TRUE VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

アニメと観客の心を橋渡しする「響け!ユーフォニアム」特別編主題歌に「凄くいい曲だなと思っています」。

TRUEが8月4日(金)に「特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~」主題歌となるニューシングル『アンサンブル』をリリース。2015年の初回放送から「響け!ユーフォニアム」の主題歌を担当しているTRUE。同作品への提供としては4曲目となる“アンサンブル”は、本人曰く「凄くいい曲だなと思っています。(笑)」とのこと。今回のインタビューでは時代の流れと共に変容するアニソンシンガーという存在についての想いから、アニメソングと観客と作品の関係についての熱い想いが語られた。

■TRUEさんはもともとアニメがお好きとのことですが、いちアニメ好きとして、アニメが変わって来たなと思う所はありますか?

TRUE アニメが(社会の中に)根付き、サブスクなどでも楽しめる分、みなさんにとって身近になったんじゃないかな。アニソンシンガーという職業においては、ここ5年~10年ですごく大きな変化がありました。これまではアニソンを歌っている人たちがアニメの音楽を作って来たのですが、最近はロックバンドやポップスのシンガーがアニメと一緒に曲を作る方が主流になり、アニソンシンガーは絶滅危惧種になっているというか。

■確かにタイアップと声優歌唱のアニソンが増えているので、アニソン専門の歌手は減った印象があります。

TRUE でも、アニソンシンガーならではの強みもあるので、意識の変化は必要だと思っています。アニソンシンガーはポップスシンガーよりも作品を盛り上げる力がないと成立しなくなってきました。よりアニメにとって良いものを作れるのがアニソンシンガーの強みなのだとしたら、そこをもっと強化していかなきゃいけないと思います。あと、作品との親和性をより深められることや、音楽性を玉虫色に変えられるのも私たちの強みです。なので作品と対話を重ねて制作していくことで、お互いにとってのBetterを出せるのだと信じています。

■TRUEさんにとって理想のアニメソングとは?

TRUE やっぱり「玉虫色」の楽曲だと思います。1つの作品にはいろんな側面や切り取り方がありますよね?例えば「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を「幸せな作品」と捉える人もいれば、「悲しい作品」と捉える人もいて。その作品と共にある楽曲は、楽曲を経由して作品を見ていただく時、玉虫色に変化していかなければいけないと思います。聴く人によって様々な映り方をするように余白を持たせるというか、説明をしすぎないようにするというか。

■様々な解釈ができる曲は確かに聴き手としても嬉しいです。逆に、「これだけはやらないようにしている」ということはありますか?

TRUE 嘘はつかない。作品のための曲を作るので、シナリオを読み込むし、誰よりも理解する努力をしますが、100%その作品のための曲にするのであればアニソンシンガーが歌うのではなく、キャラクターが歌うべきだと思うんですね。そこで敢えて私たちが歌う意義は、曲にシンガー自身の人生が乗ることだと思うんです。なので、私が思っていないことや感じていないことは言葉にしないようにしているし、今まで生きてきた重みみたいなものも乗せるように作っています。じゃないと、私に曲を任せてくれた作品に対しても失礼だし、私が歌うことへの意味もなくなっちゃうから。

■TRUEさんは唐沢美帆名義でキャラソンの作詞もされていらっしゃいますよね。キャラソンの作詞のポイントやコツはありますか?

TRUE キャラソンはもうホント、「そのキャラクター」ですね。そのキャラクターがアニメの世界を飛び越えて、「どんなことを考えるだろう?」、「どんな言葉を発するだろう?」と考えます。あと、商品名みたいなものとか、キャラクターのイメージとして色濃く残ってしまうようなワードはなるべく使わないようにしていたりします。

■今回は京都アニメーション制作作品の主題歌となっておりますが、京アニ作品は2タイトルで主題歌を担当されていましたよね。

TRUE 京アニさんは人との繋がりや対話を大切にされている会社です。最初に制作したのは「響け!ユーフォニアム」の1期でしたが、その時は京アニさんのスタッフが東京に来てくれたり、私がスタジオに足を運んだりしていました。「ユーフォ」に関しては、9年ぐらい一緒に制作をしているので、今ではそんなに言葉がいらないというか、スムーズに制作できています。

