石崎ひゅーい VANITYMIX 2019 SPRING PICK UP INTERVIEW

石崎ひゅーい

「過去も全部ひっくるめながら新しい世界にいく」踏み出した新たな一歩――ここから始まる第二章

次のフェーズへ進むべく、昨年3月リリースのベストアルバム『Huwie Best』で、第一章の幕を閉じた石崎ひゅーいがミニアルバムをリリース。タイトルは『ゴールデンエイジ』。まっさらになることで踏み出すことのできた新たな一歩、その大きな一歩により誕生した5つの楽曲。愛おしいこの5曲について、そして第二章のスタートを切った、いま現在の心境について、話を訊いた。

■『Huwie Best』で第一章に終止符を打たれたときと比べて、いまの心境はどうですか?

石崎 だいぶ視界良好になってきましたね。区切りっていうのをちゃんと自分で発信したのがよかったのかなと思うんですけど、一度まっさらな状態にしたので、何でも入ってくるというか、インプットを自由にすることができたというか。まっさらにしたら、いままで取り入れてこなかったものや、無視しちゃっていたもの、毛嫌いしいてた表現とか、そういうものを全部受け入れられるようになって。自分で勝手に型みたいなものを作って、ずっとその中で音楽をやっていたのかもしれなくて。でもそこから出ることができて、そういうことに気づけたのはすごくよかったなって。

■まっさらになった分、いまは何でも受け入れられる状態だと?

石崎 何でも受け入れられるっていうのと、いままで自分がやってこなかった書き方、表現の仕方みたいなものに意欲的にトライしていけるようになったというか、怖いものがなくなったというか。少しずつだけど、そういう感覚になっていますね。ここからいろいろチャレンジだなって。デビュー7年目で、普通ならここから落ちついていくんですけど、ここからまた変わっていってもいいじゃんって。その一歩目って感じかな。

■今作が第二章の始まりなのかなとも思いつつ、タイトルが『ゴールデンエイジ』。これは子どもがセンスを磨く大切な時期とか、成長期のことを言うんですよね?

石崎 そうです。子どもの成長期のことを言うんですけど。

■これはひゅーいさんの現在を表しているのかなと。

石崎 いま自分がそういう状態にいるっていうことと、音楽とうまく向き合えなくてもやもやしていたときに、友達と音楽でとことん遊ぶことで、そこから抜け出せたんですよ。音楽をおもちゃというか、ひとつの遊び道具にするというか。

■はいはい。わかります。

石崎 そうやって遊んでいるとき、「あ、そうだよな。音楽ってそういうもんだよな」と思って。そうやって考えられるようになってからは、わくわくする感じをまた取り戻せたんですね。子ども心というか、初心に戻るというか。そのときにこの言葉を見つけて。そうだ!これだと思って。

■なるほど。

石崎 この5曲を聴いたとき、すごくいい並びだと思ったし、いまの自分の状態と、この5曲を表す言葉というところでめちゃめちゃ悩んで、これでもない、これでもないって繰り返して、やっと見つけて。この5曲は自分の中で、新しい一歩を踏み出せるようなものになったので、いままでとは違うなって感じて欲しいんですけど、だからと言って、めちゃめちゃ変わったわけではないので。成長とか変化はしていっているけど、過去を否定しているわけじゃなくて、過去も全部ひっくるめながら新しい世界にいく、そういう5曲になったらいいなと思っていたから、1曲1曲けっこう顔が違うんですよね。

■違いますよね。個性が豊かだし。

石崎 そこが結構おもしろくできたんじゃないかなって。いまは本当にいろんな書き方をしようと思っているときなので、そういうのがすごく出たなって。

■その1曲1曲、お話訊かせてください。1曲目“あなたはどこにいるの”は、ドラマ『さすらい温泉 遠藤憲一』の主題歌ですが、ドラマが不思議な感じというか…。

石崎 攻めてますよね。(笑) “夜間飛行”を書かせてもらった「みんな!エスパーだよ!」のチームにまた声をかけてもらって書いたんですけど、映像を観たら、「やっぱ攻めてんなー!」って。だから、まずはそれに負けないような曲を作ろうと思ったことと、菅田(将暉)くんと出した“さよならエレジー”のアンサーソング的なものにしようかなと思って。

