矢井田 瞳 release tour 2022『オールライト』ライブレポート@LINE CUBE SHIBUYA

レコーディングメンバーとともに回ったリリースツアーで再確認した対面の温かさ。

矢井田 瞳 release tour 2022『オールライト』の東京公演が、昨年10月7日(金)にLINE CUBE SHIBUYAにて行われた。9月7日に12枚目のアルバムとなる『オールライト』をリリースした矢井田。今作のリリースツアーとなる本公演は、レコーディングに参加した西川進(Gt)、鶴谷崇(Key)、FIRE(Ba)、水野雅昭(Dr)という布陣で行われた。※2023年1月8日の<大阪>振替公演後のアップとなります。

“さらりさら”でふくよかな声を響かせステージを開幕したこの日。手拍子とともに“オールライト”へと続くと、力強いバンドの演奏が生き生きとした音像を生み出していく。「やっと会えた、嬉しい!」と喜びを口にした矢井田は、「最近花を愛でる気持ちが分かってきたの」と話して、“花のような君に”を弾むように軽快に歌い上げる。哀愁の漂うキーボードの導入から続いた“ずっとそばで見守っているよ”では、パワーのあるドラム、キャッチーなギターソロとともに、会場を明るい空気で満たしていく。それらを率いる矢井田のパワフルな歌声は伸びやかで、包容力を感じさせた。

「本当に会いたかったです。最近は会いたくても会えなくて、心の距離もできてたのかなと思います」と話すと“Over The Distance”へ。「会いたい時に会えない」と歌いながらも前向きな強さのある本曲から感じられるもどかしくも温かい雰囲気は、この日対面することを果たしたオーディエンスや矢井田の感情を的確に表しているようだ。「懐かしい曲もやっちゃうよ!」と“I like”に続くと、会場は手拍子に包まれ、それまでスタンドマイクで歌っていた矢井田もハンドマイクに切り替えて、オーディエンスとコミュニケーションを取っていく。ニューアルバム『オールライト』について、「制作に2年ほどかけ、愛しさも悲しさも全部詰め込んで作り上げた」と話す矢井田。次の曲について「ある日の夜、また同じことで悩んでるなって思っていたら、この曲のギターの音が浮かんできたんです」と“オンナジコトノクリカエシ”のギターリフを力強く奏でる。「これはこのまま曲にしようと、一気に書き上げた曲です」という言葉を合図に、パワフルなリズム隊が会場を揺らす。この楽曲の肝となる特徴的なギターの音色とキーボードのサイケデリックな音色が混ざり合い、これまでの穏やかな空気をガラリと変化させる衝動の詰まったサウンドを響かせた。

そしてタンドラムを叩きながら伸びやかな声を聞かせた“shadow/alone”へ。穏やかな楽曲にしろクールな楽曲にしろ、その伸び伸びとした存在感のある歌声は、それひとつで会場の空気をガラリと変化させる説得力を持っている。再び矢井田がギターを持つと、“Buzzstyle”を披露。ミドルテンポのロックサウンドを悠々と奏で、しかし間奏では熱のある演奏を繰り出しオーディエンスを昂らせていく。堂々たる声色もバンドの演奏も、流石の存在感を放ちながらライブは続いていくが、ひとたびMCに入ると「最近物忘れが多くなって……」と「台所の片付けをしながら同時に朝食の準備を進めていたら、食器棚にシャウエッセンを片付けていた」というお茶目なエピソードで笑いを誘う。そんなエピソードも「OK、オールライト」とアルバム名にかけて見事に落ちをつけると、和んだ会場にメジャーデビュー曲の“B’coz I Love You”を轟かせる。デビュー初期の楽曲の連続に会場もエモーショナルかつ熱い空気に包まれると“Go my way”に続き、「この曲は何千回も歌っているけど、1回も嫌いになったことはない」と“My Sweet Darlin’”へ。何千回もの演奏を重ねたことで蓄積したパワーがびしびしと伝わるエネルギッシュな演奏が会場を痺れさせた。「それぞれ大変な日々があるだろうけど、今日は音楽で繋がれてよかった」と話すと、“Everybody needs a smile”へ。本編最後には“LOVESiCK”を披露し、西川のアコースティックギターと鶴谷のアコーディオン、矢井田のピアニカが穏やかな親密感のある音色を織り成した。

アンコールではグッズのペンライトもカラフルに光る。“ネバーランド行き”を披露した後には、「寒暖差も激しくて免疫が下がったりするかもしれないけど、心の栄養を忘れずにまたお会いできたらと思います」とオーディエンスを思いやる言葉も。「大変な時代だと思うけど、子供たちには可能性に蓋をされないで欲しいなって。娘と一緒に歩いていて思い浮かんだ曲です」と“駒沢公園”へ。彼女の過ごす日常が反映されるような、タイトルにぴったりな開放感のある音色を奏でる。一方でリズム隊の紡ぐ力強いビートは、未来へ歩いていくしっかりとした足取りも思わせた。そのアウトロを背にステージから捌けた矢井田だったが、みたび登場。1人アコギの弾き語りで“speechless”をダイナミックに、丁寧に歌い上げる。日常にある小さな幸せを噛みしめるような、ぬくもりを反映するような優しい一夜であった。

Text:村上麗奈
Photo:スエヨシリョウタ

https://yaiko.jp/

矢井田 瞳 release tour 2022『オールライト』@LINE CUBE SHIBUYA セットリスト
01. さらりさら
02. オールライト
03. 花のような君に
04. ずっとそばで見守っているよ
05. Over The Distance
06. I like
07. 一人ジェンガ
08. オンナジコトノクリカエシ
09. shadow/alone
10. 未完成のメロディ
11. Buzzstyle
12. B’coz I Love You
13. Go my way
14. My Sweet Darlin’
15. Everybody needs a smile
16. LOVESiCK

ENCORE
01. ネバーランド行き
02. 駒沢公園
03. speechless