■言葉はなくとも伝わる関係……素敵ですね。

TRUE ある曲を送った時に、監督からとんでもない量の絵文字の羅列がついた感想文が届いたんです。今まで味わったことのない熱量のメールだったんですけど、言葉を超えて「大変喜んでいらっしゃる!」って思いました。曲を作るたびに想像以上に喜んでくださるから、嬉しいなって素直に思うし、監督のお顔を見たりお話したりしていると、やりがいを感じますね。

■詩の言葉はどうやって作っていますか?集めていきますか?探しに行きますか?

TRUE ものによるかな……。自分の曲に関しては自問自答の時間が長いので、いつも難産になります。降ってくるのを待ちつつ、探しにも行きつつ、ああでもないこうでもないって自問自答して……。多分みなさんが想像しているような綺麗な制作期間ではないなと思います。(笑)

■「ユーフォ」の場合は、原作やアニメを観つつ悩んでいくのでしょうか?

TRUE もちろんそうだし、それを踏まえた上で今、私が表現したいことを言葉にしたのが“アンサンブル”です。“アンサンブル”はライブで映える曲だし、ライブでこそ成長していける曲だと思うから、いろんな人を経由していくことで、込めた想い以上に成長して、より深い意味を持っていくんじゃないかなって予感がしています。

■確かにライブで映えそうな曲だと思いました。

TRUE 凄くいい曲だなと思っています。(笑) 今の私には、もうこれ以上のバラードは書けないかもってくらい、満足度が高いです。曲を出す時、いつも半分は不安なんですよね。特にアニソンは「作品」を背負って作らせていただいているので、「どういう風に受け取られるのか」とか、「もっと違う表現もあったのではないか」とか、いろんな想いが頭を駆け巡るのですが、“アンサンブル”に関しては迷いなく「やり切った!」と思うことが出来ています。

■“アンサンブル”はアカペラで始まるじゃないですか。それを聴いた時、ライブを想像して「ゾクッ」としました。

TRUE アカペラの曲は勇気と覚悟が必要なのですが、それだけ真っ直ぐ受け取ってもらえる曲になったと思います。今回は「ユーフォ」2期の主題歌を制作して以来、私にとってのキーになる大切な楽曲をお願いしている作曲の渡辺拓也さんに楽曲提供してもらったんですけど、改めて拓也さんと一緒だから作れた曲だと思うし、拓也さんが持つ哀愁や優しさが、私の力強さと相まって、シンプルでまっすぐで清潔感もあるような曲に仕上がりました。本当に感謝しています。

■ちょうど部活に打ち込んでいる子たちの熱量や、爽やかさとも合う感じで良いですよね。

TRUE 意外かもしれないんですけど、今回は作品側からの希望で「ストリングスアレンジも施して欲しい」とオーダーを受けました。私の中ではあまり「ユーフォ」の楽曲でストリングスを使うイメージがなかったんですけど、より壮大な楽曲になったなと思っています。

■そう、ストリングスがたくさん使われていることは気になっていました。「アンサンブルコンテストの話なのに?」って。

TRUE デモの段階ではストリングスは入っていなくて、「うっすら入れてもいいよね」みたいな温度感だったのですが、ドラマチックな感じを京アニさんサイドにも気に入っていただいて、「もっと前面に出して大丈夫」と仰っていただきました。そういったところも「信頼していただいている」と感じる部分です。「こういう作品だから、こういう音楽を作らなきゃいけない」という枠を作らないで、音楽の可能性を多面的に捉えてオーダーしてくれるので、曲単体としても力のあるものになったと思います。

■ちなみに「ユーフォ」は吹奏楽部の作品ですが、今もし吹奏楽部に入るとしたら、何を吹きたいですか?

