自身のアイドル活動を原作にアニメ化を目指す3人が、結成からの軌跡を描いた初アルバムを振り返る。
昨年5月にデビューライブを行い、メンバーによるセルフ運営で活動してきたyoumenosayが、初のアルバム『START』を完成させた。本作にはデビュー曲となった“夢のせい”や、TikTokで話題となった“しゅき♡帯び運転”など既発全10曲に加え、「本当にいいの? 私でいいの?」とアイドルとしての苦悩を歌った“何かになれたのなら”、「僕が思ってたより僕の生き方は 愛されていたんだね」と壮大なエンディングを迎える“Dream Parade”の新曲2曲も収録。全曲を通して聴くと、結成からここまでの軌跡が彼女たちの心境とともに伝わってくる1クールのアニメのような作品に仕上がっている。プロデュースおよび全作詞を手掛けた北郷可恩、デザインを担当した雪乃さり、ライブ動画を編集した逢花ゆまのメンバー兼クリエーターとも言える3人に、アルバム制作を振り返ってもらった。
■初めてのアルバムが完成しました。改めて並んだ曲を見て感じたことは?
さり 1年でこんなにできたんだなって。
可恩 確かに。レコーディングは3ヵ月おきでしたけど、1か月に1曲ペースで作っていたことになるので。
ゆま 3か月ごとにレコーディングできること自体もすごいなと思ってました。
■メジャーで活動するアイドルでも、3ヵ月おきにシングルを出すことは稀ですよね。アルバムは今まで発表した全10曲+新曲2曲の構成ですけど、新曲はアルバムのために作ったんですか?
可恩 そうですね。最後の曲になっている“Dream Parade”は、やっぱりyoumenosayが(デビュー曲の)“夢のせい”から始まったので、締めもエモ散らかして、ここからまたスタートみたいな曲にしたいなと思って作りました。もう1曲の“何かになれたのなら”は、マネージャーが「1曲作りたい」と言ってくれて。
■マネージャーが曲を作ったんですか?
可恩 はい。3月くらいから入ってもらっているんですけど、曲も作れるし、MVも作れるし、なんでもできちゃう人なんですよ。
■そんな逸材が!歌詞は可恩さんが書いたんですか?
可恩 マネージャーが作ったデモに、1番だけ仮歌詞が入っていて。私的には「このままでいいじゃん」と思ったんですけど、「これは仮だから」と言われたんです。だから基本的な部分は変えないまま、もう少しyoumenosayっぽくなるようにチューニングした感じです。
■ちょっとネガティブな気持ちが描かれた歌詞ですよね。
可恩 マネージャーはさりちゃんをイメージして書いたらしいんですけど、アイドルには内に秘めた気持ちみたいなものがあると思うんです。その漠然と抱いているものを言語化した歌詞というか。この曲をもらった時はグループ的にあんまりいい時期じゃなくて、そういう状況も重ね合わせて作ったので、曲に消化できてよかったなと思っています。ネガティブなことをSNSとかに垂れ流すのは嫌なので。
■さりさんは歌詞を見て自分の心境と重なる部分はありましたか?
さり ありました。最初に曲をもらった時から、すっと馴染んだというか、刺さったというか。本当にその時はyoumenosayがヤバかったんですよ。
ゆま みんなちょっとメンタルがね……。もらった時、とりあえず一回泣いたから。(笑)
さり 本当に「何かになれたら、こんな気持ちにならなくてよかったのかな……」みたいな。
可恩 でも、そういう気持ちはアイドルだけじゃなくて、誰にでもあると思うんです。何かになったところで、また違う何かを求めて、一生ゴールがないと思うので。
■『貴方は言う「変わらないで良い」と言う』という歌詞がありますけど、実際そういうことをファンから言われることもあるんですか?
可恩 結局何かになりたいけど、みんなは「そのままの可恩が好きだよ」とか言うじゃないですか。「それって実際どうなんだろうね?」みたいなことは、普段からマネージャーとよく話していたんです。だから、そういう日常的な会話を落とし込んで、ウチらのことを考えて書いてくれたんだなと感じています。
■この曲はyoumenosayでは珍しく歌割りが全部ソロパートですけど、歌詞とメンバーの個性を考えた結果なんですか?
可恩 そうですね。特に2番のBメロは誰が歌うかイメージしながら、メッセージの強い言葉を入れました。
■可恩さんは「可愛くて良い子を 演じるだけの私でいいなら そんなの要らないよ」ということなんですか?
可恩 そうですね。(笑) 結局プロデューサーなので、自分が倒れたり、心が折れたりしたら終わりじゃないですか。だから感動とか以外で泣いている姿は見せたくなくて。実際、そういう感情はあんまりないんですけど、たぶん自分でこう思っているんじゃないかなみたいなことを客観的に書いた感じですね。この歌詞、めっちゃ気に入っているんですよ。歌メロもここは絶対私に歌って欲しいみたいな感じだったので。
■ゆまさんは『「大嫌い」弱くて 何も言えない自分』と感じることが多いんですか?
可恩 と思っています、私は。(笑)
ゆま なんだろう……。「これを言ったらファンの人はどう思うかな?」とか、「メンバーはどう思うかな?」とか、めちゃくちゃ気をつけるようになりました。昔と比べると。
■昔はもっとズバズバ言うタイプだったんですか?
