。とにかく、何かをする時は安全パイに行かず、バカみたいに危険な選択をしようと思います。そっちの方が楽しそうだから。それが最近のスローガンです。ライブもウチらはアンコールもぶっ続けにやったりするじゃないですか。私は6年付き合っていた彼氏と別居しましたからね。

■いきなりの告白ですね。(笑)

しーな 壊しっぱなしでこの1年は行こうかなと。一回ぶっ壊さないといけないんで。これからが楽しみですね。

Interview & Text:荒金良介
Photo:横山マサト

PROFILE
2018年4月、しーなちゃん(Vo&Gt)を中心に銀杏BOYZ好きが集まって結成した4人組ガールズバンド。2019年4月、自主レーベル「チェリーヴァージン・レコード」を立ち上げ、1st EP『ヴァージン・スーサイズ』にてCDデビュー。11月に1stアルバム『SWEET 17 MONSTERS』をリリース。2020年1月17日発売号「週刊朝日」今年の顔100人(文化•芸能)部門に選出される。2020年4月、2nd EP『LOVE&POP』をリリース。2020年11月21日に 出演した「BAYCAMP 2020」にて新メンバーあさか(Ba)が加入となり、第2期 東京初期衝動がスタート。2021年1月、日テレ系「バズリズム02」これがバズるぞランキング2021のランキング10位に選出される。現メンバーでの初の音源として、5月12日、3rd EP『Second Kill Virgin』をリリース。2022年1月、テレビ朝日系「空気階段の空気観察」1月度エンディングソングに“空気少女”が決定。2022年2月2日、待望の2nd アルバム『えんど・おぶ・ざ・わーるど』をリリース。
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RELEASE
『えんど・おぶ・ざ・わーるど』

初回生産限定盤(CD)
CVR-0008
¥3,300(tax in)

チェリーヴァージン・レコード
2月2日 ON SALE