TRUE めちゃめちゃいい質問です。(笑) でも私、多分ユーフォニアムとかやるタイプではないんですよね。かといってトランペットとかの花形楽器をやるタイプでもないから、パーカッションがいいかも。いろんな楽器に触れられて楽しそうだし、リズム感のいいひとが多いイメージでカッコいいですよね。それにしても選ぶ楽器ってキャラクターというか、すごく人間性が出ますよね。(笑)

■出ます。私の友達のサックス奏者は全員アニメオタクです。(笑)

TRUE 実はですね、私サックスはやろうと試みたことがあるんですけど……今は大事に仕舞ってあります。(笑) 「ライブで披露できたら素敵だな」と思ったんですけど。(笑)

■アニメ好きな人はもしかしたらサックスを吹きたくなるのかもしれませんね。(笑) 話を戻して、“アンサンブル”はどこからできていった楽曲ですか?

TRUE お話をいただいてから、まず楽曲を発注して、それがフィックスしてから、歌詞を載せていきました。タイトルは最後まで悩んで、「潔く“アンサンブル”にしようかな」と思い、最終的にこれに決めました。

■タイトル候補は他にもあったのでしょうか?

TRUE タイトル候補はたくさんあったのですが、結果“アンサンブル”にしてよかったと思っています。「アンサンブル」って、すごくたくさんの意味を含んでいる言葉ですよね。誰かと共に何かをやること、それ自体がアンサンブルと定義づけられると思いました。私が今までやってきたこと、例えば誰かのために歌詞を書くこととか、ライブで誰かとセッションすることとか、ライブ中のお客さんとの触れ合い、そういうことを含めて全部「アンサンブル」だったから、とても潔く、私らしいタイトルがついたのではと思っています。

■確かにぴったりなタイトルだと思いました。最初がアカペラで始まるのも良いですね。

TRUE 元々はアカペラではなかったんですけど、監督たちと「アカペラっていうのもアリですよね」、「ただ、劇場でかかる時にアカペラってどうでしょう?」という話し合いもしつつ、最後には満場一致でこの形になりました。劇場で主題歌を聞いた時には、すごく手ごたえを感じました。みなさんの心にスッと歌や言葉や音楽が入っていくと思います。みんなでアイデアを持ち寄って曲を形にしていくからこそ、より良いものが生まれるのだと思います。

■作品の内容と歌詞の合致率は何パーセントぐらいですか?

TRUE キャラソンではないので100%同じではないです。でも見ている景色は同じって感じかな。アンコン編は日常を描いた物語です。今回は主人公の黄前久美子が吹奏楽部の部長になって、アニメ3期に向けてまた1つ上のステップに行くために様々な奮闘をするというお話です。そして主題歌は熱いミディアムバラード、曲と内容が100%合致しているわけではないけれど、作品とみなさんの間にあるのが主題歌だと持っているので、並べた時に「なるほど」と、納得していただけると思っています。

■作品と視聴者の間に主題歌がある、という考え方は素敵だと思います。

TRUE 私は歌詞の世界観が内容と100%一緒じゃなくていいと思っていて、むしろそうじゃない方がいいとも考えています。監督も「歌詞の通りに絵を載せることはしません」といつも仰っていて、様々なセンテンスが組み合わさり、それがどんどん膨らんでいくのがアニソンの面白さだと思うから、全く同じではないけれども、みなさんの中を経由することでイコールになると思います。みんなはそのまま劇場で作品を楽しんで、そのまま音楽を受け止めてくれたら、きっとそれが正解だと思う。そうなるように作ったつもりです。

■橋渡しみたいな感じですね。

TRUE 私が頑張らなきゃいけないのってここからだとも思うんですけど、作品を観ていただいた方たちに、曲を知っていただくことだけに甘えちゃいけないと常々考えています。私の曲を聴いて、作品に興味を持っていただかないと、私がやっている意味がなくなっちゃうから。特に今回の“アンサンブル”は吹奏楽をやっていない人たちでも、今頑張りたいことがあったり、もがいていたりする人には必ず刺さる楽曲になればいいなと思って作っていますし。