■確かに刺さると思います。
TRUE 他人と音楽を奏でる喜びは、吹奏楽をやっていなくてもみんな知っていると思っています。というのも、私はそういったことのスタートは小学校の合唱だと思っていて。合唱の時って、友達の声を一生懸命に聞いて、それに一生懸命合わせていたじゃないですか。そうするとそれが広がって、不思議と大きな歌になっていく。私たちが一番最初に「誰かと音を重ねる」その楽しさを学んだのはあの瞬間だと思っていて。私は初めて合唱をやった時、すごく感動したんです。
■合唱の授業は音楽の根源として貴重な体験ですね。
TRUE そういう人ってきっと多いだろうし、特に日本人の心にはそれが残っていると思うから、誰かと音を奏でたり、誰かと何かを成し遂げる喜びを“アンサンブル”という曲を通してもう一度触れていただきたいです。また、誰かと主に音を楽しむ場所の1つがライブ会場だと思うから、足が遠のいてしまっている人も、もう一度みんなで一緒に音楽業界や音楽自体を盛り上げていけたらいいな。“アンサンブル”がそういうきっかけになればいいなと思います。
■この曲はMVも制作されていますね。
TRUE 今回は初めて「黒板アート」風な表現にチャレンジしました。MVはタイアップ作品とはまた違う、1つの独立した映像作品としてお楽しみいただくものだと思っています。“アンサンブル”を映像として表現しようと考えた時、黒板アートってすごくノスタルジックで、様々な年代の方が自分を重ねやすいんじゃないかなと思ってこのアイディアを採用しました。
■黒板はどの時代にも教室にありますもんね。
TRUE ドラマ仕立てになっているんですが、黒板を経由することで様々な年代の方イメージしやすくなるんじゃないかな。「ユーフォ」が幅広い年齢層に愛されている理由のひとつもそうだと思うけど、青春の眩しさみたいなものって、いくつになっても手を伸ばしたくなるし、ずっと消えずに残っているじゃないですか。それを上手に表現してくれたのが、今回のMVだと思います。
■カップリングには“タイムマシン”が収録されていますが、こちらは1年くらい前から披露されている楽曲なんですね。
TRUE “タイムマシン”は、リリース関係なく自分発信で作った曲です。私は有難いことにとても良い環境で音楽を表現させていただいているので、曲を作る機会がたくさんあって。ずっと音楽を作ってはリリースして、タイアップをいただいて、また作って……を繰り返していたのですが、コロナ禍で1回それがストップしたことで、自分の中で音楽制作に対する意識が変わってきて。やっぱり私はアーティストなので、作らせていただく機会を待っていてはダメだなと。出来不出来は関係なしに、とにかくどんどんと曲を生み出そうと思って作ったのが、“タイムマシン”でした。ファンクラブ内では披露していたんですけど、今回は夏のリリースということもあって、満を持して形にしようかなと。
■気になったのはタイトルでした。どうして「バースデー」ではなく、「タイムマシン」なのでしょうか?
TRUE バースデーソングをどういった表現で作ろうかといろいろ考えた時に、大人になった私から小さい頃の私に向けたお誕生日ソングってなかなか世の中には無いよなと思って、そういう曲があったらいいなと思い、作り始めました。私は子どもの頃から漠然と芸能界に憧れを抱いていて、何度も挫折しながら様々な仕事を繰り返し、たくさん遠回りをしながらも、ランティスってレーベルに辿り着いて。子どもの頃からの諦めの悪さと、「やってやるぞ!」っていう負けん気の強さだけでここまで来ました。(笑)
■素敵な道のりだと思います。
TRUE 「歌をやりたいな」と思ったのはおじいちゃんがきっかけでした。小学校3年生の時に、おじいちゃんがずっと入院していて、もう目を開けることもなかなか無かったのですが、それでも毎日のように会いに行っていまして。そんな時、枕元で私が歌を歌っていたら、おじいちゃんがパッと起きてニコっと笑ってくれて、それが本当に嬉しくて。それで、お母さんに「歌ってすごいね!私、歌を歌う人になる!」みたいなことを言って、その時から歌手を目指し始めました。あの時の小さなひらめきと、生まれた夢の粒が、今の私をここまで連れてきてくれたなと思います。改めてその時の自分に向けて、「ありがとう」って気持ちを込めて歌を歌うのもいいかなと思って作ってみました。
■つまり、まさに歌われているような「叶えた夢」なんですね。
TRUE すごく面白い作り方をしているんです。自宅で作り始めたというのもあり、いろんなSE使っていて。例えばガスコンロを点火させる時の「カチカチ」って音とか、カーテンを「シャー」っと開ける音とか、そういうSEを無限に録ってちりばめています。最後にはロウソクを吹き消すと曲がパチンと止まるんですけど、あれもスタジオで「これやったら面白くないですか?」みたいな思いつきのアイデアです。(笑) 音楽を作る楽しさの根源ってこういうことですよね。楽しんで曲を作り続けていたら、それが誰かにとっていいものになって、そういうポジティブなことの受け渡しを音楽でもっとしていくべきだと思うし、受け身でいたら勿体ないなって思うんですよね。コロナ禍でそういうことに気付いて、我武者羅に作り始めて良かったなと思います。
■せっかくなので、歌手になったこと以外で叶った「子どもの頃の夢」を教えてください。「バケツプリン食べた!」みたいなものでも大丈夫です。(笑)
TRUE バケツアイスの歌は作ったことがあるんですよ。“名前のない空腹”という楽曲なんですけど。(笑) バケツアイスって女子はやりません?やりますよね!?まぁバケツアイスは1個の表現ですけど、大量にスイーツを買ってきたりしませんか?