■そういうことなんですね。

石崎 そう、それで女性目線になったんですよ。女性目線でちゃんと自分で歌詞を書いたのは、僕の人生の中で初めてで、“さよなら、東京メリーゴーランド”も、女性口調なんですけど、あれは女性というよりジェンダーレス的なニュアンスなので、ちゃんとした女性目線はこれが初めてで。

■はい。そうですよね。

石崎 いままでやれなかったんですよ。なんかわかんないけど、なんとなく嫌で。それこそ型というか、檻というか、柵というか、そういう中でしか表現しないって決めちゃって活動していたからだと思うんですけど。そういうのが取っ払えたいまだからこそ、いろんな表現をしようって感じで、今回はなんか書けたんですよね。

■何か参考にされたりとかしたんですか?

石崎 女性スタッフにいろいろ聞きました。「こういうとき女の人ってどう思うの?どうなの?」って、結構聞いて、いろいろ調査して、めんどくさい生き物だなーって。(笑)

■あはは、なるほど。そういう書き方もおもしろいですね。

石崎 おもしろいと思いましたね。自分の感情じゃない感情を想像して歌うのも、それはそれでいいなって。自分で作ればちゃんと納得できるんだなって。自分のものにちゃんとなるというか。なんか嫌なんだよなって、そういう感じがする可能性もあったわけじゃないですか、僕の感覚からしたら。でも作った後、いいなって純粋に思えたので、トライしてよかったなって。この5曲の中では、感覚的にいちばん挑戦した曲になりましたね。

■2曲目の“SEXY”、これすっごくカッコいいです。

石崎 この2曲目と3曲目は、プロデューサーのトオミ(ヨウ)さんが、僕の状態を常に見ていてくれていて、悩んでいるときとか、曲ができない雰囲気のときとか、そういうのを全部見てくれているんですけど、「遊ぼう」って言ってくれたんです。今回、久しぶりにがっつり制作だったから、それもあって言ってくれたんだと思うんですけど。だから、この2曲はかなり遊んだし、楽しかったですね。

■サビでの盛り上がりと展開にびっくりしました。

石崎 演劇的でね。なかなかないですよね、こういう感じ。お芝居もさせていただいているので、それがここに反映されたのかなって。サビは最初違ったんですけど、トウミさんが提案してくれて。わーって歌詞書いて、わーって歌ってみたら、「これだ!」って。官能的な表現というのもやったことがなかったので、これもまた挑戦したなって。テーマはもうずばり官能。

■聴いていてドキッとしました。

石崎 女性がそう思うというか、なんかそういう曲になったらいいなと思って。

■恥ずかしさとかはなかったですか?

石崎 何もないんですね。いま怖くない状態なんで。ゼロだって自分で言ったからだと思うんですけど、何やっても怖くないというか、何やってもいいやと思っているから。

■やっぱり決めるって大事なことなんでしょうね。こうなるとか、こうするとか。だからそっちにちゃんと自分が向いていくというか。

石崎 特に僕はそうやって決めるタイプの人間じゃないので、なぁなぁで生きているタイプの人間なので。(笑) だからそういうのがあった方がいいんでしょうね。だからベストアルバムで一区切り、みたいな。だって音楽って一区切りってないとうか、しなくていいじゃないですか。人生の中でずっと音楽やっていたら、それが音楽だし。でも僕はそういうタイプの人間なんで、自分で全部そういうタイミングを決めるんだと思うんですけど、でもだからよかったんですよね。自分で決めて、区切りをつけてっていうのが。

■だからいま自由でもある、と。

石崎 本当にそうで。自由だし、怖いものも何もないです。