Wienners VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

Wienners『TREASURE』

玉屋2060%(Vo&Gt)、アサミサエ(Vo&Key&Sampler)

感情が振り切れた瞬間が一番気持ちいいんですよ。そこまで連れて行きたい

Wiennersのニューアルバム『TREASURE』がすごいことになっている。メンバー自ら「最高傑作」と位置付ける通り、このバンドが持つ長所や美点、やり過ぎなくらいの過剰さを遠慮なしに出し切ったサウンドが何より痛快だ。足腰の強いパンキッシュな機動力はもちろんのこと、ポップスからワールドミュージックまで射程に置いた煌びやかなデジタルロックが今作では爆発している。過去最高にポジティブでエネルギーに満ち溢れた作風について、玉屋2060%、アサミサエのメンバー2人に話を聞いた。

■今作を聴き、Wiennersの魅力や武器を全振りしたとんでもない作品ができましたね。

玉屋 ありがとうございます。(笑) 最高傑作でございます。というのも、やり切れたという意味で過去最高作だなと。

■やり切れたというのは?

玉屋 いろんな意味で、今までは悪い意味で合わせに行っていたと言うか……。

■それは何に対してですか?

玉屋 「世の中に対してわかりやすい方がいいかな」、「バンドで鳴らす時に音数を減らした方がいいんじゃないか」とか、いろいろ考えて作っていたんです。今回はメンバーや周りのスタッフも含めて、曲を作る自分に対しても「思いっ切りやっていいよ」と言われたことが大きくて。

■曲作りの段階からフルスイングできたと?

玉屋 そうですね。後から「ここをこうすれば良かった」と思うところもないから。

■アサミサエさんの作り終えた感触は?

アサミサエ まだ作っている時はここまで破茶滅茶になるとは思わなくて。1曲、1曲、確かに蓋を開けたらすごいことになっているなと。だから、自分たちでも驚かされた作品になりました。1曲、1曲を作るのが楽しくて、いい意味でアルバムのことを考えていなかった気がする。1曲入魂、メンバー4人が楽しんで取り組めたんじゃないかと思います。それで曲が集まった時に、「これはやばいね!」って。(笑)

■「やばいけど、最高じゃん!」みたいな。

アサミサエ うん、合わせていないからこそ、Wiennersらしさが出ていると思います。前作(『BURST POP ISLAND』)の時は、お客さんに楽しんでもらうことを優先していたので、曲の中にも仕掛けが多かったり、ライブを想定して作っていた部分もあったけど、今回はメンバー4人の個性を引き出す形で自分たちが楽しくやれることを重視したから。

■その方向に目が向いた理由はなんですか?

玉屋 この2年はコロナ禍になり、例えばリモートで曲を作る様をTwitterでリアルタイムで発信して、1週間で曲を作るみたいなことをやったりして。「それでも形になるじゃん!」って。そういう風に自分たちが楽しむ様をお客さんも楽しんでくれるし、求められてもいるんだなと実感できたことも大きくて。あと、コロナ禍になっても、曲作りではあまりコロナのことを意識していなくて、なぜかコロナ禍以前のフロアを想像したまま曲をずっと作っていて。それをお客さんも求めているんじゃないかと感じて、思いっ切りやろうかなと。

■なるほど。

玉屋 あと、今作は同期というか、打ち込み要素が多いんですけど、リミックス・アルバム(『Wiemixes』)を出した時にめちゃくちゃなアレンジをやったり、デジタルな編集もWiennersの強味だし、今作はその延長線上にもあるのかなと。

■前作と今作の間にリミックス・アルバムを挟んだことも大きかったと?