■バスタブでスイーツ作ったりとか……?
TRUE それはYouTuberです。(笑) 普段は我慢しているから、「今日はもうコンビニで買いまくって、消化しきれないものを食べて、物理的に消化することで思いも消化しよう」みたいな日があるんですよ。でもそれは曲を作ったので……後は何だろう。私、毎年お正月やお誕生日を迎える時に、1年の大きなテーマを決めるんですよ。それに加えて、月ごとの小さな「叶えたいこと」を決めて、それを1個ずつゲームみたいにクリアしていくのが好きなんです。なので、割りと叶えてもらっていますね。
■それでは、これからやりたいことはありますか?
TRUE たくさんあります。(笑) オーケストラのワンマンコンサートを4、5年前からずっとやりたいと言っていたのですが、ついに今回、念願叶って10月に京都でオーケストラコンサートを開催が決定しました。正直無謀なことをやろうとしているなと自分でも思っているのですが、無謀だと言われることにも果敢に立ち向かう価値がそこにはあると思います。あと、海外でのワンマンライブもやってみたいことのひとつです。イベントにお呼ばれして歌うことはあるんですけど、まるっと自分のワンマンライブはやったことがないので。
■素敵です。海外でワンマンライブが開催されたら、またインタビューでその時の思い出を聞かせてください。
TRUE Thank you.(笑) 海外公演といえば、一度ライブのリハーサルの時にイヤモニに現地スタッフのお喋りがずっと流れ続けていたことがあります。もちろん直してもらったんですけど、本番を終えて袖に降りたら、そのスタッフの方たちが「素晴らしいパフォーマンスだった!」ってすごく感動してくださって、やって良かったと思いました。(笑)
■海外公演ではトラブルがつきものですよね。
TRUE 「これ大丈夫かな?」とかオロオロするんですけど、海外だと不思議と「なんとかなる!」って大らかな気持ちでいられる。向こうのイベントのスタッフはボランティアみたいな形で来てくださっている方が多いから、その分すごく愛情があるし、アニメ好きでいてくれます。できなかったことをリカバリーしていくのもみなさん上手だから、トラブルもしょうがないなっていう感じです。(笑)
■トラブルが起こること前提ですよね、海外だと。(笑)
TRUE お客さんもすごく情熱的なんですよね、バラードでも間奏部分で大歓声が上がってくれたり!国ごとにも違いがあります。ヨーロッパの観客はじっくりと聴いてくださる印象ですし、サウジアラビアの方はすごくエモーショナルで、「この曲でこんな楽しみ方があるんだ!」っていうくらい盛り上がります。
■意外な姿を見られるわけですね。(笑) 11月には京アニの音楽フェスもありますが、意気込みを教えてください。
TRUE 京アニフェスは京アニの作品や音楽を愛してくださっている方への感謝を伝える場だと思っています。私、箱推しっていう言葉はすごくいい言葉だと思っているんですけど、イベント全体を楽しむつもりで来ていただけたら嬉しいです。
■どんな曲を聴けそうですか?
TRUE 今回の京アニフェスは、過去の作品の音楽もお楽しみいただけると思います。若い世代からしたら、新しい出会いもあるんじゃないかなと。この機会に近年の作品だけじゃなくて、過去の作品にももう一度手を伸ばしていただきたいです。個人的には今回、京アニさんからのリクエストで「え?!コレ歌っていいんですか?!ありがとうございます!」みたいな曲があります。みなさんも「え!今日これ聴けるんですか?!いいんですか、ホントに聴きますからね!」みたいな気持ちにきっとなるはず!何のことかわからないと思うのですが、是非期待していてください!
Interview & Text:安藤さやか
PROFILE
2014 年に“TRUE”としてアーティストデビュー。激しく熱い楽曲から、壮⼤なバラードまで、あらゆるタイプの楽曲を歌いこなす。TRUEの代表作のひとつでもある「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」主題歌『Sincerely』は、⾳楽配信サイトのストリーミング総再⽣回数は約4000万回を達成。全世界でも注⽬を浴び海外のアニメイベントステージにも出演する等、⾶躍を続けている。また、“唐沢美帆”名義で作詞家としても活躍。「アイカツスターズ!」、「マクロスΔ」といったアニメ作品や、藍井エイル、⽔瀬いのりなど、多数の声優、アーティスト、キャラクターソングなどの楽曲制作にも参加している。
https://true-singer.com/
RELEASE
『アンサンブル』
通常盤(CD)
LACM-24407
¥1,320(tax in)
Lantis
8月4日 ON SALE