ゆま いや、それも言えなかったんですけど、youmenosayになってからは特に減りましたね。やっぱり理想のアイドル像みたいなものがあったから。
可恩 自分以外に対して、すごい気を使う子なんです。でも、口には出さないだけで思っていることはちゃんとあるので、そういう部分をうまく落とし込めたらいいなと思って歌詞を書きました。
■さりさんは『「探したい」殻を破って まだ知らぬ情熱』と歌っています。
さり 本当に思っていることだったから「わかる!」と思いました。私はいちばん経験不足で、アイドル活動を始める前も、始まった後も、殻を破れない感じがしていて。物事に対しても、人に対しても、どこか一線を引いてしまう癖があって、それは本当は嫌なんです。「もっと熱くなりたいのにな」「もっとギュッと生きたいのにな」みたいなことを毎日思っているので、この歌詞はめっちゃ刺さりました。
■デビューした頃と比べたら別人レベルになっていると思うんですけど、自分的にはまだ殻を破っていない?
さり そうですね。1年前に比べたら全然変わったなとは思いますけど……。
可恩 私はまだイケると思っているんですよ。センターとして絶対にどこかで「バン!」と覚醒するタイミングがあると思っていて。それがいつなのかわからないですけど、今でも羽化を予感させるシーンはたびたび感じているので。
さり 私も、まだイケる感じはめちゃめちゃあるんですけど、破り方がわからない……。
ゆま さりちゃんの魅力が全面に伝わる時が来たらいいよね。声もいいし、顔もいいし。
可恩 卵から生まれる動物って、自分でしか出てこれないじゃないですか。温めるのはお母さんがやったかもしれないけど、最後は自分で殻を破るしかない。
さり 本当にみんなに温められている感じはしています。この1年、ずっと「あっためられてるんだけど……」と思いながら過ごしたので。
■今が殻を破っていない状態と言われたら、殻を破った時が恐ろしいですけどね。
可恩 私もそう思っています。
さり がんばります!!!
■そんなリアルな悩みも反映された曲ですけど、最後は「本当にいいの? 私でいいの?」で終わって、結論を歌っていないじゃないですか。「その答えがもうひとつの新曲“Dream Parade”なのかな?」と僕は思ったんです。
全員 おおー!!!(拍手)
■“Dream Parade”の「僕が思ってたより僕の生き方は 愛されていたんだね」という歌詞を見て、全部つながった気がしたんです。
可恩 同じ時期に書いたので、同じような心境の陰と陽みたいな部分があったのかなとは思います。そこの歌詞は自分の心境にリンクしている部分でもあるので。
■“Dream Parade”はアルバムの最後に入れる前提で作ったんですか?
可恩 それは決めていました。あと、これはMy Chemical Romanceの“Welcome To The Black Parade”のオマージュなんですよ。自分にとってすごく大事な曲で、「いやぁ明日からも生きていこう」みたいな気持ちになるし、音楽って人をこんなに震わせられるんだと思える曲だったので、先人のチカラをお借りしました。
■さっき「エモ散らかして」と言っていましたけど、もう大洪水だなと思いました。
可恩 曲を発注する時に、youmenosayがもっと羽ばたいていくというか、滑走路をずっと走っていくようなイメージができたらいいなっていうのは伝えていたんです。でも、最初にあがってきたデモが納得できるものではなくて、「こんなんじゃ泣けないから!」「Black Paradeよりいい曲書けって言っただろ!」って。(笑) それでギリギリまで模索した結果、レコーディングの10時間前に曲が完成して、そこから死にそうになりながら歌詞を書きました。
■そんな追い詰められていたわりには、歌詞に今までの曲名やメンバーの名前が入っていて、仕掛け満載ですよね。
可恩 もう覚えていないんですよ、どうやって書いたのか。
■そういう仕掛けは10時間の中で考えたんですか?
可恩 それは前から漠然と考えていたんですけど、やっぱり音ハメとか、どういうふうに落とすかとか、必死に考えましたね。“TAKAI $USHI”とかそのまま入れられないので「高く」に変えたり、“Believe(仮)”もそのままだとダサすぎるので「信じる」にしたり。なんとかうまいことまとめられたかなと思います。
■曲名そのままじゃないからこそ、探す楽しさがありましたね。歌詞にメンバーの名前が入っているのも、『ラブライブ!』の映画(2015年公開『ラブライブ!The School Idol Movie』)を思い出しました。
さり “僕たちはひとつの光”!
ゆま 確かに確かに。
可恩 アニメにありがちな仕掛けではありますけど、やっぱりyoumenosayはアニメ化を目指しているグループなので。
さり この曲、「youmenosay終わるんか?」ってくらい壮大ですよね。
■でも、歌詞的には「まだまだ続くよ」っていう内容ですよね。「終わらない僕等のパレードを」とか、「ドリームパレードはいつだって 君が来るのを待っているよ」とか。
可恩 なんかディズニーランドみたいな要素かなって。youmenosayは「夢」をテーマにしていて、夢の中にいて欲しい気持ちが強いので、みんながずっとyoumenosayと青春してきたんじゃないかなっていう錯覚に陥ってくれたら嬉しいですし、「俺の人生はyoumenosayがなかったら無理だったかもしれない」みたいな存在になれたらいいなって。夢ってすごい原動力のあるものなので、このアルバムやyoumenosayのライブが、ディズニーランドにインパークして出てくるまでみたいになったらいいですね。