玉屋 そうですね。リミック・スバージョンをライブでやるとすげえ面白くて。フロント2人(玉屋、アサミサエ)がハンドマイクで1曲披露する楽曲もあったりして、それも今までやったことがなかったし、お客さんもめちゃくちゃノッてくれたから。ギターを弾かないって、こんなに楽しいんだなと。(笑)

アサミサエ ははははは。(笑)

玉屋 今作はギターを弾く量も少し減ったのかな。以前は弾かなきゃいけないと思っていたけど、今回は単純にいいものを作りたいと思ったから、何がなきゃいけないという気持ちもなかったんですよ。

アサミサエ みんなも持ち玉はまだあるんじゃないかと思って。日々リハやライブをする中でも、「俺らまだやれるぜ、私まだやれるわよ」って、沸々としたものを感じていたから。そういう雰囲気がバンド内にもあるんじゃないかと感じました。

■あと、2021年10〜11月に東名阪の3カ所にわたるツアー『Welcome to the FACTION』を開催しました。あのライブが衝撃的で忘れられなくて、Wiennersにとってもエポックなパフォーマンスだったと思うんです。楽曲の楽しさはもちろん、それを会場の雰囲気やステージ衣装という視覚面から高めてくれて、楽しさが何十倍にも膨れ上がる空間作りに大成功したライブでした。振り返ってみていかがでしたか?

玉屋 あれはマジでベストライブだったと思います。(笑) もともとコンセプチュアルな楽曲が多くて、細部の景色や世界観をメンバー内で抽象的な言葉で話すことはあったんですけど、それを具体的にしようと思った時に、ああいうコンセプチュアルなライブが自分たちにハマっていたなと。パンクバンドでああいうことをする人たちはあまりいないけど、Wiennersはこういうこともできるんだなと気づいたし、あのライブを経て、曲が持っているイメージや世界観をもっと届けたくなったんですよ。今回の曲作りでも、より過剰に大げさに表現しようと心がけました。大げさな方が笑っちゃうし、今作の歌い方でもアサミサエは笑っちゃうくらい大げさにやってくれたパートもありますからね。(笑)

■アサミサエさんはいかがですか?

アサミサエ 自分たちの中でも記憶に残るツアーでしたね。初めてのチャレンジでもあったから、達成感がすごかったんですよ。Wiennersのライブで持ち帰って欲しい気持ちを、いつものライブでも話し合うんですけど、ただ「イェー!」で終わらない、壮大な感情も持ち帰ってもらいたくて。その集大成というか、ちゃんと世界に引き込めたライブでしたね。自分たちもライブ後に多幸感でいっぱいになったし、寝る前までずっとフワフワしていました。(笑) 後から「すごかったなぁ、あれは何だったんだろう?」って、夢の中が続いているような状態でしたからね。

■それはこちらも同じ気持ちです。「不思議の国のアリス」じゃないですが、穴に落ちてしまい、異世界に連れて行かれたような楽しさがありました。「なぜもっと早くやってくれなかったんだよ!」と思ったぐらいですよ。

アサミサエ ははははは。(笑)

玉屋 そうなんですよねぇ。(笑)

■「イェー!」で終わらない壮大な感情を抱くという点では、今作の内容にもそのまま当てはまります。まさにそんな作品ができましたね。

アサミサエ すごく嬉しいですね。

玉屋 入口は「楽しい、ハッピー!」でいいんですけど、どの曲にも背景やテーマがあるんです。逆にそれを出し過ぎないように考えました。マジメなメッセージを届け過ぎないように……映画版の『クレヨンしんちゃん』みたいな。(笑)

アサミサエ ああ、そうですね(笑)。

玉屋 超楽しいんだけどちゃんとストーリーがあり、泣けて余韻に浸れる、みたいな。例えば“SOLAR KIDS”は表面的には「夏が来た、最高、楽しい!」でも、裏側には太陽の子供というテーマがあり、世界中の夏を1曲にしようというアイデアから始まったんです。人類を含めて、生き物は太陽の子供だと思うし、今は戦争とか起きていますけど、手を繋ぎ合えたらいいなと思って。でもそこを思いっ切り押し出すわけではなく、忍ばせておくという。その気持ちがあるとないとでは、ライブにおける自分たちのテンションも変わるから。ただ楽しいだけで終わらせたくない感情は大事だなと。